先生と俺

春夏

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12.

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side 亮太

幸久の手の中の鍵。ヒートの時、俺の家で待てるようにと、掌を包み込んで渡した鍵。「もうそのタオル、俺の匂いなんて消えてもうてるやろ」「それでもこれがいいんだ。俺の宝物なんだよ」と恥ずかしそうに顔を隠したタオル。「否定しないで」と幸久は言いよった。ちゃうよ、と言わなきゃあかん。俺とのことを覚えとらん幸久を、これ以上混乱させたらあかん。幸久の瞳が俺を捉える。そこに浮かぶのは諦めでも絶望でもない、縋りつきたくなるような期待の色。「そうや。俺が幸久に渡したんよ」幸久は座り込んだ。

「卒業したら結婚しよな」て指輪を渡した時、幸久は泣いたんよ。大事にする、て、約束だよ、て。これを捨てることだけはどうしてもでけへんかった。抱き合うたびに2つの指輪が鳴らす鈍い音は、俺達の幸せの鐘やったんよ。

俺が言葉を返す間も与えずに、幸久が教室を出ていく。今、幸久はなんて言うた?俺のこと考えとるて、ずっと俺のこと考えとるて!やっぱり幸久の体は覚えとんねん。俺に抱かれたことを、俺と愛し合ったことを。…きっと、きっと思い出す。俺達のことを、俺達が運命の番だということを。幸久が全てを思い出す日が、そんな日はこないと諦めていたその日が、きっとくる。
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