姉の引き立て役の私は

ぴぴみ

文字の大きさ
9 / 10

16才

 立太子式はつつがなく終わり、ダンスが始まる頃。姉と第一王子改め王太子が、幸せそうに招待客に挨拶しています。高齢の国王に代わり、王位につくのも時間の問題だと皆が噂しています。
 そこに新たなざわめきが起こりました。

「あの方は?」
「・・美しいな」
「珍しいことだ・・あの方のあんな笑顔」

 照れてしまいますが、化粧効果です。
私の侍女は優秀ですから。
それと、もちろん私だけの力ではありません。隣でエスコートしてくださっている第二王子のおかげです。
 いつかの少年が随分成長したものだなと思いながら見つめます。そうしていないと照れてしまいそうでした。あまりに整った顔立ちに・・。

「あの夫人の服、オオカエルカマキリに似ていないかい?」

 話し出すと残念な感じですが、彼に悪意はないのです。その証拠に目がキラキラと輝いています。

「相変わらず、虫がお好きですわね?」
「おそらく一生興味は尽きないよ」

 自分が主役だと疑わなかった姉が恐ろしい目でこちらを見てきます。

「・・そろそろ」

 私が小声で促します。彼は頷き跪きます。そして私に愛を告げました。いつの間にか、音楽が鳴り止み皆がこちらを見ています。
私は幸せそうに笑って彼の手を取りました。

「私も愛しています」

 彼から国王には事前に報告してもらっていたため、『若い二人に祝福を』という言葉を掛けてもらいました。姉がわなわなと震えて私に近寄ってきます。祝いの言葉を掛けてくれていた者たちも姉のただならぬ様子に脇に避けていきます。
 
「・・今日は私が主役よね?」

 姉の言葉を聞いてしまった者が眉をひそめます。

「何をおっしゃっているの?お姉様」
「私に内緒でこそこそと」

 姉の手が私の腕を掴みます。ギリッ爪を立てられ思わず声が漏れました。

「止めてもらおうか。みっともない。次期王妃として相応しい振舞いとはとてもいえない」
「なんで、なんでなの!?」

 姉は連れていかれましたが、『どうして、いつもあの子の方が幸せそうなの』と最後まで抵抗していました。
 姉にも姉なりの苦労があったのかもしれません。それは親からへの歪な愛を感じていたからかもしれません。姉の方がよっぽど私より純粋な心を持っていました。
 しかし、私は、悪意を持って接してきた者に好意を抱けるほど、懐が深くありません。姉と真に分かり合うことはできないかもしれません。
 こんなときに思い出します。

『じゃあ信じるの、止めなよ』

 姉にも誰かそう言ってくれる人がいれば良かったのですが・・。

あなたにおすすめの小説

ふくよかな姉と美貌の妹

ぴぴみ
恋愛
トゥルク村には、姉妹そろって有名な娘がいる。 ある時、姉が恋をして、駆け落ちするとまで言い出して…。 相手は一国の王子様だというのです。

ざまぁの後~妹への復讐と私の幸せ~

ぴぴみ
恋愛
“妹への復讐と私の幸せ”のその後の話。

婚約者が妹にフラついていたので相談してみた

crown
恋愛
本人に。

(完結)妹の身代わりの私

青空一夏
恋愛
妹の身代わりで嫁いだ私の物語。 ゆるふわ設定のご都合主義。

こうして私は悪魔の誘惑に手を伸ばした

綴つづか
恋愛
何もかも病弱な妹に奪われる。両親の愛も、私がもらった宝物もーー婚約者ですらも。 伯爵家の嫡女であるルリアナは、婚約者の侯爵家次男ゼファーから婚約破棄を告げられる。病弱で天使のような妹のカリスタを抱き寄せながら、真実の愛を貫きたいというのだ。 ルリアナは、それを粛々と受け入れるほかなかった。 ゼファーとカリスタは、侯爵家より譲り受けた子爵領へと移り住み、幸せに暮らしていたらしいのだが。2年後、『病弱』な妹は、出産の際に命を落とす。 ……その訃報にルリアナはひっそりと笑みを溢した。 妹に奪われてきた姉が巻き込まれた企みのお話。 他サイトにも掲載しています。※ジャンルに悩んで恋愛にしていますが、主人公に恋愛要素はありません。

『姉に全部奪われた私、今度は自分の幸せを選びます ~姉の栄光を支える嘘を、私は一枚ずつ剥がす~』

六角
恋愛
復讐はしない。——ただ「嘘」を回収する。 礼儀と帳簿で宮廷の偽りを詰ませる“監査官令嬢”の華麗なる逆転劇。 王家献上宝飾の紛失事件で濡れ衣を着せられ、家族にも婚約者にも捨てられて追放された子爵家次女リリア。  数年後、彼女は王妃直属の「臨時監査官」として、再び宮廷の土を踏む。  そこで待っていたのは、「慈愛の聖女」として崇められる姉セシリアと、彼女に心酔する愚かな貴族たち。しかし、姉の栄光の裏には、横領、洗脳、そして国を揺るがす「偽造魔石」の陰謀が隠されていた。  「復讐? いいえ、これは正当な監査です」  リリアは感情に流されず、帳簿と証拠、そして真実を映す「プリズム」を武器に、姉が築き上げた嘘の城を一枚ずつ剥がしていく。  孤立無援の彼女を支えるのは、氷のように冷徹な宰相補佐レオンハルトと、豪快な近衛騎士団長カミュ。  やがてリリアは、国中を巻き込んだ姉の洗脳計画を打ち砕き、自分自身の幸せと、不器用な宰相補佐からの溺愛を手に入れる——。

突然倒れた婚約者から、私が毒を盛ったと濡衣を着せられました

恋愛
パーティーの場でロイドが突如倒れ、メリッサに毒を盛られたと告げた。 メリッサにとっては冤罪でしかないが、周囲は倒れたロイドの言い分を認めてしまった。

【完結】大好きな彼が妹と結婚する……と思ったら?

江崎美彩
恋愛
誰にでも愛される可愛い妹としっかり者の姉である私。 大好きな従兄弟と人気のカフェに並んでいたら、いつも通り気ままに振る舞う妹の後ろ姿を見ながら彼が「結婚したいと思ってる」って呟いて…… さっくり読める短編です。 異世界もののつもりで書いてますが、あまり異世界感はありません。