無関係だった私があなたの子どもを生んだ訳

キムラましゅろう

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ミニ番外編

過去を振り返って……あの時のフェリックス③ 家族への報告

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第二王子(当時)クリフォードの視察終了に伴い、ハノンとルシアンをハイレンに残して先に王都へと戻ったフェリックス。 

本当は視察終了と同時に連れ帰りたく、視察中も時間を見つけては動いていたのだが、やはりどうにも間に合わなかったのだった。

なので一時だけフェリックスのみ、王都に戻った。

三人で暮らす家を探したり、とりあえず必要最低の物を揃えたりと、最愛の妻子を迎え家族として暮らしてゆく生活の場を整える。

それともう一つ、フェリックスには重要な目的があった。

それは自分の家族、ワイズ侯爵家の面々に探し続けていた女性が見つかった事と、その女性との間に子どもが生まれていた事を報告する事である。

事前にさっくりとは手紙で知らせていたフェリックス。

そのフェリックスから手紙を読んだ父親である現ワイズ侯爵(当時)アルドンと、フェリックスの兄であるヴィクトルは驚きを隠せない様子であった。

卒業式のあの夜から四年。

四年もの間見つからなかった女性が、占い師のたったひと言により見つかったというのだからそれは当然だの事だろう。

フェリックスが占い師の言葉を手掛かりにハイレンへ行くと言った時は正直「バカな事を言うな」と諌めようとも思ったが、
もうすぐ約束の四年が経つという事で最後に気が済むようにやらせようと思ったのだ。

それがまさかこんな大成果を齎すとは……。


しかしそれでも王都に戻ったフェリックスから詳しい事情を聞くまでは半信半疑、眉唾もので構えていたアルドンとヴィクトル。

フェリックスが覚えていたその女性の身体的特徴と魔力が合致した事、
そして何よりその女性が密かに生み育てていた子どもがワイズ家の魔力属性と銀髪と赤い瞳を持っているというのだ。

そこまで聞いて疑い続けるほどアルドンもヴィクトルも浅慮ではない。


「……そうか……とうとう見つかったのか。正直、もう無理だろうと思っていたのだ。あれから四年、見つかっても相手の女性は既にどこかに嫁がれているだろうと考えていたのだが……しかし女手一つで子を守り生きて来たとは……」

「市井で平民のように暮らしたとしても、シングルマザーでは他に嫁ぎようもないでしょうからね。フェリックスにとってはそれが幸いだったとしか言いようがありませんが……」

父と兄が自らの考えを口にするのを聞き、フェリックスは言った。

「彼女も俺が婚約者候補だった令嬢のどちらかと既に結婚しているだろうと思い、波風たてないように密かに生み育てていたそうです」

「うっ、うぅっ……」

「母上?」

急に泣き声が聞こえ、その声の方を見ると
母であるアメリアが嗚咽を漏らしながらハンカチで顔を押さえていた。

「ただでさえ初めての妊娠出産育児は大変であるというのに……こちらに迷惑が掛からないようにとたった一人で……どれほどの苦労がその方にあった事でしょうっ……知らなかった事とはいえ、何もしてやれなかったのが悔やまれて仕方ないわっ……!」

夫のアルドンに肩を抱かれながらアメリアはそう訴えた。

それを聞き、フェリックスは頷く。

「彼女は芯が強く、逞しい女性ですがきっと相当な苦労もあったと思います。でも俺はもう二度と、彼女にそんな大変な思いをさせないと約束します。彼女も息子も、必ず幸せにしてみせます」

