姉の引き立て役の私は

ぴぴみ

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幼少期

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「お前は、何もするな。ああ、言っておくが悪い意味じゃないぞ?無理して傷つくことはない。皆、そのままのお前を愛している」

 同年代の子に比べて一回りサイズが大きかった私にお父様は言いました。

「本当に?」
「ああ、本当だとも」
「でも、アリア、お姉様みたいになりたいの」

 お父様は、そう言った私を困った顔で見て、言いづらそうに口をもごもごさせています。

「─ ─私には無理?」
「いや無理ではないよ。だが人には向き不向きというものがある。アリアのふっくらとした体は可愛らしいし、無理に変わらなくてもいいんだよ。勉強だってできなくてもいいさ。いつでもニコニコ笑っていなさい」

 私は、お父様のために笑いました。でも、幼心に思ったものです。どうして私の前に置かれている食事の量は姉より多いのだろう。
なぜ、私が何か頑張ろうとすると両親は困った顔をするのだろう、と。
 食べれば食べるだけ家族は喜んでくれるようです。私は皆が笑ってくれるのが嬉しくて、望まれる通りに行動しました。
 何もせず、ゴロゴロと、日がな一日過ごします。顔やお腹にいくらお肉がつこうが誰も何も言いません。ただ、かわいいかわいいと褒められて育ちました。

「お姉さんと似ていないね」

 皆がそう言いました。するとお姉様はにっこり笑って答えます。

「ええ。そうでしょう?でも、アリアはとっても、かわいいの」

 姉が浮かべる笑みに皆見とれて、何も言えなくなってしまうのです。いつしか、私は姉とは違う魅力が自分には備わっているのだと思うようになりました。
 その幻想が崩れたのは、ある茶会の席でのこと。その日は第一王子が出席するからと、朝から姉はとても忙しそうでした。使用人が何人も集まって姉を磨きあげています。姉の肌は真珠のように光り輝き、宝石が散りばめられたように輝く翠の瞳を長い睫毛が覆っています。

「お姉様、きれい」
「ありがとう、アリア」

 姉はきっと第一王子に見初められるでしょう。

 
 
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