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ミニ番外編
バカでも使える魔道具ですから
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「ふっ……俺を捕らえたところでっ……この学園にはもう一人影が潜伏しているのだっ!」
「ああ、あの女の隠密か。アイツなら今頃騎士団の牢屋に到着している頃だろう」
「うそーん!」
マフレイン家専属の隠密が魔術学園に潜伏している旨を息子のルシアンから相談されていたフェリックス・ワイズ。
丁度学園祭なら保護者が学内をウロウロしていても怪しまれないと、彼は共に来た妻と末娘とは別行動で影たちを追っていた。
そして一人は既に捕らえ、もう一人も難なく見つけて難なく捕らえたのであった。
マフレイン家の隠密は程度が低くて楽だった、とフェリックスは思った。
カメリアの動向を探るべく張り付いて様子を伺っていたところを“メガネをかけたただの保護者”として近付き、赤子の手でも捻るが如く簡単に捕らえたのである。
影の男が口惜しそうに言う。
「な、なぜだっ……完璧に魔力や気配を消して群衆に紛れていたというのにっ」
それを聞きフェリックスは不敵な笑みを浮かべて答えた。
「逆に気配が無さすぎなんだよ。人間誰しもその者が持つ独特な気配がある。訓練を受けた人間だとしても消したつもりでも多少の気配は漏れ出すものだ。お前は優秀な影なのかもしれんが、その完璧な気配の無さが却ってお前自身の存在を知らしめる事となったわけだ」
「くっ……“有”の中から“無”を見つけ出したというわけかっ……!」
「そういう事だ」
フェリックスはそう答え、携帯通信魔道具で部下にこちらへ来るように指示を出した。
そのフェリックスを見ながら影は嘲笑する。
「ははは、俺個人としては負けだ。しかし、任務としてはこちらの勝ちだ、ワイズ卿」
「……どういう事だ?」
フェリックスを目を眇めて影を見た。
負け惜しみで口から出まかせを言っているわけではないと口調でわかる。
影は勝ち誇ったようにフェリックスに告げた。
「お前らはアーバン坊ちゃんを侮った、それがお前らの敗因だよ」
「アーバン・マフレインをバカだと思っている事は否定しないが、警戒を怠ってはいない。皆で奴の行動は監視している」
「はっ、それはお見逸れした。あんなバカ坊にまで隙を見せず対処するとは……しかしな、バカでも道具はちゃんと使えるんだぞ?」
「アーバン・マフレインが魔道具を持っていてそれを使うというのか?学園内は結界が張られていて、たとえ秘密裏に持ち込んだとしても無許可の魔道具の使用は不可能だ」
先だっての聖女の魅了事件の際に、学園全体の魅了解除を依頼したフェリックスの幼馴染であるアルト・ジ・コルベール卿にその結界を張って貰ったのだ。
西と東の両大陸合わせても頂点に君臨する術者の結界だ。
どんな優秀な魔術師や魔道具師が開発した魔道具でも通用しないはず。
それであるはずなのに男の表情からは絶対的な自信が窺える。
怪訝な顔をするフェリックスに、影は勝ち誇り、笑う。
「あはははっ!残念だったな!坊ちゃんが持っているのは認識阻害魔法を展開させる魔道具だ。オマケに転移魔法を用いられる魔道具も持っている!」
「どのような高度な技術を用いて作られた魔道具でも学園内は使用不可だ」
「それが使えるんだよ。なんせその魔道具はかの大賢者バルク・イグリードが気まぐれに作った物なんだからな!」
「なっ……!?」
“大賢者印の魔道具シリーズ”
そのような物がかつて存在していた事はフェリックスも知っていた。
暇を持て余した大賢者が、数百年前に遊び半分でどのような相殺魔法や結界魔法をも凌駕する魔道具を開発したという。
あまりに完璧な魔道具で、悪用される事を恐れた各国の国王が直々に大賢者にその魔道具の回収を嘆願したらしい。
その時にほとんどの魔道具が回収され大賢者の家の物置に転がっていると聞き及んでいたのだが……回収されなかった魔道具が存在していたのいうのか。
なんとはた迷惑な物を……しかも回収ミスとは。
フェリックスはこの件が終わったら、アルトを通して大賢者に抗議しようと堅く誓った。
フェリックス自身にそれが出来ない場合はアルトに頼めばいい。
しかし今はそれどころではない。
フェリックスは影の胸倉を掴んで問い詰める。
「アーバン・マフレインがその大賢者印の魔道具を使用するというのは間違いないんだな?」
