無関係だった私があなたの子どもを生んだ訳

キムラましゅろう

文字の大きさ
54 / 161
ミニ番外編

過去を振り返って…… るちあん、王都へ移り住む① 別れ

しおりを挟む
「や!めろりぃたんもいっしょ、いちゅの!」

「ル゛……ルッジィィィ~~っ!!」

「めろりぃたん!」


ひしと互いを抱きしめ合うメロディとルシアン。

今日はハノンとルシアンが、迎えに来たフェリックスと共に王都へと旅立つ日だ。

見送りに来てくれたメロディとはここで一旦お別れと知り、メロディを第二の母と慕うルシアンが離れたくないと泣き出したのだ。

ルシアンよりもメロディの方が怒涛の涙を流し続けているが。

「ルッシーッ……アタシも絶っっ対、後から追いかけるからネッ!それまでイイコにしててネッ!愛してるワ、マイスゥィートボーイッ……♡」

そう言ってメロディは抱きしめていたルシアンをそのまま抱き上げ、フェリックスに渡す。

そして慈しみ、愛情深い眼差しをルシアンに向けて言った。

「パパと暮らせるようになって良かったわネ。ウンと可愛がって貰いなさい、ルッシー」

「めろりぃたん……!」

フェリックスに抱き直されるも、ルシアンはメロディに手を伸ばす。
その姿を見てメロディは更に涙腺を崩壊させた。

「ふぐっ……!」

そんなメロディにフェリックスは言う。


「メロディさん。貴女にはこの先一生を懸けても返しきれない程の大恩を感じています。今までハノンとルシアンを支えて下さり、本当に感謝しています。ありがとうございました」

「ッ…ハノンもルッシーもアタシの大切なダチだものっ、当たり前の事をしただけで感謝なんかして貰わなくて結構ヨっ……その代わり、絶対に二人を幸せにして頂戴っ!不幸になんかしたら、許さないんだからっ!」

「わかっています。ハノンとルシアンを守り、大切にし、必ず幸せにしてみせます」

「なにヨっ!イケメンが言うとそれだけで胡散臭いわネっ!だけどハノンを探し続けた事に免じて信じてあげるワっ!頼んだわよっ!」

「はい。お約束します」

フェリックスが力強く頷いたのを見て、
メロディも満足そうに大きく頷いた。

フェリックスはハノンに声をかける。

「ハノン、じゃあそろそろ行こうか……ハノン?」

隣にいた筈のハノンの姿がそこにない。

しかし背後に気配を感じ慌てて後ろを振り返ると、背を向けて咽び泣くハノンがいた。

「うっ…うっ……ふっ……うぅ……」

小さく嗚咽を漏らしながらハノンは顔に手を当てて泣いている。

「ハノン……」

「ヤダあんた、何泣いてンのヨっ!イイ年こいてっ……!」

そう言うメロディも号泣中である。

ハノンも泣きながら反論する。

「イイ年こいてって何よっ……言っときますけどねっ…ルシーを除いたら、この中ではわたしが最年少なんだからっ……」

「ハイハイ、ホントに気が強いんだからっ……王都に行っても大丈夫そうネっ、まぁせいぜい幸せになりなさいっ……!」

「っ~~メロディ~~っ!」

「ハノン゛ーーっ!!」

そう言って二人、泣きながら抱きしめ合った。

「メロディっ……今まで本当にありがとうっ……貴女が居なかったらルシアンは無事に生まれなかったかもしれないし、こんなにも良い子で元気に育てられなかったと思うっ……それにメロディが居てくれたから寂しさを感じずにいられたの。本当に、本当にありがとうっ!」

「ヤダ何よモウっ!今生の別れみたいに言わないでヨ!アタシも絶対後からダーリンと一緒に王都に移住するからっ、首ネック洗って待ってなさいヨっ!」

「ぷっふふ…それを言うなら首根っこでしょう?……うん待ってる、待ってるからメロディっ……」

「めろりぃたん……」


しばしの別れと分かっていても、

すぐにメロディに会えない距離はとても辛かった。


そのくらい母子にとってはこの第二のお母ちゃんの存在は大きいのだ。


もうこれ以上泣くと三人とも脱水症状を引き起こすと思ったフェリックスがハノンとルシアンを馬車に乗せた。

これから西方騎士団の転移スポットを用いて王都にへ向かうのだ。

ハノンは馬車から顔を出し、ハンカチをぶぉんぶぉん降って見送ってくれるメロディにいつまでも手を振り返していた。



こうしてハノンにとっては数年ぶり、

ルシアンにとっては人生初の王都での暮らしが始まろうとしていた。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



次回、るちあん、王都に行く。

次の更新は来週の火曜になります。
ごめんなさい_:(´ཀ`」 ∠):








しおりを挟む
感想 3,580

あなたにおすすめの小説

能ある妃は身分を隠す

赤羽夕夜
恋愛
セラス・フィーは異国で勉学に励む為に、学園に通っていた。――がその卒業パーティーの日のことだった。 言われもない罪でコンペーニュ王国第三王子、アレッシオから婚約破棄を大体的に告げられる。 全てにおいて「身に覚えのない」セラスは、反論をするが、大衆を前に恥を掻かせ、利益を得ようとしか思っていないアレッシオにどうするべきかと、考えているとセラスの前に現れたのは――。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

石女を理由に離縁されましたが、実家に出戻って幸せになりました

お好み焼き
恋愛
ゼネラル侯爵家に嫁いで三年、私は子が出来ないことを理由に冷遇されていて、とうとう離縁されてしまいました。なのにその後、ゼネラル家に嫁として戻って来いと手紙と書類が届きました。息子は種無しだったと、だから石女として私に叩き付けた離縁状は無効だと。 その他にも色々ありましたが、今となっては心は落ち着いています。私には優しい弟がいて、頼れるお祖父様がいて、可愛い妹もいるのですから。

あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です。

秋月一花
恋愛
「すまないね、レディ。僕には愛しい婚約者がいるんだ。そんなに見つめられても、君とデートすることすら出来ないんだ」 「え? 私、あなたのことを見つめていませんけれど……?」 「なにを言っているんだい、さっきから熱い視線をむけていたじゃないかっ」 「あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です」  あなたの護衛を見つめていました。だって好きなのだもの。見つめるくらいは許して欲しい。恋人になりたいなんて身分違いのことを考えないから、それだけはどうか。 「……やっぱり今日も格好いいわ、ライナルト様」  うっとりと呟く私に、ライナルト様はぎょっとしたような表情を浮かべて――それから、 「――俺のことが怖くないのか?」  と話し掛けられちゃった! これはライナルト様とお話しするチャンスなのでは?  よーし、せめてお友達になれるようにがんばろう!

うちに待望の子供が産まれた…けど

satomi
恋愛
セント・ルミヌア王国のウェーリキン侯爵家に双子で生まれたアリサとカリナ。アリサは黒髪。黒髪が『不幸の象徴』とされているセント・ルミヌア王国では疎まれることとなる。対してカリナは金髪。家でも愛されて育つ。二人が4才になったときカリナはアリサを自分の侍女とすることに決めた(一方的に)それから、両親も家での事をすべてアリサ任せにした。 デビュタントで、カリナが皇太子に見られなかったことに腹を立てて、アリサを勘当。隣国へと国外追放した。

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

心配するな、俺の本命は別にいる——冷酷王太子と籠の花嫁

柴田はつみ
恋愛
王国の公爵令嬢セレーネは、家を守るために王太子レオニスとの政略結婚を命じられる。 婚約の儀の日、彼が告げた冷酷な一言——「心配するな。俺の好きな人は別にいる」。 その言葉はセレーネの心を深く傷つけ、王宮での新たな生活は噂と誤解に満ちていく。 好きな人が別にいるはずの彼が、なぜか自分にだけ独占欲を見せる。 嫉妬、疑念、陰謀が渦巻くなかで明らかになる「真実」。 契約から始まった婚約は、やがて運命を変える愛の物語へと変わっていく——。

「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました

ほーみ
恋愛
 その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。 「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」  そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。 「……は?」  まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。