「頼みましたよフェリックス。私たちも協力は惜しみませんからね」

「母上、ありがとう。感謝します」

自身もうんうんと頷きながら話を聞いていたアルドンが徐にフェリックスに確認してきた。

「ワイズ家の血を受け継ぐ子どもを生んでくれた女性だ。もう平民であったとしても構わないとするが、(貴族院は抑えつける)その女性は確かに貴族令嬢なんだな?」

「はい。ルーセル子爵家の令嬢でした。もっともそのルーセル家は先代当主の借金により領地を失って子爵位のみが残る家ですが、そんな事はお気になさらないですよね?父上」

「お気になさらないという事はないが、些末な事ではあるな。いや、待て、今、ルーセル子爵家と言ったか?」

アルドンは眉間にシワを寄せてフェリックスに訊ねた。

「はい?……そうですが何か?」

「ハノン、さん…と言ったかな?その女性の名は。そのハノンさんに兄が居るとか聞いてはいないか?」

「ファビアン卿の事ですか?ええ、彼女には実兄が一人居ますよ。俺もハイレンで実際にお会いしました。ファビアン=ルーセル卿。北方騎士団所属の騎士です」

「ファビアン=ルーセル子爵!!」


いきなり大声を出されてフェリックスは面食らう。
兄のヴィクトルも同じな様で兄弟揃って父親の方を凝視した。

「父上?」

アルドンは鼻息を荒くして言う。

「近頃弟のクレイからよくその名を聞くのだ。クレイが友人である北方騎士団長のオルブレイから自慢ばかりされて腹が立つとな」

「東方騎士団を任されているクレイ叔父さんが?オルブレイ辺境伯に?」

「なんと聞かされているのですか?」

息子達に訊かれ、何故かアルドンがしたり顔で言った。


「北の国境を護る最強のゴリラ、
北方騎士団にファビアン=ルーセル在りとなっ!……どうだったフェリックス、ルーセル卿は真ゴリラであったかっ?」

やや食い入り気味の父に目を見張りながらフェリックスは答える。

「っ……ゴリラ……?確かにそのくらいガタイも良く屈強な騎士である事は一目瞭然の方ではありましたが……でもファビアン卿のご気性は穏やかで優しいものでしたよ?気の強さではハノンの方がよっぽど強くて逞しいと思います」

「お前、何さりげなく自分のもの発言をしているんだ。なんだ…お前は女性には淡白だと思っていたが、やはり自分の唯一ともなると違うのだな。当然か」

自身も唯一と認める妻を愛するヴィクトルが感心したようにフェリックスに言うのを尻目に、
アルドンは驚愕に満ちた目でフェリックスを見ていた。

「なっ……!?“雪原のシルバーバック”という勇名を隣国にまで轟かせている男よりも強く逞しい妹だ…と……?」

「父上?気丈さの話ですよ?」

フェリックスが咄嗟に訂正しておいた。

そしてこれからまだ新しい家の購入手続きがあると言って屋敷を後にする。

住む家が整い次第、ハイレンに残した妻子を迎えに行くという。
その時に二人を連れて来るともフェリックスは言っていた。


フェリックスが帰った後もアルドンは自身の考えに囚われ、ぶつくさと呟いている。

「なんと……北のゴリラよりも屈強な嫁……」

その言葉を聞き、ヴィクトルが目を丸くして驚く。

「え?ゴリラな嫁?まさか……」

「兄と妹、似ていて当然だからな。それにしても兄よりも強く逞しい嫁か……」

アルドンのその呟きにアメリアが毅然として言い放つ。

「ゴリラな嫁だからといって何だと云うのです!
恩義を忘れずその身を捧げてフェリックスを救ってくれた上に、一人で子を守り生きてきた女性ですよ!そりゃ強くて当たり前です!例えゴリラな嫁でもワイズ家の新しい家族として温かく迎え入れますわよ!異論なんて許しませんからねっ!!」


それを聞き、アルドンもヴィクトルもハッと我に返ったように頷いた。

「と、当然ですっ!彼女はもう我が家の一員です!」

「ゴリラな嫁万歳だっ!大歓迎だ!」

「よろしい!」


と、すっかりフェリックスが連れてくる嫁がゴリラだと思い込んだワイズ家の面々。


その嫁がゴリラではなく美しい華奢な女性であり、

しかも密かに生まれていた孫が天使であった事に衝撃を受けるのは、

この日より少し後の事である。














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