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しおりを挟む今でこそ屈強な戦士として知られるセシルだが、幼い頃の彼は内向的で、武芸よりも本を読むのが好きな大人しい子どもであった。
騎馬民族の流れを汲むエドナでは、幼いころから戦う術を教え込まれる。
定住の地を持たず、奪い奪われた歴史を繰り返してきたが故に、大切なものを自身の手で守れるよう、親が子に教えるのだ。
もちろん王子であるセシルも例外ではない。
セシルの父エドナ国王は初めての子、それも男児を授かったことに歓喜し、我が子を誰よりも強い男にするのだと、事あるごとに周囲に漏らしていた。
しかしセシルは戦いを野蛮だと嫌い、剣の稽古もろくに受けず逃げ回った。
そんな息子に国王はひどく落胆したが、最終的には息子の意思を尊重した。
国を治める術は武力だけではないと。
そんなセシルの運命を変えたのが、シャロンとの出会いだった。
セシルが十歳を迎えたある日、呼ばれて行った玉座の間で、ロートスの王女との婚約が決まったことを聞かされた。
国王は見たこともないほど上機嫌だった。
ロートス国王が王女をエドナに嫁がせるとは思ってもいなかったのだろう。
同盟と言えば聞こえはいいが、ロートスは、歴史が浅く騎馬民族上がりのエドナを下に見ている節があった。
実際エドナ側から婚姻による同盟強化を打診したことが過去何度もあったようだが、ロートスはなんだかんだと理由をつけて断ってきた。
だがそんなロートスから、エドナに第一王女を嫁がせたいとの申し出があったというのだ。
ロートスからの書簡にエドナ国王をはじめ、重臣たちも喜んだ。
これは、両国が対等な関係に改善した証に他ならないと。
しかし当のセシルは冷静だった。
大人たちの浮かれぶりが、かえってそうさせたのかもしれない。
とにかく確かなのは、セシルに決定権がないということ。
自分の人生で、自分の伴侶なのにだ。
「セシル殿下、おめでとうございます!」
臣下たちが次々と口にする寿ぎの言葉をセシルは無表情で聞いていた。
しばらくしてロートスの王女との顔合わせの日取りが決まった。
場所はロートスで行うという。
(馬鹿馬鹿しい)
なにが“対等な関係”だ。
普通なら打診してきた側がこちらに来るのが筋だろう。
それに、花嫁はこのエドナで生涯を終えるのだ。
早いうちからこの地の慣習に慣れておいたほうが、後々大変な思いをせずに済むだろうに。
だが、喜ぶ周囲の顔を見ていると、何も言うことができなかった。
そして迎えた顔合わせの日。
セシルは豪華絢爛なロートスの宮殿に言葉を失った。
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