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謎の痛み
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パーティーの行われる広間は、にぎやかな雰囲気だった。
聞いていたとおり、学園で見知った顔が沢山いる。
これなら気楽に参加できそう。
私は早速アイリスを探すと……いた! グレンと一緒だ。
「お父様、アイリスのところに行ってきたい」
「いや、だが……」
「あなた。これだけ学生さんが多いのに、ずっと親と一緒も可哀そうでしょう? ララ、アイリスちゃんと一緒なら大丈夫よ。ただし、お父様から注意されたことは守ってね」
と、お母様。
お父様が渋い顔をしているが、お母様には逆らえない。
「ララ、いいか。ルーファス君がいたとしても、絶対に、絶対に、王女様には近寄るな」
「うん、わかった!」
そう返事をすると、すぐに、アイリスのところに向かった。
「アイリス! グレン!」
ふたりに声をかける。
「うわあ、素敵! うん、そのドレス、とても似合ってるわ。こういうドレスだと、ララの妖精感が増すわね!」
と、アイリス。
「いくらなんでも、妖精って、それはほめすぎでしょ? でも、みんなが総出で盛りに盛ってくれたから、褒めてくれて嬉しい! ありがとう、アイリス。それより、アイリスこそ、とってもきれい! そのドレス、アイリスのスタイルの良さがきわだつね!」
「ありがとう。実は、このドレスね、うちの商会で今度から取引することになったデザイナーのドレスなの。宣伝も兼ねて着てきたのよ。あ、グレンの衣裳もそうなの」
「さすが、アイリス! ぬかりはないね。グレンも似合ってるよ!」
「ありがとう、ララ。僕が着ても、宣伝になるかわからないけどね」
「なるなる! アイリスとグレン、ふたり並んでる姿がとっても素敵で、遠くからでも目立ってたよ」
私が力強く言うと、「そうかな……」と、恥ずかしそうに下をむいたグレン。
「ほら、自信もって。せっかくララがほめてくれたんだから。ちゃんと宣伝してよ、未来の旦那様」
そう言って、バシンッとグレンの背中をたたいたアイリス。
グレンが真っ赤になって、嬉しそうに微笑んだ。
いや、もう、見てるだけで幸せで、心がうきたってくる。
なんだか、今日のパーティーは楽しく過ごせそう……。
なーんてのんきに思った私の勘は、おおいにはずれることになる。
そして、ついに、王女様が入ってこられるという知らせがあり、ざわざわしていた広間が一気に静かになった。
大きな扉が開かれ、王族の方々と一緒に、真っ赤なドレスを着た美しい女性がはいってきた。
あの方がジャナ国の王女様……。
はっきりした美しい顔立ちで、背はかなり高く、すらりとしている。
そして、まっすぐな黒髪は腰のあたりまである。
が、なにより、目を奪われるのは、その金色の瞳。
やけに鋭い光が宿っていて、なんだか迫力がすごい……。
やっぱり、純血の竜の獣人だからなのかな。
王女様のすぐ後ろにルーファスがいた。ちらっとこっちを見た瞬間、ふわっと微笑んだルーファス。
「一瞬で、ララのいる場所を把握するなんて、さすがララ探知機。あいかわらず怖いわね……」
隣でアイリスがつぶやいている。
1週間ぶりにルーファスの顔を見たら、やっぱり嬉しい。
でも、なんだか顔が疲れているみたい。大丈夫かな……。
ルーファス、優しいから、色々断れなくて、無理してるんじゃないかな、と心配になる。
そして、まずは王様が招待客に簡単に王女様をご紹介された。
王女様がご挨拶にたつ。
「ジャナ国の第二王女、ラジュです。ジャナ国は獣人だけしか住んでいませんが、他国との交流が増えてきています。今後はジャナ国に獣人以外も住む可能性も考え、獣人と人が長く一緒に暮らしているこのモリオン国を視察させてもらいにきました。この一週間、親身になって、私を案内してくださったロイド公爵家のルーファス殿のおかげで、実りある視察になりました。……ルーファス、ここへきて!」
王女様がルーファスを呼ぶ声に、なぜだか、ツキッと胸が痛んだ。
ルーファスが静かにそばによると、手をとって、自分のとなりに立たせた王女様。
背の高い王女様と並んでも見劣りしないルーファス。
まぶしいくらいに美男美女だ。
「なんて、お似合い」
「さすが竜の獣人同士だな」
「もしかして、番……?」
などと、噂する声が聞こえてきた。
またもや胸に痛みがはしって、思わず手でおさえた私。
「どうしたの、ララ? 顔色が悪いけど」
と、アイリスが心配そうに声をかけてきた。
「大丈夫。ちょっと、胸がチクっとしただけ……。ドレスがきついのかな」
私の言葉に、アイリスが探るような目になった。
「いつから?」
「今さっき」
「もしかして、ルーファスと王女様を見た時から?」
「あ……そうかも。急に、ここらへんが痛くなったんだよね……」
と、胸をおさえてみせる。
「ふーん、なるほど……」
「え? なに、なに、アイリス? やっぱり、ドレスがきついんだと思う?」
「ううん、違うと思うわ。まあ、でも、私は説明できない。ララが自分で気づくしかないかな」
と、アイリスは意味ありげに微笑んだ。
聞いていたとおり、学園で見知った顔が沢山いる。
これなら気楽に参加できそう。
私は早速アイリスを探すと……いた! グレンと一緒だ。
「お父様、アイリスのところに行ってきたい」
「いや、だが……」
「あなた。これだけ学生さんが多いのに、ずっと親と一緒も可哀そうでしょう? ララ、アイリスちゃんと一緒なら大丈夫よ。ただし、お父様から注意されたことは守ってね」
と、お母様。
お父様が渋い顔をしているが、お母様には逆らえない。
「ララ、いいか。ルーファス君がいたとしても、絶対に、絶対に、王女様には近寄るな」
「うん、わかった!」
そう返事をすると、すぐに、アイリスのところに向かった。
「アイリス! グレン!」
ふたりに声をかける。
「うわあ、素敵! うん、そのドレス、とても似合ってるわ。こういうドレスだと、ララの妖精感が増すわね!」
と、アイリス。
「いくらなんでも、妖精って、それはほめすぎでしょ? でも、みんなが総出で盛りに盛ってくれたから、褒めてくれて嬉しい! ありがとう、アイリス。それより、アイリスこそ、とってもきれい! そのドレス、アイリスのスタイルの良さがきわだつね!」
「ありがとう。実は、このドレスね、うちの商会で今度から取引することになったデザイナーのドレスなの。宣伝も兼ねて着てきたのよ。あ、グレンの衣裳もそうなの」
「さすが、アイリス! ぬかりはないね。グレンも似合ってるよ!」
「ありがとう、ララ。僕が着ても、宣伝になるかわからないけどね」
「なるなる! アイリスとグレン、ふたり並んでる姿がとっても素敵で、遠くからでも目立ってたよ」
私が力強く言うと、「そうかな……」と、恥ずかしそうに下をむいたグレン。
「ほら、自信もって。せっかくララがほめてくれたんだから。ちゃんと宣伝してよ、未来の旦那様」
そう言って、バシンッとグレンの背中をたたいたアイリス。
グレンが真っ赤になって、嬉しそうに微笑んだ。
いや、もう、見てるだけで幸せで、心がうきたってくる。
なんだか、今日のパーティーは楽しく過ごせそう……。
なーんてのんきに思った私の勘は、おおいにはずれることになる。
そして、ついに、王女様が入ってこられるという知らせがあり、ざわざわしていた広間が一気に静かになった。
大きな扉が開かれ、王族の方々と一緒に、真っ赤なドレスを着た美しい女性がはいってきた。
あの方がジャナ国の王女様……。
はっきりした美しい顔立ちで、背はかなり高く、すらりとしている。
そして、まっすぐな黒髪は腰のあたりまである。
が、なにより、目を奪われるのは、その金色の瞳。
やけに鋭い光が宿っていて、なんだか迫力がすごい……。
やっぱり、純血の竜の獣人だからなのかな。
王女様のすぐ後ろにルーファスがいた。ちらっとこっちを見た瞬間、ふわっと微笑んだルーファス。
「一瞬で、ララのいる場所を把握するなんて、さすがララ探知機。あいかわらず怖いわね……」
隣でアイリスがつぶやいている。
1週間ぶりにルーファスの顔を見たら、やっぱり嬉しい。
でも、なんだか顔が疲れているみたい。大丈夫かな……。
ルーファス、優しいから、色々断れなくて、無理してるんじゃないかな、と心配になる。
そして、まずは王様が招待客に簡単に王女様をご紹介された。
王女様がご挨拶にたつ。
「ジャナ国の第二王女、ラジュです。ジャナ国は獣人だけしか住んでいませんが、他国との交流が増えてきています。今後はジャナ国に獣人以外も住む可能性も考え、獣人と人が長く一緒に暮らしているこのモリオン国を視察させてもらいにきました。この一週間、親身になって、私を案内してくださったロイド公爵家のルーファス殿のおかげで、実りある視察になりました。……ルーファス、ここへきて!」
王女様がルーファスを呼ぶ声に、なぜだか、ツキッと胸が痛んだ。
ルーファスが静かにそばによると、手をとって、自分のとなりに立たせた王女様。
背の高い王女様と並んでも見劣りしないルーファス。
まぶしいくらいに美男美女だ。
「なんて、お似合い」
「さすが竜の獣人同士だな」
「もしかして、番……?」
などと、噂する声が聞こえてきた。
またもや胸に痛みがはしって、思わず手でおさえた私。
「どうしたの、ララ? 顔色が悪いけど」
と、アイリスが心配そうに声をかけてきた。
「大丈夫。ちょっと、胸がチクっとしただけ……。ドレスがきついのかな」
私の言葉に、アイリスが探るような目になった。
「いつから?」
「今さっき」
「もしかして、ルーファスと王女様を見た時から?」
「あ……そうかも。急に、ここらへんが痛くなったんだよね……」
と、胸をおさえてみせる。
「ふーん、なるほど……」
「え? なに、なに、アイリス? やっぱり、ドレスがきついんだと思う?」
「ううん、違うと思うわ。まあ、でも、私は説明できない。ララが自分で気づくしかないかな」
と、アイリスは意味ありげに微笑んだ。
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