6 / 7
第一部:役立たずと捨てられた建築士、隣国で「聖域」を造って無双する
第六話:王都の石畳は黄金に輝く
しおりを挟む
国境の関所を後にした私たちは、レアルタ帝国の王都へと足を進めた。
道中、皇帝レオンハルト陛下が何度も「驚かないでくれ」と口にしていた理由が、門を潜った瞬間に理解できた。
「……なるほど。これは確かに、建築士の血が騒ぎますわね」
視界に飛び込んできたのは、どんよりとした曇天の下、灰色に沈んだ街並みだった。
建物はどれも歪み、壁には呪いの影響と思われる黒いシミが広がっている。排水は路きに溢れ、人々は肩を窄めて歩いていた。母国の豪華絢爛な光景とは正反対の、絶望に近い静寂。
「アニエス、これが我が国の現実だ。瘴気は建物の『骨』を腐らせる。いくら建て直しても、数年でこうなってしまうのだ」
苦渋に満ちた陛下の言葉。だが、私はすでにその原因を見抜いていた。
「陛下。建物が腐るのは、建材が悪いからではありません。呼吸が止まっているからですわ」
私は街の中央へと歩みを進める。人だかりができた。
ボロボロの服を着た民衆が、見慣れぬ異国の服を着た私を、不安と不審の混じった目で見つめている。
「皆様、少々騒がしくなりますが、ご容赦を」
私は杖の先端を石畳に突き立てた。
これまでの旅で蓄えた地脈のエネルギーと、私の中に眠る万能の建築マナを練り合わせる。
「建築魔法――【広域改修:王都蘇生】!」
瞬間、私の足元から黄金の波紋が広がった。
それは津波のように街の隅々へと駆け抜け、灰色だった石畳を次々と純白のタイルへと書き換えていく。
「な、なんだ!?地面が光っているぞ!」
「見て!壁の黒いシミが……消えていく!」
民衆から悲鳴に似た歓声が上がる。
私の放ったマナは建物の内部へと浸透し、腐った木材を硬質な魔導木へと変質させ、歪んだ柱を理想的な垂直へと押し戻した。さらに、路きを流れていた汚水は、新設された地下排水路へと吸い込まれ、代わりにあちこちの広場で清らかな水が噴き出した。
わずか一分。
死に体だった王都は、陽光を反射して輝く『宝石の街』へと生まれ変わった。
「信じられん……。一瞬で、王都全体の瘴気を払い、修復したというのか……?」
レオンハルト陛下が絶句し、膝を突く。
周囲の民衆は、あまりの光景に「女神様だ……!」「聖女様が降臨された!」と叫び、次々と跪いて祈り始めた。
「いいえ。私はただ、石の声を聴き、正しい場所に置いただけ。……さあ、陛下。これでようやく『スタートライン』ですわ。ここから、世界最高の聖域を造り上げましょう」
私が微笑んだその時。
遠く、王都の正門の方から、聞き覚えのある「下品な騒音」が響いてきた。
「おい、道を開けろ!私は王国の第一王子、シグムンドだぞ!アニエス!アニエスはどこだ!」
泥まみれの馬車から飛び出してきたのは、髪を振り乱し、必死の形相をした元婚約者だった。
どうやら、崩壊を始めた母国の城から逃げ出してきたらしい。
私は輝く石畳の上に立ち、冷ややかな視線を彼へと向けた。
最後まで読んでいただきありがとうございます! 「続きが気になる!」「面白そう!」と思っていただけたら、 【お気に入り登録】と【感想やいいね】をいただけると執筆の励みになります!
道中、皇帝レオンハルト陛下が何度も「驚かないでくれ」と口にしていた理由が、門を潜った瞬間に理解できた。
「……なるほど。これは確かに、建築士の血が騒ぎますわね」
視界に飛び込んできたのは、どんよりとした曇天の下、灰色に沈んだ街並みだった。
建物はどれも歪み、壁には呪いの影響と思われる黒いシミが広がっている。排水は路きに溢れ、人々は肩を窄めて歩いていた。母国の豪華絢爛な光景とは正反対の、絶望に近い静寂。
「アニエス、これが我が国の現実だ。瘴気は建物の『骨』を腐らせる。いくら建て直しても、数年でこうなってしまうのだ」
苦渋に満ちた陛下の言葉。だが、私はすでにその原因を見抜いていた。
「陛下。建物が腐るのは、建材が悪いからではありません。呼吸が止まっているからですわ」
私は街の中央へと歩みを進める。人だかりができた。
ボロボロの服を着た民衆が、見慣れぬ異国の服を着た私を、不安と不審の混じった目で見つめている。
「皆様、少々騒がしくなりますが、ご容赦を」
私は杖の先端を石畳に突き立てた。
これまでの旅で蓄えた地脈のエネルギーと、私の中に眠る万能の建築マナを練り合わせる。
「建築魔法――【広域改修:王都蘇生】!」
瞬間、私の足元から黄金の波紋が広がった。
それは津波のように街の隅々へと駆け抜け、灰色だった石畳を次々と純白のタイルへと書き換えていく。
「な、なんだ!?地面が光っているぞ!」
「見て!壁の黒いシミが……消えていく!」
民衆から悲鳴に似た歓声が上がる。
私の放ったマナは建物の内部へと浸透し、腐った木材を硬質な魔導木へと変質させ、歪んだ柱を理想的な垂直へと押し戻した。さらに、路きを流れていた汚水は、新設された地下排水路へと吸い込まれ、代わりにあちこちの広場で清らかな水が噴き出した。
わずか一分。
死に体だった王都は、陽光を反射して輝く『宝石の街』へと生まれ変わった。
「信じられん……。一瞬で、王都全体の瘴気を払い、修復したというのか……?」
レオンハルト陛下が絶句し、膝を突く。
周囲の民衆は、あまりの光景に「女神様だ……!」「聖女様が降臨された!」と叫び、次々と跪いて祈り始めた。
「いいえ。私はただ、石の声を聴き、正しい場所に置いただけ。……さあ、陛下。これでようやく『スタートライン』ですわ。ここから、世界最高の聖域を造り上げましょう」
私が微笑んだその時。
遠く、王都の正門の方から、聞き覚えのある「下品な騒音」が響いてきた。
「おい、道を開けろ!私は王国の第一王子、シグムンドだぞ!アニエス!アニエスはどこだ!」
泥まみれの馬車から飛び出してきたのは、髪を振り乱し、必死の形相をした元婚約者だった。
どうやら、崩壊を始めた母国の城から逃げ出してきたらしい。
私は輝く石畳の上に立ち、冷ややかな視線を彼へと向けた。
最後まで読んでいただきありがとうございます! 「続きが気になる!」「面白そう!」と思っていただけたら、 【お気に入り登録】と【感想やいいね】をいただけると執筆の励みになります!
20
あなたにおすすめの小説
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!
契約破棄された聖女は帰りますけど
基本二度寝
恋愛
「聖女エルディーナ!あなたとの婚約を破棄する」
「…かしこまりました」
王太子から婚約破棄を宣言され、聖女は自身の従者と目を合わせ、頷く。
では、と身を翻す聖女を訝しげに王太子は見つめた。
「…何故理由を聞かない」
※短編(勢い)
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
【完結】「神様、辞めました〜竜神の愛し子に冤罪を着せ投獄するような人間なんてもう知らない」
まほりろ
恋愛
王太子アビー・シュトースと聖女カーラ・ノルデン公爵令嬢の結婚式当日。二人が教会での誓いの儀式を終え、教会の扉を開け外に一歩踏み出したとき、国中の壁や窓に不吉な文字が浮かび上がった。
【本日付けで神を辞めることにした】
フラワーシャワーを巻き王太子と王太子妃の結婚を祝おうとしていた参列者は、突然現れた文字に驚きを隠せず固まっている。
国境に壁を築きモンスターの侵入を防ぎ、結界を張り国内にいるモンスターは弱体化させ、雨を降らせ大地を潤し、土地を豊かにし豊作をもたらし、人間の体を強化し、生活が便利になるように魔法の力を授けた、竜神ウィルペアトが消えた。
人々は三カ月前に冤罪を着せ、|罵詈雑言《ばりぞうごん》を浴びせ、石を投げつけ投獄した少女が、本物の【竜の愛し子】だと分かり|戦慄《せんりつ》した。
「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」
アルファポリスに先行投稿しています。
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
2021/12/13、HOTランキング3位、12/14総合ランキング4位、恋愛3位に入りました! ありがとうございます!
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→
AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」
ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。
お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。
しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。
そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。
お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる