[R18]2度目の人生でスローライフ?ハーレムだっていいじゃないか

白猫 おたこ

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第五章 スキルリセット アイリスの再生

第98話: 【守護の鼓動】届きうる頂、示すべき道

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「アイリス、お前はまだ無理をして魔力を注ぐ必要はない。……ただ、そこで聴いていてくれればいいさ」

 健太郎は、作業台に置かれた漆黒の弓に向かって、慈しむように微笑みかけた。

 アイリスは「ふん、主がそう言うのなら大人しく見ていてやろう」と尊大に返したが、その声には主の気遣いを素直に受け入れる温かさが混じっていた。

「健太郎さん、皮の準備できたよ。……本当に、普通の工程で作るんだね」

 結衣が運んできたのは、先ほど仕留めた変異猪の皮だ。
かつてなら一瞬で「素材アイテム」に変換されていたはずのそれは、今や血の匂いと重みを持った、生々しい「命の欠片」だった。

「ああ。今、掲示板で絶望してる連中に必要なのは、神の奇跡じゃない。……自分の手と、道具と、目の前の素材を信じれば、ここまでのものが作れるんだっていう『道』だ」

 健太郎は、新調したばかりのナイフを手に取った。
 スキル『レザークラフト』は発動している。だが、彼はシステム的な補正に身を任せることはしない。
 まず、皮の裏側に残った不要な脂肪や繊維を、ミリ単位の精度で削ぎ落としていく。
 次に、森で見つけた植物の渋を利用し、時間をかけて「なめし」を行う。
「ボタン一つで完成する防具」には決して宿らない、革の繊維を引き締め、しなやかさと強靭さを両立させる職人の手業。

「いいか、結衣。革鎧(レザーアーマー)の肝は、硬さじゃない。……攻撃の衝撃を逃がす『いなし』と、着る者の動きを邪魔しない『設計』だ」

 健太郎が打つ槌の音が、一定のリズムで工房に響き渡る。
 それはアイリスにとって、最高の子守唄であり、再誕を祝う祝詞(のりと)のようにも聞こえた。
 特別な魔力は込めていない。
 だが、健太郎の指先からは「この防具を着る奴が、一人でも多く生き残るように」という、切実なまでの意志が、革の繊維一本一本に染み込んでいく。
 結衣もまた、健太郎の意図を汲み取り、最も強度が求められる肩や胸部を、丈夫な腱の糸で丁寧に、しかし強固に縫い合わせていった。

 数時間後。
 完成したのは、派手なエフェクトも、神々しい後光もない、無骨なまでに実直なレザーアーマーだった。

「……できたな。アイリス、どうだ?」

『……ふむ。魔力こそ微々たるものだが、なんとも「しぶとい」気配を纏っておるな。主のしつこさが、そのまま形になったようではないか』

「はは、最高の褒め言葉だ」

 健太郎は、その防具のスペックではなく、「どの部位をどう補強し、どの工程に時間をかけたか」という詳細な制作ログを添えて、マーケットに出品した。

『スキルがなくても、レベルが低くても、素材は裏切らない。……自分の手を、信じろ』

 その一品は、またたく間にマーケットから消え、代わって掲示板には「これなら、俺にも……!」という、くすぶっていた生産者たちの魂に火が灯る音が溢れ始めた。

【健太郎(三神健太郎) スキル熟練度】
【キャラクターレベル:3】
【ジョブ:レザークラフト(革職人) Lv.2】
 ■ 生産系(マスタリー)
 • レザークラフト(マスタリー) Lv.1:(15/100) LEVEL UP!!
 • 木工(マスタリー) Lv.1:(25/100)
 • サバイバル(マスタリー):(60/100) → (75/100) UP
 ■ 特殊生産系(レベル上限なし)
 • 慈愛の加工 Lv.2:(35/100) UP
 • 導きの声 Lv.2:(35/100)
 • 愛撫 Lv.2:(50/100) UP
 ■ 真理系
 • 鑑定眼 Lv.2:(85/100) UP

【結衣 スキル熟練度】
【キャラクターレベル:3】
【ジョブ:裁縫師 Lv.2】
 ■ 生産系
 • 裁縫マスタリー Lv.1:(60/100) UP
 • 探知・探索 Lv.1:(10/100)
 ■ 身体強化系
 • 奉仕マスタリー Lv.1:(50/100) UP

 • アイリスの魔力に頼らず、純粋な技術と意志による防具制作。
 • 制作工程の公開により、一般生産職への希望を提示。
 • 健太郎のレザークラフトマスタリーがレベル1へ。

