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ミニ番外編
親父vs腹黒 剣術の指南
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「ワイズ卿、ご足労頂きありがとうございます」
「とんでもございません。王子殿下直々のご指名、大変な誉れと感じております」
「このアデリオールで剣技においてフェリックス=ワイズ卿の右に出る者なしと聞き及び、かねてよりご指南頂きたいと思っていたのです」
「光栄に存じます」
何かと対立を見せる9歳児と31歳児…
デイビッドとフェリックスだが、
今日の二人の様子はいつもとは違っていた。
あのお茶会から少しして、王太子クリフォードの息子であるデイビッド第一王子からフェリックスに剣術指南の打診があったのだ。
『何故急に俺に指南を?』
齢九つとは思えない腹黒さを秘めたデイビッドの事だ。
何か思惑があるのではないかとフェリックスは警戒した。
が、王族からの要請を断る事など臣下としては許されない。
フェリックスは当然、剣術指南の話を受けた。
そしてデイビッドに稽古を付けるべく、フェリックスは王太子宮へと馳せ参じたわけである。
互いに礼をし、木剣を構えて対峙する。
フェリックスはデイビッドを見た。
まだ幼いと言える年齢であるにも関わらずなかなかの構えだ。
こちらに向けた切っ先がブレていない。
これは毎日欠かさず相当な回数の素振りをしているという証だ。
フェリックスは一歩、デイビッドの方へと踏み出した。
デイビッドはそれに慌てる様子もなく、冷静に自身も一歩下がり、相手との距離を一定に保とうとしている。
『ほほぅ。これはなかなか筋が良さそうだ』
フェリックスはそう思った。
デイビッドは自身が仕え、心から忠誠を誓う王家の一員だ。
しかし同時に目の中に入れても痛くない、むしろいつも目の中に入れて歩きたい愛娘ポレットにチョッカイを出す不届き者(不敬)でもある。
剣術を教えつつもちょっーとお仕置きをしてやろうかと目論んでいたのだが、相手が子どもと言えども真摯に剣を交え学ぼうとしているのなら、私情など捨てて全力で応えなくてはならない……フェリックスはそう考えを改めた。
「デイビッド殿下、どうぞ打ち込んでみて下さい」
フェリックスがそういうと
「では参る」とデイビッドはそう告げ、
力強く足を踏み出して間合いに飛び込んで来た。
重心を低く。
剣の柄は軽く持ち、打ち込む瞬間に強く握る。
基本は出来ているようだ。
打ち込む剣の振りにも無駄がない。
フェリックスはデイビッドの剣を受け流しながら、
「視界は広く」
「大振りすると次の動きへの隙が生じますよ」
「腕力がつくまでは決して鍔で受けてはなりません。力負けして剣を奪われます」
と指導してゆく。
デイビッドはフェリックスが思っていた以上に筋が良かった。
無限の伸び代を感じ、ついつい指導に熱が入る。
ポレットに集る小蝿(不敬2)だと思っていたが、
なかなかどうしてやるじゃないか。
フェリックスはかなり、デイビッドという少年の事を見直していた。
やはり男は剣と剣、または拳と拳で語り合い、理解し合うのが一番だなとフェリックスは思った。
午前中にみっちりと稽古をつけ、やがて昼食の時間となる。
フェリックスは午前中の指南はここまでとした。
「お疲れ様でした殿下。大変素晴らしい身のこなしでございました。貴方は将来、必ずや大陸屈指の剣の腕前となられるでしょう」
「ありがとうございます。ワイズ卿にそう言って頂けると本当に嬉しいです。昼食後もまたご指導よろしくお願いします」
汗を手で拭いながらデイビッドが笑顔で言った。
剣の腕前を褒められ、嬉しそうにはにかみながら「頑張るぞ!」と言っている。
『なんだ……子どもらしい一面もあるんじゃないか。俺とした事がこんな可愛い子ども相手にムキになって、大人げ無かったな……』
と、心からこれまでの自身の行いを恥じた。
その時だった、鈴を転がすような可愛らしい声が聞こえた。
「お父さま~、デイビッドさま~!」
「ポッ……!?」
突然現れた最愛の娘ポレットに、フェリックスは素っ頓狂な声を出す。
ポレットはワイズ伯爵家のメイドを一人伴いこちらに向かって来る。
今日ポレットがここへ来るなんて聞いていない。
またフェリックスも、剣術指南の為にここへ来る事も告げていなかった。
そんなフェリックスの反応とは真逆に、デイビッドは驚いた様子もなくポレットを出迎える。
「やぁポレット、待っていたよ」
その言葉を聞き、フェリックスはもの凄い勢いで首だけを動かしてデイビッドの方を見た。
『待っていた、だと……?』
「ごきげんようデイビッドさま。まぁ汗をたくさんかかれましたのね、よかったらこちらをお使いくださいませ」
ポレットはそう言ってデイビッドにハンカチを手渡した。
フェリックスはポレットに訊いた。
「ポレット……どうして王太子宮(不敬3)にいるのかな?」
「お父さまに剣じゅつのしなんをうけるとデイビッドさまにお聞きしていたの。それならランチのさしいれをしようと思って、朝からお母さまといっしょにがんばって作ったのよ」
『謀られた!!』
フェリックスは内心そう叫んだ。
まんまと娘を誘き寄せる餌に使われた!
