私が一番嫌いな言葉。それは、番です!

水無月あん

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まさか、私?

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それにしても、ルーファスが見えるところにいるのに近寄れないという状況は、なんだか初めてで、居心地が悪い感じ。
久々に会ったからには、やっぱり話したい!

でも、私がルーファスのところに行くわけにはいかないし、少しだけでも、こっちへこないかなあ、と考えてしまう。

「アイリスが言ってたとおり、ルーファス、こっちにこないね……。王女様と離れた時に、ちょっとくらいなら、話に行ってもいいかなあ……」

私がぽつりと言葉にすると、アイリスが大きく首をよこにふった。

「ちょっと、ララ! 絶対にダメだからね! いつもなら、ララのそばにいるのが当たり前のルーファスがこっちにこないのだって、相当警戒してるからよ。あんな最強そうな竜の獣人王女様に、ララを無用に接触させたくないだろうし。私だっていやだもの。王女様とララだと、どう見ても、竜とこりすみたいな感じになるからね」

「……ええと、一応聞くけど、それって、こりすは私?」

「もちろんよ。竜の気分次第で、ひとたまりもないってこと。ララのお父様の心配はよくわかるわ。だから、何度も言うようだけど、ララは絶対に近寄っちゃダメ。ララはこりすで、竜のえさになるかもしれないんだからね」
と、真剣な顔で忠告してくるアイリス。

その時だ。

「アイリスさん、ちょっといいかしら」
と、背後から声がした。

ふりむくと、同じクラスのカリンさんがいた。
カリンさんはキャロ伯爵家の令嬢で、おしゃれ好きでかわいらしい人。
今日はピンク色の華やかなドレスを着ている。

隣にはカリンさんにそっくりな、お母様である伯爵夫人が一緒だ。
確か、伯爵夫人もとてもおしゃれな方だとお母様に聞いたことがある。
今日は凝った刺繍がほどこされた、紫色の素敵なドレスをまとっていた。

一瞬にして、アイリスの顔つきがかわった。
仕事用の顔だ。

「ええ、もちろん。なにかしら、カリンさん」
と、愛想よく答えるアイリス。

なにかしら?と 聞きながら、このアイリスの顔は、既に要件を察しているみたい。

「お母様が、アイリスさんのそのドレス、とても素敵だから、どこで買ったのか教えてほしいって言ってるんだけど」

「まあ、そうなんですか! 実は、このドレス、うちのリンド商会で扱う予定のドレスなんです。デザインしたのは新進気鋭のデザイナーですが、うちが専属契約していて、うちの商会でしか買えないんです。よかったら、詳しく説明させていただきますが……」

伯爵夫人の顔が、ぱあっと輝いた。

「嬉しいわ! とても興味があるから、是非、詳しく聞かせてもらえるかしら」

「わかりました。では、あちらのお席でお話をさせていただきますね」
と、壁際に用意されている椅子を手で示した。

「ええ、お願い」

伯爵夫人とカリンさんが椅子にむかって先に歩いていく。

アイリスは私にむかって早口で言った。

「ごめん、ララ。ちょっとドレスの宣伝してくる。グレンとここにいて。すぐに戻ってくるから。絶対に、王女様には近づかないでね!」

「うん、わかってる。私は大丈夫だから、がんばって宣伝してきて!」
と、返した。

私の言葉に、アイリスは微笑むと、張り切った様子で伯爵夫人のところに向かった。


ということで、残された私とグレン。
ふたりで雑談しながら、色々つまんで食べていると、今度はグレンが声をかけられた。
グレンのお友達みたい。

「グレン、お友達とお話してて。私のことは気にしないでいいから」

「え、でも、ララのこと、アイリスに頼まれてるし……」

戸惑うグレン。
せっかくお友達がいるのに、私がいたら話せないよね。
真面目なグレンはアイリスの言いつけを絶対に守るから、私のほうがちょっと離れよう。

そうだ……。

「グレン、私、ちょっと化粧室に行ってくる」

これなら、ついてこれないし、自然だよね。
なお心配そうな顔をするグレンに「大丈夫、すぐ戻ってくるから」そう言うと、私はその場を離れた。



広間をでると、広い廊下がある。
王宮で働く人たちや、招待客なども行き来しているので、結構ざわざわしている。

ちょうど食事を運んできたメイドさんがいたので、化粧室の場所を聞く。
すぐそこみたい。

豪華な王宮の廊下を楽しみながら歩いていると、背後から「待て!」と聞こえた。

えらそうな口調に一瞬ドキッとするが、私じゃないよね……。
と思い、止まらないで歩いていると、足音がどんどん近づいてくる。

「そこの青い色のドレスを着た女! 待て、と言っているだろう!」

え、青い色のドレス? ……ってまさか、私? 私に言っているの?

しかも、この声って嫌な予感がする。
すっかり私の記憶から抹消していた声だからピンとこなかったけど……まさか……。

できれば、このまま走って逃げたい。
止まりたくない。
ふりむきたくない。
関わりたくない。
はあ、ひとりでふらふら廊下にでるんじゃなかった……。

でも、無視するわけにもいかない。
私は体にぎゅっと力をいれると、覚悟を決めて、ふりむいた。

やっぱり、嫌な予感は的中。

私の視線の先にいたのは、この世で一番会いたくない相手。
そう、天敵、第二王子だった……。

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