君といるのは疲れると言われたので、婚約者を追いかけるのはやめてみました

水谷繭

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4.レナード様と見知らぬご令嬢

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「魔法に関して教えるくらいなら……」

「まぁ、カレンとお友達になってくれますのね! 嬉しいですわ!」

 カレン様は目を輝かせる。

「それでは、またメイベル様に会いに来ますわね! ごきげんよう!」

 カレン様はそう言うと、手を振りながら嵐のように去っていった。

「ちょっとおかしな約束をしちゃったかしら……」

 私は曖昧に手を振り返しながら呟く。

 レナード様のことは無理に尋ねないと言われはしたものの、カレン様の目的はどう考えてもレナード様だ。レナード様本人が乗り気でないようなのに、私が彼女と関わってしまってもよかったのだろうか。

 でも、ただ魔法を教えてほしいと言う頼みを断るのも……。

 私は去っていくカレン様の後ろ姿を眺めながら、悶々と悩んでいた。


***

 それから二週間ほどの間、カレン様はラネル魔術院に来ることはなかった。

 レナード様は明らかにほっとしている様子だ。

 私も魔法を教えるなんて約束をしてしまったことが気になっていたので、あれ以降カレン様が現れないことに安心してしまっていた。

 あの約束は単なる思いつきで言っただけだったのかもしれない。カレン様も本気で魔法を教わりたいわけではなかった可能性がある。

 そう考えると、気分が軽くなった。

 しかし、そう油断していたところに、突然カレン様が姿を現した。

 一日の授業が終わり、魔術院を出て通りを歩いていると、曲がり角の向こうからカレン様が現れたのだ。

 今日のカレン様は、黒いワンピースを身に着け、その上に赤のローブを羽織っている。まるで魔術院の生徒みたいな恰好だ。その上、彼女は重そうなトランクケースまで抱えていた。

 不思議な恰好に目をぱちくりしてしまう。

「メイベル様! 久しぶりですね。道具を揃えていたら会いに来るのが遅くなってしまいましたわ」

「カレン様、その恰好は?」

「魔法を教わるならまず形から入ってみようと思いましたの。魔術院の制服と似たような服を用意してみたのですわ」

 カレン様は得意げに言う。もしかして、その服を用意していたので二週間現れなかったのだろうか。

「早速行きましょう。魔法を教わるにはどこがいいかしら? あちらの公園がいいでしょうか?」

 カレン様は辺りを見回しながら言う。

 私は戸惑いながらも、この辺りで比較的広いスペースのある公園の名前を出した。魔法の練習をするのならば、障害物のない場所のほうがいい。

「さすがメイベル様ですわ! お詳しいのですね。では、早速そちらへ行きましょう」

「ええと、はい……」

 私は少々迷いつつも、はりきっているカレン様を公園まで案内した。
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