姉の引き立て役の私は

ぴぴみ

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16才

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 立太子式はつつがなく終わり、ダンスが始まる頃。姉と第一王子改め王太子が、幸せそうに招待客に挨拶しています。高齢の国王に代わり、王位につくのも時間の問題だと皆が噂しています。
 そこに新たなざわめきが起こりました。

「あの方は?」
「・・美しいな」
「珍しいことだ・・あの方のあんな笑顔」

 照れてしまいますが、化粧効果です。
私の侍女は優秀ですから。
それと、もちろん私だけの力ではありません。隣でエスコートしてくださっている第二王子のおかげです。
 いつかの少年が随分成長したものだなと思いながら見つめます。そうしていないと照れてしまいそうでした。あまりに整った顔立ちに・・。

「あの夫人の服、オオカエルカマキリに似ていないかい?」

 話し出すと残念な感じですが、彼に悪意はないのです。その証拠に目がキラキラと輝いています。

「相変わらず、虫がお好きですわね?」
「おそらく一生興味は尽きないよ」

 自分が主役だと疑わなかった姉が恐ろしい目でこちらを見てきます。

「・・そろそろ」

 私が小声で促します。彼は頷き跪きます。そして私に愛を告げました。いつの間にか、音楽が鳴り止み皆がこちらを見ています。
私は幸せそうに笑って彼の手を取りました。

「私も愛しています」

 彼から国王には事前に報告してもらっていたため、『若い二人に祝福を』という言葉を掛けてもらいました。姉がわなわなと震えて私に近寄ってきます。祝いの言葉を掛けてくれていた者たちも姉のただならぬ様子に脇に避けていきます。
 
「・・今日は私が主役よね?」

 姉の言葉を聞いてしまった者が眉をひそめます。

「何をおっしゃっているの?お姉様」
「私に内緒でこそこそと」

 姉の手が私の腕を掴みます。ギリッ爪を立てられ思わず声が漏れました。

「止めてもらおうか。みっともない。次期王妃として相応しい振舞いとはとてもいえない」
「なんで、なんでなの!?」

 姉は連れていかれましたが、『どうして、いつもあの子の方が幸せそうなの』と最後まで抵抗していました。
 姉にも姉なりの苦労があったのかもしれません。それは親からへの歪な愛を感じていたからかもしれません。姉の方がよっぽど私より純粋な心を持っていました。
 しかし、私は、悪意を持って接してきた者に好意を抱けるほど、懐が深くありません。姉と真に分かり合うことはできないかもしれません。
 こんなときに思い出します。

『じゃあ信じるの、止めなよ』

 姉にも誰かそう言ってくれる人がいれば良かったのですが・・。
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