無関係だった私があなたの子どもを生んだ訳

キムラましゅろう

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ミニ番外編

ノエルのお弁当箱

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「ノエル、これはあなたの仕業ね?」

初等学校に入学したノエル。

新一年生は最初の三ヶ月間は午前中のみ授業だったがいよいよ明日から午後の授業が始まる。
とはいっても週に三回、一時間だけだが。

そのためノエルは明日からお弁当を持って行くのだが、伯爵夫人になったといえど家族が口にする食事は自分で作っている(もちろんメイドや下男たちが買い物や下拵えの一部や片付けなどをしているが)ハノンが、入学前にノエルのために購入したお弁当箱を戸棚から取り出してその異変に気づいた。

そしてそのお弁当箱をリビングでパパのお膝の上で“こども魔導大図鑑”を読んでいたノエルに突き出して、冒頭の言葉を告げたのである。

母親が手にしているお弁当箱を見て、ノエルは嬉しそうに言う。

「あ!ノエルのおべんとうばこだー。ママ、ノエルのすきなチョコミントアイスもようのおべんとうばこにしてくれてありがとう!」

ハノンがノエルのために選んだお弁当箱は、
パステルカラーの優しいペールブルーにワッフルコーンにのったチョコミントアイスの柄が散りばめられた女の子らしい可愛いデザインのものだ。

ハノンは笑っていない笑みを浮かべ、愛娘に答える。

「どういたしまして。でもね?おかしいのよ。買った時とね?様子が違うの。」

ハノンのその言葉に、ノエルを膝に乗せていたフェリックスが訊ねる。

「何がおかしいんだ?見たところ普通の弁当箱に見えるが」

「どこが普通のお弁当箱なのっ?どう見てもサイズ感がおかしいでしょう!」

そう言ってハノンが掲げたお弁当箱は
およそ弁当箱とは言い難い、縦六十センチもある小包ほどのものであった。
その圧倒的な大きさとファンシーなチョコミントアイス柄がなんともちぐはぐな風情を醸し出している。

「え、そんな大きな弁当箱が売っているのか?」

「売っているわけないでしょう!もし売っていたとしても絶対に買わないわっ。ノエル、勝手に魔術でお弁当箱のサイズを変えたわねっ!」

ハノンが目くじらを立ててそう告げるとノエルは小さな肩を竦めながら答える。

「だってぇ~。とってもカワイイおべんとうばこだけどちょっとちいさかったんだもん~」

「元々のサイズでも結構な大きさはあったのよ!大人の男性用のお弁当箱の大きさを優に超える、縦三十センチもある大辞典サイズのお弁当箱だったんだから!女の子用の可愛い柄でそんなサイズのお弁当箱なんて売ってないからわざわざオーダーメイドで用意したのよ!」

「ぶっ……!」

ハノンの話を聞き、フェリックスはノエルと仲良く飲んでいたオレンジジュースを軽く吹き出してしまう。

「パパ、ジュースがもったいないわ?」

ノエルはそう言って小さなお手々で父親の口元をハンカチで拭いてやる。

「す、すまん。ありがとうノエル。でもな、元のお弁当箱の大きさでも充分だったんじゃないかなー……と、パパは思うよ?」

「えー、だってそれじゃあぜったいにおなかすくもん……」

フェリックスにそう答えたノエルにハノンが叱る。

「お家に帰ってオヤツを沢山食べるんだからそれで充分です」

「えー……!」

「とにかく!すぐに元のサイズに戻しなさい」

「せっかくまじゅつでおおきくしたのにー」

「こんな大きなお弁当箱なんて、食事を詰めても詰めても作り終わらないわよっ。それに毎日荷物を運ぶようにお弁当箱を抱えて通学するつもりなのっ?」

「まじゅつをつかえばラクだもーん」

「変な術のスキルばかり磨くんじゃありません!」

「えー、えー」

妻と娘の押し問答を黙って聞いていたフェリックスだが、やはりノエルの持つそこの知れない魔力量とそれを幼くして難なく扱うその才能に舌を巻いていた。

すでに物質の質量変化の魔術まで用いれるようになっているとは……。

やはりノエルにはきちんとした魔導の師が必要だなと、フェリックスはそのためにどうするべきかを思案し始めたのであった。





─────────────────────



さて、ノエルに魔術や魔法……魔導の全てを教える師匠は誰となるでしょうか?

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