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私に出来る事
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アンリエッタとエゼキエルが十七歳になって三ヶ月が過ぎた。
とうとう成人まであと一年を切ったわけで、そして二人が形だけでも夫婦でいられるのもあと一年を切っているわけで……。
そろそろ今後の事を視野に入れて……と思っているのだが、
アンリエッタの周りもエゼキエルの周りも至って通常、特に何の変化もないのだ。
まぁアンリエッタの方は、既にタイラー=ベルファストという再嫁する相手が決まっているから、あとは離縁の手続きをしてベルファスト領に帰ればいいだけの話なのでこれといってする事はないのだが。
だけど国王であるエゼキエルの今後の動きが何も見られないのが解せぬのだ。
もうとっくに正妃候補者の中から誰か的を絞られ、公式でも非公式でもお見合い的な場が設けられていてもおかしくないのだが、一向にそのような気配が見られないのだ。
ーーもしかして皆さん私に気兼ねして秘密裏に行われているとか?
だが周りの人間にそういった雰囲気は一切感じない。
エゼキエルに至っては近頃ますます研究室に篭っている。
宰相のモリスもそれを容認しているくらい、エゼキエルは例の王家の失われた魔法の復活に心血を注いでいた。
ーーひょっとして今はそれを最優先にして、縁談はその後で……となっているのかしら?
人生の伴侶を選ぶ大切な時にそんな事でいいのかと心配になる。
あまりに何の動きも見られないので不安になったアンリエッタは、義母である王太后ベルナデットにこっそりエゼキエルの正妃選びの進捗状況を聞いてみた。
だけどベルナデットは、
「え?……それは…何とかなっているのではないかしら?だ、大丈夫よ、アンリちゃんは何も心配せずにただ毎日楽しく過ごしていればいいと思うの」
としか答えてくれない。
ただ楽しく過ごすとはどういう事なのだ。
先の事が決まらないと落ち着かず、楽しく過ごす事なんて出来ないのだが……。
それほど今はエゼキエルが向き合っている魔法の方が最優先事項という事なのか?
そんな事でいいのだろうか。
エゼキエルの、この国の国王の将来の事なのに。
優しく真面目で責任感の強いエゼキエルの事だ、自分の事を後回しにして国の益となる魔法の復活の事しか頭に無いのだろう。
ーーここはひとつ、やはりまだ妃である私が人肌脱がなくては!
エゼキエルが自分の事を後回しにし、周りもそれに従っているというのなら、自分が色々と動くべきだとアンリエッタは考えた。
十七歳になってから常々エゼキエルの為に何か出来る事はないかと考えていたのだ。
今までアンリエッタを大切にしてくれたエゼキエルが幸せになれるお手伝い。
それこそが王室を離れる自分が残せるものなのではないかと、アンリエッタは思った。
まぁ具体的に何をすればいいのかなんてアンリエッタには分からないが、いつどう急に事が動き出しても良いように状況は整えておく事にした。
まずアンリエッタはその決意を侍従長や侍女長や専属侍女のマヤに話し、皆の協力を要請する。
皆、一様に思うところが有るのだろうが、アンリエッタの気持ちを一番に汲んで協力を約束してくれた。
ーー良かった。情けないけど自分一人の力では何も出来ないものね。
王宮を去る前にみんなにも何か恩返しが出来ればいいのだけれど。
アンリエッタはそう思いながらもまずは急なお見合いのセッティングとなっても大丈夫なようにエゼキエルの服を新調する事にした。
最近のエゼキエルの体の寸法は王室専属の針子が分かっているので、アンリエッタはデザインや生地選びをするだけだ。
二度三度会う事を踏まえて最低でも三着は用意したい。
そしてそれに合わせる服飾品も。
ーーあぁ…お相手の方の髪色や瞳の色が分かっていればそれを取り入れた色味を選べるのに……
とにかく情報が欲しい。
アンリエッタは常にそう思っていた。
そんな時、侍従長が耳寄りの情報を入手して来てくれた。
なんでも王太后ベルナデットの祖国の第三王女がエゼキエルに会いたいと来訪を希望しているのだとか。
ベルナデットの姪にあたる王女のご来臨を無下に断れる筈もなく……宰相のモリスは承諾の旨を返し、どうやら近々その王女がオリオルにやって来るというのだ。
ーーい、いよいよね……!
お相手は隣国の第三王女殿下……。
やはりちゃんと時がくれば動きはあるのね……!
アンリエッタはそう思い、引き続きそれに向けての準備を行った。
ベルナデットはちょっと遊びに来るだけだからそんな大層にしなくて良いと言うが、そんな訳にはいかない。
エゼキエルの正妃となる確率が一番高い人だ。
完璧なおもてなしをしてお迎えせねば……!
アンリエッタの闘志に火がついた。
その王女の容姿を聞き、
新調するエゼキエルの服の生地の色を変更したり、
歓迎の意を表す為に王宮の庭園に王女の好きな花を植えて貰ったり。
滞在して頂く客室を王女が好きだというピンクの色調で統一したり。
そうやってアンリエッタはエゼキエルの幸せの為に心を砕き、心を込めて用意をした。
それに……
これは自分の為でもあるのだ。
忙しくしている方が変な事を考えずに済む。
今は自分が繋いでいるエゼキエルの手が離れ、他の女性と繋ぎ直す……
そんな光景を頭の中に思い浮かべる暇も無いほど忙しくしていたいのだ。
そしてその気持ちが突っ走り過ぎて、
アンリエッタはベルナデットの祖国である隣国との国境警備にあたるベルファスト国境騎士団に王女の警護の要請も出す。
その打ち合わせと称して、タイラー=ベルファストが王宮を訪ねて来たのは要請して五日後の事であった。
とうとう成人まであと一年を切ったわけで、そして二人が形だけでも夫婦でいられるのもあと一年を切っているわけで……。
そろそろ今後の事を視野に入れて……と思っているのだが、
アンリエッタの周りもエゼキエルの周りも至って通常、特に何の変化もないのだ。
まぁアンリエッタの方は、既にタイラー=ベルファストという再嫁する相手が決まっているから、あとは離縁の手続きをしてベルファスト領に帰ればいいだけの話なのでこれといってする事はないのだが。
だけど国王であるエゼキエルの今後の動きが何も見られないのが解せぬのだ。
もうとっくに正妃候補者の中から誰か的を絞られ、公式でも非公式でもお見合い的な場が設けられていてもおかしくないのだが、一向にそのような気配が見られないのだ。
ーーもしかして皆さん私に気兼ねして秘密裏に行われているとか?
だが周りの人間にそういった雰囲気は一切感じない。
エゼキエルに至っては近頃ますます研究室に篭っている。
宰相のモリスもそれを容認しているくらい、エゼキエルは例の王家の失われた魔法の復活に心血を注いでいた。
ーーひょっとして今はそれを最優先にして、縁談はその後で……となっているのかしら?
人生の伴侶を選ぶ大切な時にそんな事でいいのかと心配になる。
あまりに何の動きも見られないので不安になったアンリエッタは、義母である王太后ベルナデットにこっそりエゼキエルの正妃選びの進捗状況を聞いてみた。
だけどベルナデットは、
「え?……それは…何とかなっているのではないかしら?だ、大丈夫よ、アンリちゃんは何も心配せずにただ毎日楽しく過ごしていればいいと思うの」
としか答えてくれない。
ただ楽しく過ごすとはどういう事なのだ。
先の事が決まらないと落ち着かず、楽しく過ごす事なんて出来ないのだが……。
それほど今はエゼキエルが向き合っている魔法の方が最優先事項という事なのか?
そんな事でいいのだろうか。
エゼキエルの、この国の国王の将来の事なのに。
優しく真面目で責任感の強いエゼキエルの事だ、自分の事を後回しにして国の益となる魔法の復活の事しか頭に無いのだろう。
ーーここはひとつ、やはりまだ妃である私が人肌脱がなくては!
エゼキエルが自分の事を後回しにし、周りもそれに従っているというのなら、自分が色々と動くべきだとアンリエッタは考えた。
十七歳になってから常々エゼキエルの為に何か出来る事はないかと考えていたのだ。
今までアンリエッタを大切にしてくれたエゼキエルが幸せになれるお手伝い。
それこそが王室を離れる自分が残せるものなのではないかと、アンリエッタは思った。
まぁ具体的に何をすればいいのかなんてアンリエッタには分からないが、いつどう急に事が動き出しても良いように状況は整えておく事にした。
まずアンリエッタはその決意を侍従長や侍女長や専属侍女のマヤに話し、皆の協力を要請する。
皆、一様に思うところが有るのだろうが、アンリエッタの気持ちを一番に汲んで協力を約束してくれた。
ーー良かった。情けないけど自分一人の力では何も出来ないものね。
王宮を去る前にみんなにも何か恩返しが出来ればいいのだけれど。
アンリエッタはそう思いながらもまずは急なお見合いのセッティングとなっても大丈夫なようにエゼキエルの服を新調する事にした。
最近のエゼキエルの体の寸法は王室専属の針子が分かっているので、アンリエッタはデザインや生地選びをするだけだ。
二度三度会う事を踏まえて最低でも三着は用意したい。
そしてそれに合わせる服飾品も。
ーーあぁ…お相手の方の髪色や瞳の色が分かっていればそれを取り入れた色味を選べるのに……
とにかく情報が欲しい。
アンリエッタは常にそう思っていた。
そんな時、侍従長が耳寄りの情報を入手して来てくれた。
なんでも王太后ベルナデットの祖国の第三王女がエゼキエルに会いたいと来訪を希望しているのだとか。
ベルナデットの姪にあたる王女のご来臨を無下に断れる筈もなく……宰相のモリスは承諾の旨を返し、どうやら近々その王女がオリオルにやって来るというのだ。
ーーい、いよいよね……!
お相手は隣国の第三王女殿下……。
やはりちゃんと時がくれば動きはあるのね……!
アンリエッタはそう思い、引き続きそれに向けての準備を行った。
ベルナデットはちょっと遊びに来るだけだからそんな大層にしなくて良いと言うが、そんな訳にはいかない。
エゼキエルの正妃となる確率が一番高い人だ。
完璧なおもてなしをしてお迎えせねば……!
アンリエッタの闘志に火がついた。
その王女の容姿を聞き、
新調するエゼキエルの服の生地の色を変更したり、
歓迎の意を表す為に王宮の庭園に王女の好きな花を植えて貰ったり。
滞在して頂く客室を王女が好きだというピンクの色調で統一したり。
そうやってアンリエッタはエゼキエルの幸せの為に心を砕き、心を込めて用意をした。
それに……
これは自分の為でもあるのだ。
忙しくしている方が変な事を考えずに済む。
今は自分が繋いでいるエゼキエルの手が離れ、他の女性と繋ぎ直す……
そんな光景を頭の中に思い浮かべる暇も無いほど忙しくしていたいのだ。
そしてその気持ちが突っ走り過ぎて、
アンリエッタはベルナデットの祖国である隣国との国境警備にあたるベルファスト国境騎士団に王女の警護の要請も出す。
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