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ミニ番外編
ワイズ伯爵家の幸せがまたひとつ
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よく晴れた休日の午後。
チャザーレ公爵家のタウンハウスのサンルームに通された客人に向けて、イヴェットは挨拶もそこそこに首を傾げながら尋ねた。
「……縁談成立の書面のやり取りは両家の代理人によって済まされたと聞き及んでおりますし、婚約式は来月ですわよね?」
イヴェットからその言葉を向けられた相手、ワイズ侯爵家の双子の兄キース=ワイズが爽やかな笑顔で答えた。
「婚約者同士が婚約式まで会ってはいけないなんて法はないからね。事前に先触れを出して知らせておいた通り、デートのお誘いに来たんだ」
「デート?誰と誰のですの?」
「もちろん君と俺のさ」
「わっ…!?(私が!?)あっ…!?(貴方とっ!?)デッ…!?(デートですってっ!?)」
男性に……というよりモテるという免疫、いや概念が無かったイヴェット。
思いがけない言葉に思わず語彙力が崩壊したようだ。
キースはそんなイヴェットの手を掬い取り、指先にキスを落とす。
「やっと婚約者として君の側にいても許される立場を手に入れたんだ。婚約式まで大人しく待っているつもりはないよ」
「○✖︎☆*◇っ!?」
イヴェットが声にならない声を発する。
イケメンスマイルで告げられた甘い言葉にイヴェットは早くもギブアップしそうであった。
ーー無理っ!無理ですわっ!
前世も今世も恋愛偏差値底辺なのにっ……
こんなの一瞬でキャパオーバーですわよっ!!
と心の中で悲鳴をあげるイヴェット。
そんないっぱいいっぱいのイヴェットを他所にキースはあっという間に彼女を馬車に乗せて、予定していた劇場へと向かった。
どうやら初デートは観劇のようである。
前世ではオ・タ・ク☆として数々の作品に触れてきたイヴェット。
きっと楽しいひと時となるのだろう。
……その余裕があればの話だが。
◇◇◇◇◇◇
一方アデリオールでは、勤めを終えて帰宅したフェリックスが何やら只ならぬ異変を感じていた。
いつも必ず出迎えてくれる妻の姿が見当たらないからだ。
それどころか愛娘ポレットの出迎えもない。
一体どうしたというのだ。
フェリックスはメイドの一人に尋ねた。
「妻は?家に居ないのか?」
壮年のメイドは落ち着いた様子で答えた。
「奥様は昼過ぎ頃から体調が優れず、今は寝室でお休みになっておられます。お嬢様が側で付き添われておられますよ」
「何っ!?ハノンがっ!?なぜ王宮に知らせを寄越さないっ!」
「奥様がその必要はないと仰られましたので」
「医者は?診察は受けたんだろうなっ!?」
「勿論でございます。落ち着いて下さいませ旦那様、奥様はご病気では……「ハノンっ!!」
メイドの話を最後まで聞かずに、フェリックスは二階へと駆け上がった。
向かった寝室から娘のポレットが出て来る姿を見て、フェリックスは思わず叫んでいた。
「ポレたんっ!!」
「もう!お父さま、その呼びかたはおやめくださいともうしましたでしょっ?」
ポレットの抗議に、フェリックスは狼狽えながらも謝った。
「あ、あぁすまん。いやそれより母さまは?ハノンは大丈夫なのかっ?一体どこが悪いんだっ……?」
父の余裕のない様子に、ポレットは微笑みながら小さくため息を吐く。
「お母さまは大じょうぶよ。くわしくはお母さまに聞いてね」
そう言ってポレットは父親を寝室へと押し込んだ。
「ちょっ……ポレットっ?」
部屋に入ってすぐに扉を閉められてフェリックスは扉の向こうの娘の名を呼んだ。
「フェリックス……?」
「ハノンっ……!」
ベッドに力なく横たわる妻の声が聞こえて、フェリックスは慌てて側へと駆け寄った。
ハノンはゆっくりと起き上がる。
それをフェリックスは支えた。
「おかえりなさい。ごめんね出迎えもせずに」
「そんな事気にしなくていいんだ。それよりどうしたんだ、具合が悪いのかっ?大丈夫なのかっ?」
心配し過ぎて、自分よりも顔色を悪くするフェリックスにハノンは思わず吹き出した。
「ふふ、落ち着いて。大丈夫だから」
「しかしこんなに青白い顔をしてっ……」
「ただの貧血らしいから本当に大丈夫なのよ」
「貧血を侮ってはいけないっ……栄養のあるものを沢山食べないとっ……」
「妊娠初期にはよくある事なのよ」
「よくあるとは言ってもだなっ…………妊娠初期……?今、そう言ったか?」
ハノンは夫の髪を優しくすいてやりながら答えた。
「ええ言ったわ。フェリックス、三人目だって。来年の春に生まれるそうよ」
「三人目…………来年の春………三人目っ!!」
フェリックスは噛み締めるようにそう何度も呟き、そしてハノンを抱きしめた。
「ハノンっ……!本当に?俺たちにまた天使が?」
「ふふ、そうよ。お医者様も言っていたから間違いないわ。貴方とわたしの可愛い天使がまた一人生まれるのよ」
「ハノンっ!」
感極まったフェリックスがさらにぎゅうぎゅうとハノンを抱きしめる。
腕には力が込められている様なのに不思議とハノンに触れる腕は優しく包み込んでいる感じだ。
この腕の中にいる時はどんな事も怖くないと感じてしまう、ハノンが心から安心出来る居場所だ。
ハノンは幸福を噛み締める。
ハノン三十歳フェリックス三十一歳。
また新たな幸せが訪れようとしていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次は男の子、女の子、どっちかなー?
チャザーレ公爵家のタウンハウスのサンルームに通された客人に向けて、イヴェットは挨拶もそこそこに首を傾げながら尋ねた。
「……縁談成立の書面のやり取りは両家の代理人によって済まされたと聞き及んでおりますし、婚約式は来月ですわよね?」
イヴェットからその言葉を向けられた相手、ワイズ侯爵家の双子の兄キース=ワイズが爽やかな笑顔で答えた。
「婚約者同士が婚約式まで会ってはいけないなんて法はないからね。事前に先触れを出して知らせておいた通り、デートのお誘いに来たんだ」
「デート?誰と誰のですの?」
「もちろん君と俺のさ」
「わっ…!?(私が!?)あっ…!?(貴方とっ!?)デッ…!?(デートですってっ!?)」
男性に……というよりモテるという免疫、いや概念が無かったイヴェット。
思いがけない言葉に思わず語彙力が崩壊したようだ。
キースはそんなイヴェットの手を掬い取り、指先にキスを落とす。
「やっと婚約者として君の側にいても許される立場を手に入れたんだ。婚約式まで大人しく待っているつもりはないよ」
「○✖︎☆*◇っ!?」
イヴェットが声にならない声を発する。
イケメンスマイルで告げられた甘い言葉にイヴェットは早くもギブアップしそうであった。
ーー無理っ!無理ですわっ!
前世も今世も恋愛偏差値底辺なのにっ……
こんなの一瞬でキャパオーバーですわよっ!!
と心の中で悲鳴をあげるイヴェット。
そんないっぱいいっぱいのイヴェットを他所にキースはあっという間に彼女を馬車に乗せて、予定していた劇場へと向かった。
どうやら初デートは観劇のようである。
前世ではオ・タ・ク☆として数々の作品に触れてきたイヴェット。
きっと楽しいひと時となるのだろう。
……その余裕があればの話だが。
◇◇◇◇◇◇
一方アデリオールでは、勤めを終えて帰宅したフェリックスが何やら只ならぬ異変を感じていた。
いつも必ず出迎えてくれる妻の姿が見当たらないからだ。
それどころか愛娘ポレットの出迎えもない。
一体どうしたというのだ。
フェリックスはメイドの一人に尋ねた。
「妻は?家に居ないのか?」
壮年のメイドは落ち着いた様子で答えた。
「奥様は昼過ぎ頃から体調が優れず、今は寝室でお休みになっておられます。お嬢様が側で付き添われておられますよ」
「何っ!?ハノンがっ!?なぜ王宮に知らせを寄越さないっ!」
「奥様がその必要はないと仰られましたので」
「医者は?診察は受けたんだろうなっ!?」
「勿論でございます。落ち着いて下さいませ旦那様、奥様はご病気では……「ハノンっ!!」
メイドの話を最後まで聞かずに、フェリックスは二階へと駆け上がった。
向かった寝室から娘のポレットが出て来る姿を見て、フェリックスは思わず叫んでいた。
「ポレたんっ!!」
「もう!お父さま、その呼びかたはおやめくださいともうしましたでしょっ?」
ポレットの抗議に、フェリックスは狼狽えながらも謝った。
「あ、あぁすまん。いやそれより母さまは?ハノンは大丈夫なのかっ?一体どこが悪いんだっ……?」
父の余裕のない様子に、ポレットは微笑みながら小さくため息を吐く。
「お母さまは大じょうぶよ。くわしくはお母さまに聞いてね」
そう言ってポレットは父親を寝室へと押し込んだ。
「ちょっ……ポレットっ?」
部屋に入ってすぐに扉を閉められてフェリックスは扉の向こうの娘の名を呼んだ。
「フェリックス……?」
「ハノンっ……!」
ベッドに力なく横たわる妻の声が聞こえて、フェリックスは慌てて側へと駆け寄った。
ハノンはゆっくりと起き上がる。
それをフェリックスは支えた。
「おかえりなさい。ごめんね出迎えもせずに」
「そんな事気にしなくていいんだ。それよりどうしたんだ、具合が悪いのかっ?大丈夫なのかっ?」
心配し過ぎて、自分よりも顔色を悪くするフェリックスにハノンは思わず吹き出した。
「ふふ、落ち着いて。大丈夫だから」
「しかしこんなに青白い顔をしてっ……」
「ただの貧血らしいから本当に大丈夫なのよ」
「貧血を侮ってはいけないっ……栄養のあるものを沢山食べないとっ……」
「妊娠初期にはよくある事なのよ」
「よくあるとは言ってもだなっ…………妊娠初期……?今、そう言ったか?」
ハノンは夫の髪を優しくすいてやりながら答えた。
「ええ言ったわ。フェリックス、三人目だって。来年の春に生まれるそうよ」
「三人目…………来年の春………三人目っ!!」
フェリックスは噛み締めるようにそう何度も呟き、そしてハノンを抱きしめた。
「ハノンっ……!本当に?俺たちにまた天使が?」
「ふふ、そうよ。お医者様も言っていたから間違いないわ。貴方とわたしの可愛い天使がまた一人生まれるのよ」
「ハノンっ!」
感極まったフェリックスがさらにぎゅうぎゅうとハノンを抱きしめる。
腕には力が込められている様なのに不思議とハノンに触れる腕は優しく包み込んでいる感じだ。
この腕の中にいる時はどんな事も怖くないと感じてしまう、ハノンが心から安心出来る居場所だ。
ハノンは幸福を噛み締める。
ハノン三十歳フェリックス三十一歳。
また新たな幸せが訪れようとしていた。
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次は男の子、女の子、どっちかなー?
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