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ミニ番外編
通りすがりのただの保護者
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「対象は現在単独で行動中。医務室へ移動していると思われる。残念ながら医務室まで数メートルの距離なので接触する時間はないと見られる……」
とある女性の用務員がなにやら小さな魔道具に話しかけている。
どうやら近頃開発された通信用の魔道具らしい。
女性用務員は魔道具の通信を切り、魔術学園用務員の制服の内ポケットに入れた。
そしてそのまま医務室の出入口が見えやすい場所まで移動し、物陰に隠れた。
身を潜め気配を消し影に徹する。
ターゲットであるカメリア・ランバートが再び医務室から出てくるまでここで待機するらしい。
そう、女性用務員はマフレイン家の隠密であった。
こうして用務員として学園内を自由に歩き回り、秘密裏にカメリアの行動を監視している。
今日はアーバンの指示でカメリアが一人になる隙を狙い尾行を続けているのだ。
カメリアが医務室に入って行った後、ややあって数名の生徒が医務室へと入って行った。
あの生徒たちは医務室の真の主と称されるメロディ・ブレゲに会いに頻繁に医務室を訪れている生徒たちだ。
学園内には特別な術が掛けられており、監視や盗聴目的の魔術や魔道具の設置が出来ない。
なので医務室内で何が行われているのかは分からないが、いつも同じメンバーが主に放課後に出入口しているところを見ると、私的な集まりなのではないかと推測する。
例えば同好会やファン倶楽部的な何かの。
女性の影の先輩であるもう一人のマフレイン家の隠密は、その集まりの情報を何やら掴んでいるらしいが。
経験の差を見せつけられているようで少々癪だが、それならばこちらは足を動かしてカメリアの動向を把握して手柄を立てるしかない。
成果を出した上で貰える特別手当欲しさに、その影は秘密裏にカメリアを執拗に追い回していた。
カメリアが医務室から出てくるまでこのままここで潜んでいようと決めた影だが、ふいに背後から異様な冷気を感じた。
「っ……!?」
慌てて振り返るとそこには、メガネをかけた一人の男性が立っていた。
こんなに近付かれるまで全く気配を感じなかった。
だけどそれよりも何よりも影を驚かせたのはその男性の容姿の良さである。
逞しい長身痩躯に恐ろしいほど整った美しい顔。
その印象を和らげるためのメガネなのかもしれないが、そんな物ではその男の類まれなる容貌を誤魔化しきれるはずがない。
「っあ……」
女性の影は口をはくはくとさせてその男を凝視した。
すると男は冷たい笑みを浮かべたまま言う。
「聖女の魅了事件以降、アデリオール魔術学園は騎士団の監視下に置かれている状態なのは知ってるいるか?」
「は?……え?……あの……?貴方は……?」
女性の影は内心、『なんてイケボ!この人声までイケメン!』と思った事はおくびにも出さずに聞き返す。
男はそんな影の様子などお構いなしに、冷たく硬質的な笑みを零す。
「私の事は気にするな、通りすがりのただの保護者だ。話を戻すが……当然、騎士団は外部からの干渉を警戒し無許可で学園に潜伏する隠密共を殲滅する事と決めている」
「っ……」
「正直に言った方が身のためだぞ。言え、もう一人の影はどこにいる?」
「ヒッ……!」
ただの通りすがりの保護者がこんな隙のない気配を醸し出すか!と言い返したくなるが、既に逃げ場を封じられているのがわかる。
『捕らえられ、尋問にかけられる……』
影として訓練を受けている限り敵にこちらの情報を渡すなど有り得ない。
たとえ拷問に掛けられたとしても……。
そして逆に女の隠密は時として女である事を武器にしてハニトラを仕掛け、相手から情報を引き出すようにと訓練されているのだ。
『こんな色男なら相当女にモテて遊んでいるはずだわ。だけど数多の凄腕の娼婦から指南を受けている私の手練手管に掛かればどんな男もイチコロよ。実際に何度もハニトラで敵を落とした事がある。……でも今回のハニトラはなんだかこちらのご褒美になるわね』
影はそう思い、用務員制服の胸元のボタン上部を外して白く滑らかなデコルテを晒した。
そして声色や視線を甘くして男に告げる。
「何か勘違いされているのでは?私はただの用務員です。そんなにお疑いなら、別室で二人だけで取り調べして下さってもいいのですよ……?」
そう言って男に撓垂れ掛かろうとした……が即座にすらりと身を躱され、影はバランスを崩して転びそうになった。
体勢を調えてもう一度相手に色目を向けようとしたその瞬間、殺気を含んだ魔力を向けられ体が硬直した。
「ヒッ」
「近寄るな気持ち悪い。私に触れてよいのは妻だけだ」
男はそう言い捨てて魔力により影を拘束した。
そして「もういい。お前の自供など要らん。もう一人はこちらで炙り出すさ」と言って、同行していたらしき仲間の騎士に影を引き渡した。
ただの保護者と称する男に抵抗する間もなく簡単に捕らえられ、
そして女の渾身の色仕掛けも歯牙にもかけられなかった。
隠密としても女としてもプライドをへし折られた影は、その後騎士団の留置所で男の名を聞かされた。
“フェリックス・ワイズ”
アデリオール騎士団の中でも「クレバスの騎士」「絶対零度の男」と評される実力者であり、カメリアの周りにいる要注意人物と言わるルシアン・ワイズの父親である、と。
