1 / 3
契機
しおりを挟む
お姉様、お姉様と私の後をちょこちょことついてきて振り向くと満面の笑顔を浮かべた妹。幼き頃は本当に可愛かった。
それなのに…。
「お姉様、その見苦しい肢体をわたくしの前に曝さないで」
「…悲しいことを言わないで…
エミリア」
妹─エミリアが私を心底軽蔑しているといった眼で見ている。嫌悪の感情を隠しもせず、私に会う度何か言わずにはいられないらしい。
成長した妹とは元から仲のいい姉妹とは言えなかったが、一層酷くなったのがいつなのか分かってはいる。
…父である公爵が私の婚約者を告げた時からだ。
お相手はアッテンボロー家の三男レイノルド様。同じ公爵の家の生まれで、小さい頃からの幼馴染みだ。我が家への婿入りが決まっている。エミリアは昔から彼のことが好きだったようで私のことを胸だけ大きい豚と罵り彼に相応しくないと言う。
彼と結婚したいのだろうが、婚約は私の一存でどうにかできるものではない。いつものように貸してと言われて貸せるものでもない。
私は、ドレスや宝石、小物類をちょっと借りるわねと言って持っていく妹に文句を言ったことはない。
たとえ戻ってこなかったとしても、元から私の物ではなかったのだと自身に言い聞かせればいいだけだ。
妹はお姉様にはもったいないが口癖で私の物を奪っていく。親は私の意志が弱いからだと取り合わない。
いつの日だったか取り返しに行ったこともあった。泥棒、品性が卑しい、わたくしはこんな姉をもって恥ずかしい…など散々騒ぎ立てた挙げ句親にまで伝わり私は部屋での謹慎を言いつけられた。それ以来勝手に取っていけばいいと思っている。
またエミリアの仕業かは分からないが、何度か毒殺されかけてもいる。おかげで毒の耐性ができてしまったようだ。普通の毒ならば少し寝込むだけで回復する。
だから油断していたのだろう…。
その日は高熱がなかなか下がらず、おかしいなとは思った。そして数日生死の境をさ迷って生き長らえた私に医者が言った。
「申し上げにくいのですが、お嬢様はもう
子供をつくれないかと…。」
悲しかった。誰かからの悪意もそうだが、何より子を育めないという現実が…。そうして私の身体のことはアッテンボロー公爵の耳にも届くことになり婚約は解消された。
本来ならばそれは極秘事項。いずれは伝えなければならなかっただろうが、あまりにも早すぎる。加えて他貴族の間にも噂が広まっており…。 私はその時から穀潰しとなった。
貴族にとって結婚とは、家同士の結び付きを強めることもそうだが、それ以上に次世代へと高貴な血を繋げるためのもの。
誰が好き好んで傷物の令嬢を娶るというのか?
父も私の扱いに困ったのか、郊外にある別邸での療養を命じた。療養とは名ばかりの監禁だ。噂が沈静化するまで隠れていろということだろう。
落ち込む私に妹は言った。
「心配なさらないでお姉様。レイノルド様のことは任せて。」
幼き一時いくら可愛かったとは言え、こんな妹に私は何を遠慮していたのだろう?
