見えているもの

春夏

文字の大きさ
8 / 8

8※

しおりを挟む
互いの裸を見るのは初めてじゃない。
楽屋での着替え、ライブ終わりのシャワー。

今夜の2人は違う。

弟の髪を乾かす、兄の優しい指じゃない。
丸く固く主張する、湊の色付く実を捏ねる指。

生意気な口調で兄に甘える、尖らせた弟の唇じゃない。
上がる声と甘い吐息を、律の鎖骨に溶かす唇。

「…ッ、ぁあっ、やぁ…そこばっかり…だめ…」
「いっぱいされてただろ…俺だよ、湊に本当にしていいのは俺だけだ。全部忘れちまえ、全部俺が忘れさせてやる」

その声にまだ触れてもいない湊が熱く弾ける。
「…律…もっとして…律がいっぱいして。アイツらにされたこと、律で上書きして」
白濁に濡れる湊に律が唇を寄せた。

「…っはぁっ、あ、あぁ…」
悶える湊の背中に律が所有の花を咲かせる。
そのたびに変わる角度に甘い吐息を漏らす湊が、律を締め付ける。

「んっ!や、やぁっ!…ダメ、イク、イッちゃうぅっ」
もう出すもののない湊の重なる収縮が、何度も放ったはずの律の最後の一滴まで搾り取った。

「見えなくなった?」
「…っていうか…見ないようにすることができるようになった、って感じかな。見ようと思えば見られるんだけど…」
「そんなこと思うなよ」
「律だけを見てればいい、って、律がわからせてくれたから。ずっと律だけを見ていたいから」

本物の僕は律のものだ。
本物の湊は俺のものだ。
互いだけが見えている。
愛して愛されている。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お読みいただきありがとうございました。
次の話もよろしくお願いします。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

先生と俺

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 ある夏の朝に出会った2人の想いの行方は。 二度と会えないと諦めていた2人が再会して…。 Rには※つけます(7章)。

紅碧の日々

春夏
BL
【完結しました】 喫茶店のマスター碧(アオ)と客の茜(アカネ)。そんな2人の関係が変わるまでのお話です。 Rには※つけます。

れいちゃんの執事

春夏
BL
【完結しました】 アルファとしての機能を失った櫂<カイ>と、身体に秘密を抱えた怜理<レイリ>のお話。 始めの10話ほどは暗めですが、そのあとは2人のジリジリそしてハッピーエンドの予定です。

テーマパークと風船

谷地
BL
今日も全然話せなかった。せっかく同じ講義だったのに、遅く起きちゃって近くに座れなかった。教室に入ったらもう女の子たちに囲まれてさ、講義中もその子たちとこそこそ話してて辛かった。 ふわふわの髪の毛、笑うと細くなる可愛い目、テーマパークの花壇に唇を尖らせて文句を言っていたあの人は好きな人がいるらしい。 独り言がメインです。 完結しました *・゚

クレマに隠す恋

月夜野レオン
BL
蓮は日本ではそこそこ名の知れたバリスタで、人当りは良いけれどガードが堅い。カフェノースポールで客として出会った平井に惹かれるが、アルファ嫌いだった蓮は一歩が踏み出せないでいた。友人が立ち上げた会社の司法書士になる為に平井が地方へ行ってしまうと知った蓮は……。 オメガバース短編集 カフェノースポールシリーズ第3弾。花いちもんめでチラッと出てきた夏樹の友人、平井綾斗の恋物語です。

王太子殿下に触れた夜、月影のように想いは沈む

木風
BL
王太子殿下と共に過ごした、学園の日々。 その笑顔が眩しくて、遠くて、手を伸ばせば届くようで届かなかった。 燃えるような恋ではない。ただ、触れずに見つめ続けた冬の夜。 眠りに沈む殿下の唇が、誰かの名を呼ぶ。 それが妹の名だと知っても、離れられなかった。 「殿下が幸せなら、それでいい」 そう言い聞かせながらも、胸の奥で何かが静かに壊れていく。 赦されぬ恋を抱いたまま、彼は月影のように想いを沈めた。 ※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。 表紙イラストは、雪乃さんに描いていただきました。 ※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。 ©︎月影 / 木風 雪乃

白花の檻(はっかのおり)

AzureHaru
BL
その世界には、生まれながらに祝福を受けた者がいる。その祝福は人ならざるほどの美貌を与えられる。 その祝福によって、交わるはずのなかった2人の運命が交わり狂っていく。 この出会いは祝福か、或いは呪いか。 受け――リュシアン。 祝福を授かりながらも、決して傲慢ではなく、いつも穏やかに笑っている青年。 柔らかな白銀の髪、淡い光を湛えた瞳。人々が息を呑むほどの美しさを持つ。 攻め――アーヴィス。 リュシアンと同じく祝福を授かる。リュシアン以上に人の域を逸脱した容姿。 黒曜石のような瞳、彫刻のように整った顔立ち。 王国に名を轟かせる貴族であり、数々の功績を誇る英雄。

処理中です...