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ミニ番外編
ノエルの入学式
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子の成長はまこと早いもので、ハノンとフェリックスの第三子ノエルは六歳になり、初等学校へ入学した。
チャコールグレーのウール生地に白の丸襟がポイントのワンピースタイプの初等学校の制服に身を包んだ末娘を見た時、フェリックスの目に一粒の雫がキラリと光った。
「立派になったものだ……」
感慨深げにそうつぶやく夫にハノンは思わず吹き出す。
「ぷっ……ふふふ、まだ初等学校に入学しただけじゃない」
「しかし、ほんの少し前に生まれたばかりだと思っていたのにっ……」
それについてはハノンも同意見であった。
本当に月日が経つのは早いものである。
「そうね。生まれたばかりのノエルを初めて抱いたのがつい昨日の事のように思えるのに」
「…………………ズズッ」
「やだ泣かないでよ?これから入学式に出席するんだから。ただでさえ貴方は目立つのに、泣いて赤い瞳と相まって目を真っ赤にしたら学校の講堂が騒然となってしまうわ」
「……なんとか耐えるよ……」
と、あまり自信なさげに言ったフェリックスだがそれは杞憂に終わり、娘の入学式で泣きに泣いて周囲を驚かすといった事態にならなかった。
なぜなら……
「……父上、あれは泣き過ぎですよ」
「しかしだなフェリックス……!ノエルたんがっ……あのノエルたんがあんなにも立派に成長した姿を目の当たりにして感動せずにはいられんだろうっ……オオ゛……ッ」
「だからといって講堂で号泣など」
「だってノエルたんが可愛かったんだもんっ!!」
孫の入学式に無理やり…コホン、急遽出席した前ワイズ侯爵のアルドンが、フェリックスの涙も引くほど豪快に号泣したからである。
本当はフェリックスの兄である現ワイズ侯爵ヴィクトルを始めとする、キースやバスターといったワイズ家の男たちが挙って式に出ると言ったのだが、ワイズ家門一族郎党が押しかけては初等学校がとんでもない騒ぎとなってしまうとアメリアが止めたのである。
そして妥協案としてノエルの祖父であるアルドンが代表として出席することになったというわけなのだ。
アルドンの見張り役として、何気にちゃっかり自分も入学式出席の権利をゲットしたアメリアであった。
そうして出席した入学式で、かつては氷の侯爵と呼ばれた男が今やただの好々爺と化した姿を晒したというわけなのだ。
「父上のせいで一世一代の末娘の晴れ姿に感動する暇もありませんでしたよ」
「何をっ?良いではないかっ、お前は父親としてこれからもノエルたんの式典に出席することが出来るのだから。しかしワシはもう、この次ノエルたんが魔術学園の入学式を迎えるより先にあの世からお迎えが来るかもしれんのだぞっ!」
「未だにアデリオールベアーと剣一振で渡り合う父上がそんな簡単にくたばる筈がないでしょう」
「そんなのわからんだろうっ!明日にでも天使が♪ラ~♪とお迎えに来るかもしれんだろうっ!」
父と息子が言い合いを繰り広げる中、ハノンがアルドンを宥めるように告げる。
「まぁまぁお義父さま。そんな事おっしゃらずに長生きをして、いずれはノエルの結婚式にも出てやってくださいな」
「「結婚式だとっ?そんな日は永久に来なくていい!」」
先程まで言い争っていたのに、仲良く声を揃えて同時に言うフェリックスとアルドンにハノンはもう苦笑いするしかない。
そんな父と祖父にノエルは無邪気に言う。
「ノエル、けっこんしきはすきよ?だっておいしいおりょうりがたくさんでるもの」
「結婚式なぞ挙げんでも美味しいものを沢山ご馳走てしあげるぞノエルたん」
「ホント?おじぃちゃま!」
「ああ本当だとも」
「わーい!じゃあノエル、ジョルジェットパーラーのスペシャルジャンボデラックスマーベラスエクセレントワンダフルパフェにする~!」
「ジョル…?マーベラス……なんだって?」
ノエルがスラスラと口にしたパフェの名前を拾い損ねたアルドンが聞き返す。
ノエルはそんな祖父のためにもう一度言う。
「ジョルジェットパーラーの、スペシャルジャンボデラックスマーベラスエクセレントワンダフルパフェよ、おじぃちゃま」
「……スペ……エクセ……パへ?」
やはり覚えきれないアルドンのためにハノンが補足する。
「ふふ。ジョルジェットパーラーは最近オープンしたスイーツメニューが豊富なパーラーで、今ノエルが言ったパフェが若い女の子たちの間で大人気なんですよ」
「ほほぅ!」
それを聞き、アルドンの眼光が鋭く光った。
「ノエルたんはそこの店のパへーが好きなのだな?」
祖父に訊ねられ、ノエルは大きくそして元気よくお返事をする。
「うんっ!」
「よしっ!ノエルたんの入学祝いは何にしようかと決めかねていたところだっ!そのパーラーとやらを一日買い取って、そのパへーを食べ放題にしようではないか!なんならノエルたんのためのノエルたんパヘーも作らせよう!ケーキでもクッキーでもなんでも良いぞっ!」
「おじぃちゃま!すてき!」
ノエルが目を輝かせてアルドンを見る。
可愛い孫にキラキラした羨望の眼差しを向けられて、アルドンは更に調子付いた。
「よし!もういっそのことそのジョル…何とやらパーラーを買い取ろう!!そして店の名を“ノエルたんパーラー”にしてくれようぞっ!!」
「きゃー!おじぃちゃまだいすき!」
しかし最高潮にテンションを上げる祖父と孫に、その妻と母がぶすりと釘をぶっ刺す。
「「調子付くのもその辺にしなさい」」
「あ、はい……」
「え~、ノエルのおみせ~……」
「コラ、ノエル!」
不満そうに頬を膨らますノエルにとうとうハノンの小さな雷が落ちたのであった。
しかし後日、件のパーラーに仲良くスペシャルジャンボデラックスマーベラスエクセレントワンダフルパフェを食べる祖父と孫の姿があったという。
「ママとお祖母ちゃまにはナイショだぞ?」
と言いながらアルドンはテーブルに乗り切れないほどのスイーツをノエルにご馳走した。
しかしハノンはそんなことはお見通しだといわんばかりに、沢山の根菜や新鮮な葉物野菜と茹でたササミのサラダを作っていたのだった。
その日のノエルの夕食はもちろん、そのサラダと温かなジンジャースープだったそうな。
─────────────────────
これからどんどん時間が進み、子供たちは大きくなってゆきます。
でもその前にまずはノエルたんのエピソードを数話お届けしますね。
チャコールグレーのウール生地に白の丸襟がポイントのワンピースタイプの初等学校の制服に身を包んだ末娘を見た時、フェリックスの目に一粒の雫がキラリと光った。
「立派になったものだ……」
感慨深げにそうつぶやく夫にハノンは思わず吹き出す。
「ぷっ……ふふふ、まだ初等学校に入学しただけじゃない」
「しかし、ほんの少し前に生まれたばかりだと思っていたのにっ……」
それについてはハノンも同意見であった。
本当に月日が経つのは早いものである。
「そうね。生まれたばかりのノエルを初めて抱いたのがつい昨日の事のように思えるのに」
「…………………ズズッ」
「やだ泣かないでよ?これから入学式に出席するんだから。ただでさえ貴方は目立つのに、泣いて赤い瞳と相まって目を真っ赤にしたら学校の講堂が騒然となってしまうわ」
「……なんとか耐えるよ……」
と、あまり自信なさげに言ったフェリックスだがそれは杞憂に終わり、娘の入学式で泣きに泣いて周囲を驚かすといった事態にならなかった。
なぜなら……
「……父上、あれは泣き過ぎですよ」
「しかしだなフェリックス……!ノエルたんがっ……あのノエルたんがあんなにも立派に成長した姿を目の当たりにして感動せずにはいられんだろうっ……オオ゛……ッ」
「だからといって講堂で号泣など」
「だってノエルたんが可愛かったんだもんっ!!」
孫の入学式に無理やり…コホン、急遽出席した前ワイズ侯爵のアルドンが、フェリックスの涙も引くほど豪快に号泣したからである。
本当はフェリックスの兄である現ワイズ侯爵ヴィクトルを始めとする、キースやバスターといったワイズ家の男たちが挙って式に出ると言ったのだが、ワイズ家門一族郎党が押しかけては初等学校がとんでもない騒ぎとなってしまうとアメリアが止めたのである。
そして妥協案としてノエルの祖父であるアルドンが代表として出席することになったというわけなのだ。
アルドンの見張り役として、何気にちゃっかり自分も入学式出席の権利をゲットしたアメリアであった。
そうして出席した入学式で、かつては氷の侯爵と呼ばれた男が今やただの好々爺と化した姿を晒したというわけなのだ。
「父上のせいで一世一代の末娘の晴れ姿に感動する暇もありませんでしたよ」
「何をっ?良いではないかっ、お前は父親としてこれからもノエルたんの式典に出席することが出来るのだから。しかしワシはもう、この次ノエルたんが魔術学園の入学式を迎えるより先にあの世からお迎えが来るかもしれんのだぞっ!」
「未だにアデリオールベアーと剣一振で渡り合う父上がそんな簡単にくたばる筈がないでしょう」
「そんなのわからんだろうっ!明日にでも天使が♪ラ~♪とお迎えに来るかもしれんだろうっ!」
父と息子が言い合いを繰り広げる中、ハノンがアルドンを宥めるように告げる。
「まぁまぁお義父さま。そんな事おっしゃらずに長生きをして、いずれはノエルの結婚式にも出てやってくださいな」
「「結婚式だとっ?そんな日は永久に来なくていい!」」
先程まで言い争っていたのに、仲良く声を揃えて同時に言うフェリックスとアルドンにハノンはもう苦笑いするしかない。
そんな父と祖父にノエルは無邪気に言う。
「ノエル、けっこんしきはすきよ?だっておいしいおりょうりがたくさんでるもの」
「結婚式なぞ挙げんでも美味しいものを沢山ご馳走てしあげるぞノエルたん」
「ホント?おじぃちゃま!」
「ああ本当だとも」
「わーい!じゃあノエル、ジョルジェットパーラーのスペシャルジャンボデラックスマーベラスエクセレントワンダフルパフェにする~!」
「ジョル…?マーベラス……なんだって?」
ノエルがスラスラと口にしたパフェの名前を拾い損ねたアルドンが聞き返す。
ノエルはそんな祖父のためにもう一度言う。
「ジョルジェットパーラーの、スペシャルジャンボデラックスマーベラスエクセレントワンダフルパフェよ、おじぃちゃま」
「……スペ……エクセ……パへ?」
やはり覚えきれないアルドンのためにハノンが補足する。
「ふふ。ジョルジェットパーラーは最近オープンしたスイーツメニューが豊富なパーラーで、今ノエルが言ったパフェが若い女の子たちの間で大人気なんですよ」
「ほほぅ!」
それを聞き、アルドンの眼光が鋭く光った。
「ノエルたんはそこの店のパへーが好きなのだな?」
祖父に訊ねられ、ノエルは大きくそして元気よくお返事をする。
「うんっ!」
「よしっ!ノエルたんの入学祝いは何にしようかと決めかねていたところだっ!そのパーラーとやらを一日買い取って、そのパへーを食べ放題にしようではないか!なんならノエルたんのためのノエルたんパヘーも作らせよう!ケーキでもクッキーでもなんでも良いぞっ!」
「おじぃちゃま!すてき!」
ノエルが目を輝かせてアルドンを見る。
可愛い孫にキラキラした羨望の眼差しを向けられて、アルドンは更に調子付いた。
「よし!もういっそのことそのジョル…何とやらパーラーを買い取ろう!!そして店の名を“ノエルたんパーラー”にしてくれようぞっ!!」
「きゃー!おじぃちゃまだいすき!」
しかし最高潮にテンションを上げる祖父と孫に、その妻と母がぶすりと釘をぶっ刺す。
「「調子付くのもその辺にしなさい」」
「あ、はい……」
「え~、ノエルのおみせ~……」
「コラ、ノエル!」
不満そうに頬を膨らますノエルにとうとうハノンの小さな雷が落ちたのであった。
しかし後日、件のパーラーに仲良くスペシャルジャンボデラックスマーベラスエクセレントワンダフルパフェを食べる祖父と孫の姿があったという。
「ママとお祖母ちゃまにはナイショだぞ?」
と言いながらアルドンはテーブルに乗り切れないほどのスイーツをノエルにご馳走した。
しかしハノンはそんなことはお見通しだといわんばかりに、沢山の根菜や新鮮な葉物野菜と茹でたササミのサラダを作っていたのだった。
その日のノエルの夕食はもちろん、そのサラダと温かなジンジャースープだったそうな。
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これからどんどん時間が進み、子供たちは大きくなってゆきます。
でもその前にまずはノエルたんのエピソードを数話お届けしますね。
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