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夏休み後編
第82話 - 海の殺し屋
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「(息が……!!)」
捕獲魚雷を解除されたことで萌を捕らえていた、サイクスが込められたカプセル状の特殊な海水が消失し、呼吸が出来なくなる。萌は咄嗟に目をつぶり、顔を膨らませて両手で口を抑える。
「(まずい、萌ちゃんが……!! このまま萌ちゃんを連れて全速で浮上して間に合う!?)」
結衣は予想外の展開に冷静さを失い、それによってサイクスに不安定さが生じる。
「(くくく……。こんな所で捕獲魚雷を解かれると焦るやろ? 更にここは水深70m付近。水圧が身体を襲うやろ? 捕まっていた方が安全とは皮肉やんな)」
近藤は結衣と萌の元へ向かいながら邪悪に笑う。
2人のいる場所は水深約70m付近。水圧は水深10mごとに1気圧増加し、大気圧1気圧と合計して8気圧、つまり萌の身体には8kgの負担がかかる。
近藤は捕獲魚雷を撃ち放ちつつ結衣と萌のすぐ側まで近付く。
「(終わりやね)」
萌は意識が朦朧とする中、微かに声を聞いた。
––––今、助けに行くよ!
赤いサイクスの光と共に複数の影が近藤を囲む。
「(何や!?)」
その黒い影の正体はイルカとシャチの群れである。一筋の赤いサイクスが結衣と萌の元へ向かう。
––––そのシャチのおじさんに掴まって
昨夜に萌と志乃が見つけたサイクスを持つ子イルカが萌に話しかける。サイクスを纏ったシャチが2人の元へと近寄り、結衣は萌を抱きかかえながらシャチの背びれに掴まる。
「(キューちゃん……)」
シャチは水中で最も速く泳ぐ哺乳類でその最高速度は時速80kmにも達する。更にギフテッドであるこのシャチはより速く泳ぐことが可能である。
「(このまま……! お願い!)」
結衣もすがるような思いでシャチに掴まり、海上へと向かう。
「(何や!? こいつら)」
近藤は自身を囲むシャチとイルカの群れに驚くものの、直ぐに海水を摂取して両手を広げて魚雷を生成する。しかし、シャチのギフテッド2匹がそれらを発射する隙を与えずにサイクスを纏った突進で近藤に襲いかかる。
シャチはその高い知性から水族館でのショーの花形として知られる一方で、海の殺し屋とも呼ばれる。体長6m弱に体重は平均4–5tでその巨体と似合わない程のスピードでの突進や咬合力に知性が加わることで海中最強と名高い。更にサイクスを纏ったシャチによる攻撃と連携には近藤も苦戦を強いられる。
「(流石にキツいやんな……)」
近藤は群れから逃れる為に一度深く潜水する。そうはさせまいとシャチの群れは近藤を追う。近藤は機雷を仕掛けていた地点へと群れを誘導し、起爆させる。そこで時間を作ったことで魚雷の生成と発射の時間を得る。
「(シャチのギフテッドは是非捕まえたいんやけど、群れだと流石にキツいな……。本気で殺しにかからんと俺もやばい)」
近藤はこれまで生け捕りを最優先に考えていた為に爆撃魚雷を使用してこなかったが、数的不利な状況と相手がシャチである事を考慮して爆撃魚雷と爆撃機雷を用意する。それらは込められたサイクスの量によっては致命傷になる程の威力である。
シャチのギフテッドの遊泳速度は異常に速く、見失わない為に探索魚雷をシャチのギフテッド2匹に設定。常に居場所を把握し、不意打ちに遭わないように対策を施す。
「(もう手加減せんからな。本気を見せちゃーよ)」
近藤はある種危機的な状況であってもそれを寧ろ楽しんでおり、大胆にも正面からシャチの群れを迎え撃つ。
魚雷の爆発に数匹が巻き込まれる。1匹のギフテッドが爆発によって生じた衝撃や煙の背後から隙を突いて突進を繰り出す。それを回避するともう1匹のギフテッドも襲いかかる。近藤は目の前で衝撃魚雷を起動し、吹き飛ばす。
サイクスを持たないシャチも次々と近藤に襲いかかり、近藤もサイクスを身体中に強く纏いながら受け身を取りつつ致命傷を回避する。仕掛けた機雷を次々と起爆しながら近藤は動き回る。
「(奴らは!?)」
突如としてシャチの群れが消える。
––––ゴオオオォォ……
近藤のいる位置よりも更に奥深く、暗い海底から巨大な轟音が鳴り響く。
「マジか……」
赤いサイクスを纏った巨大なマッコウクジラが口を大きく開き、まるでブラックホールの如く海水ごと吸い込みながら深海より現れる。近藤はそこから逃れようとする。
––––が、近藤はそのまま闇に飲まれる。
#####
「ぷはっ!」
結衣と萌は既に海上に辿り着き、萌はようやく酸素を取り込む。海深くに身体を晒された影響で15歳の少女には大きな負担がかかっていた。
陸からはまだ少し離れた位置におり、萌は「キューちゃん」と呼んでいる子イルカに、サイクスの残量も体力も残り僅かとなった結衣はシャチのギフテッドに掴まり、遠目に見えるコンクリートの陸地へと向かう。
––––キューちゃんありがとう。どうやって分かったの?
萌は子イルカに話しかける。
––––何だか騒がしい事は気付いていたんだ。ここからは少し離れちゃったけど君と昨日会った場所で何かが起こっているのは友達から聞いていたんだけど
萌はぐったりしながらも子イルカの背びれにしっかりと掴まっている。
––––その時に海深くですごい波が起こって……。仲間たちとシャチのおじさんたちとで様子を見に行ってたんだ。そしたら君の声が聞こえたんだよ。
捕獲魚雷を解除した事で萌に大きな負担がのしかかったが、それと同時に萌の正確な位置をイルカとシャチの群れは特定し、萌と結衣を救助、更に近藤を襲撃する事に成功したのだ。
萌は嬉しそうにニッコリと笑い、子イルカの背中にギュッと抱きつき「ありがとう」と小さく呟いた。
#####
陸に近付くにつれて萌の頭上に眼球が現れたことに2人と2匹は気付いていない。
近藤は萌を捕らえて海中へと逃走し、深く潜ると同時に遠回りに拠点へと向かっていた。その為、萌たちが海上に顔を出した時、既に百道浜からは離れた地点にいた。眼前に見えるコンクリートの陸地は福岡県第2地区5番街第1セクター23『百道コンテナターミナル』。
近藤組の拠点である。
捕獲魚雷を解除されたことで萌を捕らえていた、サイクスが込められたカプセル状の特殊な海水が消失し、呼吸が出来なくなる。萌は咄嗟に目をつぶり、顔を膨らませて両手で口を抑える。
「(まずい、萌ちゃんが……!! このまま萌ちゃんを連れて全速で浮上して間に合う!?)」
結衣は予想外の展開に冷静さを失い、それによってサイクスに不安定さが生じる。
「(くくく……。こんな所で捕獲魚雷を解かれると焦るやろ? 更にここは水深70m付近。水圧が身体を襲うやろ? 捕まっていた方が安全とは皮肉やんな)」
近藤は結衣と萌の元へ向かいながら邪悪に笑う。
2人のいる場所は水深約70m付近。水圧は水深10mごとに1気圧増加し、大気圧1気圧と合計して8気圧、つまり萌の身体には8kgの負担がかかる。
近藤は捕獲魚雷を撃ち放ちつつ結衣と萌のすぐ側まで近付く。
「(終わりやね)」
萌は意識が朦朧とする中、微かに声を聞いた。
––––今、助けに行くよ!
赤いサイクスの光と共に複数の影が近藤を囲む。
「(何や!?)」
その黒い影の正体はイルカとシャチの群れである。一筋の赤いサイクスが結衣と萌の元へ向かう。
––––そのシャチのおじさんに掴まって
昨夜に萌と志乃が見つけたサイクスを持つ子イルカが萌に話しかける。サイクスを纏ったシャチが2人の元へと近寄り、結衣は萌を抱きかかえながらシャチの背びれに掴まる。
「(キューちゃん……)」
シャチは水中で最も速く泳ぐ哺乳類でその最高速度は時速80kmにも達する。更にギフテッドであるこのシャチはより速く泳ぐことが可能である。
「(このまま……! お願い!)」
結衣もすがるような思いでシャチに掴まり、海上へと向かう。
「(何や!? こいつら)」
近藤は自身を囲むシャチとイルカの群れに驚くものの、直ぐに海水を摂取して両手を広げて魚雷を生成する。しかし、シャチのギフテッド2匹がそれらを発射する隙を与えずにサイクスを纏った突進で近藤に襲いかかる。
シャチはその高い知性から水族館でのショーの花形として知られる一方で、海の殺し屋とも呼ばれる。体長6m弱に体重は平均4–5tでその巨体と似合わない程のスピードでの突進や咬合力に知性が加わることで海中最強と名高い。更にサイクスを纏ったシャチによる攻撃と連携には近藤も苦戦を強いられる。
「(流石にキツいやんな……)」
近藤は群れから逃れる為に一度深く潜水する。そうはさせまいとシャチの群れは近藤を追う。近藤は機雷を仕掛けていた地点へと群れを誘導し、起爆させる。そこで時間を作ったことで魚雷の生成と発射の時間を得る。
「(シャチのギフテッドは是非捕まえたいんやけど、群れだと流石にキツいな……。本気で殺しにかからんと俺もやばい)」
近藤はこれまで生け捕りを最優先に考えていた為に爆撃魚雷を使用してこなかったが、数的不利な状況と相手がシャチである事を考慮して爆撃魚雷と爆撃機雷を用意する。それらは込められたサイクスの量によっては致命傷になる程の威力である。
シャチのギフテッドの遊泳速度は異常に速く、見失わない為に探索魚雷をシャチのギフテッド2匹に設定。常に居場所を把握し、不意打ちに遭わないように対策を施す。
「(もう手加減せんからな。本気を見せちゃーよ)」
近藤はある種危機的な状況であってもそれを寧ろ楽しんでおり、大胆にも正面からシャチの群れを迎え撃つ。
魚雷の爆発に数匹が巻き込まれる。1匹のギフテッドが爆発によって生じた衝撃や煙の背後から隙を突いて突進を繰り出す。それを回避するともう1匹のギフテッドも襲いかかる。近藤は目の前で衝撃魚雷を起動し、吹き飛ばす。
サイクスを持たないシャチも次々と近藤に襲いかかり、近藤もサイクスを身体中に強く纏いながら受け身を取りつつ致命傷を回避する。仕掛けた機雷を次々と起爆しながら近藤は動き回る。
「(奴らは!?)」
突如としてシャチの群れが消える。
––––ゴオオオォォ……
近藤のいる位置よりも更に奥深く、暗い海底から巨大な轟音が鳴り響く。
「マジか……」
赤いサイクスを纏った巨大なマッコウクジラが口を大きく開き、まるでブラックホールの如く海水ごと吸い込みながら深海より現れる。近藤はそこから逃れようとする。
––––が、近藤はそのまま闇に飲まれる。
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「ぷはっ!」
結衣と萌は既に海上に辿り着き、萌はようやく酸素を取り込む。海深くに身体を晒された影響で15歳の少女には大きな負担がかかっていた。
陸からはまだ少し離れた位置におり、萌は「キューちゃん」と呼んでいる子イルカに、サイクスの残量も体力も残り僅かとなった結衣はシャチのギフテッドに掴まり、遠目に見えるコンクリートの陸地へと向かう。
––––キューちゃんありがとう。どうやって分かったの?
萌は子イルカに話しかける。
––––何だか騒がしい事は気付いていたんだ。ここからは少し離れちゃったけど君と昨日会った場所で何かが起こっているのは友達から聞いていたんだけど
萌はぐったりしながらも子イルカの背びれにしっかりと掴まっている。
––––その時に海深くですごい波が起こって……。仲間たちとシャチのおじさんたちとで様子を見に行ってたんだ。そしたら君の声が聞こえたんだよ。
捕獲魚雷を解除した事で萌に大きな負担がのしかかったが、それと同時に萌の正確な位置をイルカとシャチの群れは特定し、萌と結衣を救助、更に近藤を襲撃する事に成功したのだ。
萌は嬉しそうにニッコリと笑い、子イルカの背中にギュッと抱きつき「ありがとう」と小さく呟いた。
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陸に近付くにつれて萌の頭上に眼球が現れたことに2人と2匹は気付いていない。
近藤は萌を捕らえて海中へと逃走し、深く潜ると同時に遠回りに拠点へと向かっていた。その為、萌たちが海上に顔を出した時、既に百道浜からは離れた地点にいた。眼前に見えるコンクリートの陸地は福岡県第2地区5番街第1セクター23『百道コンテナターミナル』。
近藤組の拠点である。
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