52 / 161
ミニ番外編
過去を振り返って……あの時のフェリックス② 温かな夜
しおりを挟む
「ぱぱ!おちゃえりっ!」
「ただいまルシアン」
ハイレンにある西方騎士団近くにあるハノンとルシアンが住んでいるアパートに、その日の護衛勤務を終えたフェリックスが帰宅した。
昨日、初めて“ぱぱ”の存在を知ったルシアンは、今日もぱぱが来てくれるかずっとそわそわしていたのだ。
そして玄関のチャイムが鳴った途端にルシアンはドアに駆け寄り、ハノンがドアを開けた瞬間にフェリックスにしがみついたのだった。
フェリックスはルシアンを抱き上げ、笑ってしまうほど自分にそっくりな息子の頬を指の背で優しく撫でた。
その様子を優しげな眼差しで眺めながらハノンは彼にこう告げる。
少し気恥ずかしいけれど心を込めて。
「おかりえなさい」
その言葉をフェリックは嬉しそうに受け取り、そして返事する。
「た…ただいま、ハノン」
互いに少々照れながらも始まった家族三人での暮らし。
王都に戻ってから改めて、という選択肢はハノンとフェリックスにはなかった。
再会して気持ちが通じ合い、再び体を重ねた時から家族になる事を互いに望んだ。
そしてそれは息子のルシアンのためでもある。
自分にもぱぱがいた喜びを昨日、ルシアンはその小さな体全部で表現していた。
嬉しそうに目を輝かせて、
「ぱぱ、くっちーたべる?」と自分のオヤツのクッキーを差し出したり、
「ぱぱ、くまたんどーぞ」とお気に入りのクマのぬいぐるみを渡すなどの歓待ぶりだった。
そしてひと時もフェリックスから離れようとはしない。
そんないじらしい姿を見ると堪らなくなり、ハノンはフェリックスにハイレン滞在中から一緒に暮らして欲しいと頼んだのだ。
フェリックス自身もそうしたいと思っていたので、ハノンの提案に被せ気味に頷いたのだった。
「ぱぱ、いただちましゅちてね」
ルシアンは昨日に引き続き、今日も食事の前にフェリックスに教える。
フェリックスはそれを相好を崩しながら聞き、きちんと「いただきます」と言った。
そしてルシアンも元気よく言う。
「いただちましゅ!」
「はいどうぞめしあがれ」
ハノンは二人の姿を目を細めて見つめた。
小さなルシアンと大きなルシアン、
または大きなフェリックスと小さなフェリックスが共に美味しそうに自分が作った食事を食べてくれる。
一昨日までは想像もつかなったこの幸せな光景にハノンは泣きそうになった。
食事が終わると、フェリックスは初めてルシアンと入浴した。
バスタブに浸かりながらルシアンが託児所で教えてもらった歌を歌ってくれる。
“うさぎの歌”という、子ども達に人気の歌らしい。
「♪うしゃぎのおみみがながーのはー
たのちいおはなちちくためよー♪うしゃぎのおめめがあちゃいのはー……
そこまで歌って、ルシアンはふいにフェリックスの目をじっと見つめた。
「どうした?」
フェリックスが自身の膝にのせて湯船に浸かるルシアンに訊ねる。
「ぱぱとぼく、おめめあちゃい!うしゃぎしゃんといっしょ」
「あぁ……本当だな」
ワイズ家特有の鮮やかな赤い瞳。
二人が親子であるという事を何よりも明確に伝えてくれる、絆の象徴でもある。
ーーでも、もしルシアンが女の子でワイズ特有の瞳も髪も受け継いでいなくても、きっと会えばすぐ分かっただろうな。
魔力の性質や波長で、我が子だと絶対にわかった筈。
フェリックスはそう思った。
その後、この部屋を借りた時から置いてあったという大きなベッドで三人で眠る。
ハノンが子守唄をルシアンに歌ってやるのをフェリックスも静かに聴いていた。
やがて眠りに就いたルシアンから聞こえる子ども特有の寝息。
それすらも愛おしくて心地よくて、
フェリックスは少し泣きたくなった。
こんな夜がくるなんて……
そんなフェリックスの気持ちがハノンに伝わったのか、ハノンも同じ事を感じたのか、自然とルシアンを挟んで互いに手を繋いでいた。
家族三人で過ごす穏やかな夜。
それはとても幸せで、温かな時間だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
るちあん卿、“く”は得意だという事が判明。
しかし“き”と“さ”の壁が立ちはだかる……!
次回はひと足先に王都に戻ったフェリックスが三人での暮らしの為にアレコレ走り回るお話です。
ワイズ家の家族にハノンとの再会を打ち明けますが、そこにハノンがゴリラな嫁だと誤解される要因が……?
次回の更新は木曜日です。
「ただいまルシアン」
ハイレンにある西方騎士団近くにあるハノンとルシアンが住んでいるアパートに、その日の護衛勤務を終えたフェリックスが帰宅した。
昨日、初めて“ぱぱ”の存在を知ったルシアンは、今日もぱぱが来てくれるかずっとそわそわしていたのだ。
そして玄関のチャイムが鳴った途端にルシアンはドアに駆け寄り、ハノンがドアを開けた瞬間にフェリックスにしがみついたのだった。
フェリックスはルシアンを抱き上げ、笑ってしまうほど自分にそっくりな息子の頬を指の背で優しく撫でた。
その様子を優しげな眼差しで眺めながらハノンは彼にこう告げる。
少し気恥ずかしいけれど心を込めて。
「おかりえなさい」
その言葉をフェリックは嬉しそうに受け取り、そして返事する。
「た…ただいま、ハノン」
互いに少々照れながらも始まった家族三人での暮らし。
王都に戻ってから改めて、という選択肢はハノンとフェリックスにはなかった。
再会して気持ちが通じ合い、再び体を重ねた時から家族になる事を互いに望んだ。
そしてそれは息子のルシアンのためでもある。
自分にもぱぱがいた喜びを昨日、ルシアンはその小さな体全部で表現していた。
嬉しそうに目を輝かせて、
「ぱぱ、くっちーたべる?」と自分のオヤツのクッキーを差し出したり、
「ぱぱ、くまたんどーぞ」とお気に入りのクマのぬいぐるみを渡すなどの歓待ぶりだった。
そしてひと時もフェリックスから離れようとはしない。
そんないじらしい姿を見ると堪らなくなり、ハノンはフェリックスにハイレン滞在中から一緒に暮らして欲しいと頼んだのだ。
フェリックス自身もそうしたいと思っていたので、ハノンの提案に被せ気味に頷いたのだった。
「ぱぱ、いただちましゅちてね」
ルシアンは昨日に引き続き、今日も食事の前にフェリックスに教える。
フェリックスはそれを相好を崩しながら聞き、きちんと「いただきます」と言った。
そしてルシアンも元気よく言う。
「いただちましゅ!」
「はいどうぞめしあがれ」
ハノンは二人の姿を目を細めて見つめた。
小さなルシアンと大きなルシアン、
または大きなフェリックスと小さなフェリックスが共に美味しそうに自分が作った食事を食べてくれる。
一昨日までは想像もつかなったこの幸せな光景にハノンは泣きそうになった。
食事が終わると、フェリックスは初めてルシアンと入浴した。
バスタブに浸かりながらルシアンが託児所で教えてもらった歌を歌ってくれる。
“うさぎの歌”という、子ども達に人気の歌らしい。
「♪うしゃぎのおみみがながーのはー
たのちいおはなちちくためよー♪うしゃぎのおめめがあちゃいのはー……
そこまで歌って、ルシアンはふいにフェリックスの目をじっと見つめた。
「どうした?」
フェリックスが自身の膝にのせて湯船に浸かるルシアンに訊ねる。
「ぱぱとぼく、おめめあちゃい!うしゃぎしゃんといっしょ」
「あぁ……本当だな」
ワイズ家特有の鮮やかな赤い瞳。
二人が親子であるという事を何よりも明確に伝えてくれる、絆の象徴でもある。
ーーでも、もしルシアンが女の子でワイズ特有の瞳も髪も受け継いでいなくても、きっと会えばすぐ分かっただろうな。
魔力の性質や波長で、我が子だと絶対にわかった筈。
フェリックスはそう思った。
その後、この部屋を借りた時から置いてあったという大きなベッドで三人で眠る。
ハノンが子守唄をルシアンに歌ってやるのをフェリックスも静かに聴いていた。
やがて眠りに就いたルシアンから聞こえる子ども特有の寝息。
それすらも愛おしくて心地よくて、
フェリックスは少し泣きたくなった。
こんな夜がくるなんて……
そんなフェリックスの気持ちがハノンに伝わったのか、ハノンも同じ事を感じたのか、自然とルシアンを挟んで互いに手を繋いでいた。
家族三人で過ごす穏やかな夜。
それはとても幸せで、温かな時間だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
るちあん卿、“く”は得意だという事が判明。
しかし“き”と“さ”の壁が立ちはだかる……!
次回はひと足先に王都に戻ったフェリックスが三人での暮らしの為にアレコレ走り回るお話です。
ワイズ家の家族にハノンとの再会を打ち明けますが、そこにハノンがゴリラな嫁だと誤解される要因が……?
次回の更新は木曜日です。
588
あなたにおすすめの小説
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
私の婚約者でも無いのに、婚約破棄とか何事ですか?
狼狼3
恋愛
「お前のような冷たくて愛想の無い女などと結婚出来るものか。もうお前とは絶交……そして、婚約破棄だ。じゃあな、グラッセマロン。」
「いやいや。私もう結婚してますし、貴方誰ですか?」
「俺を知らないだと………?冗談はよしてくれ。お前の愛するカーナトリエだぞ?」
「知らないですよ。……もしかして、夫の友達ですか?夫が帰ってくるまで家使いますか?……」
「だから、お前の夫が俺だって──」
少しずつ日差しが強くなっている頃。
昼食を作ろうと材料を買いに行こうとしたら、婚約者と名乗る人が居ました。
……誰コイツ。
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました
四折 柊
恋愛
子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)
虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~
八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。
しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。
それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。
幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。
それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。
そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。
婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。
彼女の計画、それは自らが代理母となること。
だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。
こうして始まったフローラの代理母としての生活。
しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。
さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。
ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。
※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります
※「小説家になろう」が先行公開です(第二章開始しました)
(完結)あなたの愛は諦めました (全5話)
青空一夏
恋愛
私はライラ・エト伯爵夫人と呼ばれるようになって3年経つ。子供は女の子が一人いる。子育てをナニーに任せっきりにする貴族も多いけれど、私は違う。はじめての子育ては夫と協力してしたかった。けれど、夫のエト伯爵は私の相談には全く乗ってくれない。彼は他人の相談に乗るので忙しいからよ。
これは自分の家庭を顧みず、他人にいい顔だけをしようとする男の末路を描いた作品です。
ショートショートの予定。
ゆるふわ設定。ご都合主義です。タグが増えるかもしれません。
【完結】復讐は計画的に~不貞の子を身籠った彼女と殿下の子を身籠った私
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
公爵令嬢であるミリアは、スイッチ国王太子であるウィリアムズ殿下と婚約していた。
10年に及ぶ王太子妃教育も終え、学園卒業と同時に結婚予定であったが、卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されてしまう。
婚約者の彼の隣にいたのは、同じ公爵令嬢であるマーガレット様。
その場で、マーガレット様との婚約と、マーガレット様が懐妊したことが公表される。
それだけでも驚くミリアだったが、追い討ちをかけるように不貞の疑いまでかけられてしまいーーーー?
【作者よりみなさまへ】
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
「君との婚約は時間の無駄だった」とエリート魔術師に捨てられた凡人令嬢ですが、彼が必死で探している『古代魔法の唯一の使い手』って、どうやら私
白桃
恋愛
魔力も才能もない「凡人令嬢」フィリア。婚約者の天才魔術師アルトは彼女を見下し、ついに「君は無駄だ」と婚約破棄。失意の中、フィリアは自分に古代魔法の力が宿っていることを知る。時を同じくして、アルトは国を救う鍵となる古代魔法の使い手が、自分が捨てたフィリアだったと気づき後悔に苛まれる。「彼女を見つけ出さねば…!」必死でフィリアを探す元婚約者。果たして彼は、彼女に許されるのか?
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。