キツく締め上げられ、影は苦しそうに、しかし下卑た笑みを浮かべて答えた。
「旦那様が坊ちゃんに“高価な物だから壊すなよ?”と言いながら渡しているのをこの目で見た。そしてあのバカだけど狡猾な坊ちゃんの事だ。この学園祭というチャンスを逃さず行動に移すだろうよっ……」
「チッ、子供の玩具じゃないんだぞっ」
フェリックスは締め上げていた影をやって来た部下に引渡し、急ぎルシアン達の元へと向かった。
そして既にカメリアが突然消えたと騒然となっている医務室で遅かったかと臍を噛む。
フェリックスの姿を見て、ルシアンが珍しく動揺して訴えた。
「父さん!カメリア先輩が突然、姿が見えなくなったんだっ……!」
「落ち着け。カメリア嬢は認識阻害の魔道具を使用したアーバン・マフレインに連れ去られたに違いない」
「に、認識阻害の魔道具っ?道理で気配も魔力も辿れないわけだ……」
それを聞き、ルシアンと共にいた親友のノア・ジャクソンが顔色を悪くして言う。
「そ、そんなのどうやって探せばいいんだっ?物理的に学園中を探し回るのかっ?でもそうやっている間にカメリア先輩の身に何か起きたらっ……!」
フェリックスはどう対処するべきかを冷静に考えた。
こういう時こそ冷静にならなければならない。
『こうなったら学園中を巻き込むか。カメリア嬢のためにもあまり事を大きくはしたくはなかったが、学内放送を流して学園内全ての教室をその場にいる人間全員で一斉に調べるしか手はないか……』
そうやってフェリックスが思案していると、同じく医務室にいた娘のノエルが父親に言った。
「のえる、かめのおねぇちゃんがどこにいったかわかるよ?」
「え?」
ノエルの側にいた母親のハノンが娘の顔を覗き込んで確認する。
「ノエル、それは本当?カメリアさんの居場所がわかるのね?」
「うん!かめのおねぇちゃんがいなくなるまえに、“とりから”のにおいがしたもん!」
「トリカラ?屋台でノエルが食べられなかったあのトリカラ?」
ハノンがそう訊ねるとノエルは元気よく返事をした。
「うん!」
フェリックスは娘を抱き上げる。
「そのトリカラの匂いは確かにしたのか?もしかしてノエルはその匂いを辿れるか?」
「たどる?おいかけっこするってこと?」
「ああそうだよ。隠れんぼのオニがトリカラを持っているかもしれない。ノエル、探せるか?」
「うん!さがす!とりからたべたいもん!」
ノエルは目を輝かせてそう答えた。
「ああ、あの女の隠密か。アイツなら今頃騎士団の牢屋に到着している頃だろう」
「うそーん!」
マフレイン家専属の隠密が魔術学園に潜伏している旨を息子のルシアンから相談されていたフェリックス・ワイズ。
丁度学園祭なら保護者が学内をウロウロしていても怪しまれないと、彼は共に来た妻と末娘とは別行動で影たちを追っていた。
そして一人は既に捕らえ、もう一人も難なく見つけて難なく捕らえたのであった。
マフレイン家の隠密は程度が低くて楽だった、とフェリックスは思った。
カメリアの動向を探るべく張り付いて様子を伺っていたところを“メガネをかけたただの保護者”として近付き、赤子の手でも捻るが如く簡単に捕らえたのである。
影の男が口惜しそうに言う。
「な、なぜだっ……完璧に魔力や気配を消して群衆に紛れていたというのにっ」
それを聞きフェリックスは不敵な笑みを浮かべて答えた。
「逆に気配が無さすぎなんだよ。人間誰しもその者が持つ独特な気配がある。訓練を受けた人間だとしても消したつもりでも多少の気配は漏れ出すものだ。お前は優秀な影なのかもしれんが、その完璧な気配の無さが却ってお前自身の存在を知らしめる事となったわけだ」
「くっ……“有”の中から“無”を見つけ出したというわけかっ……!」
「そういう事だ」
フェリックスはそう答え、携帯通信魔道具で部下にこちらへ来るように指示を出した。
そのフェリックスを見ながら影は嘲笑する。
「ははは、俺個人としては負けだ。しかし、任務としてはこちらの勝ちだ、ワイズ卿」
「……どういう事だ?」
フェリックスを目を眇めて影を見た。
負け惜しみで口から出まかせを言っているわけではないと口調でわかる。
影は勝ち誇ったようにフェリックスに告げた。
「お前らはアーバン坊ちゃんを侮った、それがお前らの敗因だよ」
「アーバン・マフレインをバカだと思っている事は否定しないが、警戒を怠ってはいない。皆で奴の行動は監視している」
