嘘つきな獣

クマ三郎@書籍&コミカライズ3作配信中

文字の大きさ
18 / 46

17

しおりを挟む




 次はいつ会えるだろう。
 会えたらどんな話をしよう。
 年頃な事もあり、妄想は無限に膨らんだ。
 師匠の息子アレンに『女の子は男らしさにときめくんだぜ!』と言われ、日々男らしさについて研究した。
 またある日は『やっぱ男なら“俺”でしょ』とそそのかされ、それまで【私】だった一人称を【俺】に変えた。
 日に日に変わっていくセシルに父王は喜んだが、周囲の反応は様々だった。
 特にうるさかったのがヘイルズ公爵だ。
 ヘイルズ公爵家はエドナの建国に尽力した一族で、昔から重臣として重用してきた家門だった。
 王家との縁が何としても欲しいヘイルズ公爵は、最初シャロンとの婚約にも反対していた。
 しかしそれが止められないとわかると、今度は世継ぎがどうのと理由をつけて、第二妃として自分の娘を推してきた。
 まだシャロンと結婚もしていないのに第二妃などと馬鹿らしい。
 セシルはシャロン以外娶る気などさらさらない。
 セシルにとって【女】はシャロンひとり。
 自分は何があっても彼女を裏切らない。
 彼女の信頼を損なうことだけはしたくない。
 中々会う機会は得られなかったが、それでも彼女の顔を見るたびに幸せを噛み締め(仏頂面全開で)、絶対に幸せにすると心に誓った。

 シャロンと顔を合わせてから二年ほど経った頃だった。
 ロートスに潜り込ませている者から定期的に届く書簡に、シャロンについての良くない話題が記されるようになった。
 最初は侍女を叱っただの何だのと、他愛もない内容だった。
 しかし次第に『非情に気まぐれで飽きっぽく、浪費家である』との報告が相次ぐようになる。
 いつも仏頂面で何も言わないセシルにも優しいシャロンに限ってそんな事あるはずがない。
 王族としての威厳を保つために取る行動が、たまたまそのように映ってしまっただけだろう。
 最初こそ相手にしていなかったセシルだが、さすがにその報告が続けば気になってくる。
 悩んでばかりいるのは性に合わない。
 セシルは自分の手の者を送り、調べさせることにした。
 するとどうしたことか、セシルの配下も同じような報告を上げてきたのだ。
 あまつさえ、エドナのような鄙びた土地に嫁ぐのは嫌だとシャロンが言っていると。
 セシルとて悩まなかったわけじゃない。
 けれど、ロートスで何不自由なく育ったシャロンの目に、エドナがどのように映るのかは考えるまでもない。
 それに、セシルは自身の未熟さにより、シャロンから信頼を寄せてもらえるまでに至っていない。
 当たり前だ。
 会えば顔も身体も硬直してしまうのだから。
 きっとシャロンも不安なのだ。
 アレンも『マリッジブルーってやつかもしれないな』と言っていた。
 だからセシルはシャロンを信じ続けた。
 けれどそんなセシルの元に、残酷な知らせが届くことになる。
 
しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います

こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

ご安心を、2度とその手を求める事はありません

ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・ それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

【完結】好きでもない私とは婚約解消してください

里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。 そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。 婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。

貴方に私は相応しくない【完結】

迷い人
恋愛
私との将来を求める公爵令息エドウィン・フォスター。 彼は初恋の人で学園入学をきっかけに再会を果たした。 天使のような無邪気な笑みで愛を語り。 彼は私の心を踏みにじる。 私は貴方の都合の良い子にはなれません。 私は貴方に相応しい女にはなれません。

ねえ、テレジア。君も愛人を囲って構わない。

夏目
恋愛
愛している王子が愛人を連れてきた。私も愛人をつくっていいと言われた。私は、あなたが好きなのに。 (小説家になろう様にも投稿しています)

家出を決行した結果

恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。 デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。 自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。 ※なろうさんにも公開しています。

次代の希望 愛されなかった王太子妃の愛

Rj
恋愛
王子様と出会い結婚したグレイス侯爵令嬢はおとぎ話のように「幸せにくらしましたとさ」という結末を迎えられなかった。愛し合っていると思っていたアーサー王太子から結婚式の二日前に愛していないといわれ、表向きは仲睦まじい王太子夫妻だったがアーサーにはグレイス以外に愛する人がいた。次代の希望とよばれた王太子妃の物語。 全十二話。(全十一話で投稿したものに一話加えました。2/6変更)

【完結】捨ててください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。 でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。 分かっている。 貴方は私の事を愛していない。 私は貴方の側にいるだけで良かったのに。 貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。 もういいの。 ありがとう貴方。 もう私の事は、、、 捨ててください。 続編投稿しました。 初回完結6月25日 第2回目完結7月18日

処理中です...