12 / 101
噂
しおりを挟む
ルーファスが休み始めて、三日目。
あいかわらず、休み時間になったらやってくるグレン。
私を見ながら、メモをするグレンの姿にもすっかり慣れた。
最初の日記は、ルーファスから「もっと細かく」と注文が入ったらしく、何をそんなに書くことがあるのかというくらい、生真面目にメモをとっているグレン。
一度見せてもらったけど、まるで報告書みたいで、自分のことであっても読む気が失せた……。
その隣で、アイリスが、ルーファスから届いたノートを真剣な顔で読んでいる。
読み終わったあと、目をきらきらさせて、考えをめぐらせている様子のアイリス。
「ねえ、アイリス。何かおもしろいことが書いてあった?」
と、聞いてみた。
アイリスが大きくうなずいた。
「うん。さすがは、ルーファスね。私の興味をひきそうな情報を書いてくれてる」
「例えば、どんなこと?」
「ジャナ国って獣人だけが住む国でしょ? しかも、この国と違って、純血の獣人だけ。だから、獣人向けのお店ばかりで、この国にはないような品物が多いみたい。つまり、逆を言えば、ここモリオン国にあって、ジャナ国にないものも多い。王女様と一緒に来ている獣人の方たちは、こっちの食事がえらく気に入っているそうよ。食品なら、うちの商会が入り込めるんじゃない?」
「アイリス、目がぎらついてるよ」
にこにこしながら指摘するグレン。
「だって、商売の匂いがプンプンしてきたから」
と、楽しそうにグレンに話すアイリス。
そんなアイリスを嬉しそうに見つめるグレン。
私はこんなふたりの様子を見るのが大好き。
顔がにやけてしまって、とまらなくなる。
そう、アイリスとグレンは私の理想。
ふと、思い出したくもない、11年まえのことが頭にうかぶ。
番というだけで、会ったその日に、強制的に惹かれて、まわりを混乱に陥れたあの二人の姿が。
やっぱり、番なんて最悪。害しかない!
幸い、うちのお父様は、番嫌いの私を政略結婚させようとは思ってはいないよう。
でも、16歳になった時、お父様に聞かれた。
「ララはどんな相手と結婚したいんだい?」と。
だから、私はお父様に絶対にゆずれないことだけを伝えた。
もし、結婚するなら、番にあう可能性がゼロの相手じゃないと嫌だって。
「そうなると、人か、あるいは、かなり血のうすい獣人か……うーん……」
お父様が何故か困ったように、つぶやいていたっけ。
そんなことを思い出していた時だ。
「……そういえば、さっき、隣のクラスの友達に聞いたんだけど、昨日、町で、ルーファス様ときれいな女の人が歩いていたんだって……」
「ルーファス様、休んでるけど、その女の人といるの!? 誰なのかしら」
「高貴な方なんじゃない。ま、ルーファス様の隣に立つくらいだもんね」
クラスメイトの女子生徒たちが話す会話が聞こえてきた。
ルーファスの名前に思わず耳が反応してしまう。
アイリスもグレンも聞こえていたよう。
「え、でも、ルーファス様って……」
と言ってから、はっとしたように黙ったクラスメイト達。
なんか、びしばしと視線を感じるんだけど、気のせいかな……?
◇ ◇ ◇
やっと、お昼休みだ!
ルーファスがいないのは寂しいけれど、私の食欲はいつもどおり。
ということで、アイリスとグレンと一緒に、もりもりとランチを食べる私。
すると、また、ルーファスの名前が別のテーブルから聞こえてきた。
自然と耳をすますと、さっき教室で聞いたようなことだ。
どうやら、ルーファスが美しい女性といたというのが噂になっているみたい。
ジャナ国の王女様が来ていることは公にされていないので、相手の女性がだれなのかということも、みんな興味津々のよう。まあ、ルーファスは人気があるからね。
あちこちから聞こえてきた噂では、王女様はとてもきれいな方らしい。
どんな方なんだろう……。ちょっと気になるな。
「ルーファスの情報にジャナ国の王女様のことは何か書いていた?」
と、アイリスに聞いてみた。
「全く書いてないわね。ジャナ国で商売するとなると、王族の情報も欲しいのに、王女様の名前すら書いてないのよね。まあ、かけらも興味がないんでしょうね、ルーファスは……。なので、わかっていることをまとめると、今回こられているジャナ国の王女様は第二王女で、年は私たちよりひとつ上。ルーファスとグレンと同じね。これは、ララも知っているだろうけれど、ジャナ国の王族はうちの国と同じ竜の獣人。黒い髪に金色の瞳をもつ、華やかな美女らしいわ。まあ、竜の獣人は総じて美形だけどね」
「ほんと、アイリスの情報はいつもすごいよねー。どうやって集めるのか、想像もつかないわ」
感嘆する私に、メモを片手にもったグレンもうなずいた。
「うん、僕も全然わからないよ」
「ちょっと、グレン。僕も……なんて、のんきに言ってる場合じゃないわよ! 婿入りしたら、私がびしばし鍛えるからね」
アイリスの言葉に、満面の笑みを見せたグレン。
「うん、楽しみにしてる」
そんなふたりを見て、またまたほっこりしていたら、露骨なほどの視線を感じた。
見ると、近くのテーブルで、私を見てクスクスと笑っている女子生徒がふたり。
やっぱりね……。
小さいころからよーく知っているふたりだ。
面倒なので、見なかったことにしよう。
うん、それが一番よね。
あいかわらず、休み時間になったらやってくるグレン。
私を見ながら、メモをするグレンの姿にもすっかり慣れた。
最初の日記は、ルーファスから「もっと細かく」と注文が入ったらしく、何をそんなに書くことがあるのかというくらい、生真面目にメモをとっているグレン。
一度見せてもらったけど、まるで報告書みたいで、自分のことであっても読む気が失せた……。
その隣で、アイリスが、ルーファスから届いたノートを真剣な顔で読んでいる。
読み終わったあと、目をきらきらさせて、考えをめぐらせている様子のアイリス。
「ねえ、アイリス。何かおもしろいことが書いてあった?」
と、聞いてみた。
アイリスが大きくうなずいた。
「うん。さすがは、ルーファスね。私の興味をひきそうな情報を書いてくれてる」
「例えば、どんなこと?」
「ジャナ国って獣人だけが住む国でしょ? しかも、この国と違って、純血の獣人だけ。だから、獣人向けのお店ばかりで、この国にはないような品物が多いみたい。つまり、逆を言えば、ここモリオン国にあって、ジャナ国にないものも多い。王女様と一緒に来ている獣人の方たちは、こっちの食事がえらく気に入っているそうよ。食品なら、うちの商会が入り込めるんじゃない?」
「アイリス、目がぎらついてるよ」
にこにこしながら指摘するグレン。
「だって、商売の匂いがプンプンしてきたから」
と、楽しそうにグレンに話すアイリス。
そんなアイリスを嬉しそうに見つめるグレン。
私はこんなふたりの様子を見るのが大好き。
顔がにやけてしまって、とまらなくなる。
そう、アイリスとグレンは私の理想。
ふと、思い出したくもない、11年まえのことが頭にうかぶ。
番というだけで、会ったその日に、強制的に惹かれて、まわりを混乱に陥れたあの二人の姿が。
やっぱり、番なんて最悪。害しかない!
幸い、うちのお父様は、番嫌いの私を政略結婚させようとは思ってはいないよう。
でも、16歳になった時、お父様に聞かれた。
「ララはどんな相手と結婚したいんだい?」と。
だから、私はお父様に絶対にゆずれないことだけを伝えた。
もし、結婚するなら、番にあう可能性がゼロの相手じゃないと嫌だって。
「そうなると、人か、あるいは、かなり血のうすい獣人か……うーん……」
お父様が何故か困ったように、つぶやいていたっけ。
そんなことを思い出していた時だ。
「……そういえば、さっき、隣のクラスの友達に聞いたんだけど、昨日、町で、ルーファス様ときれいな女の人が歩いていたんだって……」
「ルーファス様、休んでるけど、その女の人といるの!? 誰なのかしら」
「高貴な方なんじゃない。ま、ルーファス様の隣に立つくらいだもんね」
クラスメイトの女子生徒たちが話す会話が聞こえてきた。
ルーファスの名前に思わず耳が反応してしまう。
アイリスもグレンも聞こえていたよう。
「え、でも、ルーファス様って……」
と言ってから、はっとしたように黙ったクラスメイト達。
なんか、びしばしと視線を感じるんだけど、気のせいかな……?
◇ ◇ ◇
やっと、お昼休みだ!
ルーファスがいないのは寂しいけれど、私の食欲はいつもどおり。
ということで、アイリスとグレンと一緒に、もりもりとランチを食べる私。
すると、また、ルーファスの名前が別のテーブルから聞こえてきた。
自然と耳をすますと、さっき教室で聞いたようなことだ。
どうやら、ルーファスが美しい女性といたというのが噂になっているみたい。
ジャナ国の王女様が来ていることは公にされていないので、相手の女性がだれなのかということも、みんな興味津々のよう。まあ、ルーファスは人気があるからね。
あちこちから聞こえてきた噂では、王女様はとてもきれいな方らしい。
どんな方なんだろう……。ちょっと気になるな。
「ルーファスの情報にジャナ国の王女様のことは何か書いていた?」
と、アイリスに聞いてみた。
「全く書いてないわね。ジャナ国で商売するとなると、王族の情報も欲しいのに、王女様の名前すら書いてないのよね。まあ、かけらも興味がないんでしょうね、ルーファスは……。なので、わかっていることをまとめると、今回こられているジャナ国の王女様は第二王女で、年は私たちよりひとつ上。ルーファスとグレンと同じね。これは、ララも知っているだろうけれど、ジャナ国の王族はうちの国と同じ竜の獣人。黒い髪に金色の瞳をもつ、華やかな美女らしいわ。まあ、竜の獣人は総じて美形だけどね」
「ほんと、アイリスの情報はいつもすごいよねー。どうやって集めるのか、想像もつかないわ」
感嘆する私に、メモを片手にもったグレンもうなずいた。
「うん、僕も全然わからないよ」
「ちょっと、グレン。僕も……なんて、のんきに言ってる場合じゃないわよ! 婿入りしたら、私がびしばし鍛えるからね」
アイリスの言葉に、満面の笑みを見せたグレン。
「うん、楽しみにしてる」
そんなふたりを見て、またまたほっこりしていたら、露骨なほどの視線を感じた。
見ると、近くのテーブルで、私を見てクスクスと笑っている女子生徒がふたり。
やっぱりね……。
小さいころからよーく知っているふたりだ。
面倒なので、見なかったことにしよう。
うん、それが一番よね。
951
あなたにおすすめの小説
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
本日、私の妹のことが好きな婚約者と結婚いたしました
音芽 心
恋愛
私は今日、幼い頃から大好きだった人と結婚式を挙げる。
____私の妹のことが昔から好きな婚約者と、だ。
だから私は決めている。
この白い結婚を一年で終わらせて、彼を解放してあげることを。
彼の気持ちを直接聞いたことはないけれど……きっとその方が、彼も喜ぶだろうから。
……これは、恋を諦めていた令嬢が、本当の幸せを掴むまでの物語。
幸せな番が微笑みながら願うこと
矢野りと
恋愛
偉大な竜王に待望の番が見つかったのは10年前のこと。
まだ幼かった番は王宮で真綿に包まれるように大切にされ、成人になる16歳の時に竜王と婚姻を結ぶことが決まっていた。幸せな未来は確定されていたはずだった…。
だが獣人の要素が薄い番の扱いを周りは間違えてしまう。…それは大切に想うがあまりのすれ違いだった。
竜王の番の心は少しづつ追いつめられ蝕まれていく。
※設定はゆるいです。
【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜
雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。
彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。
自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。
「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」
異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。
異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる