自立したい僕を社長が甘やかしてきます

春夏

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4.ふたりの自覚

14.気がついてしまった高校生

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「今夜な、奥山さんと話すんだけど、葵から何か要望とかあるか?」
横山さんは何ヵ月かに一度、出入り先の担当者さんと面会の時間をとっているという。
もちろん何かあればその都度連絡を取り合っているけれど、相手側からああしてほしい、とか、これもやってほしい、とかの要望を聞いたり、横山美化側からも出向く頻度やちょっとした苦情、新しいサービスの紹介や料金交渉などを直接話し合うのだ。
業務時間内に相手側の社内で、というのが通常なんだけれど、今回は奥山社長の希望で一杯やりながら、ということになったのだという。

「いえ、皆さん親切にしてくれますし、僕からは何も。むしろ僕の仕事振りに注文があるんじゃ…」
「葵はよくやってくれてる、って言ってたぞ。大丈夫」
「でも、直すところあるのなら、ちゃんと聞いてきてくださいね。どうすればいいか、またいろいろ教えてください」
「わかったわかった。そろそろ“ちょこっと”の時間じゃないか?気をつけて行ってこいよ」

わざわざ夜の時間を指定するなんて、やっぱり僕に不満があるんじゃないの…?
「いつもなら奥山さんとちょっと話して済んじゃうんだけどなぁ。たまには行きつけと違うトコで飲んでみたくなったのかもな。普段はいい店行ってるんだろうから」
横山さんも驚いてたもんね。

もし09の担当を代えられちゃったら、もう智秋さんには会えないだろう。
そんなの嫌だ、はっきりそう思って、自分でも驚く。
昨日の智秋さんからのメッセージ。
『好きな人とか居らんのか』
『いないです。智秋さんはモテそうですよね』
『せやなぁ。まあまあちゃうか』
『カッコいいし、背も高いし、社長さんだし…うらやましいです』
『ホンマか。葵にそう言ってもらえるなら、この顔でよかったわぁ』

…なんでこんなこと聞くんだろう。
僕に好きな人がいたとしたら、なんなんだよ。
なんでこんな言い方してくるんだろう。
まるで僕が“カッコいい”って言ったことが嬉しいみたい。
09に行けなくなったら、このやりとりもおしまいだ。
『担当代わったやろ。IDも削除しといて』
そんなメッセージに僕ができることは、たった一行の返信だけ。
『わかりました。今までありがとうございました』

泣きそうになって自転車をとめる。
……僕は智秋さんが好きなんだ。
初夏の風が吹き抜ける。
気がついちゃいけなかった想いを、風はさらってくれなかった。
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