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第182話 猫である必要は、ナイ ★リオ SIDE
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猫の姿で王妃様の元へ治療の為に向かうようになって1ヶ月が過ぎた頃。呪術師達は既に捕えられ、賢者の爺やとデュークによって元凶にも見当がつき、ソラとシルビーが証拠を集め、有無を言わさず捕える事が出来たと聞いたわ。
と言う事は……堂々と人の姿で治療に向かっても良いのでは?と、思っているのよね。タイミングを見て、王妃様に提案してみようと思っているのだけども。
「王妃様、ごきげんよう。本日もよろしくお願いします」
「リリィちゃん、ごきげんよう。さぁさぁ、こちらにいらっしゃい。今日も可愛らしい猫ちゃんの姿ねぇ。お膝にいらして?少しお茶してから始めましょうね。この後は仕事を入れないでってギルに頼んでおいたから、お茶くらい付き合ってくれるでしょう?」
首をコテンと倒しておねだりポーズを取る王妃様は、さすがカミルの御母堂様ね。私にノーと言えない雰囲気と可愛らしさを醸し出しているわ。
「はい、王妃様。是非ご一緒させてください」
「もぉ、リオちゃんったら。わたくしの事はオーリィと呼んでって言ったでしょう?」
先日お忍びでこの部屋を訪問されたリズのお母様とお話しなさった時、きっと話題に上ったのでしょうね……私に『ソフィー』夫人と愛称呼びさせていると言う事を。
「王妃様……流石にまだ王太子妃にすらなっていない私が王妃様を愛称で呼ぶというのは……」
「あら、その行為が何かあった時にリオちゃんを守ってくれるわよ?」
確かにそうかも知れませんが、それ以上に攻撃されそうですけども?とは流石に言えないので、遠回しに断らなければ駄目ね。
「私の周りは過保護な人間ばかりですからそこら辺は問題ありませんよ、王妃様。常時、影が数人ついて来てくれますし、専属の護衛騎士もおりますので」
「むぅー。じゃあ、お義母様で良いわ。ギルの事はお義父様と呼んでいるのだから、わたくしも呼んでくれるでしょう?」
口を尖らせて妥協案を出して来た王妃様は、もうすっかり体調も問題無さそうだ。痣はまだ残してあるけども、いつでも消す事が出来る。陛下とカミルがもう敵はいない、大丈夫だと太鼓判を押してからの発表になるみたいね。
「…………かしこまりました、お義母様」
「ふふっ、嬉しいわぁ。わたくし、娘がずっと欲しかったの。病気……では無くて呪いだったけれど、うつると言われていたでしょう?王であるギルにうつしてはいけないからと、2人目は諦めてしまったのよね」
パァッと表情を明るくして喜ぶお義母様は可愛らしい。2人目をお義父様のために諦めたお義母様の心が、痛いくらいに分かるけれど、お義母様は昔の事だと割り切ったみたいね。お義母様の娘として、公私共にしっかり頑張ろうと思うわ。
「そうだったのですね。その時点では賢明な判断だったのだと思います」
「ええ。わたくしも後悔はしていないわ。だけどね、リオちゃん。わたくし、女の子の赤ちゃんを抱きたいとずっと思っていたの。だからね?」
言わんとする事は良く分かるけども……順番があるでしょう?私はまだ、ただの婚約者でしかないのよ。
「えっと……あの、お義母様?私、まだ結婚もしていないのですから……」
「あら、2人とも真面目なのねぇ。そうね、先ずは結婚式を無事に終わらせるところからね。わたくしも出席出来る事になったし、ドレスも選ばなきゃだわ。リオちゃんのウエディングドレスはもう決まったの?」
ウエディングドレスは確かに決まったのだけど、私が選んだ数点の中から最終的に決める時、カミルと爺やと婆やと……影達まで出て来てあーだこーだと、皆んなが皆んな主張するから大変だったのよね。あれを思い出すと遠い目になってしまうわ。
「あ、はい。爺やの知り合いの宝石店で先に宝石を選んでから、ドレスを選んで欲しいと頼まれまして。随分と前にアクセサリーを作っていただいて、先月アクセサリーをつけた状態でドレスを選びに婆や達と赤い屋根のドレス屋さんで注文して来ました」
「あらまぁ、それは楽しみねぇ!姫様の見立てなら間違いないから安心ね。賢者様もそうなのだけど、とってもセンスが良いのよ、あのお2人は」
「え?お義母様も婆やをご存じで?」
「あら?知っていると不思議なのかしら?」
「あ、いえ……親族であるはずの皇帝陛下を含め、婆やの存在といいますか、生存している事すら知らない人が多かったので。そうですよね、王妃であるお義母様がご存じないはずがありませんよね」
「なるほどねぇ。リオちゃんって面白いわね。視線が独特というか……いえ、記憶力が良過ぎるのかしら。精霊と契約しているのも関係あるのかしらね?ふふっ、あのギルとカミルが気に入っただけはあるわよね」
「お義母様、その事なのですが……」
私は聞き辛いけれど、どうしても聞いておきたかった事をストレートにぶつける事にした。
「私がカミルの隣に立つ事に反対なさらないのですか?私は異世界から突然現れた人間ですし、貴族の方々にはかなり嫌われていると思うのですが……」
お義母様は「あぁ」と納得した顔をして、私の頭を再度撫でながら穏やかな口調で話しかけて来られた。
「リリィちゃん、これはオーリィの独り言なのだけど、猫ちゃんにしか聞かせられないの。自由な猫ちゃんの時間を奪ってしまって申し訳ないのだけど、ちょっと聞いていてね?」
お義母様は私を膝に乗せたまま、優しく撫でながら話し掛ける。私は猫として王妃様でもお義母様でも無い、オーリィの話しを聞いて欲しいと仰るお義母様を見上げて頷いた。
「私が閉じ込められる事となった経緯は、つい先日明らかになったから知っていると思うのだけど……40年前のあの年、カミルはわたくしを助けようと猛勉強を始めたわ。まだ子供の自分では、お母様を助けられないからと、自分に出来る事を探したのね」
お義母様は優しく微笑みながら、ゆっくりゆっくり私の背を撫でる。当時の事を思い出しているのだろう、懐かしそうな表情で話しを続けた。
「ただ、ギルが大荒れに荒れたのよ。うつるからとわたくしに会えなかった時間も長かったから……私を愛してくださるのは有難いし嬉しいのだけれど、ギルは国王。政治を疎かにしてはならないでしょう?わたくしから切り捨ててくださいと……その時も会えなかったから、ギルに宛てた手紙を書いた事があるのよ」
お義母様のお気持ちを考えると、居た堪れないわね。それなのに国と王の為に、とても辛い決断を自らなさるつもりだったなんて。本当に強くて素晴らしい人だわ。
「でもね、やっと面会出来る事になって、面会した時の事なのだけど……ギルがわたくしの目を見て、涙を流しながら言ったの。「オリビアが隣に立たないのであれば、王妃なんて要らない。俺が1人で王として存在するだけだ。君が産んでくれた息子は、俺では無く君に似てとても賢いからな。次世代の王も決まった様なものだ。何も心配する事は無いよ、オーリィ」って、言ってくれたの。だから安心して静養してくれと。俺が必ず治してみせるからって」
「素敵ですね。そこまで想いを伝えられたら、逃げられませんね。ふふふっ」
「ふふっ、そうなのよ。逃しては貰えなかったわ。わたくしが王妃になる時にも一悶着あったから……さすがにわたくしは貴族達に言われて切り離されるだろうと思っていたのにね」
貴族達に言われて?お義父様は最初から、お義母様しか見ていなかった様に聞こえたのだけど、違ったのかしらね?私が困っている事に気がついたのか、お義母様が詳しく説明してくださった。
「わたくしは元々伯爵家の出身で、王妃には相応しく無いからと、上位貴族達には煙たがられていたのよ。あの頃は、ギル以外の貴族が敵だと思っていたわ。それでもギルはわたくしを愛していると……王妃になるのはオリビアしか許さないと言ってくれたの」
あぁ、やっぱり最初から相思相愛だったのね。お義父がお義母様の話しをなさる時、どんな話しをするよりも嬉しそうに、幸せそうに話されるものね。
「これは王になる人間が言える最後の我が儘だと言っていたわね。オリビア自身に問題がある訳でも無いのに王妃になれないのはおかしいと。愛する者すら守れないのに、国の民を守れるはずが無いと……頑なに譲らなかったから、今でもわたくしが王妃なのですよ?ふふっ」
「そうなのですね……最後の我が儘……ですか」
「そうよ。カミルはね、性格は全くギルに似ていないのよ。どちらかと言えば私に似てるわね。だけど、根本にあるものは、カミルの方が似ていると思うの。カミルは生まれた瞬間から王位継承権第1位で、周りがほぼ敵だったわ。そんなだったから、カミルは自ら人に近づく事も、知っている人でさえ近づける事は、滅多に無かったのよ。デュークちゃん達や宰相ぐらいだったと思うわ」
そうらしいのよね。カミルって私の中ではフレンドリーなイメージがあるから未だに不思議なのだけど、野良猫みたいだったと表現する人が多いのよね。あら?カミルも擬態魔法を習えば猫になれるじゃ無い!今度、精霊界に行ったら習って貰いましょう。
「だからわたくしは心配していたのよ。小さな頃から人を信じてはならないと思わざるを得ない世界なのに、母親のわたくしは姿を見る事も叶わない。父親であるギルは国王で……そんなわたくしの心配を余所に、初めて2人がこの部屋を訪れた時があったでしょう?カミルとリオちゃんとの距離が、物理的にも精神的にも、とっても近くて驚いたわ。でも、とても嬉しかったの。カミルにも、わたくしのギルと同じ様に、大事な人が出来たのね、って……」
お義母様の顔を見上げると、とても幸せそうな笑顔で見つめられた。私をそっと抱き上げると腕に抱え、窓際へゆっくりと向かわれた。外を眺めるお義母様は出会った頃とは違ってとても楽しそうだった。会えない息子を40年間も心配していたのだから当然でしょうね。お義母の母性も愛情も、とても深いものだと分かるわ。
「だからね、リオちゃん。本当にありがとう。わたくしやギルは勿論、当の本人であるカミルも、貴女が家族になる事を心待ちにしているわ。心配する気持ちは分かるけど……あのね、カミルは昔から人を見る目が大人顔負けで凄かったのよ。王城には毎日、沢山の人が謁見に来る訳じゃない?5歳ぐらいの頃から、何を基準にしてるのか分からないのだけど、「あの人、変だよ」って宰相に教えてたの。宰相がそれを信じて調べると、カミルが「変だ」と言った者達は全員、何かしらの罪を犯していたの。そんなカミルが選んだ貴女を、わたくしもギルも疑うはずが無いのよ。そして、カミルに愛されてるリオちゃんは、わたくしと一緒で一生離してもらえないわよ?ふふふっ」
ふふふと穏やかに笑うお義母様は楽しそうね。私との結婚を望んでくれている事は確認出来たし、これで結婚式に向けて……あぁ、まだ指輪を渡して無かったわ。結婚式までには渡さなきゃって分かってるんだけどね。…………あ、お義母様に伝えるの忘れてたわ!
「お義母様、次回からリオの姿で伺いますね」
「えぇ――。そのモフモフをモフれないなんて……」
「撫でられた後に擬態を解くと、髪型とかドレスのシワとかが酷い事になるんです。戻ったと聞いたカミルが、凄いスピードで会いに来てくれるので、その……」
見られたく無いタイミングでも颯爽と現れるのよね、カミルって。そして、「そんな事無いよ。リオはいつでも可愛いから気にしなくて良いんだよ」なんて甘い言葉で私を口説くのよ……
「あぁ!そうね、それは由々しき事態ね!分かったわ。次回はリオちゃんで来てちょうだい。母娘の仲が良いと見せつけておくのも悪く無いものね?ふふふ」
穏やかに微笑むお義母様は、やはりカミルに似ているわね。何かを企んでいる顔までそっくりだわ……こう言う時に思うのよね、敵じゃなくて味方で良かったって。
と言う事は……堂々と人の姿で治療に向かっても良いのでは?と、思っているのよね。タイミングを見て、王妃様に提案してみようと思っているのだけども。
「王妃様、ごきげんよう。本日もよろしくお願いします」
「リリィちゃん、ごきげんよう。さぁさぁ、こちらにいらっしゃい。今日も可愛らしい猫ちゃんの姿ねぇ。お膝にいらして?少しお茶してから始めましょうね。この後は仕事を入れないでってギルに頼んでおいたから、お茶くらい付き合ってくれるでしょう?」
首をコテンと倒しておねだりポーズを取る王妃様は、さすがカミルの御母堂様ね。私にノーと言えない雰囲気と可愛らしさを醸し出しているわ。
「はい、王妃様。是非ご一緒させてください」
「もぉ、リオちゃんったら。わたくしの事はオーリィと呼んでって言ったでしょう?」
先日お忍びでこの部屋を訪問されたリズのお母様とお話しなさった時、きっと話題に上ったのでしょうね……私に『ソフィー』夫人と愛称呼びさせていると言う事を。
「王妃様……流石にまだ王太子妃にすらなっていない私が王妃様を愛称で呼ぶというのは……」
「あら、その行為が何かあった時にリオちゃんを守ってくれるわよ?」
確かにそうかも知れませんが、それ以上に攻撃されそうですけども?とは流石に言えないので、遠回しに断らなければ駄目ね。
「私の周りは過保護な人間ばかりですからそこら辺は問題ありませんよ、王妃様。常時、影が数人ついて来てくれますし、専属の護衛騎士もおりますので」
「むぅー。じゃあ、お義母様で良いわ。ギルの事はお義父様と呼んでいるのだから、わたくしも呼んでくれるでしょう?」
口を尖らせて妥協案を出して来た王妃様は、もうすっかり体調も問題無さそうだ。痣はまだ残してあるけども、いつでも消す事が出来る。陛下とカミルがもう敵はいない、大丈夫だと太鼓判を押してからの発表になるみたいね。
「…………かしこまりました、お義母様」
「ふふっ、嬉しいわぁ。わたくし、娘がずっと欲しかったの。病気……では無くて呪いだったけれど、うつると言われていたでしょう?王であるギルにうつしてはいけないからと、2人目は諦めてしまったのよね」
パァッと表情を明るくして喜ぶお義母様は可愛らしい。2人目をお義父様のために諦めたお義母様の心が、痛いくらいに分かるけれど、お義母様は昔の事だと割り切ったみたいね。お義母様の娘として、公私共にしっかり頑張ろうと思うわ。
「そうだったのですね。その時点では賢明な判断だったのだと思います」
「ええ。わたくしも後悔はしていないわ。だけどね、リオちゃん。わたくし、女の子の赤ちゃんを抱きたいとずっと思っていたの。だからね?」
言わんとする事は良く分かるけども……順番があるでしょう?私はまだ、ただの婚約者でしかないのよ。
「えっと……あの、お義母様?私、まだ結婚もしていないのですから……」
「あら、2人とも真面目なのねぇ。そうね、先ずは結婚式を無事に終わらせるところからね。わたくしも出席出来る事になったし、ドレスも選ばなきゃだわ。リオちゃんのウエディングドレスはもう決まったの?」
ウエディングドレスは確かに決まったのだけど、私が選んだ数点の中から最終的に決める時、カミルと爺やと婆やと……影達まで出て来てあーだこーだと、皆んなが皆んな主張するから大変だったのよね。あれを思い出すと遠い目になってしまうわ。
「あ、はい。爺やの知り合いの宝石店で先に宝石を選んでから、ドレスを選んで欲しいと頼まれまして。随分と前にアクセサリーを作っていただいて、先月アクセサリーをつけた状態でドレスを選びに婆や達と赤い屋根のドレス屋さんで注文して来ました」
「あらまぁ、それは楽しみねぇ!姫様の見立てなら間違いないから安心ね。賢者様もそうなのだけど、とってもセンスが良いのよ、あのお2人は」
「え?お義母様も婆やをご存じで?」
「あら?知っていると不思議なのかしら?」
「あ、いえ……親族であるはずの皇帝陛下を含め、婆やの存在といいますか、生存している事すら知らない人が多かったので。そうですよね、王妃であるお義母様がご存じないはずがありませんよね」
「なるほどねぇ。リオちゃんって面白いわね。視線が独特というか……いえ、記憶力が良過ぎるのかしら。精霊と契約しているのも関係あるのかしらね?ふふっ、あのギルとカミルが気に入っただけはあるわよね」
「お義母様、その事なのですが……」
私は聞き辛いけれど、どうしても聞いておきたかった事をストレートにぶつける事にした。
「私がカミルの隣に立つ事に反対なさらないのですか?私は異世界から突然現れた人間ですし、貴族の方々にはかなり嫌われていると思うのですが……」
お義母様は「あぁ」と納得した顔をして、私の頭を再度撫でながら穏やかな口調で話しかけて来られた。
「リリィちゃん、これはオーリィの独り言なのだけど、猫ちゃんにしか聞かせられないの。自由な猫ちゃんの時間を奪ってしまって申し訳ないのだけど、ちょっと聞いていてね?」
お義母様は私を膝に乗せたまま、優しく撫でながら話し掛ける。私は猫として王妃様でもお義母様でも無い、オーリィの話しを聞いて欲しいと仰るお義母様を見上げて頷いた。
「私が閉じ込められる事となった経緯は、つい先日明らかになったから知っていると思うのだけど……40年前のあの年、カミルはわたくしを助けようと猛勉強を始めたわ。まだ子供の自分では、お母様を助けられないからと、自分に出来る事を探したのね」
お義母様は優しく微笑みながら、ゆっくりゆっくり私の背を撫でる。当時の事を思い出しているのだろう、懐かしそうな表情で話しを続けた。
「ただ、ギルが大荒れに荒れたのよ。うつるからとわたくしに会えなかった時間も長かったから……私を愛してくださるのは有難いし嬉しいのだけれど、ギルは国王。政治を疎かにしてはならないでしょう?わたくしから切り捨ててくださいと……その時も会えなかったから、ギルに宛てた手紙を書いた事があるのよ」
お義母様のお気持ちを考えると、居た堪れないわね。それなのに国と王の為に、とても辛い決断を自らなさるつもりだったなんて。本当に強くて素晴らしい人だわ。
「でもね、やっと面会出来る事になって、面会した時の事なのだけど……ギルがわたくしの目を見て、涙を流しながら言ったの。「オリビアが隣に立たないのであれば、王妃なんて要らない。俺が1人で王として存在するだけだ。君が産んでくれた息子は、俺では無く君に似てとても賢いからな。次世代の王も決まった様なものだ。何も心配する事は無いよ、オーリィ」って、言ってくれたの。だから安心して静養してくれと。俺が必ず治してみせるからって」
「素敵ですね。そこまで想いを伝えられたら、逃げられませんね。ふふふっ」
「ふふっ、そうなのよ。逃しては貰えなかったわ。わたくしが王妃になる時にも一悶着あったから……さすがにわたくしは貴族達に言われて切り離されるだろうと思っていたのにね」
貴族達に言われて?お義父様は最初から、お義母様しか見ていなかった様に聞こえたのだけど、違ったのかしらね?私が困っている事に気がついたのか、お義母様が詳しく説明してくださった。
「わたくしは元々伯爵家の出身で、王妃には相応しく無いからと、上位貴族達には煙たがられていたのよ。あの頃は、ギル以外の貴族が敵だと思っていたわ。それでもギルはわたくしを愛していると……王妃になるのはオリビアしか許さないと言ってくれたの」
あぁ、やっぱり最初から相思相愛だったのね。お義父がお義母様の話しをなさる時、どんな話しをするよりも嬉しそうに、幸せそうに話されるものね。
「これは王になる人間が言える最後の我が儘だと言っていたわね。オリビア自身に問題がある訳でも無いのに王妃になれないのはおかしいと。愛する者すら守れないのに、国の民を守れるはずが無いと……頑なに譲らなかったから、今でもわたくしが王妃なのですよ?ふふっ」
「そうなのですね……最後の我が儘……ですか」
「そうよ。カミルはね、性格は全くギルに似ていないのよ。どちらかと言えば私に似てるわね。だけど、根本にあるものは、カミルの方が似ていると思うの。カミルは生まれた瞬間から王位継承権第1位で、周りがほぼ敵だったわ。そんなだったから、カミルは自ら人に近づく事も、知っている人でさえ近づける事は、滅多に無かったのよ。デュークちゃん達や宰相ぐらいだったと思うわ」
そうらしいのよね。カミルって私の中ではフレンドリーなイメージがあるから未だに不思議なのだけど、野良猫みたいだったと表現する人が多いのよね。あら?カミルも擬態魔法を習えば猫になれるじゃ無い!今度、精霊界に行ったら習って貰いましょう。
「だからわたくしは心配していたのよ。小さな頃から人を信じてはならないと思わざるを得ない世界なのに、母親のわたくしは姿を見る事も叶わない。父親であるギルは国王で……そんなわたくしの心配を余所に、初めて2人がこの部屋を訪れた時があったでしょう?カミルとリオちゃんとの距離が、物理的にも精神的にも、とっても近くて驚いたわ。でも、とても嬉しかったの。カミルにも、わたくしのギルと同じ様に、大事な人が出来たのね、って……」
お義母様の顔を見上げると、とても幸せそうな笑顔で見つめられた。私をそっと抱き上げると腕に抱え、窓際へゆっくりと向かわれた。外を眺めるお義母様は出会った頃とは違ってとても楽しそうだった。会えない息子を40年間も心配していたのだから当然でしょうね。お義母の母性も愛情も、とても深いものだと分かるわ。
「だからね、リオちゃん。本当にありがとう。わたくしやギルは勿論、当の本人であるカミルも、貴女が家族になる事を心待ちにしているわ。心配する気持ちは分かるけど……あのね、カミルは昔から人を見る目が大人顔負けで凄かったのよ。王城には毎日、沢山の人が謁見に来る訳じゃない?5歳ぐらいの頃から、何を基準にしてるのか分からないのだけど、「あの人、変だよ」って宰相に教えてたの。宰相がそれを信じて調べると、カミルが「変だ」と言った者達は全員、何かしらの罪を犯していたの。そんなカミルが選んだ貴女を、わたくしもギルも疑うはずが無いのよ。そして、カミルに愛されてるリオちゃんは、わたくしと一緒で一生離してもらえないわよ?ふふふっ」
ふふふと穏やかに笑うお義母様は楽しそうね。私との結婚を望んでくれている事は確認出来たし、これで結婚式に向けて……あぁ、まだ指輪を渡して無かったわ。結婚式までには渡さなきゃって分かってるんだけどね。…………あ、お義母様に伝えるの忘れてたわ!
「お義母様、次回からリオの姿で伺いますね」
「えぇ――。そのモフモフをモフれないなんて……」
「撫でられた後に擬態を解くと、髪型とかドレスのシワとかが酷い事になるんです。戻ったと聞いたカミルが、凄いスピードで会いに来てくれるので、その……」
見られたく無いタイミングでも颯爽と現れるのよね、カミルって。そして、「そんな事無いよ。リオはいつでも可愛いから気にしなくて良いんだよ」なんて甘い言葉で私を口説くのよ……
「あぁ!そうね、それは由々しき事態ね!分かったわ。次回はリオちゃんで来てちょうだい。母娘の仲が良いと見せつけておくのも悪く無いものね?ふふふ」
穏やかに微笑むお義母様は、やはりカミルに似ているわね。何かを企んでいる顔までそっくりだわ……こう言う時に思うのよね、敵じゃなくて味方で良かったって。
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