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何を言ったの?
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モリナさんの顔が歪んだ。
もしや、泣いてしまうんじゃない!?
やっぱり、ここは私が何か言ったほうがいい?
今日のルーファスは言動がおかしいから、気にしないほうが……とか?
いや、ダメだ。
私が何を言っても、状況は悪化するに違いない。
幸い、モリナさんは泣くことはなく、ルーファスにすがるような視線を向けた。
「ルーファス様……! そんなことを言うなんて、いつものルーファス様じゃないです。それに、私とルーファス様はおおいに関係がありますわ! だって、私たちは遠い親戚で、なんといっても、同じ竜の獣人の血が流れてるのだもの!」
「竜の獣人の血? それこそどうでもいいよね」
ルーファスが驚くほど、冷たい声で言った。
いつものルーファスとはまるで違う声に、思わず、ぞくっとした。
アイリスなんて、「うわ、今、鳥肌たったわ……」と腕をさすっている。
が、モリナさんはひるむどころか、更に火がついたようにしゃべりだした。
「どうでもいいわけないです! ルーファス様は、ただの人であるララベルさんをかばって、そんなことをおっしゃてるんでしょう!? 獣人じゃないララベルさんが弱いから、お優しいルーファス様は心配して、そばにいるんでしょうが、貴い竜の獣人であるルーファス様のそばに獣人じゃないララベルさんがいていいわけない! だって、もうそろそろ、ルーファス様は番を認識される頃だわ! そんな時に、ララベルさんがそばにいたら邪魔……」
ガッと椅子を蹴って、ルーファスが立ち上がった。
普段は優雅なルーファスがこんな乱暴なしぐさをするところを見たことがない。
これはまずい……。
私を思って怒ってくれているのはわかるけど、獣人うんぬんは、モリナさんとコルネさんには、いつも言われることだから、正直、痛くもかゆくもない。
それより、こんなことで、天使のようなルーファスが怒らないで!
「ルーファス、私は全然大丈夫だから。本当に、全く、なんとも思わないからね! ほら、落ち着こう! すわって、ルーファス」
ルーファスが私のほうをむいて、にこっと微笑んだ。
あ、わかってくれたんだ! 良かった……。
「そうだね、ララに聞かせるようなことじゃないよね。ララの耳が汚れるから。だから、ちょっと待ってて。すぐに片付けてくるからね、ララ」
そう言うと、モリナさんのほうに向きなおった。
あれ……?
今のルーファスが言ったことってどういう意味?
全く会話がかみあってなかったような気がする。
しかも、片付けてくるって、何を!?
なんだかすごく不穏なんだけど……。
「ジャリス侯爵令嬢、ちょっと、ふたりだけで向こうで話せる?」
と、ルーファス。
ふたりだけで話せる……とか、甘い言葉のようだけれど、ルーファスの声が冷たすぎて嫌な予感しかない。
なのに、モリナさんの受け取り方は違うみたい。
期待に満ちた目で、ルーファスを見ながら、感極まった声で言った。
「私の言ったことをわかってくれたんですね、ルーファス様!」
いや、違うと思う。
アイリスも首を横にふっている。
そんなモリナさんに、ルーファスは淡々と言った。
「じゃあ、ちょっとついて来て」
そう言うと、テーブル席のない、つまり、人がいないところに歩いていった。
モリナさんは、ルーファスの後ろを上機嫌でついていこうとしたけれど、すぐに立ち止まり、私のほうを振り返って、勝ち誇ったように微笑んだ。
「残念だったわね、ララベルさん。私の気持ちがルーファス様に伝わったみたい。だから、もう、ルーファス様のそばに近寄るのは遠慮してね」
と言い放ち、ルーファスのあとを嬉しそうに追っていった。
「なんというか、暗殺者に喜んで暗殺されにいくターゲットみたいね……」
アイリスがあきれたようにつぶやいた。
「ちょっと、アイリス。なに、その不吉な例え? ルーファスは暗殺者とはまるで違うよ」
「あ、それもそうね。暗殺ではなくて、堂々と殺しそうだし……」
「いやいや、アイリス!? そうじゃなくて、ルーファスの本質は天使だから! 今は私のために怒ってくれているけれど、たぶん、ちょっと注意するくらいだと思う。私は気にしてないから、大丈夫なのに。ほんと、過保護だよね」
テーブル席のないところに、たどりついたふたり。
もちろん、声は聞こえないけれど、ここから、ふたりの表情は良く見える。
両手を胸の前でくみ、ルーファスを微笑みながら見あげるモリナさん。
ルーファスが真顔でなにやら話しかけている。
すぐに、モリナさんの顔から表情がぬけおちた。
が、はっとしたように、ルーファスに何か必死に訴えているモリナさん。
だけど、ルーファスがそれに何かを答えると、モリナさんは、胸の前でくんでいた手を下に落とし、腹立たしそうににぎりこんだ。
モリナさんは、くるりと向きをかえ、すごい勢いで、ルーファスから離れ、私たちのテーブルの近くまで駆け寄ってくると、私に鋭い視線を向けた。
「ララベルさん、どんな手を使ってルーファス様をたらしこんだの!? 竜の獣人でもない、ただの人のくせに! あなただけは絶対に許さないから! 覚えてなさい!」
そう叫ぶと、そのまま、カフェからでていった。
ええと、ルーファス……。
一体、モリナさんに何を言ったの!?
