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イチゴのマカロン
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「それにしても、あの王女様、すごい威圧感ね。獣人の血がうすい私でも、さっき、ルーファスを呼んだ時の声、まるで竜が吠えたみたいで、鳥肌がたったわ」
アイリスが腕をなでながら、言った。
「迫力はあると思ったけれど、やっぱり、獣人だともっと感じるんだね。お父様に、ルーファスがいても、王女様の近くにはいかないように言われてるの。私、獣人じゃないから、なにかあっても気づきにくいからだって」
「確かにね……。あれだけの竜の獣人だと、威圧されただけで怖いと思うし、私も近くに寄りたくないわね。それに、ルーファスのことをかなり気に入ってそうなのが気になるし……。侯爵様の言うように、特にララは近寄らないほうがいいわ」
「え? どういうこと?」
「そうね……。私の勘かな」
それだけ答えると、アイリスが警戒した目で王女様を見た。
まわりを見回していたグレンが驚いたような声をあげた。
「王女様のまわりにいるジャナ国の護衛の人たち。やっぱり純血の獣人だから、見た目からして全然違うね~」
グレンに言われて、初めて護衛の人たちにも目を向けてみた。
王女様を守るように立っている屈強な護衛の人たち。よく見ると、鋭い爪が長くのびていたり、オオカミのような耳があったり、長いしっぽが制服からでていたりもする。
この国では、物語の中でしか見ないような獣人の姿だ。
「あっ、王女様の首。嘘でしょ? もしかして、竜の鱗が残ってるの……!?」
そういって、アイリスが息をのんだ。
目をこらしてみると、王女様の首のあたりが光にあたって、やけに、きらきらとしている。
確かに、首に鱗があるみたい。
「まさか竜の鱗があるだなんて、すごいわね……。もしかしたら、竜の姿になれるかもしれないってことだもの……。やっぱり、ララは絶対に近づいちゃダメよ! 多分、ルーファスのほうからも今日はララに近づいてこないと思うわ。ララの安全をなにより考えてるあの男のことだもの。用心してるに決まってる」
「え、なんで?」
「私の勘」
アイリスはまたもやそう答えた。
正直、アイリスの勘はよくあたる。
言っている意味はよくわからないけれど、お父様だけじゃなく、アイリスまでそう言うのなら、王女様に近づかないように気をつけよう。
それから自由に歓談する時間がはじまり、一気に、あたりはにぎやかになった。
両親の姿を探すと、他の貴族の大人たちと談笑しているよう。
よし! これなら、ずっとアイリスのところにいてもいいよね。
今日は立食なので、私もアイリスたちと一緒に食べ物の並ぶテーブルに近づいた。
テーブルには沢山の食べ物と飲み物が並べられていた。
おしゃれな飾り付けがされたイチゴのマカロンが目に入った。
給仕係の人に、大好物のイチゴのマカロンをお皿にとってもらい、さあ食べようとした時だった。
ふいに、ルーファスが目の前にいるかのように思い、手がとまった。
「大好物のいちごのマカロンを片手に、なんで固まってるの、ララ?」
と、アイリスが不思議そうに聞いてきた。
「イチゴのマカロンを食べようとしたら、ルーファスを思い出して。ほら、ルーファスって、いつものカフェで、マカロンセットを頼んでは、必ず、イチゴのマカロンのほうを私にくれるでしょ? イチゴのマカロンは嫌いみたいで、ピスタチオのマカロンしか食べないんだよね」
アイリスがあきれたように私を見た。
「ああ……あれね……。あのね、ララ。ルーファスは別にイチゴのマカロンが嫌いなわけでも、ピスタチオのマカロンが好きなわけでも、そもそも、マカロン自体が好きなわけでもないと思うよ。ただただ、ララに、食べさせたいだけで、毎度毎度、あのマカロンセットを頼んでるんでしょ?」
「……ん? 私に食べさせたい? いや、違うと思うよ。ピスタチオのマカロンだけが食べたいんだと思う」
「まあ、今はいいわ……。で、それで、なんで、ルーファスを思い出して、固まってるの?」
「イチゴのマカロンを食べようとすると、条件反射のように、ルーファスの顔のアップが自然とうかんでくる私が、……もしも、その時がきて、ちゃんと、ルーファス離れができるか猛烈に不安になってきたんだよね……」
イチゴのマカロンと私を見比べたあと、アイリスが神妙な顔でうなずいた。
「なるほど……。さすが、ルーファス、あなどれないわね……。正直、ルーファスが、カフェでララにマカロンをたべさせ始めたのを見た時は、ララの鈍さにつけこんで、姑息なことをしはじめたとあきれたものだけど、これは、ただララに手づから食べさせたいというルーファスの気持ちの悪い欲望だけじゃなかったってことね……。イチゴのマカロンと一緒にルーファスの顔を刷り込むという、餌付け作戦だったのね……。私としたことが、うっかり目先の気持ち悪さにとらわれてたわ。ルーファスは、こうなる先を見据えて、計画を立て、コツコツと動いてたのね。これは商売にも使えることだわ。私もルーファスを見習わなきゃ」
そうつぶやいた後、すっかり仕事用の顔でなにやら考えはじめたアイリス。
その間、ふと気になって、ちらっとルーファスのほうを見た。
が、ルーファスはにこやかに王女様と話をしている。
なんか、距離が近くない?
またもや、胸がチクっとしたけれど、無視して、イチゴのマカロンを口に放り込んだ。
やわらかいマカロンが口の中で溶けていく。
はあ、美味しい! 幸せ! ……と、いつもならなるはずなのに、今日は、なんだか味がしない。
生まれて初めて、イチゴのマカロンがおいしくないと思った。
アイリスが腕をなでながら、言った。
「迫力はあると思ったけれど、やっぱり、獣人だともっと感じるんだね。お父様に、ルーファスがいても、王女様の近くにはいかないように言われてるの。私、獣人じゃないから、なにかあっても気づきにくいからだって」
「確かにね……。あれだけの竜の獣人だと、威圧されただけで怖いと思うし、私も近くに寄りたくないわね。それに、ルーファスのことをかなり気に入ってそうなのが気になるし……。侯爵様の言うように、特にララは近寄らないほうがいいわ」
「え? どういうこと?」
「そうね……。私の勘かな」
それだけ答えると、アイリスが警戒した目で王女様を見た。
まわりを見回していたグレンが驚いたような声をあげた。
「王女様のまわりにいるジャナ国の護衛の人たち。やっぱり純血の獣人だから、見た目からして全然違うね~」
グレンに言われて、初めて護衛の人たちにも目を向けてみた。
王女様を守るように立っている屈強な護衛の人たち。よく見ると、鋭い爪が長くのびていたり、オオカミのような耳があったり、長いしっぽが制服からでていたりもする。
この国では、物語の中でしか見ないような獣人の姿だ。
「あっ、王女様の首。嘘でしょ? もしかして、竜の鱗が残ってるの……!?」
そういって、アイリスが息をのんだ。
目をこらしてみると、王女様の首のあたりが光にあたって、やけに、きらきらとしている。
確かに、首に鱗があるみたい。
「まさか竜の鱗があるだなんて、すごいわね……。もしかしたら、竜の姿になれるかもしれないってことだもの……。やっぱり、ララは絶対に近づいちゃダメよ! 多分、ルーファスのほうからも今日はララに近づいてこないと思うわ。ララの安全をなにより考えてるあの男のことだもの。用心してるに決まってる」
「え、なんで?」
「私の勘」
アイリスはまたもやそう答えた。
正直、アイリスの勘はよくあたる。
言っている意味はよくわからないけれど、お父様だけじゃなく、アイリスまでそう言うのなら、王女様に近づかないように気をつけよう。
それから自由に歓談する時間がはじまり、一気に、あたりはにぎやかになった。
両親の姿を探すと、他の貴族の大人たちと談笑しているよう。
よし! これなら、ずっとアイリスのところにいてもいいよね。
今日は立食なので、私もアイリスたちと一緒に食べ物の並ぶテーブルに近づいた。
テーブルには沢山の食べ物と飲み物が並べられていた。
おしゃれな飾り付けがされたイチゴのマカロンが目に入った。
給仕係の人に、大好物のイチゴのマカロンをお皿にとってもらい、さあ食べようとした時だった。
ふいに、ルーファスが目の前にいるかのように思い、手がとまった。
「大好物のいちごのマカロンを片手に、なんで固まってるの、ララ?」
と、アイリスが不思議そうに聞いてきた。
「イチゴのマカロンを食べようとしたら、ルーファスを思い出して。ほら、ルーファスって、いつものカフェで、マカロンセットを頼んでは、必ず、イチゴのマカロンのほうを私にくれるでしょ? イチゴのマカロンは嫌いみたいで、ピスタチオのマカロンしか食べないんだよね」
アイリスがあきれたように私を見た。
「ああ……あれね……。あのね、ララ。ルーファスは別にイチゴのマカロンが嫌いなわけでも、ピスタチオのマカロンが好きなわけでも、そもそも、マカロン自体が好きなわけでもないと思うよ。ただただ、ララに、食べさせたいだけで、毎度毎度、あのマカロンセットを頼んでるんでしょ?」
「……ん? 私に食べさせたい? いや、違うと思うよ。ピスタチオのマカロンだけが食べたいんだと思う」
「まあ、今はいいわ……。で、それで、なんで、ルーファスを思い出して、固まってるの?」
「イチゴのマカロンを食べようとすると、条件反射のように、ルーファスの顔のアップが自然とうかんでくる私が、……もしも、その時がきて、ちゃんと、ルーファス離れができるか猛烈に不安になってきたんだよね……」
イチゴのマカロンと私を見比べたあと、アイリスが神妙な顔でうなずいた。
「なるほど……。さすが、ルーファス、あなどれないわね……。正直、ルーファスが、カフェでララにマカロンをたべさせ始めたのを見た時は、ララの鈍さにつけこんで、姑息なことをしはじめたとあきれたものだけど、これは、ただララに手づから食べさせたいというルーファスの気持ちの悪い欲望だけじゃなかったってことね……。イチゴのマカロンと一緒にルーファスの顔を刷り込むという、餌付け作戦だったのね……。私としたことが、うっかり目先の気持ち悪さにとらわれてたわ。ルーファスは、こうなる先を見据えて、計画を立て、コツコツと動いてたのね。これは商売にも使えることだわ。私もルーファスを見習わなきゃ」
そうつぶやいた後、すっかり仕事用の顔でなにやら考えはじめたアイリス。
その間、ふと気になって、ちらっとルーファスのほうを見た。
が、ルーファスはにこやかに王女様と話をしている。
なんか、距離が近くない?
またもや、胸がチクっとしたけれど、無視して、イチゴのマカロンを口に放り込んだ。
やわらかいマカロンが口の中で溶けていく。
はあ、美味しい! 幸せ! ……と、いつもならなるはずなのに、今日は、なんだか味がしない。
生まれて初めて、イチゴのマカロンがおいしくないと思った。
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