それを知り、影はがっくりと項垂れてつぶやいた。
「確かに保護者だけど……ただのもへったくれもないじゃない……」
とある女性の用務員がなにやら小さな魔道具に話しかけている。
どうやら近頃開発された通信用の魔道具らしい。
女性用務員は魔道具の通信を切り、魔術学園用務員の制服の内ポケットに入れた。
そしてそのまま医務室の出入口が見えやすい場所まで移動し、物陰に隠れた。
身を潜め気配を消し影に徹する。
ターゲットであるカメリア・ランバートが再び医務室から出てくるまでここで待機するらしい。
そう、女性用務員はマフレイン家の隠密であった。
こうして用務員として学園内を自由に歩き回り、秘密裏にカメリアの行動を監視している。
今日はアーバンの指示でカメリアが一人になる隙を狙い尾行を続けているのだ。
カメリアが医務室に入って行った後、ややあって数名の生徒が医務室へと入って行った。
あの生徒たちは医務室の真の主と称されるメロディ・ブレゲに会いに頻繁に医務室を訪れている生徒たちだ。
学園内には特別な術が掛けられており、監視や盗聴目的の魔術や魔道具の設置が出来ない。
なので医務室内で何が行われているのかは分からないが、いつも同じメンバーが主に放課後に出入口しているところを見ると、私的な集まりなのではないかと推測する。
例えば同好会やファン倶楽部的な何かの。
女性の影の先輩であるもう一人のマフレイン家の隠密は、その集まりの情報を何やら掴んでいるらしいが。
経験の差を見せつけられているようで少々癪だが、それならばこちらは足を動かしてカメリアの動向を把握して手柄を立てるしかない。
成果を出した上で貰える特別手当欲しさに、その影は秘密裏にカメリアを執拗に追い回していた。
カメリアが医務室から出てくるまでこのままここで潜んでいようと決めた影だが、ふいに背後から異様な冷気を感じた。
「っ……!?」
慌てて振り返るとそこには、メガネをかけた一人の男性が立っていた。
こんなに近付かれるまで全く気配を感じなかった。
だけどそれよりも何よりも影を驚かせたのはその男性の容姿の良さである。
逞しい長身痩躯に恐ろしいほど整った美しい顔。
その印象を和らげるためのメガネなのかもしれないが、そんな物ではその男の類まれなる容貌を誤魔化しきれるはずがない。
「っあ……」
女性の影は口をはくはくとさせてその男を凝視した。
すると男は冷たい笑みを浮かべたまま言う。
「聖女の魅了事件以降、アデリオール魔術学園は騎士団の監視下に置かれている状態なのは知ってるいるか?」
「は?……え?……あの……?貴方は……?」
女性の影は内心、『なんてイケボ!この人声までイケメン!』と思った事はおくびにも出さずに聞き返す。
男はそんな影の様子などお構いなしに、冷たく硬質的な笑みを零す。
「私の事は気にするな、通りすがりのただの保護者だ。話を戻すが……当然、騎士団は外部からの干渉を警戒し無許可で学園に潜伏する隠密共を殲滅する事と決めている」
「っ……」
「正直に言った方が身のためだぞ。言え、もう一人の影はどこにいる?」
「ヒッ……!」
ただの通りすがりの保護者がこんな隙のない気配を醸し出すか!と言い返したくなるが、既に逃げ場を封じられているのがわかる。
『捕らえられ、尋問にかけられる……』
影として訓練を受けている限り敵にこちらの情報を渡すなど有り得ない。
たとえ拷問に掛けられたとしても……。
そして逆に女の隠密は時として女である事を武器にしてハニトラを仕掛け、相手から情報を引き出すようにと訓練されているのだ。
『こんな色男なら相当女にモテて遊んでいるはずだわ。だけど数多の凄腕の娼婦から指南を受けている私の手練手管に掛かればどんな男もイチコロよ。実際に何度もハニトラで敵を落とした事がある。……でも今回のハニトラはなんだかこちらのご褒美になるわね』
影はそう思い、用務員制服の胸元のボタン上部を外して白く滑らかなデコルテを晒した。
そして声色や視線を甘くして男に告げる。
「何か勘違いされているのでは?私はただの用務員です。そんなにお疑いなら、別室で二人だけで取り調べして下さってもいいのですよ……?」
そう言って男に撓垂れ掛かろうとした……が即座にすらりと身を躱され、影はバランスを崩して転びそうになった。
体勢を調えてもう一度相手に色目を向けようとしたその瞬間、殺気を含んだ魔力を向けられ体が硬直した。
「ヒッ」
「近寄るな気持ち悪い。私に触れてよいのは妻だけだ」
男はそう言い捨てて魔力により影を拘束した。
そして「もういい。お前の自供など要らん。もう一人はこちらで炙り出すさ」と言って、同行していたらしき仲間の騎士に影を引き渡した。
ただの保護者と称する男に抵抗する間もなく簡単に捕らえられ、
そして女の渾身の色仕掛けも歯牙にもかけられなかった。
隠密としても女としてもプライドをへし折られた影は、その後騎士団の留置所で男の名を聞かされた。
“フェリックス・ワイズ”
アデリオール騎士団の中でも「クレバスの騎士」「絶対零度の男」と評される実力者であり、カメリアの周りにいる要注意人物と言わるルシアン・ワイズの父親である、と。
それを知り、影はがっくりと項垂れてつぶやいた。
「確かに保護者だけど……ただのもへったくれもないじゃない……」
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