【彩光の兆し】響き渡る槌音、色づく世界

 その変化は、一本の「1ゴルドの肉」と、一つの「1ゴルドの教科書」から始まった。

「……健太郎さん、見て。マーケットに、新しい出品がどんどん増えてる」
 結衣が操作するウィンドウには、かつてのような「システム製」の無機質な文字列ではなく、出品者の体温が伝わってくるような武骨な品々が並んでいた。

『使い古しの石を研いだナイフ』、『歪だが丈夫な猪皮の靴』。そのどれもに、健太郎が示した「基礎を信じろ」という言葉への返答のような、泥臭くも力強い意志が宿っている。

「ああ、聞こえるぞ。……あちこちで、火が熾(おこ)る音がな」

 健太郎が工房の窓を開け放つと、遠くの街の方角から、風に乗ってかすかな槌音が響いてきた。
一つ、また一つ。それはシステムが奏でる効果音ではなく、人間が、職人が、己の腕一本で明日を掴み取ろうとする生命の鼓動だった。

 その瞬間、世界が震えた。
「……っ! あるじ!見るのじゃ!」

 アイリスの鋭い声に導かれ、二人は工房の庭へと飛び出した。
 そこには、三日前まで死の灰が降り積もっていたはずの地面があった。
しかし今、足元から溢れ出した柔らかな光が灰を払い、瑞々しい緑の芽が、地割れを埋めるように一斉に吹き出していたのだ。

「これは……『光の花』?」

 結衣が息を呑む。
 かつての神域にのみ咲き、アプデ後の灰色に塗り潰されていたはずの伝説の花が、健太郎たちの工房を起点として、円を描くように次々と開花していく。

『くく……主よ、見るがよい。これが、貴様たちが書き換えた「理(ルール)」の姿だ。人間が作ることを諦めず、世界に意志を叩きつけた結果、大地が応えておるのだ』

 アイリスの言う通りだった。
 光の花の連鎖は、やがて森全体へと波及していった。
 重苦しかった灰色の空が端から崩れ、そこから差し込む純白の陽光が、枯れ木を深い深緑へと染め直していく。
 色彩が、奪われていたはずの鮮やかな世界の色が、津波のように押し寄せ、全てを塗り替えていく。

「……戻ってきたんだな。俺たちの、世界が」
 健太郎は、新緑の匂いを含んだ風を深く吸い込んだ。
 それは、運営が用意した「用意された舞台」の再生ではない。
 職人たちの槌音が、人々の「生きたい」という願いが、物理法則さえも侵食し、力ずくで引き戻した「生きた世界」の再誕だった。

「健太郎さん……私、なんだか力が湧いてくる。今なら、もっといいものが作れそうな気がするよ」

「ああ、俺もだ。……さあ、世界が応えてくれたんだ。俺たちも、次の仕事に取り掛かるとしようか」

 色彩を取り戻した森の奥。
そこには、かつてのデータには存在しなかった「未知なる素材」が、主たちの訪れを待つように、静かに、しかし力強く萌芽(ほうが)の時を待っていた。

【健太郎(三神健太郎) スキル熟練度】
【キャラクターレベル:4 UP!!】
【ジョブ:レザークラフト(革職人) Lv.2】
 ■ 生産系(マスタリー)
 • レザークラフト(マスタリー) Lv.1:(15/100) → (35/100) UP
 • 木工(マスタリー) Lv.1:(25/100) → (40/100) UP
 • サバイバル(マスタリー):(75/100) → (95/100) UP
 ■ 特殊生産系(レベル上限なし)
 • 慈愛の加工 Lv.2:(35/100) → (50/100) UP
 • 導きの声 Lv.2:(35/100) → (55/100) UP
 • 愛撫 Lv.2:(50/100) → (75/100) UP
 ■ 真理系
 • 鑑定眼 Lv.2:(85/100) → Lv.3 (10/100) LEVEL UP!!

【結衣 スキル熟練度】
【キャラクターレベル:4 UP!!】
【ジョブ:裁縫師 Lv.2】
 ■ 生産系
 • 裁縫マスタリー Lv.1:(60/100) → (80/100) UP
 • 探知・探索 Lv.1:(10/100) → (25/100) UP
 ■ 身体強化系
 • 奉仕マスタリー Lv.1:(50/100) → (70/100) UP
 
 • 健太郎の鑑定眼がLv.3に上昇。世界の見え方がより精細に。
 • 職人たちの意志の連鎖により、世界が物理的に「色彩(緑と光)」を取り戻した。
 • 健太郎・結衣ともにキャラクターレベルが4に上昇。

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