しかも手製のランチ付きでっっ!
フェリックスはポレットの手前、引き攣りながらも笑顔でデイビッドに尋ねた。
「デイビッド殿下……この為に私に剣術の指南を……?」
それに対しデイビッドは喜色満面で答える。
「とんでもない。ワイズ卿の剣の腕を見込んで指導を受けたいと望んだのですよ」
絶っっ対嘘だっ!!
フェリックスはそう思った。
こンのくそガキ(不敬4)……
俺が居ればポレットが自然に王太子宮に来ると踏まえて指南役を願い出やがったなぁ………っ!
一瞬でも見直して、そして可愛らしいと思った自分がバカだったと臍を噛む。
『邪魔してやる!二人きりになんか絶対にするものかっ……』
こうしてフェリックスはポレットの隣は決して譲らんっ!と心の狭さを発動して二人の間に挟まれるようにしてランチを食べた。
間にフェリックスを挟みつつもポレットとデイビッドは互いに楽しそうにランチタイムを過ごしている。
親父、完全に邪魔であった。
ハノンがこの場に居たら、きっと呆れ果てていた事であろう……
そして午後からもフェリックスはデイビッドに剣術の稽古を付けた。
その時についつい指導に熱が入り、厳しくなったのは仕方ない……事なのだろうか……。
「とんでもございません。王子殿下直々のご指名、大変な誉れと感じております」
「このアデリオールで剣技においてフェリックス=ワイズ卿の右に出る者なしと聞き及び、かねてよりご指南頂きたいと思っていたのです」
「光栄に存じます」
何かと対立を見せる9歳児と31歳児…
デイビッドとフェリックスだが、
今日の二人の様子はいつもとは違っていた。
あのお茶会から少しして、王太子クリフォードの息子であるデイビッド第一王子からフェリックスに剣術指南の打診があったのだ。
『何故急に俺に指南を?』
齢九つとは思えない腹黒さを秘めたデイビッドの事だ。
何か思惑があるのではないかとフェリックスは警戒した。
が、王族からの要請を断る事など臣下としては許されない。
フェリックスは当然、剣術指南の話を受けた。
そしてデイビッドに稽古を付けるべく、フェリックスは王太子宮へと馳せ参じたわけである。
互いに礼をし、木剣を構えて対峙する。
フェリックスはデイビッドを見た。
まだ幼いと言える年齢であるにも関わらずなかなかの構えだ。
こちらに向けた切っ先がブレていない。
これは毎日欠かさず相当な回数の素振りをしているという証だ。
フェリックスは一歩、デイビッドの方へと踏み出した。
デイビッドはそれに慌てる様子もなく、冷静に自身も一歩下がり、相手との距離を一定に保とうとしている。
『ほほぅ。これはなかなか筋が良さそうだ』
フェリックスはそう思った。
デイビッドは自身が仕え、心から忠誠を誓う王家の一員だ。
しかし同時に目の中に入れても痛くない、むしろいつも目の中に入れて歩きたい愛娘ポレットにチョッカイを出す不届き者(不敬)でもある。
剣術を教えつつもちょっーとお仕置きをしてやろうかと目論んでいたのだが、相手が子どもと言えども真摯に剣を交え学ぼうとしているのなら、私情など捨てて全力で応えなくてはならない……フェリックスはそう考えを改めた。
「デイビッド殿下、どうぞ打ち込んでみて下さい」
フェリックスがそういうと
「では参る」とデイビッドはそう告げ、
力強く足を踏み出して間合いに飛び込んで来た。
重心を低く。
剣の柄は軽く持ち、打ち込む瞬間に強く握る。
基本は出来ているようだ。
打ち込む剣の振りにも無駄がない。
フェリックスはデイビッドの剣を受け流しながら、
「視界は広く」
「大振りすると次の動きへの隙が生じますよ」
「腕力がつくまでは決して鍔で受けてはなりません。力負けして剣を奪われます」
と指導してゆく。
デイビッドはフェリックスが思っていた以上に筋が良かった。
無限の伸び代を感じ、ついつい指導に熱が入る。
ポレットに集る小蝿(不敬2)だと思っていたが、
なかなかどうしてやるじゃないか。
フェリックスはかなり、デイビッドという少年の事を見直していた。
やはり男は剣と剣、または拳と拳で語り合い、理解し合うのが一番だなとフェリックスは思った。
午前中にみっちりと稽古をつけ、やがて昼食の時間となる。
フェリックスは午前中の指南はここまでとした。
「お疲れ様でした殿下。大変素晴らしい身のこなしでございました。貴方は将来、必ずや大陸屈指の剣の腕前となられるでしょう」
「ありがとうございます。ワイズ卿にそう言って頂けると本当に嬉しいです。昼食後もまたご指導よろしくお願いします」
汗を手で拭いながらデイビッドが笑顔で言った。
剣の腕前を褒められ、嬉しそうにはにかみながら「頑張るぞ!」と言っている。
『なんだ……子どもらしい一面もあるんじゃないか。俺とした事がこんな可愛い子ども相手にムキになって、大人げ無かったな……』
と、心からこれまでの自身の行いを恥じた。
その時だった、鈴を転がすような可愛らしい声が聞こえた。
「お父さま~、デイビッドさま~!」
「ポッ……!?」
突然現れた最愛の娘ポレットに、フェリックスは素っ頓狂な声を出す。
ポレットはワイズ伯爵家のメイドを一人伴いこちらに向かって来る。
今日ポレットがここへ来るなんて聞いていない。
またフェリックスも、剣術指南の為にここへ来る事も告げていなかった。
そんなフェリックスの反応とは真逆に、デイビッドは驚いた様子もなくポレットを出迎える。
「やぁポレット、待っていたよ」
その言葉を聞き、フェリックスはもの凄い勢いで首だけを動かしてデイビッドの方を見た。
『待っていた、だと……?』
「ごきげんようデイビッドさま。まぁ汗をたくさんかかれましたのね、よかったらこちらをお使いくださいませ」
ポレットはそう言ってデイビッドにハンカチを手渡した。
フェリックスはポレットに訊いた。
「ポレット……どうして王太子宮(不敬3)にいるのかな?」
「お父さまに剣じゅつのしなんをうけるとデイビッドさまにお聞きしていたの。それならランチのさしいれをしようと思って、朝からお母さまといっしょにがんばって作ったのよ」
『謀られた!!』
フェリックスは内心そう叫んだ。
まんまと娘を誘き寄せる餌に使われた!
しかも手製のランチ付きでっっ!
フェリックスはポレットの手前、引き攣りながらも笑顔でデイビッドに尋ねた。
「デイビッド殿下……この為に私に剣術の指南を……?」
それに対しデイビッドは喜色満面で答える。
「とんでもない。ワイズ卿の剣の腕を見込んで指導を受けたいと望んだのですよ」
絶っっ対嘘だっ!!
フェリックスはそう思った。
こンのくそガキ(不敬4)……
俺が居ればポレットが自然に王太子宮に来ると踏まえて指南役を願い出やがったなぁ………っ!
一瞬でも見直して、そして可愛らしいと思った自分がバカだったと臍を噛む。
『邪魔してやる!二人きりになんか絶対にするものかっ……』
こうしてフェリックスはポレットの隣は決して譲らんっ!と心の狭さを発動して二人の間に挟まれるようにしてランチを食べた。
間にフェリックスを挟みつつもポレットとデイビッドは互いに楽しそうにランチタイムを過ごしている。
親父、完全に邪魔であった。
ハノンがこの場に居たら、きっと呆れ果てていた事であろう……
そして午後からもフェリックスはデイビッドに剣術の稽古を付けた。
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