69 / 161
ミニ番外編
波乱の入学式 〜ポレット〜
しおりを挟む
あのルシアン=ワイズの妹であり、
そしてあのデイビッド王子の婚約者であるポレット=ワイズが入学してくると、アデリオール魔術学園は数日前から騒然としていた。
念のため警護に入らせて欲しいとワイズ侯爵家からも王家からも申請があった事も学園側を悩ませた。
普通で考えれば王家からの申し出を優先させるべきなのだろうが、理事長は古くからの友人であるアルドン=ワイズ前侯爵のねちっこさを知っている為、そちらも無下にも出来なかった。
しかし両家の護衛騎士で学園が埋め尽くされるなど他の生徒や職員を怖がらせるだけである。
よって苦肉の策として特別に両家所属の魔術師を一人ずつ、職員に紛らせて配備する事を許可した。
どうせ元々から王家の暗部が学園に潜伏して任に当たっているのだ、過剰警備は御免被りたい。
そうやって直前まで学園側が対応に追われていた入学式の日がとうとうやってきた。
中高一貫と新しく編成し直されたと同時に新しくなった魔術学園の制服。
それに袖を通したポレットが期待に胸を膨らませて学園の門を潜った。
西方大陸全土に加え東方の国からも生徒が集まるため、遠方の国の生徒への配慮で保護者の出席は一律認めていないアデリオール魔術学園の入学式。
(ハイラント魔法学校と二分しても相当な数)
よってポレットは兄のルシアンに伴われて登校して来た。
同じく今日入学式を迎えるミシェルは遠縁の女子生徒に伴われて学園入りを果たしているはずだ。
(同伴者となる上級生がいない場合は要請があれば学園側が上級生を手配する。同伴者がいなくても勿論可)
「お兄さま、私もうドキドキして心臓が止まりそうですわ」
胸に手を当ててそう告げる妹の制服のリボンタイを整えてあげながらルシアンが返事をした。
ちなみに一年生のリボンタイやネクタイの色柄は臙脂と濃紺のレジメンタル(斜めストライプ)である。
紺色のブレザーに淡いライトブルーのシャツ。これは男女共通で、タイと同じ色組み合わせである燕脂の生地に濃紺のグレンチェック柄のスカートやスラックスを着用するのだ。
「それは緊張のドキドキ?それともワクワクのドキドキ?」
ルシアンの問いかけにポレットは頬を上気させて答えた。
「もちろん、両方よ!」
「だと思った。ポレットは意外と豪胆だからな」
「ふふ。お母さまに似たのね、きっと」
「違いない」
そんな兄と妹のやり取りを周りの生徒たちが唖然として見ていた。
ーーな、なんだあの美しい光景は……?
ーーえ?人間?同じ人間?
カミサマって不公平じゃね?
ーー私もルシアン様にタイを直して貰いたい……!
ーーあそこに混じれるのなら来世はミジンコでもいい!
などとあちらこちらから心の声が聞こえてきそうな雰囲気だ。
そんな時、更に周りを落ち着かせなくさせる人物が声を掛けてきた。
「やぁ、来たねポレット」
「デイ様っ!」
この国の王太子の嫡男、デイビッド王子がルシアンとポレットの元へと歩み寄る。
ポレットは嬉しそうに婚約者であるデイビッドへと向き合った。
デイビッドはポレットの手を掬い上げ、その指先にキスを落とす。
「さすがは僕のポゥだ。皆と同じ制服なのに群を抜いて愛らしい」
至る所から黄色い悲鳴が聞こえ、同時にパタンパタンと卒倒するような音が聞こえたが気にしないに限る。
だけど一応、念を押しておこうとルシアンはデイビッドに言った。
「殿下。ポレットとミシェルの為に初日から目立つ事は控えようと話し合った事をお忘れではないですよね?」
デイビッドはそれに答える。
だけどポレットの手はちゃっかり握ったままだ。
「もちろんだ。だから僕も義兄上も泣く泣く、ポレットとミシェル嬢の同伴者となる事を諦めた。ちゃんとわかっていますよ」
自惚れるわけではないが自分たちがあまり特別扱いをし過ぎて、ポレットとミシェルが必要以上に周囲のやっかみを買うのは避けるべきだと事前に話をしていたのだ。
ルシアンがデイビッドに言う。
「まだ義兄と呼ばれるには早いですよ」
「今から慣れておくのもよいでしょう」
「学園内だけはやめてください」
「わかりました、ルシアン先輩」
二人のやり取りを聞き、ポレットがはにかみながら言う。
「じゃあ私も学園内ではデイビッド先輩……とお呼びしますわね」
「っ……!」
小さく息を呑み、胸に手を当てたデイビッドをポレットが不思議そうに見る。
「デイビッド先輩?」
「ダメだポゥ、破壊力が半端じゃない。そう呼ばれる度に僕の心拍数が上がり、とても危険だ」
「まぁ大変!」
「…………」(ル)
その後もツッコミ不在のやり取りを続け、デイビッドの側近候補として側に置かれている男子生徒が「殿下、そろそろ」と告げてきた。
デイビッドは今年から生徒会入りをする。
そしてこの学園で一番身分の高い者として入学式では在校生を代表して祝辞を述べるのだ。
「ポレットの為に心を込めた祝辞を贈るよ」と言いながらデイビッドはひと足先に講堂へと入って行った。
新入生全員に宛ててくださいと思いながらルシアンはその背中を見送った。
そして同じく小さく手を振って見送っていたポレットに言う。
「それじゃあ新入生の集合場所まで行こうか」
「はいお兄さま」
そう返事して兄の隣に並び立つ妹を見下ろしながらルシアンは言った。
「……ポレット」
「なぁに?お兄さま」
「入学おめでとう」
「!……ありがとう、お兄さま」
あんなに小さかった妹の眩しい晴れ姿に、ルシアンは目を細めた。
アデリオール魔術学園入学式が開式の時間を迎えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ちなみに二年生のデイくんの学年カラーはシアンブルーと濃紺の組み合わせ。
四年生のルシアンはビリジアングリーンと濃紺の組み合わせです。
制服ってキュンですよねぇ……良き良き♡
そして学園には当然医務室があります。
一人の医療魔術師と一人の魔法薬剤師がいるそうな……。
それと?女子の剣術指南役にとある侯爵家の若夫人が決まったとか……。
そんな事ってある?とは思ってはいけません。
ここは異世界、ご都合主義の世界なのですから☆
そしてあのデイビッド王子の婚約者であるポレット=ワイズが入学してくると、アデリオール魔術学園は数日前から騒然としていた。
念のため警護に入らせて欲しいとワイズ侯爵家からも王家からも申請があった事も学園側を悩ませた。
普通で考えれば王家からの申し出を優先させるべきなのだろうが、理事長は古くからの友人であるアルドン=ワイズ前侯爵のねちっこさを知っている為、そちらも無下にも出来なかった。
しかし両家の護衛騎士で学園が埋め尽くされるなど他の生徒や職員を怖がらせるだけである。
よって苦肉の策として特別に両家所属の魔術師を一人ずつ、職員に紛らせて配備する事を許可した。
どうせ元々から王家の暗部が学園に潜伏して任に当たっているのだ、過剰警備は御免被りたい。
そうやって直前まで学園側が対応に追われていた入学式の日がとうとうやってきた。
中高一貫と新しく編成し直されたと同時に新しくなった魔術学園の制服。
それに袖を通したポレットが期待に胸を膨らませて学園の門を潜った。
西方大陸全土に加え東方の国からも生徒が集まるため、遠方の国の生徒への配慮で保護者の出席は一律認めていないアデリオール魔術学園の入学式。
(ハイラント魔法学校と二分しても相当な数)
よってポレットは兄のルシアンに伴われて登校して来た。
同じく今日入学式を迎えるミシェルは遠縁の女子生徒に伴われて学園入りを果たしているはずだ。
(同伴者となる上級生がいない場合は要請があれば学園側が上級生を手配する。同伴者がいなくても勿論可)
「お兄さま、私もうドキドキして心臓が止まりそうですわ」
胸に手を当ててそう告げる妹の制服のリボンタイを整えてあげながらルシアンが返事をした。
ちなみに一年生のリボンタイやネクタイの色柄は臙脂と濃紺のレジメンタル(斜めストライプ)である。
紺色のブレザーに淡いライトブルーのシャツ。これは男女共通で、タイと同じ色組み合わせである燕脂の生地に濃紺のグレンチェック柄のスカートやスラックスを着用するのだ。
「それは緊張のドキドキ?それともワクワクのドキドキ?」
ルシアンの問いかけにポレットは頬を上気させて答えた。
「もちろん、両方よ!」
「だと思った。ポレットは意外と豪胆だからな」
「ふふ。お母さまに似たのね、きっと」
「違いない」
そんな兄と妹のやり取りを周りの生徒たちが唖然として見ていた。
ーーな、なんだあの美しい光景は……?
ーーえ?人間?同じ人間?
カミサマって不公平じゃね?
ーー私もルシアン様にタイを直して貰いたい……!
ーーあそこに混じれるのなら来世はミジンコでもいい!