「はっ、それはお見逸れした。あんなバカ坊にまで隙を見せず対処するとは……しかしな、バカでも道具はちゃんと使えるんだぞ?」
「アーバン・マフレインが魔道具を持っていてそれを使うというのか?学園内は結界が張られていて、たとえ秘密裏に持ち込んだとしても無許可の魔道具の使用は不可能だ」
先だっての聖女の魅了事件の際に、学園全体の魅了解除を依頼したフェリックスの幼馴染であるアルト・ジ・コルベール卿にその結界を張って貰ったのだ。
西と東の両大陸合わせても頂点に君臨する術者の結界だ。
どんな優秀な魔術師や魔道具師が開発した魔道具でも通用しないはず。
それであるはずなのに男の表情からは絶対的な自信が窺える。
怪訝な顔をするフェリックスに、影は勝ち誇り、笑う。
「あはははっ!残念だったな!坊ちゃんが持っているのは認識阻害魔法を展開させる魔道具だ。オマケに転移魔法を用いられる魔道具も持っている!」
「どのような高度な技術を用いて作られた魔道具でも学園内は使用不可だ」
「それが使えるんだよ。なんせその魔道具はかの大賢者バルク・イグリードが気まぐれに作った物なんだからな!」
「なっ……!?」
“大賢者印の魔道具シリーズ”
そのような物がかつて存在していた事はフェリックスも知っていた。
暇を持て余した大賢者が、数百年前に遊び半分でどのような相殺魔法や結界魔法をも凌駕する魔道具を開発したという。
あまりに完璧な魔道具で、悪用される事を恐れた各国の国王が直々に大賢者にその魔道具の回収を嘆願したらしい。
その時にほとんどの魔道具が回収され大賢者の家の物置に転がっていると聞き及んでいたのだが……回収されなかった魔道具が存在していたのいうのか。
なんとはた迷惑な物を……しかも回収ミスとは。
フェリックスはこの件が終わったら、アルトを通して大賢者に抗議しようと堅く誓った。
フェリックス自身にそれが出来ない場合はアルトに頼めばいい。
しかし今はそれどころではない。
フェリックスは影の胸倉を掴んで問い詰める。
「アーバン・マフレインがその大賢者印の魔道具を使用するというのは間違いないんだな?」
キツく締め上げられ、影は苦しそうに、しかし下卑た笑みを浮かべて答えた。
「旦那様が坊ちゃんに“高価な物だから壊すなよ?”と言いながら渡しているのをこの目で見た。そしてあのバカだけど狡猾な坊ちゃんの事だ。この学園祭というチャンスを逃さず行動に移すだろうよっ……」
「チッ、子供の玩具じゃないんだぞっ」
フェリックスは締め上げていた影をやって来た部下に引渡し、急ぎルシアン達の元へと向かった。
そして既にカメリアが突然消えたと騒然となっている医務室で遅かったかと臍を噛む。
フェリックスの姿を見て、ルシアンが珍しく動揺して訴えた。
「父さん!カメリア先輩が突然、姿が見えなくなったんだっ……!」
「落ち着け。カメリア嬢は認識阻害の魔道具を使用したアーバン・マフレインに連れ去られたに違いない」
「に、認識阻害の魔道具っ?道理で気配も魔力も辿れないわけだ……」
それを聞き、ルシアンと共にいた親友のノア・ジャクソンが顔色を悪くして言う。
「そ、そんなのどうやって探せばいいんだっ?物理的に学園中を探し回るのかっ?でもそうやっている間にカメリア先輩の身に何か起きたらっ……!」
フェリックスはどう対処するべきかを冷静に考えた。
こういう時こそ冷静にならなければならない。
『こうなったら学園中を巻き込むか。カメリア嬢のためにもあまり事を大きくはしたくはなかったが、学内放送を流して学園内全ての教室をその場にいる人間全員で一斉に調べるしか手はないか……』
そうやってフェリックスが思案していると、同じく医務室にいた娘のノエルが父親に言った。
「のえる、かめのおねぇちゃんがどこにいったかわかるよ?」
「え?」
ノエルの側にいた母親のハノンが娘の顔を覗き込んで確認する。
「ノエル、それは本当?カメリアさんの居場所がわかるのね?」
「うん!かめのおねぇちゃんがいなくなるまえに、“とりから”のにおいがしたもん!」
「トリカラ?屋台でノエルが食べられなかったあのトリカラ?」
ハノンがそう訊ねるとノエルは元気よく返事をした。
「うん!」
フェリックスは娘を抱き上げる。
「そのトリカラの匂いは確かにしたのか?もしかしてノエルはその匂いを辿れるか?」
「たどる?おいかけっこするってこと?」
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