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ミニ番外編
ポレットの婚約式
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「おじいちゃまっ!」
「お゛ぉぉ~!ポレットぉーー!我が愛しの花の妖精っ~~~!!」
会う度に互いにそう呼び合い、祖父と孫娘がひしっと抱き合う……今まではそういう光景が繰り広げられて来た。
しかし今回は違った。
ポレットの祖父である前ワイズ侯爵アルドンがいつものように孫娘を熱く抱擁しようとしたその時、ポレット自身が片手を上げてそれを静止したのである。
当然、アルドンは呆然として孫娘を見る。
ポレットはアルドンに言った。
「いとしのおじいちゃま、今日からわたしはデイヴィッド様のこんやくしゃとなります。これからはわたしのことをしゅくじょとしてせっしてくださいませね」
「ポ……ポレたん゛……」
その言葉を聞き、アルドンが滝の様な涙を流す。
フェリックスの兄であり、現ワイズ侯爵であるヴィクトルとその息子のキースが、アルドンの肩に手をやり悲痛な面持ちで目を伏せた。
「お祖父様……我々も同じ気持ちです……」
「っく……!無念だっ……!」
アルドンが涙を力強く拭いながら言う。
「いや……儂たちよりも余程フェリックスの方が無念であろうよ……こんなに幼いうちに他の男に取られてしまうのだから……」
ワイズ家の男達は一斉にフェリックスの方へと目をやった。
するとそこには真っ白に燃え尽きて椅子に座っているフェリックスがいた。
「今日、屋敷を出るまで抵抗したそうです……やっぱりせめて十三歳、いや十歳まで待ってもいいだろうと……しかしポレット本人に、「いつまでもそんなことをいうお父さまなんて大キライですっ」と言われてああなったそうです……」
「あぁ……」
「哀れ、我が息子よっ……!」
その時のフェリックスの慟哭を慮り、ワイズ家の男たちは一頻り涙した。
その様子をワイズ家の女性陣が半目になって睨め付けていた。
「まったく……何を考えているのかしら。ポレットが喜んでこの婚約を受けると言っているのに妨害なんて……」
アルドンの妻でありフェリックスの母、前ワイズ侯爵夫人アメリアが盛大にため息を吐く。
この三年間、ポレットとデイヴィッドの縁談話を潰すべく夫がチマチマと妨害工作を行なっていた事を知っていて、心底呆れ果てていたのだ。
それに娘のアリアも同調する。
「ホントに情けない。大の大人の男が揃いも揃って……まぁ?大切なポレットを奪われたくない気持ちは分からなくもないけれど、他ならぬポレットが望んでいるのだから黙って祝福してあげればいいのに……」
ハノンはポレットのドレスの裾を整えてやりながら微笑んだ。
「ふふふ。最後に婚約の承諾をしたのは他ならぬフェリックスなのにね」
そう。
王家から第一王子デイヴィッドとの婚約の打診が来て早三年、ようやくフェリックスはこの縁談を受けた。
愛してやまないポレットに、
「お父さまおねがいします!わたし、デイヴィッド様のおよめさんになりたいのっ……!おねがいっ……」
と、是非にと懇願されて泣く泣く、
「っく……謹ん…で、お、おおおおおお受けしまっ……すぅっ……ぐっ…」と返事をしたらしい。
その時のフェリックスの口惜しそうな顔とは正反対に、
「感謝いたしますワイズ卿。いえ、義父上!ポレットは必ず、僕が守ります。そして生涯大切にします!」
と言ったデイヴィッドの満面の笑みが印象的だった。
「まだ義父親じゃないですよっ!」とすかさずフェリックスは言い返していたが……
こうして両家の主だった親族が集まっての婚約式が晴れの佳き日に執り行われた。
ポレットはこの日の為にメロディが命を注ぎ込むほど真剣な思いで作り上げた純白のドレスで着飾っている。
(メロディはこれにより寿命が少し縮まり108歳までしか生きられなかった。が、本人はこれまた“我が人生に一片の悔いナシ”と述べたそうだ)
デイヴィッドはポレットのそのドレス姿を眩しそうに目を細めて見つめている。
そしてデイヴィッドは小さいながらも王族としての正装姿で、これまたポレットもうっとりと見惚れていた。
そして二人仲良く婚約の書類に署名をする。
その様子を微笑ましそうに見守る親族たち。
今日という日が無事に迎えられて本当に良かったとハノンは思った。
「本当はあなたもそう思っているのでしょう?」
ハノンは隣で黙って娘を見守る夫に言った。
「………ああ。だけどやっぱり、もう少し子どものままでいさせてやりたかった。親元で何一つ苦労などせずに、穏やかな日々を過ごして欲しかった」
フェリックスが何故ここまでポレットとデイヴィッドの婚約を渋ったか、その真意を理解しているハノンは頷いた。
「将来の王妃となると妃教育はかなり厳しいものになるでしょうし、立ち振る舞いや発言など、何かにつけてすぐに上げ足を取られたりするでしょうからね……しっかりしないと、宮廷では苦労するでしょうから……」
「王子はポレットを守ると、大切にすると言ったんだ。生意気でいけ好かない王子だが(不敬5)、あの強かな腹黒さはある意味頼もしい限りだ。ちゃんとポレットを守るだろう」
「本当はとてもデイヴィッド殿下を信頼しているのね」
ハノンがそう言うと、フェリックスは素直になりきれない複雑な心境が滲み出た顔をした。
「……有能な王子だと認めているだけで信頼出来るかどうかはこれからだ……」
「ふふふ」
ハノンはもう一度、娘の方へと視線を向けた。
ポレットは国王と何やら楽しそうに談笑している。
国王一家、特に現国王は初謁見時のポレたんインパクト以来、大のポレットファンである。
孫のデイヴィッドとポレットの縁談が纏まったと知らせを受けた時「ひゃっほいっ!」と片手を突き上げて飛び上がり、その際にギックリ腰になったという新たな逸話を作り上げたほどだ。
他家や他国の貴族に嫁ぐより、よっぽど嫁として大切にして貰える筈だとハノンは思っている。
それでも親としては心配だし、寂しくて堪らない気持ちは良く分かる。
ハノンはフェリックスに優しく告げた。
「婚約をしただけで、まだまだ手元に置いておけるのだから。これからも娘を一番に守れる存在はフェリックス、あなたよ」
「ハノン……そうだな。頑張るよ」
どちらからともなく手を繋ぎ会う。
ハノンは内心、「もう一人、家族が増えてもいいかもね」と思った。
当然妹の婚約式に出席しているルシアンは、同じく北より駆けつけていた伯父のファビアンと共に式を見守っていた。
「伯父さん、ミシェルの具合はどうですか?早く元気になれるといいのですが……」
「ありがとうなルシアン。風邪をひいて本人も驚いていたよ、多分もの心がついてからは初めてじゃないかな。『わたしでも風邪をひけるんですね』って感心していた」
「あはははっ、ミシェルらしいや」
「ミシェルもファニアスもルシアンとポレットに会いたがっているよ。またいつでも北の領地に遊びに来てくれ」
十二歳になり、以前に会った時よりもまた身長が伸びたルシアンの肩に、ファビアンは手を当てた。
あんなに小さかったのにと感慨深げな優しい眼差しを向けて。
ワイズ家の男たち(ルシアンとバスターを除く)が黙って滂沱の涙を流しているという異様な光景は見られたが、ポレットとデイヴィッドの婚約式は恙無く終わり、二人は晴れて婚約者同士となった。
しかしこれはゴールではなく始まりに過ぎない。
十八歳に執り行われる婚姻の儀まで、ポレットとデイヴィッドを取り巻く環境がてんやわんやと騒々しいものになる事など、この時この場にいる者は知る由もなかった。
ただ一人を除いては………
キースの婚約者で、隣国の貴族であるチャザーレ公爵家の娘、イヴェットが呟くように言った。
「ん?あら?キース様の従妹の婚約者のお名前ってデイヴィッド……?はて?前世で読んだ物語の中でその王子を巡っての悪役令嬢もので婚約破棄の話があったような……?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
うろ覚えなのに爆進する?キースの婚約者イヴェットさん。
こちらでは初登場です。
これまではキースの婚約者候補の一人に過ぎませんでしたが、イヴェットの学園卒業を待っていたキースの強い希望により婚約者と相成りました。
その辺のところも、これから書いてゆきたいと思います。
「お゛ぉぉ~!ポレットぉーー!我が愛しの花の妖精っ~~~!!」
会う度に互いにそう呼び合い、祖父と孫娘がひしっと抱き合う……今まではそういう光景が繰り広げられて来た。
しかし今回は違った。
ポレットの祖父である前ワイズ侯爵アルドンがいつものように孫娘を熱く抱擁しようとしたその時、ポレット自身が片手を上げてそれを静止したのである。
当然、アルドンは呆然として孫娘を見る。
ポレットはアルドンに言った。
「いとしのおじいちゃま、今日からわたしはデイヴィッド様のこんやくしゃとなります。これからはわたしのことをしゅくじょとしてせっしてくださいませね」
「ポ……ポレたん゛……」
その言葉を聞き、アルドンが滝の様な涙を流す。
フェリックスの兄であり、現ワイズ侯爵であるヴィクトルとその息子のキースが、アルドンの肩に手をやり悲痛な面持ちで目を伏せた。
「お祖父様……我々も同じ気持ちです……」
「っく……!無念だっ……!」
アルドンが涙を力強く拭いながら言う。
「いや……儂たちよりも余程フェリックスの方が無念であろうよ……こんなに幼いうちに他の男に取られてしまうのだから……」
ワイズ家の男達は一斉にフェリックスの方へと目をやった。
するとそこには真っ白に燃え尽きて椅子に座っているフェリックスがいた。
「今日、屋敷を出るまで抵抗したそうです……やっぱりせめて十三歳、いや十歳まで待ってもいいだろうと……しかしポレット本人に、「いつまでもそんなことをいうお父さまなんて大キライですっ」と言われてああなったそうです……」
「あぁ……」
「哀れ、我が息子よっ……!」
その時のフェリックスの慟哭を慮り、ワイズ家の男たちは一頻り涙した。
その様子をワイズ家の女性陣が半目になって睨め付けていた。
「まったく……何を考えているのかしら。ポレットが喜んでこの婚約を受けると言っているのに妨害なんて……」
アルドンの妻でありフェリックスの母、前ワイズ侯爵夫人アメリアが盛大にため息を吐く。
この三年間、ポレットとデイヴィッドの縁談話を潰すべく夫がチマチマと妨害工作を行なっていた事を知っていて、心底呆れ果てていたのだ。
それに娘のアリアも同調する。
「ホントに情けない。大の大人の男が揃いも揃って……まぁ?大切なポレットを奪われたくない気持ちは分からなくもないけれど、他ならぬポレットが望んでいるのだから黙って祝福してあげればいいのに……」
ハノンはポレットのドレスの裾を整えてやりながら微笑んだ。
「ふふふ。最後に婚約の承諾をしたのは他ならぬフェリックスなのにね」
そう。
王家から第一王子デイヴィッドとの婚約の打診が来て早三年、ようやくフェリックスはこの縁談を受けた。
愛してやまないポレットに、
「お父さまおねがいします!わたし、デイヴィッド様のおよめさんになりたいのっ……!おねがいっ……」
と、是非にと懇願されて泣く泣く、
「っく……謹ん…で、お、おおおおおお受けしまっ……すぅっ……ぐっ…」と返事をしたらしい。
その時のフェリックスの口惜しそうな顔とは正反対に、
「感謝いたしますワイズ卿。いえ、義父上!ポレットは必ず、僕が守ります。そして生涯大切にします!」
と言ったデイヴィッドの満面の笑みが印象的だった。
「まだ義父親じゃないですよっ!」とすかさずフェリックスは言い返していたが……
こうして両家の主だった親族が集まっての婚約式が晴れの佳き日に執り行われた。
ポレットはこの日の為にメロディが命を注ぎ込むほど真剣な思いで作り上げた純白のドレスで着飾っている。
(メロディはこれにより寿命が少し縮まり108歳までしか生きられなかった。が、本人はこれまた“我が人生に一片の悔いナシ”と述べたそうだ)
デイヴィッドはポレットのそのドレス姿を眩しそうに目を細めて見つめている。
そしてデイヴィッドは小さいながらも王族としての正装姿で、これまたポレットもうっとりと見惚れていた。
そして二人仲良く婚約の書類に署名をする。
その様子を微笑ましそうに見守る親族たち。
今日という日が無事に迎えられて本当に良かったとハノンは思った。
「本当はあなたもそう思っているのでしょう?」
ハノンは隣で黙って娘を見守る夫に言った。
「………ああ。だけどやっぱり、もう少し子どものままでいさせてやりたかった。親元で何一つ苦労などせずに、穏やかな日々を過ごして欲しかった」
フェリックスが何故ここまでポレットとデイヴィッドの婚約を渋ったか、その真意を理解しているハノンは頷いた。
「将来の王妃となると妃教育はかなり厳しいものになるでしょうし、立ち振る舞いや発言など、何かにつけてすぐに上げ足を取られたりするでしょうからね……しっかりしないと、宮廷では苦労するでしょうから……」
「王子はポレットを守ると、大切にすると言ったんだ。生意気でいけ好かない王子だが(不敬5)、あの強かな腹黒さはある意味頼もしい限りだ。ちゃんとポレットを守るだろう」
「本当はとてもデイヴィッド殿下を信頼しているのね」
ハノンがそう言うと、フェリックスは素直になりきれない複雑な心境が滲み出た顔をした。
「……有能な王子だと認めているだけで信頼出来るかどうかはこれからだ……」
「ふふふ」
ハノンはもう一度、娘の方へと視線を向けた。
ポレットは国王と何やら楽しそうに談笑している。
国王一家、特に現国王は初謁見時のポレたんインパクト以来、大のポレットファンである。
孫のデイヴィッドとポレットの縁談が纏まったと知らせを受けた時「ひゃっほいっ!」と片手を突き上げて飛び上がり、その際にギックリ腰になったという新たな逸話を作り上げたほどだ。
他家や他国の貴族に嫁ぐより、よっぽど嫁として大切にして貰える筈だとハノンは思っている。
それでも親としては心配だし、寂しくて堪らない気持ちは良く分かる。
ハノンはフェリックスに優しく告げた。
「婚約をしただけで、まだまだ手元に置いておけるのだから。これからも娘を一番に守れる存在はフェリックス、あなたよ」
「ハノン……そうだな。頑張るよ」
どちらからともなく手を繋ぎ会う。
ハノンは内心、「もう一人、家族が増えてもいいかもね」と思った。
当然妹の婚約式に出席しているルシアンは、同じく北より駆けつけていた伯父のファビアンと共に式を見守っていた。
「伯父さん、ミシェルの具合はどうですか?早く元気になれるといいのですが……」
「ありがとうなルシアン。風邪をひいて本人も驚いていたよ、多分もの心がついてからは初めてじゃないかな。『わたしでも風邪をひけるんですね』って感心していた」
「あはははっ、ミシェルらしいや」
「ミシェルもファニアスもルシアンとポレットに会いたがっているよ。またいつでも北の領地に遊びに来てくれ」
十二歳になり、以前に会った時よりもまた身長が伸びたルシアンの肩に、ファビアンは手を当てた。
あんなに小さかったのにと感慨深げな優しい眼差しを向けて。
ワイズ家の男たち(ルシアンとバスターを除く)が黙って滂沱の涙を流しているという異様な光景は見られたが、ポレットとデイヴィッドの婚約式は恙無く終わり、二人は晴れて婚約者同士となった。
しかしこれはゴールではなく始まりに過ぎない。
十八歳に執り行われる婚姻の儀まで、ポレットとデイヴィッドを取り巻く環境がてんやわんやと騒々しいものになる事など、この時この場にいる者は知る由もなかった。
ただ一人を除いては………
キースの婚約者で、隣国の貴族であるチャザーレ公爵家の娘、イヴェットが呟くように言った。
「ん?あら?キース様の従妹の婚約者のお名前ってデイヴィッド……?はて?前世で読んだ物語の中でその王子を巡っての悪役令嬢もので婚約破棄の話があったような……?」
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うろ覚えなのに爆進する?キースの婚約者イヴェットさん。
こちらでは初登場です。
これまではキースの婚約者候補の一人に過ぎませんでしたが、イヴェットの学園卒業を待っていたキースの強い希望により婚約者と相成りました。
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