13 / 101
面倒なふたり
しおりを挟む
見なかったことにしたのに、ふたりが立ち上がって、しゃなりしゃなりと私のほうへと近づいてきた。
「げっ……」
気づいたアイリスも嫌そうな声をもらす。
私を見下ろすように立ち、
「やっと、ルーファス様に見放されたのね。ララベルさん!」
と、声高に言ったのは、ゴージャスな金色の巻き毛のモリナさん。
ジャリス侯爵家の令嬢で、年は私よりひとつ上。
ちなみに彼女も相当血は薄いらしいけれど、竜の獣人。
ルーファスとは遠い親戚にあたる。
そして、小さい頃から、ルーファスに執着しているひとりで、私を目の敵にしている。
「ララベルさんは、侯爵家の令嬢とはいえ、獣人ではないですものね。誇り高い竜の獣人であるルーファス様のおそばにいていいわけがないわ。身の程をわきまえないから、こんなみじめなことになるのよ」
これまた、えらそうな口調で言ったのは、桃色の髪が自慢のコルネさん。
ロスター伯爵家の令嬢でモリナさんと同じ年。
この国は元々が獣人の国だったからとかなんて理由で、獣人のほうがえらい、みたいな考えの人がたまーにいる。
コルネさんのお父様のロスター伯爵様がそんな考えみたいで、コルネさんもしっかり受け継いでいる。
小さい頃から、顔を合わすたび、私が獣人じゃないから、ルーファスのそばにいるのはおかしいと言ってくるんだよね。
ちなみに、コルネさんはうさぎの獣人。
コルネさん自身に全く興味はないのに、本人が自慢げに言ってくるので知っている。
私としてはウサギは大好きなのに、ピンク色のうさぎのぬいぐるみを目にすると、コルネさんを条件反射で思い出すのが、なんだか悲しい……。
ちなみに、コルネさんも熱狂的なルーファスファン。
ふたりにとって、私は共通の敵なのか、いつも連れ立って嫌味やら文句をいいにくる。
まあ、ルーファスがいない時だけなんだけどね。
せっかくのお昼休みなのに、面倒だなあ……。
「そうそう、ララベルさん。ルーファス様が今、つきっきりで一緒におられるのは、ジャナ国の王女様らしいわよ。ジャナ国の王族といえば、ルーファス様と私と同じ、竜の獣人。獣人じゃないララベルさんでも、これくらいは知ってるわよね? 常識だもの」
と、やたらと嬉しそうに言うモリナさん。
「まあ、知ってますが……」
と答えたものの、モリナさんがこんなに嬉しそうなのは、なんでだろう。
だって、ルーファスの幼馴染というだけの私を敵視するくらいなのに、王女様なら、そばにいてもいいんだろうか……?
今までのルーファスへの執着を思い出すと、誰であっても、ルーファスのそばに女性がいるのは嫌がりそうなのに。
会話をひろげたくないのに、気になってしまって、つい聞いてみた。
「モリナさんはルーファスのそばに王女様がいるのは別にいいんですか?」
すると、勝ち誇ったように私を見て、ふふっと笑ったモリナさん。
「そりゃあ、いい気はしないわ。でも、ジャナ国の王女様は誇り高き純血の竜の獣人。竜の獣人以外では、ご案内はできないでしょう? つまり、竜の獣人のルーファス様だから任された、国を代表してのお役目だもの。そこは、私だって見守るわ。嫉妬で邪魔はしたくないもの」
「……は? いやいや、それ、なに目線? もしや、自分が妻だって妄想……? こわすぎるっ……」
と、隣で身震いするアイリス。
今度はコルネさんが、負けじとしゃべりだす。
「もちろん、私もよ、ララベルさん。獣人ではない、あなたにはわからないでしょうけどね。やっぱり、ルーファス様のおそばにいるのは、獣人ではないあなたには無理なのよ!」
はい、またでた。獣人マウント。
私は内心、ため息をつく。
グレンなんか興味がなさすぎて、思考を放棄しているよう。
さっきから笑顔のまま、動かないんだけど。
もしかして、眠ってる?
そんなことを考えていると、モリナさんが意味ありげに微笑んだ。
「今回、純血の竜の獣人であられる王女様と一緒にいることで、ルーファス様の竜の獣人としての本能が目覚めるんじゃないかしら」
「本能?」
思わず聞き返す。
「もちろん、番よ! ルーファス様は17歳。竜の獣人の番は18歳までに現れるって言うでしょ。だから、王女様に刺激されて、目覚めるの!」
あ、ついに言ったわね! 私のだいっきらいな言葉を!
「じゃあ、モリナさんは王女様が番で、ルーファスがそれに気づくって言いたいの?」
と、アイリスがあきれたように言った。
モリナさんが目をつりあげた。
「そんなわけないでしょ! というか、アイリスさん。先輩にむかって、なんて口の利き方なの!」
「敬うところがまるでない人のことは、先輩って思えないので」
と、かっこよく言い返すアイリス。
確かに……。
「失礼ね! それに、年だけじゃないわ。アイリスさん、あなた子爵家でしょ。私は侯爵家の令嬢なのよ!」
ちょっと、アイリスになんてことを言うの!
自分のことは聞き流せるけれど、アイリスへのその態度は許せない。
抗議しようと立ち上がったとたん、「学園では家は関係ないよね? 爵位をふりかざして、恥ずかしくないの?」と、ひんやりとした声がした。
あ、グレン。起きてる。
そして、笑顔だけれど、目がわらってない。
うん、怒ってるわね。
いつもおっとりしてるけれど、アイリスのこととなると割と沸点は低いグレン。
アイリスがそんなグレンを見て、ちょっと嬉しそう。
このふたりの様子にいらだっていた心が瞬時に癒されたわ……。
「げっ……」
気づいたアイリスも嫌そうな声をもらす。
私を見下ろすように立ち、
「やっと、ルーファス様に見放されたのね。ララベルさん!」
と、声高に言ったのは、ゴージャスな金色の巻き毛のモリナさん。
ジャリス侯爵家の令嬢で、年は私よりひとつ上。
ちなみに彼女も相当血は薄いらしいけれど、竜の獣人。
ルーファスとは遠い親戚にあたる。
そして、小さい頃から、ルーファスに執着しているひとりで、私を目の敵にしている。
「ララベルさんは、侯爵家の令嬢とはいえ、獣人ではないですものね。誇り高い竜の獣人であるルーファス様のおそばにいていいわけがないわ。身の程をわきまえないから、こんなみじめなことになるのよ」
これまた、えらそうな口調で言ったのは、桃色の髪が自慢のコルネさん。
ロスター伯爵家の令嬢でモリナさんと同じ年。
この国は元々が獣人の国だったからとかなんて理由で、獣人のほうがえらい、みたいな考えの人がたまーにいる。
コルネさんのお父様のロスター伯爵様がそんな考えみたいで、コルネさんもしっかり受け継いでいる。
小さい頃から、顔を合わすたび、私が獣人じゃないから、ルーファスのそばにいるのはおかしいと言ってくるんだよね。
ちなみに、コルネさんはうさぎの獣人。
コルネさん自身に全く興味はないのに、本人が自慢げに言ってくるので知っている。
私としてはウサギは大好きなのに、ピンク色のうさぎのぬいぐるみを目にすると、コルネさんを条件反射で思い出すのが、なんだか悲しい……。
ちなみに、コルネさんも熱狂的なルーファスファン。
ふたりにとって、私は共通の敵なのか、いつも連れ立って嫌味やら文句をいいにくる。
まあ、ルーファスがいない時だけなんだけどね。
せっかくのお昼休みなのに、面倒だなあ……。
「そうそう、ララベルさん。ルーファス様が今、つきっきりで一緒におられるのは、ジャナ国の王女様らしいわよ。ジャナ国の王族といえば、ルーファス様と私と同じ、竜の獣人。獣人じゃないララベルさんでも、これくらいは知ってるわよね? 常識だもの」
と、やたらと嬉しそうに言うモリナさん。
「まあ、知ってますが……」
と答えたものの、モリナさんがこんなに嬉しそうなのは、なんでだろう。
だって、ルーファスの幼馴染というだけの私を敵視するくらいなのに、王女様なら、そばにいてもいいんだろうか……?
今までのルーファスへの執着を思い出すと、誰であっても、ルーファスのそばに女性がいるのは嫌がりそうなのに。
会話をひろげたくないのに、気になってしまって、つい聞いてみた。
「モリナさんはルーファスのそばに王女様がいるのは別にいいんですか?」
すると、勝ち誇ったように私を見て、ふふっと笑ったモリナさん。
「そりゃあ、いい気はしないわ。でも、ジャナ国の王女様は誇り高き純血の竜の獣人。竜の獣人以外では、ご案内はできないでしょう? つまり、竜の獣人のルーファス様だから任された、国を代表してのお役目だもの。そこは、私だって見守るわ。嫉妬で邪魔はしたくないもの」
「……は? いやいや、それ、なに目線? もしや、自分が妻だって妄想……? こわすぎるっ……」
と、隣で身震いするアイリス。
今度はコルネさんが、負けじとしゃべりだす。
「もちろん、私もよ、ララベルさん。獣人ではない、あなたにはわからないでしょうけどね。やっぱり、ルーファス様のおそばにいるのは、獣人ではないあなたには無理なのよ!」
はい、またでた。獣人マウント。
私は内心、ため息をつく。
グレンなんか興味がなさすぎて、思考を放棄しているよう。
さっきから笑顔のまま、動かないんだけど。
もしかして、眠ってる?
そんなことを考えていると、モリナさんが意味ありげに微笑んだ。
「今回、純血の竜の獣人であられる王女様と一緒にいることで、ルーファス様の竜の獣人としての本能が目覚めるんじゃないかしら」
「本能?」
思わず聞き返す。
「もちろん、番よ! ルーファス様は17歳。竜の獣人の番は18歳までに現れるって言うでしょ。だから、王女様に刺激されて、目覚めるの!」
あ、ついに言ったわね! 私のだいっきらいな言葉を!
「じゃあ、モリナさんは王女様が番で、ルーファスがそれに気づくって言いたいの?」
と、アイリスがあきれたように言った。
モリナさんが目をつりあげた。
「そんなわけないでしょ! というか、アイリスさん。先輩にむかって、なんて口の利き方なの!」
「敬うところがまるでない人のことは、先輩って思えないので」
と、かっこよく言い返すアイリス。
確かに……。
「失礼ね! それに、年だけじゃないわ。アイリスさん、あなた子爵家でしょ。私は侯爵家の令嬢なのよ!」
ちょっと、アイリスになんてことを言うの!
自分のことは聞き流せるけれど、アイリスへのその態度は許せない。
抗議しようと立ち上がったとたん、「学園では家は関係ないよね? 爵位をふりかざして、恥ずかしくないの?」と、ひんやりとした声がした。
あ、グレン。起きてる。
そして、笑顔だけれど、目がわらってない。
うん、怒ってるわね。
いつもおっとりしてるけれど、アイリスのこととなると割と沸点は低いグレン。
アイリスがそんなグレンを見て、ちょっと嬉しそう。
このふたりの様子にいらだっていた心が瞬時に癒されたわ……。
968
あなたにおすすめの小説
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
番(つがい)はいりません
にいるず
恋愛
私の世界には、番(つがい)という厄介なものがあります。私は番というものが大嫌いです。なぜなら私フェロメナ・パーソンズは、番が理由で婚約解消されたからです。私の母も私が幼い頃、番に父をとられ私たちは捨てられました。でもものすごく番を嫌っている私には、特殊な番の体質があったようです。もうかんべんしてください。静かに生きていきたいのですから。そう思っていたのに外見はキラキラの王子様、でも中身は口を開けば毒舌を吐くどうしようもない正真正銘の王太子様が私の周りをうろつき始めました。
本編、王太子視点、元婚約者視点と続きます。約3万字程度です。よろしくお願いします。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話
下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。
御都合主義のハッピーエンド。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる