見えているもの

春夏

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「湊が好きだ。俺だけが湊の相手だよ」

律が腕を伸ばす。
湊がその腕の中にすっぽりと収まる。
静かに合わさった唇は何度かの軽い往復のあと、互いを貪り尽くすような深く長いキスになった。

お互いにお互いを好きだったなんて。
気づかなかった、気づいてはいけないと思い込んでいた、その気持ち。
初めから見えていたのかもしれない、赤い糸。

絡んだ糸に見せられた、好きでもない男に犯されて喘ぐ自分の姿態。
絡んだ糸に見せられた、何人もの男に犯されて悶える愛する男。

本当の自分を律に見てほしい。
本当の湊を自分に見せてほしい。

男に抱かれるには、男を抱くにはそれ相応の準備が必要だ。
惚れた相手とのセックスを嫌と言うほど夢想させられてきた2人は、その手順をよく知っていた。

深くかぶった帽子と大きめのマスクで律が買い出しに出ていく。
残された湊は抱かれる準備をする。
トイレなんか行きません、そんな顔で笑顔をとばす湊が、律を受け入れるためだけに風呂とトイレを往復する。

律が帰宅する。
きっと昼ご飯になってしまうであろう“明日の朝食”。Lサイズのゴム。そしてローション。
本当の自分を見せ合う準備が整った。

知り合って7年。
頼れる兄と守るべき弟として、その関係を壊せなかった。

兄でも弟でもない、29歳と22歳の男。
互いに心を手に入れた今、相手の体の全ても自分のものに。

「僕の全部を律くんにあげる。だから律くんの全部を僕にちょうだい」
噛みつくようなキスで返された返事に、湊の体が震えた。
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