などとあちらこちらから心の声が聞こえてきそうな雰囲気だ。
そんな時、更に周りを落ち着かせなくさせる人物が声を掛けてきた。
「やぁ、来たねポレット」
「デイ様っ!」
この国の王太子の嫡男、デイビッド王子がルシアンとポレットの元へと歩み寄る。
ポレットは嬉しそうに婚約者であるデイビッドへと向き合った。
デイビッドはポレットの手を掬い上げ、その指先にキスを落とす。
「さすがは僕のポゥだ。皆と同じ制服なのに群を抜いて愛らしい」
至る所から黄色い悲鳴が聞こえ、同時にパタンパタンと卒倒するような音が聞こえたが気にしないに限る。
だけど一応、念を押しておこうとルシアンはデイビッドに言った。
「殿下。ポレットとミシェルの為に初日から目立つ事は控えようと話し合った事をお忘れではないですよね?」
デイビッドはそれに答える。
だけどポレットの手はちゃっかり握ったままだ。
「もちろんだ。だから僕も義兄上も泣く泣く、ポレットとミシェル嬢の同伴者となる事を諦めた。ちゃんとわかっていますよ」
自惚れるわけではないが自分たちがあまり特別扱いをし過ぎて、ポレットとミシェルが必要以上に周囲のやっかみを買うのは避けるべきだと事前に話をしていたのだ。
ルシアンがデイビッドに言う。
「まだ義兄と呼ばれるには早いですよ」
「今から慣れておくのもよいでしょう」
「学園内だけはやめてください」
「わかりました、ルシアン先輩」
二人のやり取りを聞き、ポレットがはにかみながら言う。
「じゃあ私も学園内ではデイビッド先輩……とお呼びしますわね」
「っ……!」
小さく息を呑み、胸に手を当てたデイビッドをポレットが不思議そうに見る。
「デイビッド先輩?」
「ダメだポゥ、破壊力が半端じゃない。そう呼ばれる度に僕の心拍数が上がり、とても危険だ」
「まぁ大変!」
「…………」(ル)
その後もツッコミ不在のやり取りを続け、デイビッドの側近候補として側に置かれている男子生徒が「殿下、そろそろ」と告げてきた。
デイビッドは今年から生徒会入りをする。
そしてこの学園で一番身分の高い者として入学式では在校生を代表して祝辞を述べるのだ。
「ポレットの為に心を込めた祝辞を贈るよ」と言いながらデイビッドはひと足先に講堂へと入って行った。
新入生全員に宛ててくださいと思いながらルシアンはその背中を見送った。
そして同じく小さく手を振って見送っていたポレットに言う。
「それじゃあ新入生の集合場所まで行こうか」
「はいお兄さま」
そう返事して兄の隣に並び立つ妹を見下ろしながらルシアンは言った。
「……ポレット」
「なぁに?お兄さま」
「入学おめでとう」
「!……ありがとう、お兄さま」
あんなに小さかった妹の眩しい晴れ姿に、ルシアンは目を細めた。
アデリオール魔術学園入学式が開式の時間を迎えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ちなみに二年生のデイくんの学年カラーはシアンブルーと濃紺の組み合わせ。
四年生のルシアンはビリジアングリーンと濃紺の組み合わせです。
制服ってキュンですよねぇ……良き良き♡
そして学園には当然医務室があります。
一人の医療魔術師と一人の魔法薬剤師がいるそうな……。
それと?女子の剣術指南役にとある侯爵家の若夫人が決まったとか……。
そんな事ってある?とは思ってはいけません。
ここは異世界、ご都合主義の世界なのですから☆
339
あなたにおすすめの小説
今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました
四折 柊
恋愛
子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)
私の婚約者でも無いのに、婚約破棄とか何事ですか?
狼狼3
恋愛
「お前のような冷たくて愛想の無い女などと結婚出来るものか。もうお前とは絶交……そして、婚約破棄だ。じゃあな、グラッセマロン。」
「いやいや。私もう結婚してますし、貴方誰ですか?」
「俺を知らないだと………?冗談はよしてくれ。お前の愛するカーナトリエだぞ?」
「知らないですよ。……もしかして、夫の友達ですか?夫が帰ってくるまで家使いますか?……」
「だから、お前の夫が俺だって──」
少しずつ日差しが強くなっている頃。
昼食を作ろうと材料を買いに行こうとしたら、婚約者と名乗る人が居ました。
……誰コイツ。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中
【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪
山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。
「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」
そうですか…。
私は離婚届にサインをする。
私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。
使用人が出掛けるのを確認してから
「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」
ただずっと側にいてほしかった
アズやっこ
恋愛
ただ貴方にずっと側にいてほしかった…。
伯爵令息の彼と婚約し婚姻した。
騎士だった彼は隣国へ戦に行った。戦が終わっても帰ってこない彼。誰も消息は知らないと言う。
彼の部隊は敵に囲まれ部下の騎士達を逃がす為に囮になったと言われた。
隣国の騎士に捕まり捕虜になったのか、それとも…。
怪我をしたから、記憶を無くしたから戻って来れない、それでも良い。
貴方が生きていてくれれば。
❈ 作者独自の世界観です。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。