君といるのは疲れると言われたので、婚約者を追いかけるのはやめてみました

水谷繭

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1.婚約者様は私といると疲れるらしいです

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 パーティー会場に入ると、大勢の参加者で賑わっていた。

 豪奢なシャンデリアのかかった王宮の広いホールで、正装をした男女がにこやかに歓談している。

 私はレナード様とその中を歩いた。

「メイベルさんはそういうドレスが好きなの? ちょっと意外だったな」

「前からこういうドレスに憧れていて……。でも、今まではブラッド様に、似合わないドレス姿で隣に並んで恥をかかせないでくれって忠告されていたので避けてたんです。今日はブラッド様との参加ではないので思いきって好きなドレスを着てみました」

 今日の私は、胸元から腰にかけてたくさんの宝石の散りばめられた、鮮やかな青のドレスを着ていた。

 髪はいくつもの宝石を埋め込んで作られた三日月形の髪飾りでシニヨンにまとめている。

 普段の私は、ブラッド様に恥をかかせないことだけを意識して、無難なドレスばかり選んでいた。

 飾り気がなく印象の薄いドレスばかり。

 いや、ブラッド様だけが理由ではないかもしれない。

 同じパーティー会場にお姉様がいることも多かったので、彼女と同じような華やかなドレスを着るのには抵抗があったのだ。

 ブラッド様がお姉様と参加している今日はいつも以上に比べられそうな気がするけれど、その時はその時だと諦めている。

 細かいことを気にするのは、もう嫌になってしまった。

「すごく似合ってるよ。今まで着なかったなんてもったいない。君の婚約者は本当に見る目がないんだね」

 レナード様はいたずらっぽく笑ってそう言った。

 お世辞かもしれないけれど、そう言われて心が随分軽くなった。


 そんなことを話している間にも、やけに周りからの視線を感じていた。

 先ほどからみんなにちらちら見られているように感じるのは気のせいだろうか。

 みんなこちらを見て何か囁き合っている気がする。ただ雰囲気からして、悪口ではないと思う。

(レナード様はやっぱり目立つのかしら)

 やはり、周りから見てもレナード様は美しいのだろう。

 私は彼と並んで歩いていることに少々気後れしながらも前に進んだ。


 すると、会場の左に、仲良さげに話しているブラッド様とお姉様の姿を見つけた。

 グレーのタキシードを着たブラッド様と、鮮やかな赤いドレスを身に纏ったお姉様。はた目から見ても、私と並んだときよりずっとお似合いだ。

 やっぱりブラッド様にふさわしいのは私ではないのだろうと考える。

 もともとブラッド様はお姉様のほうがよかったみたいだし、お姉様も最近は婚約者とうまくいっていないというし。

 私が身を引けば全て丸く収まるのではないか。

 それに……。

 私は少しの寂しさを抱えながら改めて決意した。私はブラッド様の言うように、変わるべきなのかもしれない。


「メイベルさん、あちらに魔術院の生徒がいたよ。行ってみない?」

 レナード様は二人の姿を見てぼんやりする私に、気遣うようにそう尋ねてきた。私は迷わず答える。

「まぁ、本当ですか? ぜひご挨拶に行きましょう!」

 私は二人の姿を振り切るように、レナード様について進んだ。
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