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しおりを挟む次はいつ会えるだろう。
会えたらどんな話をしよう。
年頃な事もあり、妄想は無限に膨らんだ。
師匠の息子アレンに『女の子は男らしさにときめくんだぜ!』と言われ、日々男らしさについて研究した。
またある日は『やっぱ男なら“俺”でしょ』とそそのかされ、それまで【私】だった一人称を【俺】に変えた。
日に日に変わっていくセシルに父王は喜んだが、周囲の反応は様々だった。
特にうるさかったのがヘイルズ公爵だ。
ヘイルズ公爵家はエドナの建国に尽力した一族で、昔から重臣として重用してきた家門だった。
王家との縁が何としても欲しいヘイルズ公爵は、最初シャロンとの婚約にも反対していた。
しかしそれが止められないとわかると、今度は世継ぎがどうのと理由をつけて、第二妃として自分の娘を推してきた。
まだシャロンと結婚もしていないのに第二妃などと馬鹿らしい。
セシルはシャロン以外娶る気などさらさらない。
セシルにとって【女】はシャロンひとり。
自分は何があっても彼女を裏切らない。
彼女の信頼を損なうことだけはしたくない。
中々会う機会は得られなかったが、それでも彼女の顔を見るたびに幸せを噛み締め(仏頂面全開で)、絶対に幸せにすると心に誓った。
シャロンと顔を合わせてから二年ほど経った頃だった。
ロートスに潜り込ませている者から定期的に届く書簡に、シャロンについての良くない話題が記されるようになった。
最初は侍女を叱っただの何だのと、他愛もない内容だった。
しかし次第に『非情に気まぐれで飽きっぽく、浪費家である』との報告が相次ぐようになる。
いつも仏頂面で何も言わないセシルにも優しいシャロンに限ってそんな事あるはずがない。
王族としての威厳を保つために取る行動が、たまたまそのように映ってしまっただけだろう。
最初こそ相手にしていなかったセシルだが、さすがにその報告が続けば気になってくる。
悩んでばかりいるのは性に合わない。
セシルは自分の手の者を送り、調べさせることにした。
するとどうしたことか、セシルの配下も同じような報告を上げてきたのだ。
あまつさえ、エドナのような鄙びた土地に嫁ぐのは嫌だとシャロンが言っていると。
セシルとて悩まなかったわけじゃない。
けれど、ロートスで何不自由なく育ったシャロンの目に、エドナがどのように映るのかは考えるまでもない。
それに、セシルは自身の未熟さにより、シャロンから信頼を寄せてもらえるまでに至っていない。
当たり前だ。
会えば顔も身体も硬直してしまうのだから。
きっとシャロンも不安なのだ。
アレンも『マリッジブルーってやつかもしれないな』と言っていた。
だからセシルはシャロンを信じ続けた。
けれどそんなセシルの元に、残酷な知らせが届くことになる。
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