それなのに…。
「お姉様、その見苦しい肢体をわたくしの前に曝さないで」
「…悲しいことを言わないで…
エミリア」
妹─エミリアが私を心底軽蔑しているといった眼で見ている。嫌悪の感情を隠しもせず、私に会う度何か言わずにはいられないらしい。
成長した妹とは元から仲のいい姉妹とは言えなかったが、一層酷くなったのがいつなのか分かってはいる。
…父である公爵が私の婚約者を告げた時からだ。
お相手はアッテンボロー家の三男レイノルド様。同じ公爵の家の生まれで、小さい頃からの幼馴染みだ。我が家への婿入りが決まっている。エミリアは昔から彼のことが好きだったようで私のことを胸だけ大きい豚と罵り彼に相応しくないと言う。
彼と結婚したいのだろうが、婚約は私の一存でどうにかできるものではない。いつものように貸してと言われて貸せるものでもない。
私は、ドレスや宝石、小物類をちょっと借りるわねと言って持っていく妹に文句を言ったことはない。
たとえ戻ってこなかったとしても、元から私の物ではなかったのだと自身に言い聞かせればいいだけだ。
妹はお姉様にはもったいないが口癖で私の物を奪っていく。親は私の意志が弱いからだと取り合わない。
いつの日だったか取り返しに行ったこともあった。泥棒、品性が卑しい、わたくしはこんな姉をもって恥ずかしい…など散々騒ぎ立てた挙げ句親にまで伝わり私は部屋での謹慎を言いつけられた。それ以来勝手に取っていけばいいと思っている。
またエミリアの仕業かは分からないが、何度か毒殺されかけてもいる。おかげで毒の耐性ができてしまったようだ。普通の毒ならば少し寝込むだけで回復する。
だから油断していたのだろう…。
その日は高熱がなかなか下がらず、おかしいなとは思った。そして数日生死の境をさ迷って生き長らえた私に医者が言った。
「申し上げにくいのですが、お嬢様はもう
子供をつくれないかと…。」
悲しかった。誰かからの悪意もそうだが、何より子を育めないという現実が…。そうして私の身体のことはアッテンボロー公爵の耳にも届くことになり婚約は解消された。
本来ならばそれは極秘事項。いずれは伝えなければならなかっただろうが、あまりにも早すぎる。加えて他貴族の間にも噂が広まっており…。 私はその時から穀潰しとなった。
貴族にとって結婚とは、家同士の結び付きを強めることもそうだが、それ以上に次世代へと高貴な血を繋げるためのもの。
誰が好き好んで傷物の令嬢を娶るというのか?
父も私の扱いに困ったのか、郊外にある別邸での療養を命じた。療養とは名ばかりの監禁だ。噂が沈静化するまで隠れていろということだろう。
落ち込む私に妹は言った。
「心配なさらないでお姉様。レイノルド様のことは任せて。」
幼き一時いくら可愛かったとは言え、こんな妹に私は何を遠慮していたのだろう?
101
あなたにおすすめの小説
緑の輪っかの魔法
荒瀬ヤヒロ
恋愛
ある国に双子の姉妹がおりました。
姉のシエラは王子様の婚約者、妹のサリーはそんな姉にいつだって辛く当たる意地悪な妹です。
十六の誕生日に指輪を贈られ求婚されるのがこの国の習わしです。
王子様が婚約者のシエラに指輪を捧げるその日が、刻一刻と迫っていきーー
姉にざまぁされた愚妹ですが何か?
リオール
恋愛
公爵令嬢エルシーには姉のイリアが居る。
地味な姉に対して美しい美貌をもつエルシーは考えた。
(お姉様は王太子と婚約してるけど……王太子に相応しいのは私じゃないかしら?)
そう考えたエルシーは、自らの勝利を確信しながら動き出す。それが破滅への道とも知らずに……
=====
性懲りもなくありがちな話。だって好きだから(•‿•)
10話完結。※書き終わってます
最初の方は結構ギャグテイストですがラストはシリアスに終わってます。
設定は緩いので何でも許せる方向けです。
(完)大好きなお姉様、なぜ?ー夫も子供も奪われた私
青空一夏
恋愛
妹が大嫌いな姉が仕組んだ身勝手な計画にまんまと引っかかった妹の不幸な結婚生活からの恋物語。ハッピーエンド保証。
中世ヨーロッパ風異世界。ゆるふわ設定ご都合主義。魔法のある世界。
ことあるごとに絡んでくる妹が鬱陶しいので、罠にかけました
四季
恋愛
わがままに育った妹は、私の大事なものをことあるごとに奪ってくる。しかも父親は妹を可愛がっていてまっとうな判断ができない。
これまでは諦めるだけだった。
でももう許さない。
妹の特性を利用し、罠にはめるーー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる