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夏休み後編
第81話 - 人魚姫 vs 人間潜水艇
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百道浜での爆発騒ぎから避難してきた人々は、警備の指示に従って一時的にホテルオーキのロビーで待機している。本格的にオープンする前とあって医療班の人数や器具が足りない中、芽衣は自身の超能力で奮闘する。
彼女の超能力"お得な総合施設ホテル"は最大5階建ての建物を生成する物質生成型超能力である。
各階ごとに役割が異なり、これらは彼女が超能力を使用する際に現れるステッキが描く紋様によって部屋単位・フロア単位で呼び出す事が可能である。各階30部屋ずつ用意されているが、サイクスを消費する事で部屋を更に追加することが出来る。
"お得な総合施設ホテル"の3階は医療施設となっており、予め医療器具を用意し、医療アンドロイドを待機させている。また、1階は拘置所施設となっており、警備が捕らえた近藤組の部下たちを拘留している。
そして気まぐれに近藤組を制圧しつつ状況を静観する人物がいた。
「仁さん、みずの所へ行って助けてやらんくて良いんですかい?」
車から出てきた吉塚伊代は夫である仁に穏やかな口調で尋ねる。仁は百道浜駐車場で車を停め、ホテルオーキと百道浜の両方を屋上階から眺めていた。百道浜駐車場は自走式立体駐車場で正面には美しい海が広がる百道浜、その右方向にはホテルオーキがそびえ立つ。
「フム……。側で見といてやるが大丈夫だろう。それよりも……」
目の上にかざしていた手を外し、鋭い眼差しで背後を警戒する。
「(この2つのサイクス。相当な手練れ。ワシの"第六感"に気付いて上手く避けよる。居場所を特定出来ん)」
2人の元にホテルオーキからの迎えがやって来る。
「漸く来たか。家内を頼む。ワシは少し離れる」
「お気を付けて」
伊代の言葉に仁は軽く頷くと『トンッ』という軽い音と共に上空へ跳躍して姿を消す。
「(何が狙いか分からんがワシが抑えておかねばな……)」
#####
近藤は海中で動きを止める。
「(仕掛けといた機雷が反応しなくなったな。諦めたか?)」
太陽の光が差し込み、海中は蒼く輝いて神秘的な雰囲気を醸し出す。数種類の魚の群れが近藤の目の前を横切りその様子をしばらく眺めた後に近藤は考え直す。
「(いや、そもそも結構な深さにしか仕掛けとらん。あそこまで辿り着いている時点で水中に関する超能力者がおるな。捕獲魚雷に何もかかってない事を考えるに避けられとる)」
近藤が動きを止めているのを見て萌は"空想世界"内の全員に告げる。
「この人、今止まってるよ! 追いつくチャンスかも!」
萌は更に近藤の行動を思い返して付け加える。
「それと定期的に海水を飲んでる。何かの条件なのかも」
言葉を言い終えるか終わらないかのうちに萌と近藤は同時に周りにいる魚の群れとは違う、もっと大きな影を視界の端に捉える。その影は目で追う事が出来ない程のスピードで2人の周りを泳ぎ、渦を作り出す。
––––"大渦巻"!!
渦の回転は徐々に加速し、2人はそのまま流される。黒い影は一直線に萌の元へと向かい近藤の手から萌を奪う。
「結衣ちゃん!」
結衣は萌を捕獲するカプセル形状の水をしっかりと抱きかかえながらニコッと笑う。近藤は軽く舌打ちすると口を大きく開けて海水を飲み込み、燃料を補給。力強く海水を蹴り、渦から脱出する。
近藤が渦から出ると目の前には先の鋭く尖った小さな渦が無数に広がる。
––––"渦槍"
結衣は尾ひれを勢いよく振り、渦の槍を近藤に向けて放つ。近藤が向かって来る数多の渦の槍を躱している様子を少し離れた位置から結衣は眺め、尾ひれにサイクスを溜める。
––––"大海震波"!!!
サイクスを込めた尾ひれで力強く海水を振り、そこから巨大な波が近藤へと襲いかかる。
「(マジかいな!)」
近藤は渦の槍を避けながら迫りくる大波に焦りを見せる。もう一度海水を大量に飲み込み、サイクスを大量にまとって渦を受けつつ両手を広げていくつかの魚雷を発射する。
「逃がすか!!!」
大波が近藤に直撃する。
結衣は"大海震波"を発動した後、既にその場から離脱している。大技の連発にまだ未熟なサイクスのフローが祟って体力を大幅に消費し、体力が限界に近付く。それでも結衣は全速力で陸地へと向かう。
近藤の機雷は仕掛けられるとその場に留まる事なく、海の流れに身を任せて漂う。
萌を連れ去った後に蛇行しながら仕掛けた機雷はその後、海中に広がり、最短距離で戻る結衣の眼前にも機雷群が広がる。
「ハァ、ハァ……」
息切れしながら泳ぐ結衣を萌は心配そうに見つめる。
「私がレンズっていうのやってみるよ。結衣ちゃんは泳ぎに集中して!」
萌は結衣に無駄なサイクスと体力を使わせないように目にサイクスを集中させてレンズを試みる。
「その先からあの人のサイクスが沢山見える! 私が指示するから頑張って避けて!」
結衣は萌の言葉を聞いて「ありがとう」と小さく言うと、尾ひれに更にサイクスを集中させて全力で泳ぐ。
––––ゴボボ……
「(ナメやがって、クソガキが)」
近藤は衝撃魚雷を自分の正面に対して大量に放出して起動、"大海震波"の衝撃を相殺する。その衝撃は海底にまで到達し、それによって砂利がうねりを打って磨き上げた青銅のような色をした海を汚す。
近藤の身体刺激型サイクスが海中を深紅に照らす。その輝きはルビーのような美しさと血痕のような残酷さを内包する。
魚雷を結衣が泳ぎ去った方向へと最大速度で発射し、自身も海水を大量に飲んで衝撃によって負った身体のダメージを回復しつつ追跡する。
結衣は機雷が数多く仕掛けられている中をなるべくサイクスの消費を抑えつつ避けて通る。遊泳速度は落ちており近藤は確実に距離を詰める。
背後からの衝撃魚雷に萌が気付き、結衣はギリギリで躱したもののその魚雷は機雷に命中し、誘爆が起きる。
「結衣ちゃん、萌ちゃん、まだ男の姿は見えてないよね?」
"空想世界"内で瑞希が尋ねる。
「うん、まだ見えてないよ」
瑞希は中本の残留サイクスを正確に追って綾子と和人を先導しつつ魚雷の正確さに疑問を抱く。
「どうしてそんなに正確に結衣ちゃんたちに魚雷が届いたの?」
近藤は1人の少女に計画を狂わされた事に対する苛立ちとは裏腹に頭は至って冷静だった。
「(俺は地上で探知系の機雷や魚雷を使っていない)」
結衣の"大海震波"が衝突する直前、衝撃魚雷と共に探知魚雷をいくつか発射。近藤の衝撃魚雷に追尾能力は備わっていない。しかし、彼が仕掛けた機雷に向かわせる事が可能である。
「(あのガキ、友達を取り返して俺を足止めするのに精一杯やったな。あんなサイクスの残量じゃあ直線で帰るしかないやろ?)」
直線上にある機雷に向けて衝撃魚雷を発射し、誘爆を引き起こして足止めする。
「(追いつかれちゃう! 何か……何か……!)」
結衣は咄嗟にいくつかの小さな渦を作り出してその陰に隠れる。
衝撃の連鎖が探知魚雷を匿う。結衣がその場を離れようとした瞬間、近藤の姿が現れる。結衣は萌をギュッと力を入れて抱きかかえると残りの力を振り絞って近藤を振り切ろうとする。
––––ゴボッッ!!
萌を捕らえていた捕獲魚雷が解除される。
近藤は悪意に満ちた笑みを浮かべた。
彼女の超能力"お得な総合施設ホテル"は最大5階建ての建物を生成する物質生成型超能力である。
各階ごとに役割が異なり、これらは彼女が超能力を使用する際に現れるステッキが描く紋様によって部屋単位・フロア単位で呼び出す事が可能である。各階30部屋ずつ用意されているが、サイクスを消費する事で部屋を更に追加することが出来る。
"お得な総合施設ホテル"の3階は医療施設となっており、予め医療器具を用意し、医療アンドロイドを待機させている。また、1階は拘置所施設となっており、警備が捕らえた近藤組の部下たちを拘留している。
そして気まぐれに近藤組を制圧しつつ状況を静観する人物がいた。
「仁さん、みずの所へ行って助けてやらんくて良いんですかい?」
車から出てきた吉塚伊代は夫である仁に穏やかな口調で尋ねる。仁は百道浜駐車場で車を停め、ホテルオーキと百道浜の両方を屋上階から眺めていた。百道浜駐車場は自走式立体駐車場で正面には美しい海が広がる百道浜、その右方向にはホテルオーキがそびえ立つ。
「フム……。側で見といてやるが大丈夫だろう。それよりも……」
目の上にかざしていた手を外し、鋭い眼差しで背後を警戒する。
「(この2つのサイクス。相当な手練れ。ワシの"第六感"に気付いて上手く避けよる。居場所を特定出来ん)」
2人の元にホテルオーキからの迎えがやって来る。
「漸く来たか。家内を頼む。ワシは少し離れる」
「お気を付けて」
伊代の言葉に仁は軽く頷くと『トンッ』という軽い音と共に上空へ跳躍して姿を消す。
「(何が狙いか分からんがワシが抑えておかねばな……)」
#####
近藤は海中で動きを止める。
「(仕掛けといた機雷が反応しなくなったな。諦めたか?)」
太陽の光が差し込み、海中は蒼く輝いて神秘的な雰囲気を醸し出す。数種類の魚の群れが近藤の目の前を横切りその様子をしばらく眺めた後に近藤は考え直す。
「(いや、そもそも結構な深さにしか仕掛けとらん。あそこまで辿り着いている時点で水中に関する超能力者がおるな。捕獲魚雷に何もかかってない事を考えるに避けられとる)」
近藤が動きを止めているのを見て萌は"空想世界"内の全員に告げる。
「この人、今止まってるよ! 追いつくチャンスかも!」
萌は更に近藤の行動を思い返して付け加える。
「それと定期的に海水を飲んでる。何かの条件なのかも」
言葉を言い終えるか終わらないかのうちに萌と近藤は同時に周りにいる魚の群れとは違う、もっと大きな影を視界の端に捉える。その影は目で追う事が出来ない程のスピードで2人の周りを泳ぎ、渦を作り出す。
––––"大渦巻"!!
渦の回転は徐々に加速し、2人はそのまま流される。黒い影は一直線に萌の元へと向かい近藤の手から萌を奪う。
「結衣ちゃん!」
結衣は萌を捕獲するカプセル形状の水をしっかりと抱きかかえながらニコッと笑う。近藤は軽く舌打ちすると口を大きく開けて海水を飲み込み、燃料を補給。力強く海水を蹴り、渦から脱出する。
近藤が渦から出ると目の前には先の鋭く尖った小さな渦が無数に広がる。
––––"渦槍"
結衣は尾ひれを勢いよく振り、渦の槍を近藤に向けて放つ。近藤が向かって来る数多の渦の槍を躱している様子を少し離れた位置から結衣は眺め、尾ひれにサイクスを溜める。
––––"大海震波"!!!
サイクスを込めた尾ひれで力強く海水を振り、そこから巨大な波が近藤へと襲いかかる。
「(マジかいな!)」
近藤は渦の槍を避けながら迫りくる大波に焦りを見せる。もう一度海水を大量に飲み込み、サイクスを大量にまとって渦を受けつつ両手を広げていくつかの魚雷を発射する。
「逃がすか!!!」
大波が近藤に直撃する。
結衣は"大海震波"を発動した後、既にその場から離脱している。大技の連発にまだ未熟なサイクスのフローが祟って体力を大幅に消費し、体力が限界に近付く。それでも結衣は全速力で陸地へと向かう。
近藤の機雷は仕掛けられるとその場に留まる事なく、海の流れに身を任せて漂う。
萌を連れ去った後に蛇行しながら仕掛けた機雷はその後、海中に広がり、最短距離で戻る結衣の眼前にも機雷群が広がる。
「ハァ、ハァ……」
息切れしながら泳ぐ結衣を萌は心配そうに見つめる。
「私がレンズっていうのやってみるよ。結衣ちゃんは泳ぎに集中して!」
萌は結衣に無駄なサイクスと体力を使わせないように目にサイクスを集中させてレンズを試みる。
「その先からあの人のサイクスが沢山見える! 私が指示するから頑張って避けて!」
結衣は萌の言葉を聞いて「ありがとう」と小さく言うと、尾ひれに更にサイクスを集中させて全力で泳ぐ。
––––ゴボボ……
「(ナメやがって、クソガキが)」
近藤は衝撃魚雷を自分の正面に対して大量に放出して起動、"大海震波"の衝撃を相殺する。その衝撃は海底にまで到達し、それによって砂利がうねりを打って磨き上げた青銅のような色をした海を汚す。
近藤の身体刺激型サイクスが海中を深紅に照らす。その輝きはルビーのような美しさと血痕のような残酷さを内包する。
魚雷を結衣が泳ぎ去った方向へと最大速度で発射し、自身も海水を大量に飲んで衝撃によって負った身体のダメージを回復しつつ追跡する。
結衣は機雷が数多く仕掛けられている中をなるべくサイクスの消費を抑えつつ避けて通る。遊泳速度は落ちており近藤は確実に距離を詰める。
背後からの衝撃魚雷に萌が気付き、結衣はギリギリで躱したもののその魚雷は機雷に命中し、誘爆が起きる。
「結衣ちゃん、萌ちゃん、まだ男の姿は見えてないよね?」
"空想世界"内で瑞希が尋ねる。
「うん、まだ見えてないよ」
瑞希は中本の残留サイクスを正確に追って綾子と和人を先導しつつ魚雷の正確さに疑問を抱く。
「どうしてそんなに正確に結衣ちゃんたちに魚雷が届いたの?」
近藤は1人の少女に計画を狂わされた事に対する苛立ちとは裏腹に頭は至って冷静だった。
「(俺は地上で探知系の機雷や魚雷を使っていない)」
結衣の"大海震波"が衝突する直前、衝撃魚雷と共に探知魚雷をいくつか発射。近藤の衝撃魚雷に追尾能力は備わっていない。しかし、彼が仕掛けた機雷に向かわせる事が可能である。
「(あのガキ、友達を取り返して俺を足止めするのに精一杯やったな。あんなサイクスの残量じゃあ直線で帰るしかないやろ?)」
直線上にある機雷に向けて衝撃魚雷を発射し、誘爆を引き起こして足止めする。
「(追いつかれちゃう! 何か……何か……!)」
結衣は咄嗟にいくつかの小さな渦を作り出してその陰に隠れる。
衝撃の連鎖が探知魚雷を匿う。結衣がその場を離れようとした瞬間、近藤の姿が現れる。結衣は萌をギュッと力を入れて抱きかかえると残りの力を振り絞って近藤を振り切ろうとする。
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