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第一部:役立たずと捨てられた建築士、隣国で「聖域」を造って無双する
第七話:不法侵入者は自動的に「処理」いたします
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黄金色に輝く王都。その中央広場に、場違いな怒号が響き渡った。
泥まみれの服を着たシグムンド様が、護衛の騎士数名を引き連れて、こちらへ向かって走ってくる。
「アニエス!探したぞ!貴様、こんなところで何をしている!」
彼の顔は怒りと、それ以上に隠しきれない『恐怖』で引き攣っていた。
背後に控えるクロエも、自慢の桃色の髪がボサボサになり、煌びやかだったドレスは裾がボロボロに破れている。
「……あら。シグムンド様にクロエ様。随分と『風通しの良さそう』な格好をされていますわね」
私は優雅に首を傾げた。
彼らが乗ってきた馬車を見れば、車体には無数のヒビが入り、車輪からは異音がしている。どうやら、私が術式を引き抜いた後の街道を、無理やり走らせてきたらしい。
「ふざけるな!城が、城がとんでもないことになっているんだ!お前がいなくなった途端、壁は崩れ、天井は落ち、挙句の果てにクロエの部屋の床が抜けて――」
「シ、シグムンド様、それを言わないでくださいまし!とにかく、アニエス!今すぐ戻って城を直しなさい!これは王家の命令よ!」
クロエがヒステリックに叫び、私に指を突きつける。
周囲にいたレアルタ帝国の国民たちが、困惑したように顔を見合わせた。
「王家の命令、ですか。……申し訳ございませんが、私はすでにこの国の『国家建築顧問』。他国の不法侵入者に指図される筋合いはございませんわ」
「不法侵入だと!?俺は王子だぞ!」
シグムンド様が激昂し、私の腕を掴もうと一歩踏み出した。
――その瞬間。
私の足元から、機械的な駆動音が響いた。
「侵入者検知。……排除を開始します」
私がこの王都の石畳に組み込んだ『自律防衛機構』が作動したのだ。
シグムンド様が踏み出した床が、突如として『ベルトコンベア』のように高速で逆回転を始めた。
「なっ、うわあああああ!?」
足を取られたシグムンド様は、無様にひっくり返り、そのまま街の外へと向かって猛スピードで運ばれていく。
「シグムンド様!?ちょっと、何なのこれ!きゃあああっ!」
助けようとしたクロエも、同様に床の動きに巻き込まれた。
二人は絡まり合いながら、まるで工場の検品不合格品のように、広場から遠ざかっていく。
「アニエス……。今の仕掛けは、一体?」
隣で見ていたレオンハルト陛下が、呆れ半分、感心半分といった様子で尋ねてきた。
「ただの『自動掃除機能』ですわ。街の美観を損なうゴミは、自動的に市外の廃棄場へ運ばれるよう設計しておりますの」
私は事も無げに答え、遠くで「待て!止めてくれええ!」と叫びながら滑っていく二人を見送った。
「さて、陛下。ゴミ掃除も終わりましたし、次は城の『魔導温泉』の設計に取り掛かりましょうか。心身の疲れには、良質な建築と湯治が一番ですから」
黄金の街に、再び平和な活気が戻る。
一方、王都のゴミ捨て場へと向かってノンストップで運ばれていく二人の未来は、今の私の図面には一ミリも描かれていなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございます! 「続きが気になる!」「面白そう!」と思っていただけたら、 【お気に入り登録】と【感想やいいね】をいただけると執筆の励みになります!
泥まみれの服を着たシグムンド様が、護衛の騎士数名を引き連れて、こちらへ向かって走ってくる。
「アニエス!探したぞ!貴様、こんなところで何をしている!」
彼の顔は怒りと、それ以上に隠しきれない『恐怖』で引き攣っていた。
背後に控えるクロエも、自慢の桃色の髪がボサボサになり、煌びやかだったドレスは裾がボロボロに破れている。
「……あら。シグムンド様にクロエ様。随分と『風通しの良さそう』な格好をされていますわね」
私は優雅に首を傾げた。
彼らが乗ってきた馬車を見れば、車体には無数のヒビが入り、車輪からは異音がしている。どうやら、私が術式を引き抜いた後の街道を、無理やり走らせてきたらしい。
「ふざけるな!城が、城がとんでもないことになっているんだ!お前がいなくなった途端、壁は崩れ、天井は落ち、挙句の果てにクロエの部屋の床が抜けて――」
「シ、シグムンド様、それを言わないでくださいまし!とにかく、アニエス!今すぐ戻って城を直しなさい!これは王家の命令よ!」
クロエがヒステリックに叫び、私に指を突きつける。
周囲にいたレアルタ帝国の国民たちが、困惑したように顔を見合わせた。
「王家の命令、ですか。……申し訳ございませんが、私はすでにこの国の『国家建築顧問』。他国の不法侵入者に指図される筋合いはございませんわ」
「不法侵入だと!?俺は王子だぞ!」
シグムンド様が激昂し、私の腕を掴もうと一歩踏み出した。
――その瞬間。
私の足元から、機械的な駆動音が響いた。
「侵入者検知。……排除を開始します」
私がこの王都の石畳に組み込んだ『自律防衛機構』が作動したのだ。
シグムンド様が踏み出した床が、突如として『ベルトコンベア』のように高速で逆回転を始めた。
「なっ、うわあああああ!?」
足を取られたシグムンド様は、無様にひっくり返り、そのまま街の外へと向かって猛スピードで運ばれていく。
「シグムンド様!?ちょっと、何なのこれ!きゃあああっ!」
助けようとしたクロエも、同様に床の動きに巻き込まれた。
二人は絡まり合いながら、まるで工場の検品不合格品のように、広場から遠ざかっていく。
「アニエス……。今の仕掛けは、一体?」
隣で見ていたレオンハルト陛下が、呆れ半分、感心半分といった様子で尋ねてきた。
「ただの『自動掃除機能』ですわ。街の美観を損なうゴミは、自動的に市外の廃棄場へ運ばれるよう設計しておりますの」
私は事も無げに答え、遠くで「待て!止めてくれええ!」と叫びながら滑っていく二人を見送った。
「さて、陛下。ゴミ掃除も終わりましたし、次は城の『魔導温泉』の設計に取り掛かりましょうか。心身の疲れには、良質な建築と湯治が一番ですから」
黄金の街に、再び平和な活気が戻る。
一方、王都のゴミ捨て場へと向かってノンストップで運ばれていく二人の未来は、今の私の図面には一ミリも描かれていなかった。
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