怪異の忘れ物

木全伸治

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致死量

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彼女が奇麗に食べ終わるのを俺は待った。予想通り平然としている。
間違いなく、料理に致死量の毒を入れた。もし、普通の人間なら、食事の途中でもがき苦しみだして俺の目の前で、血を吐いて息を引き取っていたはずだ。
だが、奇麗に平らげているのに、その顔は平然としていた。
予想はしていたが、実際に目の前で致死量の毒を平然と平らげられると動揺する。
最悪、俺の思い過ごしで、彼女を毒殺してしまった愚かな男の方がマシだったと思う。
だが、こうして、何が起きてもいいようにわざわざ彼女を手料理を御馳走したいからと自分の家に誘ったのは間違いではなかった。
薬品のラベルには毒物危険取り扱い注意と明確に表示されていたし、会社で厳重に保管されている倉庫から、こっそりと盗み出した本物だ。人体に無害なはずはないのだが、彼女が苦しみ出すような素振りは一切ない。
「やはり、化け物か・・・」
つい、ため息が漏れる。そんな俺を彼女が怪訝そうに見た。
「ん? いま、なんて言った?」
「いや、ど、どうだった俺の料理、独り暮らしが長くて、ネットでバズった料理とか作って、それなりに自信あるんだけど」
「そう、うん、美味しかったわよ、パスタ」
「気分、悪いとかない? 体に合わない食材とかなかった?」
「なによ、私の口にあわなそうな食材使ったの? そういうのって、食べさせる前に聞かない?」
「そ、そうだよね。いや、あまりにも奇麗に食べるから、我慢して無理して全部食べてくれたのかなって思ってさ」
毒が効かないバケモノより、本当は毒で気分が悪くなっているが、俺に気を遣って平気なふりをしているというありえない願望を抱いたが、彼女は俺に苦笑を返した。
「なによ、急に手料理を御馳走してくれるって言うから喜んで食べたのに、まるで、美味しそうに食べた私が何かおかしいみたいな雰囲気は? まさか、私が嫌いそうな食材をわざと入れてびっくりさせるつもりだったの?」
「いや、そうじゃなくて、実は、いま君の食べた料理には致死量の毒が入っていたんだ。なのに君は平気な顔をしているから驚いているんだよ」
俺は我慢できず、ストレートに打ち明けた。
「毒? この私を殺そうとしたの?」
「ああ、そうさ、君は人間じゃないだろ。だから、毒を盛ってみたんだ」
「私が人間じゃないって、本気で思ってるの?」
「ああ、君、この前、コピー機の紙でちょっと指を切っただろ、その指、見せてみろよ、まだ一週間も経っていないのに傷跡ないだろ。普通の人間が、そんなに早く、傷跡が消えるわけないだろ」
「ああ、これ、地球人より、ちょっと治りが早いだけよ。バケモノじゃないわ。これでも、遺伝子的には地球人と混血できるくらいには近い種族なのよ」
「種族?」
「地球外生命体と言った方が分かりやすいかしら」
「おまえ、まさか、宇宙人?」
「そう、それ。私の生まれた星でも文明の発展とともに環境破壊が進み、環境を改善するよりも、その汚染された環境でも平然と生きられるように遺伝子レベルで肉体を改造したの。だから、どんな毒を盛ったのか知らないけど、そう簡単には死なない身体になってるの。分かる?」
「まさか、汚染された母星を捨てて、この地球を侵略に来たのか?」
「侵略というのは人聞き悪いわね、住民が得体のしれない何かと入れ替わっているというB級ホラーの見過ぎじゃない。私たちがしているのはただの移住。地球人を支配しようとは思っていない。ただし、このままいけば、地球人が自滅して、私たちだけが生き残るかもね」
「お前たちに、このままいけば地球を乗っ取られるというのか?」
「だから、そういう可能性があるというだけ。でも安心して、我々との混血が進めば、地球人という種が宇宙から完全に消えるのは回避できると思うけど」
「俺と子供を作れということか」
「そうした方が利口じゃないかって話よ」
ふと、人類がほとんど死んで、彼女によく似た人間だけが街を歩いている未来を想像して、ふと怖くなった。
「とんでもないプロポーズに聞こえるな」
「あら、どんな環境でも生きられる強い子供が欲しくないの?」
なんか、宇宙人に地球を売り渡す契約を迫られている気分だった。
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