33 / 101
平常心
しおりを挟む
私たちのいるテーブルの前でぴたりと足をとめたモリナさん。
いきなり私をきっとにらむと、怒りのにじんだ声で一気にまくしたてた。
「ララベルさん! 一体、なにをしているんですの? おかしいですわよ、その近さ! ルーファス様はお優しいから断りきれないのでしょうが、幼馴染という立場を利用して、まとわりつくなんて、はしたないですわ!」
ランチ時とは思えないほど、まわりが静まりかえった。
うん、モリナさんの言ってることはわかる。
だって、この近さ、確かに、おかしい。
私もそう思う。
でもね、こんなに寄ってきたのは、ルーファスのほうなんだよね。
なーんて気軽に言える雰囲気ではないほど、モリナさんは、すごい迫力で私をにらんでいる。
追いついて来たコルネさんもまた、私を憎々し気に見ている。
いつものふたりなら、こんな表情を絶対にルーファスの前ではしないのに、余程怒ってるんだろう。
とりあえず、これ以上刺激しないように、ルーファスから少し離れよう。
椅子にすわったまま、横にずらせるかな?
なんて考えながら、そーっと椅子をルーファスから少し離した。
うん、成功!
じゃあ、このまま、そーっと少しずつ離していけばいいんじゃない?
と思ったら、ルーファスがすぐさま、こっちに椅子を寄せてきた。
しかも、さっきより更に近づいてる!?
ダメじゃない、ルーファス!
はっとして、モリナさんを見ると、目から何かがとんでくるんじゃないかってくらい、私に焦点をあてて、にらんでる。
身の危険を感じた私は、あわててルーファスに言った。
「ちょっと、ルーファス! 早く離れて!」
が、ルーファスは離れる気配もない。
かわりに、天使のように微笑んできた。
「ララ、安心して。ここは僕にまかせてね」
いやいや、全く安心できないし、まかせられないんだけど!?
助けを求めてアイリスを見ると、アイリスは私の内心を察したように言った。
「まあ、こうなったら、あきらめるしかないわね……」
あきらめる? それってどういう意味?
混乱する私に、モリナさんがいらだったように叫んだ。
「ララベルさん! ルーファス様から早く離れなさい!」
いや、そう言われてもね……。私は離れようとしてるよ!?
あせる私の横で、いつものごとく優雅なたたずまいのルーファスが、モリナさんにひたと視線を合わせた。
「ジャリス侯爵家の令嬢、僕が話してもいい?」
ルーファスの言葉に、モリナさんの表情がころりとかわった。
さっきまで怒っていたことが嘘のように微笑んでいる。
「ええ、もちろんですわ。ルーファス様」
すごい。声まで全然違う!
でも、モリナさん的に、憧れている人に、そんな変わりっぷりを見せるのは大丈夫なんだろうか……?
そして、まわりを見ると、みんなランチを食べる手がとまってる。
こっちに意識を集中させてるみたい。
そんななか、もぐもぐと美味しそうに食べている人が斜め前にいて、びっくりした。
そう、グレン。
こんな緊迫した状況のなか、いつものごとく、ランチを美味しそうに食べられるなんて、グレンって悟りを開いた人みたいなんだけど……。
グレンのまわりだけ、なんだか平和な異空間のようで、うらやましい。
よし、その平常心、見習おう!
ルーファスが何を言おうが、モリナさんが何を言おうが、平常心、平常心、平常心……。
「あのね、ララにひっついているいるのは僕なの。だから、ジャリス侯爵家の令嬢のさっきの言葉を借りると、ララは優しいから断りきれないのをわかって、幼馴染の立場を利用しているのは僕だし、まとわりついているのも僕。そうなると、はしたないのも僕になるよね」
と、ルーファスは楽しそうに言った。
モリナさんの顔から笑みが消えた。
ショックをうけたように、ルーファスを見ている。
なんか、この先を想像したら、嫌な感じのドキドキが……。
あ、ダメだ。
グレンを見習って、平常心、平常心、平常心……。
自分に言い聞かせていると、ふと、椅子のひじおきにおいてあった私の左手があたたかくなった。
なんで……?
そう思って見ると、私の手に、ルーファスが手を重ねてきている!
「ちょっと、何してるの、ルーファス!?」
思わず、叫んでしまった私。
この状況で、平常心なんて、やっぱり無理!
が、ルーファスはそんな私を見て、にっこり微笑むと、なんと、そのまま手をにぎってきた。
あわてて手をひきぬこうとしたけれど、私の手は、がっちりと捕獲されている!
そして、ルーファスは私の手を捕獲したまま、モリナさんに言った。
「ほら、こんな感じで、僕がララにまとわりついてるんだ。それにしても、ジャリス侯爵家の令嬢。そもそも君って、僕たちになんの関係もないよね? それなのに、変なこと言ってくるのやめてくれる?」
ひゃああ、ルーファス……!
いきなり私をきっとにらむと、怒りのにじんだ声で一気にまくしたてた。
「ララベルさん! 一体、なにをしているんですの? おかしいですわよ、その近さ! ルーファス様はお優しいから断りきれないのでしょうが、幼馴染という立場を利用して、まとわりつくなんて、はしたないですわ!」
ランチ時とは思えないほど、まわりが静まりかえった。
うん、モリナさんの言ってることはわかる。
だって、この近さ、確かに、おかしい。
私もそう思う。
でもね、こんなに寄ってきたのは、ルーファスのほうなんだよね。
なーんて気軽に言える雰囲気ではないほど、モリナさんは、すごい迫力で私をにらんでいる。
追いついて来たコルネさんもまた、私を憎々し気に見ている。
いつものふたりなら、こんな表情を絶対にルーファスの前ではしないのに、余程怒ってるんだろう。
とりあえず、これ以上刺激しないように、ルーファスから少し離れよう。
椅子にすわったまま、横にずらせるかな?
