俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香

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169話 ホワイトですから⑤

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 群馬のカセの実家を後にした俺たちは、新潟に飛ぶ。

 新潟の魚沼市と南魚沼市、それとクマの実家にだいぶ近いであろう場所のブックマークをクマにもしてもらった。

 そこからはまた車に乗り、クマの案内でクマの実家へと急いだ。
 窓の外を眺めていたキヨカがボソリと呟いた。


「寂しい風景ですね……。本当なら今頃は一面稲穂が頭を垂れている季節ですよね」

「そうなんだよなぁ。今年は米は採れんだろうなぁ」


 運転席からクマも寂しげに呟いた。
 窓の外に見える一面の火山灰……、それほどの量が積もっているわけではないが、本当ならそこら一帯は米がなる田園風景だったのだろう。

 さっき通っていた住宅街を抜けて今は田園地帯を走っている。どこの田んぼも火山灰が乗った事で米は育たなかったのか。


「あ、でもほら、所々米があるとこも見える」


 助手席のカセの声で、皆左側を見た。うん、家がある近くの田んぼは若干生きている田んぼのようだ。
 そうか、手の届く範囲を頑張ってる感じか。

 だが通り過ぎた時にクマがポツリと呟いた。


「あぁ……これは、ダメかもな……」


 俺達は何も言えなくなった。米の本職から漏れた本音。
 俺の精霊に火山灰を吹き飛ばしてもらっても、もう遅いのかも知れない。

 そうしているうちにクマの実家に到着した。


「大きなうちだぁ、杉田のじっちゃんちみたい」

「いやぁ、家は昔ながらでデカイけど今の時代はもう住んでるもんは少ないんだよ。どこの家も若いもんはみんな街に出るし家を継ぐ奴が居ないからなぁ。かく言う俺も家を出て大学は東京に行って警視庁に入ったんだけどな」

「あれ?でも球磨さんちはまだ米農家やってましたよね?」

「ああ、両親が健在だしうちは兄貴が後を継いでくれたから何とかな。けど今時の後継は大変だよ。中々嫁も来なくて」

「球磨の兄貴って結婚してたよな?」

「まぁな。けど、農家継ぐのが決まった途端にそれまで付き合ってた彼女と破局だぜ? その後何度か見合いして、農家OKの嫁もらったんだ。まぁ良い義姉さんでよかった。俺も警視庁入ってからはあんまり帰れなくなったけど、上手くやってみたいだし子供も産まれた。でも兄貴の代で農家は止めるって言ってたな」

「今は? 誰と住んでるんだ? この家に」


 車を止めてから玄関までが遠いせいなのか、家からは誰も出てこない。
 玄関が見えて来た。昔ながらの立派な玄関だ。
 先頭を歩いていたクマが家に向かって大声で叫ぶ。


「おーい、兄貴ぃ!居ないのかぁ? 俺だぁ! 茂です。義姉さん!誰か居るかああ!」


 ここから見える一階の窓は雨戸がしっかりと閉まっている。
 クマは玄関を開けようとするが鍵がかかっていた。そこから庭側へ歩いて行くので俺たちもゾロゾロと付いていった。


「おーい、兄貴ぃ、義姉さーん、親父ぃー、誰か居ないかー」


 クマがこちらを振り返った。


「留守なのか…」

ガタガタガタっ

 言いかけた途中で近くの雨戸が開き、俺たちは驚いて飛び上がった。


「茂! 良かった、無事だったのか」

「兄貴……」

「早く入れ、外は危ない」


 俺たちは促されてその窓から靴を脱いで上がらされた。勿論、靴を忘れないようにしっかりと持った。
 お兄さんはまた雨戸をしっかりと閉めて鍵を下ろしていた。


「こっちだ」


 案内されたのは奥の部屋のひとつらしい。
 そこに居たのは違う顔の面々だった。良かった、今度はクマ一族に囲まれるのではとドキドキしていた。

 兄貴と呼んでいたクマの兄さんもクマとは似ていなかった。そこに居た高齢の男性と兄さんが似ている。そして横の高齢の女性はクマに似ている。

 この部屋にいたのはクマの両親と兄一家だった。クマ兄の奥さんは乳児を抱いていた。兄さんは結婚が遅かったとか言ってたからな。


「爺ちゃんは?」


 クマの言葉に、クマ家族はお互いに顔を見合わせたがクマ兄が口を開いた。


「爺ちゃんは亡くなったんだよ」

「いつ!」

「隕石とか地震とかあった後だな。前から病院には通ってたんだが、病院に入院したらそこが……その」

「私が無理に入院させたせいなのよ、ごめんねぇ、ごめんなさい、ううぅぅ」


 クマ母が泣き出した。


「バカ、お前のせいなわけあるか」

「そうですよ、お義母さん。あの時はお祖父ちゃんかなり悪かったし直ぐに入院させなきゃならなかったでしょ」

「まさか病院の裏山がくずれとは誰も思わねぇわ」


 そうか、災害直後に具合の悪かった祖父さんを入院させたらそこが崖崩れとかになったのか。
 それは誰にも予想出来ない。それに家に居たとしても病気が悪化して亡くなる可能性もある。


「そっか。祖父ちゃんはそれが寿命だったんだ。母さんは悪くない。そんで今、食いもんとかあるんか? ここ来る途中見たが田んぼはもうダメだろ」

「ああ、米は農協の蓄えがあるからこの辺りのもんは大丈夫だ。けど、なぁ」

「ねぇ…」

「あぁ」


 何だ?クマ父、クマ義理姉、クマ兄が何か口を濁している。


「お前ら、ここ来る途中、大丈夫だったか?」

「大丈夫って何が?」

「変なのに襲われなかったか?」

「変な? どんなのに?」

「……いや、知らんなら信じてもらえるかわからんな」

「だから、何?」

「歩くのよ、植物が。歩く植物。近くにいる人間に蔓をビシって振って襲ってきて、公民館に居た人らも襲われて、今はあそこに避難出来なくなってる。消防団が回ってくれてたんだけどガソリンが無くなってそれも出来なくなって、自宅に隠れるように町内放送で」

「信じられないのはわかる、でも」

「ああ、魔物植物か。ここらも出るのか」

「魔物植物は日本全土に出現してるんですかね」

「うぅむ、出現と言うか、元々の植物が魔物化したって言った方が早いかもしれない」

 クマ一家は俺たちが驚かない事に驚いていた。
 呆けているクマ一家をよそに俺達は話し合う。


「どうする?洞窟に連れて行くか?」

「赤ちゃんも居るしそのほうが良いと思います」

「クマ、説得しろ。洞窟部屋なら確保出来ると思う」

「はい、今、彩ちゃん経由で連絡しました。部屋の確保OKです」

「ちょっと待て、キヨカ。彩さんってまだリアルステータス出てなかったんじゃないか?スマホ通じたのか?」

「いえ、さっき彩ちゃんから血盟念話が来ました。リアルステータスが出たと。カセさん達にでたのなら自分だって出るはずだって。そしてら出たそうです」


 ええぇ、ステータスってまさか思い込みで出る?いや、そんなわけないよな?
 にしても彩さん、盟主の俺でなくキヨカに1番に連絡とは……、いや別に盟主を傘に威張りたいわけじゃないけどさ、ちょっと悲しい。


「カオさんにはまず血盟メールを使って連絡してみたそうですが、返事が来ないと言ってました」


 え、そうなんだ。急いでステータスを開くと小さな封筒マークが点滅していた。


「すまん……その」


 キヨカは笑っていた。


「大丈夫です。それで私に念話を試したと言ってました」




 クマは家族の説得に手間取っていた。ここには味方になるような若い年代が居なかった。いや、若い年代は赤ん坊の甥っ子だけだ。
 両親と兄夫婦はもの凄い不審顔になっている。

 そこでようやく、アイテムボックスへの出し入れを見せて、さらに怪しい不審顔になってしまった。
 助け舟を出す。


「あのぉ、とりあえず一旦洞窟へ連れて行って、どうしても戻りたいなら戻すってのはどうだ?」


 説得よりも有無を言わさず連れて行った方が早い。ここはブックマークしておくし、今はクマもアイテムボックスがあるから、いつでも荷物を取りに帰ってこれる。

 高齢の両親や赤ん坊をここに置いておくより安心だ。
 それにお兄さん夫婦にゲームIDを取らせて、リアルステータスやスキルが出たらこっちのもんだ。その時はここに戻ろうがどこに行こうが自由だ。

 病院にはクマの妻子も居る。一緒に居る事が出来れば奥さん達も心強いだろう。

 と言う話を念話で済ませて、クマ一家の背後へ俺たちは移動した。


「エリアテレポート!」


 はい、茨城に到着ぅ。

 キヨカが連絡をしてくれた彩さん経由の不動産のおっさんに聞いた部屋へ、クマ家の混乱に生じて連れ込んだ。

 4LDKに近い洞窟居室だ。ちょっと広すぎるという意見もあったがクマの個室に近い所だとここしかなかった。
 洞窟内は元々『避難所』なので小さい部屋が多いのだ。ふた部屋並んだ2Kや1DKがあれば良かったのだが。


 クマは夜にまた来ると伝えて部屋を出た。部屋には一応マニュアルが置いてある。
『洞窟避難所マニュアル』だ。


 そして本日の予定、最後の場所へ向かう。
 北海道の十勝のナラの実家へブックマークに向かう。あの時ナラ達はまだリアルステータスが出ていなかったからな。

 ブックマークついでにその後の実家の様子を見ようと言ったが、ナラから猛反対の抵抗をされた。


「つい先日来たばかりでまた来たんか、と姉ちゃんに怒られる」

「そうだ、折角ここまできたんだ。ナラんとこも何人か洞窟に来てエルフ作っとけよ」


 群馬のカセ家から若い者が数名が洞窟でゲームを始めた。
 新潟のクマ家は有無を言わさず全員洞窟に揃った、が、まだ誰もゲームはやっていない。気持ちに余裕が出来たらやってもらおう。

 北海道のナラ家は全員トカチで頑張っている。今後、北海道に拠点を造る予定ではあるが、その前にナラ家からも数人エルフを作っておくべきだ。

 と言う訳で、姉ちゃんに怒鳴られながらもナラが説明をした。
 茨城行きに手を上げたのはナラの直ぐ上の姉ちゃんと妹だった。長女は家を守ると言っていた。
 いや、他にも行きたい者は居たのだが、姉ちゃんが黙らせた。
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