10 / 10
現在
しおりを挟む
「私、次期国王はあなただと言いましたのに、本当に変わってますね」
「そんな面倒な地位はごめんだよ。こうして、好きなことに熱中している方が性に合ってる」
「それもそうですわね・・」
見つめ合います。私たちは、自国が徐々に、しかし、確実に内側から崩れていくのを尻目に隣国で悠々と生活しています。戻ってこいとは再三言われていますが、そんなこと知ったことではありません。頻出する自国のトラブルを解決するのに精一杯でしょう。
我が家を継ぐ者がいなくなり、領民が困っているというようなこともありません。次期領主が変わろうが民にはあまり関係ないのです。私も夫も二度と帰るつもりはないということをいずれは分かってくれるでしょうし、その時まで、国が今のままの形を保っていられるとも思いません。
私は自分勝手に生きていきます。
けれど・・
「あのときは、あれが最善だと思いましたけど、私と結婚して良かったんですの?」
「あれ?言わなかったっけ?」
私は首を傾げます。
「君のことをあのときのアリ以上に興味深く思っているよ」
「それは・・えっと喜んでいいんですわよね?」
「もちろん。僕にとっての最高の褒め言葉だからね。教えてくれる?君の──」
彼が耳元で囁いた言葉は、口にするのは憚られる内容でしたので省略致します。
私だけに見える金の瞳が煌々と輝いています。私は、その瞳にもうとっくに囚われていたのだと思います。あの出会いの日から。
「そんな面倒な地位はごめんだよ。こうして、好きなことに熱中している方が性に合ってる」
「それもそうですわね・・」
見つめ合います。私たちは、自国が徐々に、しかし、確実に内側から崩れていくのを尻目に隣国で悠々と生活しています。戻ってこいとは再三言われていますが、そんなこと知ったことではありません。頻出する自国のトラブルを解決するのに精一杯でしょう。
我が家を継ぐ者がいなくなり、領民が困っているというようなこともありません。次期領主が変わろうが民にはあまり関係ないのです。私も夫も二度と帰るつもりはないということをいずれは分かってくれるでしょうし、その時まで、国が今のままの形を保っていられるとも思いません。
私は自分勝手に生きていきます。
けれど・・
「あのときは、あれが最善だと思いましたけど、私と結婚して良かったんですの?」
「あれ?言わなかったっけ?」
私は首を傾げます。
「君のことをあのときのアリ以上に興味深く思っているよ」
「それは・・えっと喜んでいいんですわよね?」
「もちろん。僕にとっての最高の褒め言葉だからね。教えてくれる?君の──」
彼が耳元で囁いた言葉は、口にするのは憚られる内容でしたので省略致します。
私だけに見える金の瞳が煌々と輝いています。私は、その瞳にもうとっくに囚われていたのだと思います。あの出会いの日から。
51
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
【完結】大好きな彼が妹と結婚する……と思ったら?
江崎美彩
恋愛
誰にでも愛される可愛い妹としっかり者の姉である私。
大好きな従兄弟と人気のカフェに並んでいたら、いつも通り気ままに振る舞う妹の後ろ姿を見ながら彼が「結婚したいと思ってる」って呟いて……
さっくり読める短編です。
異世界もののつもりで書いてますが、あまり異世界感はありません。
あなたに何されたって驚かない
こもろう
恋愛
相手の方が爵位が下で、幼馴染で、気心が知れている。
そりゃあ、愛のない結婚相手には申し分ないわよね。
そんな訳で、私ことサラ・リーンシー男爵令嬢はブレンダン・カモローノ伯爵子息の婚約者になった。
【完結】「かわいそう」な公女のプライド
干野ワニ
恋愛
馬車事故で片脚の自由を奪われたフロレットは、それを理由に婚約者までをも失い、過保護な姉から「かわいそう」と口癖のように言われながら日々を過ごしていた。
だが自分は、本当に「かわいそう」なのだろうか?
前を向き続けた令嬢が、真の理解者を得て幸せになる話。
※長編のスピンオフですが、単体で読めます。
自信過剰なワガママ娘には、現実を教えるのが効果的だったようです
麻宮デコ@SS短編
恋愛
伯爵令嬢のアンジェリカには歳の離れた妹のエリカがいる。
母が早くに亡くなったため、その妹は叔父夫婦に預けられたのだが、彼らはエリカを猫可愛がるばかりだったため、彼女は礼儀知らずで世間知らずのワガママ娘に育ってしまった。
「王子妃にだってなれるわよ!」となぜか根拠のない自信まである。
このままでは自分の顔にも泥を塗られるだろうし、妹の未来もどうなるかわからない。
弱り果てていたアンジェリカに、婚約者のルパートは考えがある、と言い出した――
全3話
可愛い妹を母は溺愛して、私のことを嫌っていたはずなのに王太子と婚約が決まった途端、その溺愛が私に向くとは思いませんでした
珠宮さくら
恋愛
ステファニア・サンマルティーニは、伯爵家に生まれたが、実母が妹の方だけをひたすら可愛いと溺愛していた。
それが当たり前となった伯爵家で、ステファニアは必死になって妹と遊ぼうとしたが、母はそのたび、おかしなことを言うばかりだった。
そんなことがいつまで続くのかと思っていたのだが、王太子と婚約した途端、一変するとは思いもしなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる