14 / 101
聞いていい?
しおりを挟む
グレンに正論で注意され、さすがのモリナさんも気まずそう。
そのまま退散してほしい……。と思ったら、今度は、一気に早口でしゃべりはじめた。
「とにかく、私が言いたいのは、ルーファス様もそろそろ番に気づかれる時がくるってことよ。竜の獣人は番が出会える範囲内にいることが基本。遠い他国にいるなんてありえない。だから、王女様ではないわ! それに、ルーファス様は竜の血が強いでしょうから、番は絶対に同じ竜の獣人に決まってる。だから、この国で竜の獣人で年頃がちょうどで、血筋もふわさわしく、すべてに似合うのは私しかいないでしょう? 小さいころ、初めてお会いした時から、私が強くひかれてしまったのもルーファス様の番は私だって証拠よ!」
番、番、番って……。
私の嫌いな言葉が連呼されて、だんだん、むかむかしてきたわ。
「ちょっと、モリナさん! あなたが番だなんてわからないわよね? 私だって、ルーファス様にすごくひかれてるもの。竜の獣人の番が獣人というのは納得だけれど、竜の獣人である必要はないと思うわ!」
文句を言うコルネさん。
「竜の獣人は特別だもの! ほら、ずっとまえ、第二王子様が結婚式当日に運命的に番に出会われた時があったでしょう? 平民のメイドの女性が番だったけれど、うっすら竜の獣人の血が流れていたらしいもの」
なにが運命的ですって……!?
番どころか、私の天敵の話までだすとは!
うん、靴がぬぎたい。
ちょっとくらい投げつけてもいいんじゃないかしら?
私の気持ちを察したアイリスがささいてきた。
「ダメよ、ララ。ララの素敵な靴がもったいないから、やめときなさい。それに、今、これに靴をなげつけたところで、あの時の悔しい気持ちはすっきりしないわよ」
うっ……。それはそうなんだよね。
結局、私たちそっちのけで、ふたりの言い争いはヒートアップしていく。
「ちょっと、竜の獣人だからって、うさぎの獣人である私を馬鹿にしてるの?」
「馬鹿にはしてないけど、序列はあるわよね。竜の獣人は獣人のトップだもの!」
「竜の獣人っていっても、なんの特徴もないくらい、血がうすいくせに」
「は? 例え血がうすくても、私は竜の獣人。血が濃いうさぎの獣人よりは、ずっと上よ!」
「なんですって!」
こうして、ふたりは、お互いをののしりあいながら立ち去っていった。
「はあー、本当に迷惑なふたりよね。グレン、ふたりのララへの暴言、しっかりもらさず書いて、ルーファスに報告しといて」
「うん、まかせといて。ルーファス、怒るだろうね」
と、にこにこしながらグレンが言った。
「いや、ルーファスは怒らないけど、私が第二王子の話を聞いたと知ったら心配するだろうから、さっきのは書かなくてもいいよ」
私の言葉に、アイリスがまたもや、はーっと大きなため息をついた。
「ララ。あの男は怒るわよ。間違いなく」
ルーファスが怒る? 想像してみる。想像してみる。
「……想像できない」
「洗脳が深いわ……。ねえ、ララ。ちょっと聞きたいことがあるけど、嫌だったら答えなくていいから」
と、ふいに真面目な顔で言ったアイリス。
改まって、なんだろうと思いながら、うなずいてみせる。
「もし、ルーファスに番が現れたら、ララはどうする?」
「え……?」
「あ、ごめん。さっきの迷惑な人たちの話でちょっと気になって。もちろん、竜の獣人の番は竜の獣人だ、とか、都合のいいように思い込んでるところはあるけれど、ルーファスは確かに、竜の獣人の血が濃い。だから、番が現れる可能性が高いのは本当だから」
「あ、そうか……。そうだよね……。わかってたんだけど、考えないようにしてたみたい……。さっき、モリナさんが18歳までに竜の獣人は番に気づくって言ってたけど、そうなると、あと少しか……」
自分の声が一気に沈む。
「ごめん、ララ、嫌なこと言って……」
「あ、ううん。アイリスなら大丈夫。でも、そうだね……実際、そうなったら、どうなんだろう。やっぱり、すごく寂しいと思う。番が現れたら、あまり会えなくなるんでしょ?」
「まあ、一般的には番にべったりになるからね」
「ルーファスとは小さいころから一緒だったから、ずっと会えないって考えられないんだよね……。でも、それよりも、ずっと怖いのは、ルーファスが変わってしまうことかも」
「ルーファスが変わる?」
「うん。あの第二王子みたいに、番に会ったとたん、番しか見えなくなって、一瞬で全てを手放してしまうかもしれない。そうなったら、私たち4人で過ごした思い出も全部捨てるのかなって……。第二王子のときは、怒りしかわいてこなかったけど、もし、ルーファスがそうなったらと考えると、怖くてたまらないんだよね……」
「僕は番のことは全然わからないけど、ルーファスがそうならないことだけはわかるよ。だから、安心して、ララ」
と、グレンがにっこり微笑んだ。
その笑顔に心の中のもやもやとした黒いものが、すっと消えた。
「グレンのおかげで、なんか安心した! ぐちぐち悩んでもしょうがないよね。私も覚悟を決める! もしも、ルーファスが番と出会って、その番もいいひとで、みんなに迷惑をかけるようなこともせず、ちゃんとふたりで心の絆を育んでいけるようなら、私はルーファス離れをする。すごく寂しくなるし、沢山泣いてしまうだろうけれど、ちゃんと祝福する!」
「え、ララ……? なんで、急に、その覚悟……? あ、グレン。この会話、ルーファスに絶対に報告しないでよ。私、殺されるから……」
あわてた様子のアイリス。
「でも、もしも、ルーファスが第二王子みたいになったら、今度こそ、靴をなげつけるわ! もちろん、怒りのためじゃなく、番の呪いからといて正気に戻すために」
と、私は力強く宣言した。
そのまま退散してほしい……。と思ったら、今度は、一気に早口でしゃべりはじめた。
「とにかく、私が言いたいのは、ルーファス様もそろそろ番に気づかれる時がくるってことよ。竜の獣人は番が出会える範囲内にいることが基本。遠い他国にいるなんてありえない。だから、王女様ではないわ! それに、ルーファス様は竜の血が強いでしょうから、番は絶対に同じ竜の獣人に決まってる。だから、この国で竜の獣人で年頃がちょうどで、血筋もふわさわしく、すべてに似合うのは私しかいないでしょう? 小さいころ、初めてお会いした時から、私が強くひかれてしまったのもルーファス様の番は私だって証拠よ!」
番、番、番って……。
私の嫌いな言葉が連呼されて、だんだん、むかむかしてきたわ。
「ちょっと、モリナさん! あなたが番だなんてわからないわよね? 私だって、ルーファス様にすごくひかれてるもの。竜の獣人の番が獣人というのは納得だけれど、竜の獣人である必要はないと思うわ!」
文句を言うコルネさん。
「竜の獣人は特別だもの! ほら、ずっとまえ、第二王子様が結婚式当日に運命的に番に出会われた時があったでしょう? 平民のメイドの女性が番だったけれど、うっすら竜の獣人の血が流れていたらしいもの」
なにが運命的ですって……!?
番どころか、私の天敵の話までだすとは!
うん、靴がぬぎたい。
ちょっとくらい投げつけてもいいんじゃないかしら?
私の気持ちを察したアイリスがささいてきた。
「ダメよ、ララ。ララの素敵な靴がもったいないから、やめときなさい。それに、今、これに靴をなげつけたところで、あの時の悔しい気持ちはすっきりしないわよ」
うっ……。それはそうなんだよね。
結局、私たちそっちのけで、ふたりの言い争いはヒートアップしていく。
「ちょっと、竜の獣人だからって、うさぎの獣人である私を馬鹿にしてるの?」
「馬鹿にはしてないけど、序列はあるわよね。竜の獣人は獣人のトップだもの!」
「竜の獣人っていっても、なんの特徴もないくらい、血がうすいくせに」
「は? 例え血がうすくても、私は竜の獣人。血が濃いうさぎの獣人よりは、ずっと上よ!」
「なんですって!」
こうして、ふたりは、お互いをののしりあいながら立ち去っていった。
「はあー、本当に迷惑なふたりよね。グレン、ふたりのララへの暴言、しっかりもらさず書いて、ルーファスに報告しといて」
「うん、まかせといて。ルーファス、怒るだろうね」
と、にこにこしながらグレンが言った。
「いや、ルーファスは怒らないけど、私が第二王子の話を聞いたと知ったら心配するだろうから、さっきのは書かなくてもいいよ」
私の言葉に、アイリスがまたもや、はーっと大きなため息をついた。
「ララ。あの男は怒るわよ。間違いなく」
ルーファスが怒る? 想像してみる。想像してみる。
「……想像できない」
「洗脳が深いわ……。ねえ、ララ。ちょっと聞きたいことがあるけど、嫌だったら答えなくていいから」
と、ふいに真面目な顔で言ったアイリス。
改まって、なんだろうと思いながら、うなずいてみせる。
「もし、ルーファスに番が現れたら、ララはどうする?」
「え……?」
「あ、ごめん。さっきの迷惑な人たちの話でちょっと気になって。もちろん、竜の獣人の番は竜の獣人だ、とか、都合のいいように思い込んでるところはあるけれど、ルーファスは確かに、竜の獣人の血が濃い。だから、番が現れる可能性が高いのは本当だから」
「あ、そうか……。そうだよね……。わかってたんだけど、考えないようにしてたみたい……。さっき、モリナさんが18歳までに竜の獣人は番に気づくって言ってたけど、そうなると、あと少しか……」
自分の声が一気に沈む。
「ごめん、ララ、嫌なこと言って……」
「あ、ううん。アイリスなら大丈夫。でも、そうだね……実際、そうなったら、どうなんだろう。やっぱり、すごく寂しいと思う。番が現れたら、あまり会えなくなるんでしょ?」
「まあ、一般的には番にべったりになるからね」
「ルーファスとは小さいころから一緒だったから、ずっと会えないって考えられないんだよね……。でも、それよりも、ずっと怖いのは、ルーファスが変わってしまうことかも」
「ルーファスが変わる?」
「うん。あの第二王子みたいに、番に会ったとたん、番しか見えなくなって、一瞬で全てを手放してしまうかもしれない。そうなったら、私たち4人で過ごした思い出も全部捨てるのかなって……。第二王子のときは、怒りしかわいてこなかったけど、もし、ルーファスがそうなったらと考えると、怖くてたまらないんだよね……」
「僕は番のことは全然わからないけど、ルーファスがそうならないことだけはわかるよ。だから、安心して、ララ」
と、グレンがにっこり微笑んだ。
その笑顔に心の中のもやもやとした黒いものが、すっと消えた。
「グレンのおかげで、なんか安心した! ぐちぐち悩んでもしょうがないよね。私も覚悟を決める! もしも、ルーファスが番と出会って、その番もいいひとで、みんなに迷惑をかけるようなこともせず、ちゃんとふたりで心の絆を育んでいけるようなら、私はルーファス離れをする。すごく寂しくなるし、沢山泣いてしまうだろうけれど、ちゃんと祝福する!」
「え、ララ……? なんで、急に、その覚悟……? あ、グレン。この会話、ルーファスに絶対に報告しないでよ。私、殺されるから……」
あわてた様子のアイリス。
「でも、もしも、ルーファスが第二王子みたいになったら、今度こそ、靴をなげつけるわ! もちろん、怒りのためじゃなく、番の呪いからといて正気に戻すために」
と、私は力強く宣言した。
1,005
あなたにおすすめの小説
どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話
下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。
御都合主義のハッピーエンド。
小説家になろう様でも投稿しています。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
【完結】そう、番だったら別れなさい
堀 和三盆
恋愛
ラシーヌは狼獣人でライフェ侯爵家の一人娘。番である両親に憧れていて、番との婚姻を完全に諦めるまでは異性との交際は控えようと思っていた。
しかし、ある日を境に母親から異性との交際をしつこく勧められるようになり、仕方なく幼馴染で猫獣人のファンゲンに恋人のふりを頼むことに。彼の方にも事情があり、お互いの利害が一致したことから二人の嘘の交際が始まった。
そして二人が成長すると、なんと偽の恋人役を頼んだ幼馴染のファンゲンから番の気配を感じるようになり、幼馴染が大好きだったラシーヌは大喜び。早速母親に、
『お付き合いしている幼馴染のファンゲンが私の番かもしれない』――と報告するのだが。
「そう、番だったら別れなさい」
母親からの返答はラシーヌには受け入れ難いものだった。
お母様どうして!?
何で運命の番と別れなくてはいけないの!?
修道院パラダイス
羊
恋愛
伯爵令嬢リディアは、修道院に向かう馬車の中で思いっきり自分をののしった。
『私の馬鹿。昨日までの私って、なんて愚かだったの』
でも、いくら後悔しても無駄なのだ。馬車は監獄の異名を持つシリカ修道院に向かって走っている。そこは一度入ったら、王族でも一年間は出られない、厳しい修道院なのだ。いくら私の父が実力者でも、その決まりを変えることは出来ない。
◇・◇・◇・・・・・・・・・・
優秀だけど突っ走りやすいリディアの、失恋から始まる物語です。重い展開があっても、あまり暗くならないので、気楽に笑いながら読んでください。
なろうでも連載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる