(完結) わたし

水無月あん

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たたり

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屋敷の中に入り込んできた嵐は、存分に吹き荒れた。
そして、屋敷から人の気配が、すっかり消え去った。

もぬけになった屋敷に、見知らぬ男たちがやってきた。
背の高い男と、小さい男だ。

「流行り病で、このあたりもすっかり人がいなくなったな。この立派な屋敷も取り壊しか……。もったいないが、買い手もいやしないだろうしなあ」

小さい男が言うと、背の高い男はうなずいた。

「まあな。だが、誰も寄りつかないおかげで、俺らが商売できるってもんだ」

「で、どうだ? この部屋で高く売れそうなもんはあるか?」

小さい男の問いに、背の高い男は抜け目のない目つきで、あたりをゆっくりと見回した。
目があったとたん、ぞっとした。

「そうだな……。そこの地蔵菩薩だけだな」

「は? おんぼろの仏像だぞ?」

「相変わらず、おまえは見る目がねえなあ」

バカにした物言いに、小さい男は声を荒げた。

「途絶えた家の仏像なんか盗んだりしたら、たたられるぞ!」

「はあ? たたり? 笑わせんな。このお宝を見逃したほうが寝覚めが悪いってもんだ」

そう言って、背の高い男は小さい男を嘲笑った。

小さい男は、あきらめたように、ため息をついた。

「おまえって奴は、本当に悪霊そのものだな……。まあ、いい。俺は遠慮する。さすがに気味が悪いからな。おまえの取り分だ。悪霊め、好きにしな」

「じゃ、遠慮なく。後悔するなよ?」

背の高い男は目の前まで近づいてくると、ふざけたように手をあわした。

「じゃあ、地蔵菩薩さん。俺のために、せいぜい高く売れてくれ」

そう言って、空洞のような目で笑った。

そして、黒い布を衣からひっぱりだし、かぶせてきた。
抵抗するすべは何もなく、あっという間に闇につつまれた。

どこかへ運ばれているようで、揺れる。

暗闇でいると、また、ぼんやりしてきた。
そして、そのまま、意識が遠のいていった。


◇ ◇ ◇


「……ちょっと、ちょっと、ちょっと!」

遠くから、うっすら聞こえてきた声が大きくなってくる。

「おーい、あんただって! 新入りさん! と言っても、ここにいる中で一番古そうだけどねえ」

甲高い声が、ぼんやりした頭に響きわたる。

「ほら、起きな! いつまで眠ってるんだい?」

声が、ますます大きくなって、我慢ができなくなった。

固く閉じていた目を、ゆっくりとこじ開ける。

「お、やっと、目に光がともったね。わたしの見立てどおり、からっぽの地蔵菩薩さんじゃなかったってことか」

さっきから聞こえてくる声は、どうやら、すぐ隣から聞こえてきていたようだった。

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