なんて考えながら、そーっと椅子をルーファスから少し離した。
うん、成功!
じゃあ、このまま、そーっと少しずつ離していけばいいんじゃない?
と思ったら、ルーファスがすぐさま、こっちに椅子を寄せてきた。
しかも、さっきより更に近づいてる!?
ダメじゃない、ルーファス!
はっとして、モリナさんを見ると、目から何かがとんでくるんじゃないかってくらい、私に焦点をあてて、にらんでる。
身の危険を感じた私は、あわててルーファスに言った。
「ちょっと、ルーファス! 早く離れて!」
が、ルーファスは離れる気配もない。
かわりに、天使のように微笑んできた。
「ララ、安心して。ここは僕にまかせてね」
いやいや、全く安心できないし、まかせられないんだけど!?
助けを求めてアイリスを見ると、アイリスは私の内心を察したように言った。
「まあ、こうなったら、あきらめるしかないわね……」
あきらめる? それってどういう意味?
混乱する私に、モリナさんがいらだったように叫んだ。
「ララベルさん! ルーファス様から早く離れなさい!」
いや、そう言われてもね……。私は離れようとしてるよ!?
あせる私の横で、いつものごとく優雅なたたずまいのルーファスが、モリナさんにひたと視線を合わせた。
「ジャリス侯爵家の令嬢、僕が話してもいい?」
ルーファスの言葉に、モリナさんの表情がころりとかわった。
さっきまで怒っていたことが嘘のように微笑んでいる。
「ええ、もちろんですわ。ルーファス様」
すごい。声まで全然違う!
でも、モリナさん的に、憧れている人に、そんな変わりっぷりを見せるのは大丈夫なんだろうか……?
そして、まわりを見ると、みんなランチを食べる手がとまってる。
こっちに意識を集中させてるみたい。
そんななか、もぐもぐと美味しそうに食べている人が斜め前にいて、びっくりした。
そう、グレン。
こんな緊迫した状況のなか、いつものごとく、ランチを美味しそうに食べられるなんて、グレンって悟りを開いた人みたいなんだけど……。
グレンのまわりだけ、なんだか平和な異空間のようで、うらやましい。
よし、その平常心、見習おう!
ルーファスが何を言おうが、モリナさんが何を言おうが、平常心、平常心、平常心……。
「あのね、ララにひっついているいるのは僕なの。だから、ジャリス侯爵家の令嬢のさっきの言葉を借りると、ララは優しいから断りきれないのをわかって、幼馴染の立場を利用しているのは僕だし、まとわりついているのも僕。そうなると、はしたないのも僕になるよね」
と、ルーファスは楽しそうに言った。
モリナさんの顔から笑みが消えた。
ショックをうけたように、ルーファスを見ている。
なんか、この先を想像したら、嫌な感じのドキドキが……。
あ、ダメだ。
グレンを見習って、平常心、平常心、平常心……。
自分に言い聞かせていると、ふと、椅子のひじおきにおいてあった私の左手があたたかくなった。
なんで……?
そう思って見ると、私の手に、ルーファスが手を重ねてきている!
「ちょっと、何してるの、ルーファス!?」
思わず、叫んでしまった私。
この状況で、平常心なんて、やっぱり無理!
が、ルーファスはそんな私を見て、にっこり微笑むと、なんと、そのまま手をにぎってきた。
あわてて手をひきぬこうとしたけれど、私の手は、がっちりと捕獲されている!
そして、ルーファスは私の手を捕獲したまま、モリナさんに言った。
「ほら、こんな感じで、僕がララにまとわりついてるんだ。それにしても、ジャリス侯爵家の令嬢。そもそも君って、僕たちになんの関係もないよね? それなのに、変なこと言ってくるのやめてくれる?」
ひゃああ、ルーファス……!
764
あなたにおすすめの小説
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
本日、私の妹のことが好きな婚約者と結婚いたしました
音芽 心
恋愛
私は今日、幼い頃から大好きだった人と結婚式を挙げる。
____私の妹のことが昔から好きな婚約者と、だ。
だから私は決めている。
この白い結婚を一年で終わらせて、彼を解放してあげることを。
彼の気持ちを直接聞いたことはないけれど……きっとその方が、彼も喜ぶだろうから。
……これは、恋を諦めていた令嬢が、本当の幸せを掴むまでの物語。
幸せな番が微笑みながら願うこと
矢野りと
恋愛
偉大な竜王に待望の番が見つかったのは10年前のこと。
まだ幼かった番は王宮で真綿に包まれるように大切にされ、成人になる16歳の時に竜王と婚姻を結ぶことが決まっていた。幸せな未来は確定されていたはずだった…。
だが獣人の要素が薄い番の扱いを周りは間違えてしまう。…それは大切に想うがあまりのすれ違いだった。
竜王の番の心は少しづつ追いつめられ蝕まれていく。
※設定はゆるいです。
【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜
雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。
彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。
自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。
「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」
異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。
異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる