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幕間 令嬢達の秘密会議
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ここはモリス侯爵家の客間の一つ。
秘密裏に進撃して来たアバディ公爵令嬢シルヴィーと、モリス侯爵令嬢ユリアナが誰も居ない室内で顔を寄せ合ってヒソヒソと秘密会議を行っていた。
「ユリアナ様っ、お聞きになられまして?隣国の王女がエゼキエル様に会いに押しかけて来ると言うではありませんのっ!呼ばれてもいないのになんて図々しいっ」
「そのエゼキエル陛下に会いに毎日王宮に進撃していた貴女が言うのかとツッコミたいところですけれど、この際それは置いておいて……元々正妃の筆頭候補者であった王女自らやって来るとは、嫌な予感しかしませんわね。今更何しに来るのかしら……」
「今さらとは?」
「……これはね、宰相であるウチのお父様から聞いた話なのですが、前国王陛下が崩御されて直ぐに、当国は隣国へ件の第三王女へ婚姻の申し入れをしたそうなの。エゼキエル陛下の即位を押し進める為の決め手としたかったのね。でも当時はホラ、シルヴィー様のお父様の派閥とで国内の情勢が不安定でしたでしょう?王女を嫁がせてもエゼキエル陛下が即位できる保証はないと足元を見られて断られたんですって。それで急遽アンリエッタ様が選ばれたそうなのよ」
それを聞き、シルヴィーはその要因となった自身の父親の事を棚に上げてぷんすこした。
「まぁ!幼いエゼキエル様を守ろうとせずに頼りないからと縁談を断ったのですかっ?なんてヒドイっ!」
「……まぁこの際置いといてパート2。一度は突っぱねた縁談なのに、エゼキエル陛下が美形で高魔力保持者で優秀と聞き付けて、隣国の王家がそれならばと態度をコロっと変えたそうよ。特に陛下の姿絵を見た第三王女がかなり乗り気らしくって、押せ押せで縁談を進めようとしているみたい」
「なんて厚かましいっ!」
「本当はデビュタント時くらいからあちらの大使を通して何度も縁談の打診を受けていたらしいんだけど、当の陛下にその気はないしウチのお父様ものらりくらりと躱していたそうなの」
「それでとうとう痺れを切らして直接乗り込んで来ますのねっ!そんな恥知らずな王女は返り討ちにしてくれますわっ!絶対に歓迎なんてするものですかっ!」
シルヴィーが子リスのようにキーキーとぷんすこするも、それを尻目にユリアナが困った表情を浮かべた。
「でもね……今その王女を出迎える準備を、他ならぬアンリエッタ様が率先して行っているそうなの……かなりの歓迎ムードで」
「え?ど、どうしてですの?アンリエッタ様にとっては自分を追い出し後釜を狙うライバルではないですか!そんな相手をどうして歓迎するのですかっ?」
「この際置いといてパート3……。まぁアンリエッタ様はご自身が嫁いだ時からいずれ陛下が正妃を迎え入れられる事をご存知でしたからね。今はきっと、陛下が幸せになれるようにと尽力しておいでなのだと思いますわ……」
「アンリエッタ様っ……」
以前、大切な帽子をアンリエッタに守って貰ってからというもの、すっかりアンリエッタの狂信者となったシルヴィーが目に涙を浮かべた。
「やっぱりアンリエッタ様はお優しい方ですわっ……!わたしが男子だったらアンリエッタ様を妻に迎えましたのに……!」
「あら、私、知ってますわよ?あれ以来『わたしはエゼキエル様ではなくアンリエッタ様と結婚します!』と言ってお父上であるアバディ公爵を困らせている事を。それに、私だってアンリエッタ様を嫁に迎えたいですわっ!」
「アンリエッタ様はわたしのものです!」
「お黙り子リスめ!アンリエッタ様ラブの歴史が、貴女と私では違うのです!年季の差ですわっ年季の!」
「時間の長さなんて関係ないですわっー!」
それから暫くわーわーキャーキャーと
アンリエッタへの愛を競い合った二人……
散々言い合って気が済んだ後に、結局はアンリエッタは私達が守る!という謎の団結を生んだという。
そしてユリアナは言った。
「とにかく、正妃は自分以外に考えられないでしょ?と思い込んでいる王女には、正妃候補者は他にいるのだから出しゃばるなと牽制する方向で行きましょう!」
「他の候補者とは?」
「勿論。私、モリス侯爵家ユリアナとアバディ公爵令嬢であるシルヴィー様、貴女ですわよっ!」
「なるほど!それなら王女と同じ候補者として王宮に滞在してアンリエッタ様をお側で守れますわねっ!」
「そういう事ですわっ!いいですか?シルヴィー様、今日お屋敷に帰られましたら早速お父上に言うのですよっ?やっぱり正妃候補者になりたいから王女の来訪と共に自分も王宮に滞在したいと!」
「承知いたしましたわっ!」
「研究室に篭りっ放しの陛下なんてアテになりません!私達でアンリエッタ様をお守りするのです!」
「エイエイオーッですわっ!」
「王女め!下手な事をしたらドッカンしてくれますわっ!」
「わたしは爪で引っ掻いてやります!」
その後も二人の令嬢は、アンリエッタを守る為に華奢な拳を突き上げて闘志を漲らせたそうな。
そして興奮冷めやらぬ中、
互いに家庭教師が来る時間となり令嬢会議は終了したという……。
秘密裏に進撃して来たアバディ公爵令嬢シルヴィーと、モリス侯爵令嬢ユリアナが誰も居ない室内で顔を寄せ合ってヒソヒソと秘密会議を行っていた。
「ユリアナ様っ、お聞きになられまして?隣国の王女がエゼキエル様に会いに押しかけて来ると言うではありませんのっ!呼ばれてもいないのになんて図々しいっ」
「そのエゼキエル陛下に会いに毎日王宮に進撃していた貴女が言うのかとツッコミたいところですけれど、この際それは置いておいて……元々正妃の筆頭候補者であった王女自らやって来るとは、嫌な予感しかしませんわね。今更何しに来るのかしら……」
「今さらとは?」
「……これはね、宰相であるウチのお父様から聞いた話なのですが、前国王陛下が崩御されて直ぐに、当国は隣国へ件の第三王女へ婚姻の申し入れをしたそうなの。エゼキエル陛下の即位を押し進める為の決め手としたかったのね。でも当時はホラ、シルヴィー様のお父様の派閥とで国内の情勢が不安定でしたでしょう?王女を嫁がせてもエゼキエル陛下が即位できる保証はないと足元を見られて断られたんですって。それで急遽アンリエッタ様が選ばれたそうなのよ」
それを聞き、シルヴィーはその要因となった自身の父親の事を棚に上げてぷんすこした。
「まぁ!幼いエゼキエル様を守ろうとせずに頼りないからと縁談を断ったのですかっ?なんてヒドイっ!」
「……まぁこの際置いといてパート2。一度は突っぱねた縁談なのに、エゼキエル陛下が美形で高魔力保持者で優秀と聞き付けて、隣国の王家がそれならばと態度をコロっと変えたそうよ。特に陛下の姿絵を見た第三王女がかなり乗り気らしくって、押せ押せで縁談を進めようとしているみたい」
「なんて厚かましいっ!」
「本当はデビュタント時くらいからあちらの大使を通して何度も縁談の打診を受けていたらしいんだけど、当の陛下にその気はないしウチのお父様ものらりくらりと躱していたそうなの」
「それでとうとう痺れを切らして直接乗り込んで来ますのねっ!そんな恥知らずな王女は返り討ちにしてくれますわっ!絶対に歓迎なんてするものですかっ!」
シルヴィーが子リスのようにキーキーとぷんすこするも、それを尻目にユリアナが困った表情を浮かべた。
「でもね……今その王女を出迎える準備を、他ならぬアンリエッタ様が率先して行っているそうなの……かなりの歓迎ムードで」
「え?ど、どうしてですの?アンリエッタ様にとっては自分を追い出し後釜を狙うライバルではないですか!そんな相手をどうして歓迎するのですかっ?」
「この際置いといてパート3……。まぁアンリエッタ様はご自身が嫁いだ時からいずれ陛下が正妃を迎え入れられる事をご存知でしたからね。今はきっと、陛下が幸せになれるようにと尽力しておいでなのだと思いますわ……」
「アンリエッタ様っ……」
以前、大切な帽子をアンリエッタに守って貰ってからというもの、すっかりアンリエッタの狂信者となったシルヴィーが目に涙を浮かべた。
「やっぱりアンリエッタ様はお優しい方ですわっ……!わたしが男子だったらアンリエッタ様を妻に迎えましたのに……!」
「あら、私、知ってますわよ?あれ以来『わたしはエゼキエル様ではなくアンリエッタ様と結婚します!』と言ってお父上であるアバディ公爵を困らせている事を。それに、私だってアンリエッタ様を嫁に迎えたいですわっ!」
「アンリエッタ様はわたしのものです!」
「お黙り子リスめ!アンリエッタ様ラブの歴史が、貴女と私では違うのです!年季の差ですわっ年季の!」
「時間の長さなんて関係ないですわっー!」
それから暫くわーわーキャーキャーと
アンリエッタへの愛を競い合った二人……
散々言い合って気が済んだ後に、結局はアンリエッタは私達が守る!という謎の団結を生んだという。
そしてユリアナは言った。
「とにかく、正妃は自分以外に考えられないでしょ?と思い込んでいる王女には、正妃候補者は他にいるのだから出しゃばるなと牽制する方向で行きましょう!」
「他の候補者とは?」
「勿論。私、モリス侯爵家ユリアナとアバディ公爵令嬢であるシルヴィー様、貴女ですわよっ!」
「なるほど!それなら王女と同じ候補者として王宮に滞在してアンリエッタ様をお側で守れますわねっ!」
「そういう事ですわっ!いいですか?シルヴィー様、今日お屋敷に帰られましたら早速お父上に言うのですよっ?やっぱり正妃候補者になりたいから王女の来訪と共に自分も王宮に滞在したいと!」
「承知いたしましたわっ!」
「研究室に篭りっ放しの陛下なんてアテになりません!私達でアンリエッタ様をお守りするのです!」
「エイエイオーッですわっ!」
「王女め!下手な事をしたらドッカンしてくれますわっ!」
「わたしは爪で引っ掻いてやります!」
その後も二人の令嬢は、アンリエッタを守る為に華奢な拳を突き上げて闘志を漲らせたそうな。
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