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ミニ番外編
デイビッド入学す
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ルシアン=ワイズが魔術学園に入学してから早や三年、
アデリオール王国王太子嫡子デイビッド(13)が入学した。
アデリオールの王族の入学は実に二十年ぶり(最後に通った王族はクリフォードの異母妹)となるため、学園側は緊張と重くのしかかる責任と生徒でありながら王族である王子をどう斟酌すれば恙無く卒業まで持ってゆけるのかとで、頭を悩ませていた。
しかしデイビッドは学園内では王子としてではなく一学生として扱って欲しいと学園側に願い出た。
それは父親である王太子も同じ考えであるらしく、
「宿題を忘れたら廊下に立たせても構わぬし、教師に反発すれば校庭を走らせればよい。日直も委員会も生徒会活動も、全て他の生徒と同じように割り振ってこき使ってくれて構わない」
と言った。
え?マジですか?と理事長や学園長や一年の学年主任たちは驚いたが、王子の父親である王太子はとにかく特別扱いは無用と断言したのであった。
ただ、側についていた護衛騎士のワイズ卿が学園内に事務員や用務員、給食のおばちゃんや掃除のおじちゃんに扮した暗部(王家直属の隠密機関)の配備を認めるようにとの要求があった。
斯くしてデイビッド王子は魔術学園に入学したのであった。
◇◇◇
「ルシアンは王子とはガキん時からの付き合いなんだよな?」
三年生になったルシアンに初等学園からの親友、ノア=ジャクソン子爵令息が廊下を歩きながら訊ねた。
何故その質問をしてきたのか、ノアの視線の先にある人物を見て理解したルシアンがそれに答える。
「ああ。親同士が仲がいいし、妹の婚約者でもあるからな。僕自身も殿下とは幼馴染だよ」
「この国の次々代の国王で眉目秀麗、文武両道その他諸々とハイスペック。その上人柄も良いとくりゃ、そら男女問わず人気者になるよな。この学園でルシアン=ワイズに対抗できるのはデイビッド王子しかいないと言われているのは知ってるか?」
ノアがそう言いながら見つめる先には男子生徒や女子生徒に囲まれ楽しそうに談笑しているデイビッドがいた。
ルシアンは肩を竦めて言う。
「王族と張り合っているように言われるのは迷惑だよ」
「ファンクラブの会員は学年を問わず、OBまで会員になってるというのはアデリオール広しといえどお前と王子くらいなものだろうから、仕方ないんじゃないか?」
「ホント、いつの間にファンクラブなんて作られていたんだろ……」
ルシアンは思わず嘆息していた。
騒がれる事を好まないルシアンにとって、自分の一挙一動に刮目され黄色い悲鳴をあげられる状況はあまり嬉しいものではなかった。
聞けば父や伯父や祖父や従兄弟たちも学園ではそのような状態であったとか……。
デイビッドはというと、その状況があまり苦にはならないらしい。
むしろ利用している節もある。
「好まれるのも人心掌握の手管ですよ。味方が多い方が何かとやり易いのは当然ですからね」
とデイビッドが言っていた。
そこは王国に仕える騎士を目指すルシアンと、将来はこの国の全てに責任を負うデイビッドとの心の在り方の差なのだろう。
ルシアン達がいる廊下から、距離感がおかしい女子生徒を巧みに躱し、難なく扱うデイビッドの様子を見ながらルシアンは思う。
あの状況の中、ポレットが入学してきたらどうなるのだろう、と。
デイビッドの最愛である妹が、彼に恋慕する女子生徒たちから目の敵にされるのではないかという懸念がある。
もちろん兄として学園内では目を光らせ妹を守るつもりだが、どうしても全てにおいて目が行き届く訳ではない。
その点はミシェルがポレットと同学年として入学してくれるのは有り難い。
しかしながらミシェルがポレットのトラブルに巻き込まれて害が及ぶのも、これまた心配で堪らなくなる。
一度その事について父に相談してみよう。
ルシアンはそう思った。
そして折を見て父フェリックスにその話したところ、
父は忌々しそうな顔をしつつもサラッとこう言った。
「あの抜け目のない腹黒王子の事だ。ポレット専属の女性暗部を周囲に配備するに決まってる。その者達がポレットを醜い悪意から守るだろう。くそ、どうして俺の可愛いポレットが謂れのない悪意を向けられなくてはならんのだっ。だから王子との婚約など認めたくはなかったのに……」
と、苦渋を味わった様な表情を浮かべた。
大丈夫であろうと分かっていても、心配にならない親などいない。
ルシアンとてそうだ。
妹には、ポレットには辛い思いなんて一切して欲しくはない。
だけどポレットが望んで選んだ道だ。
まだ幼かったとしても、ポレットもデイビッドもお互いしか考えられないという想いから結ばれた婚約だ。
それが分かっているから父も伯父も祖父も従兄弟達も泣く泣くポレットとデイビッドの婚約を認めたのだ。
王家の一方的な婚約の打診であったなら、ワイズ家門の総力を挙げて抵抗した事だろう。
その先陣を切るのはきっと祖父のアルドンだったんだろうなと思うと、ルシアンは思わず吹き出してしまった。
とにかく、泣いても笑っても来年にはポレットとミシェルが学園に入学してくる。
二人の事は必ず守ると心に誓うルシアンであった。
アデリオール王国王太子嫡子デイビッド(13)が入学した。
アデリオールの王族の入学は実に二十年ぶり(最後に通った王族はクリフォードの異母妹)となるため、学園側は緊張と重くのしかかる責任と生徒でありながら王族である王子をどう斟酌すれば恙無く卒業まで持ってゆけるのかとで、頭を悩ませていた。
しかしデイビッドは学園内では王子としてではなく一学生として扱って欲しいと学園側に願い出た。
それは父親である王太子も同じ考えであるらしく、
「宿題を忘れたら廊下に立たせても構わぬし、教師に反発すれば校庭を走らせればよい。日直も委員会も生徒会活動も、全て他の生徒と同じように割り振ってこき使ってくれて構わない」
と言った。
え?マジですか?と理事長や学園長や一年の学年主任たちは驚いたが、王子の父親である王太子はとにかく特別扱いは無用と断言したのであった。
ただ、側についていた護衛騎士のワイズ卿が学園内に事務員や用務員、給食のおばちゃんや掃除のおじちゃんに扮した暗部(王家直属の隠密機関)の配備を認めるようにとの要求があった。
斯くしてデイビッド王子は魔術学園に入学したのであった。
◇◇◇
「ルシアンは王子とはガキん時からの付き合いなんだよな?」
三年生になったルシアンに初等学園からの親友、ノア=ジャクソン子爵令息が廊下を歩きながら訊ねた。
何故その質問をしてきたのか、ノアの視線の先にある人物を見て理解したルシアンがそれに答える。
「ああ。親同士が仲がいいし、妹の婚約者でもあるからな。僕自身も殿下とは幼馴染だよ」
「この国の次々代の国王で眉目秀麗、文武両道その他諸々とハイスペック。その上人柄も良いとくりゃ、そら男女問わず人気者になるよな。この学園でルシアン=ワイズに対抗できるのはデイビッド王子しかいないと言われているのは知ってるか?」
ノアがそう言いながら見つめる先には男子生徒や女子生徒に囲まれ楽しそうに談笑しているデイビッドがいた。
ルシアンは肩を竦めて言う。
「王族と張り合っているように言われるのは迷惑だよ」
「ファンクラブの会員は学年を問わず、OBまで会員になってるというのはアデリオール広しといえどお前と王子くらいなものだろうから、仕方ないんじゃないか?」
「ホント、いつの間にファンクラブなんて作られていたんだろ……」
ルシアンは思わず嘆息していた。
騒がれる事を好まないルシアンにとって、自分の一挙一動に刮目され黄色い悲鳴をあげられる状況はあまり嬉しいものではなかった。
聞けば父や伯父や祖父や従兄弟たちも学園ではそのような状態であったとか……。
デイビッドはというと、その状況があまり苦にはならないらしい。
むしろ利用している節もある。
「好まれるのも人心掌握の手管ですよ。味方が多い方が何かとやり易いのは当然ですからね」
とデイビッドが言っていた。
そこは王国に仕える騎士を目指すルシアンと、将来はこの国の全てに責任を負うデイビッドとの心の在り方の差なのだろう。
ルシアン達がいる廊下から、距離感がおかしい女子生徒を巧みに躱し、難なく扱うデイビッドの様子を見ながらルシアンは思う。
あの状況の中、ポレットが入学してきたらどうなるのだろう、と。
デイビッドの最愛である妹が、彼に恋慕する女子生徒たちから目の敵にされるのではないかという懸念がある。
もちろん兄として学園内では目を光らせ妹を守るつもりだが、どうしても全てにおいて目が行き届く訳ではない。
その点はミシェルがポレットと同学年として入学してくれるのは有り難い。
しかしながらミシェルがポレットのトラブルに巻き込まれて害が及ぶのも、これまた心配で堪らなくなる。
一度その事について父に相談してみよう。
ルシアンはそう思った。
そして折を見て父フェリックスにその話したところ、
父は忌々しそうな顔をしつつもサラッとこう言った。
「あの抜け目のない腹黒王子の事だ。ポレット専属の女性暗部を周囲に配備するに決まってる。その者達がポレットを醜い悪意から守るだろう。くそ、どうして俺の可愛いポレットが謂れのない悪意を向けられなくてはならんのだっ。だから王子との婚約など認めたくはなかったのに……」
と、苦渋を味わった様な表情を浮かべた。
大丈夫であろうと分かっていても、心配にならない親などいない。
ルシアンとてそうだ。
妹には、ポレットには辛い思いなんて一切して欲しくはない。
だけどポレットが望んで選んだ道だ。
まだ幼かったとしても、ポレットもデイビッドもお互いしか考えられないという想いから結ばれた婚約だ。
それが分かっているから父も伯父も祖父も従兄弟達も泣く泣くポレットとデイビッドの婚約を認めたのだ。
王家の一方的な婚約の打診であったなら、ワイズ家門の総力を挙げて抵抗した事だろう。
その先陣を切るのはきっと祖父のアルドンだったんだろうなと思うと、ルシアンは思わず吹き出してしまった。
とにかく、泣いても笑っても来年にはポレットとミシェルが学園に入学してくる。
二人の事は必ず守ると心に誓うルシアンであった。
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