もしや、泣いてしまうんじゃない!?
やっぱり、ここは私が何か言ったほうがいい?
今日のルーファスは言動がおかしいから、気にしないほうが……とか?
いや、ダメだ。
私が何を言っても、状況は悪化するに違いない。
幸い、モリナさんは泣くことはなく、ルーファスにすがるような視線を向けた。
「ルーファス様……! そんなことを言うなんて、いつものルーファス様じゃないです。それに、私とルーファス様はおおいに関係がありますわ! だって、私たちは遠い親戚で、なんといっても、同じ竜の獣人の血が流れてるのだもの!」
「竜の獣人の血? それこそどうでもいいよね」
ルーファスが驚くほど、冷たい声で言った。
いつものルーファスとはまるで違う声に、思わず、ぞくっとした。
アイリスなんて、「うわ、今、鳥肌たったわ……」と腕をさすっている。
が、モリナさんはひるむどころか、更に火がついたようにしゃべりだした。
「どうでもいいわけないです! ルーファス様は、ただの人であるララベルさんをかばって、そんなことをおっしゃてるんでしょう!? 獣人じゃないララベルさんが弱いから、お優しいルーファス様は心配して、そばにいるんでしょうが、貴い竜の獣人であるルーファス様のそばに獣人じゃないララベルさんがいていいわけない! だって、もうそろそろ、ルーファス様は番を認識される頃だわ! そんな時に、ララベルさんがそばにいたら邪魔……」
ガッと椅子を蹴って、ルーファスが立ち上がった。
普段は優雅なルーファスがこんな乱暴なしぐさをするところを見たことがない。
これはまずい……。
私を思って怒ってくれているのはわかるけど、獣人うんぬんは、モリナさんとコルネさんには、いつも言われることだから、正直、痛くもかゆくもない。
それより、こんなことで、天使のようなルーファスが怒らないで!
「ルーファス、私は全然大丈夫だから。本当に、全く、なんとも思わないからね! ほら、落ち着こう! すわって、ルーファス」
ルーファスが私のほうをむいて、にこっと微笑んだ。
あ、わかってくれたんだ! 良かった……。
「そうだね、ララに聞かせるようなことじゃないよね。ララの耳が汚れるから。だから、ちょっと待ってて。すぐに片付けてくるからね、ララ」
そう言うと、モリナさんのほうに向きなおった。
あれ……?
今のルーファスが言ったことってどういう意味?
全く会話がかみあってなかったような気がする。
しかも、片付けてくるって、何を!?
なんだかすごく不穏なんだけど……。
「ジャリス侯爵令嬢、ちょっと、ふたりだけで向こうで話せる?」
と、ルーファス。
ふたりだけで話せる……とか、甘い言葉のようだけれど、ルーファスの声が冷たすぎて嫌な予感しかない。
なのに、モリナさんの受け取り方は違うみたい。
期待に満ちた目で、ルーファスを見ながら、感極まった声で言った。
「私の言ったことをわかってくれたんですね、ルーファス様!」
いや、違うと思う。
アイリスも首を横にふっている。
そんなモリナさんに、ルーファスは淡々と言った。
「じゃあ、ちょっとついて来て」
そう言うと、テーブル席のない、つまり、人がいないところに歩いていった。
モリナさんは、ルーファスの後ろを上機嫌でついていこうとしたけれど、すぐに立ち止まり、私のほうを振り返って、勝ち誇ったように微笑んだ。
「残念だったわね、ララベルさん。私の気持ちがルーファス様に伝わったみたい。だから、もう、ルーファス様のそばに近寄るのは遠慮してね」
と言い放ち、ルーファスのあとを嬉しそうに追っていった。
「なんというか、暗殺者に喜んで暗殺されにいくターゲットみたいね……」
アイリスがあきれたようにつぶやいた。
「ちょっと、アイリス。なに、その不吉な例え? ルーファスは暗殺者とはまるで違うよ」
「あ、それもそうね。暗殺ではなくて、堂々と殺しそうだし……」
「いやいや、アイリス!? そうじゃなくて、ルーファスの本質は天使だから! 今は私のために怒ってくれているけれど、たぶん、ちょっと注意するくらいだと思う。私は気にしてないから、大丈夫なのに。ほんと、過保護だよね」
テーブル席のないところに、たどりついたふたり。
もちろん、声は聞こえないけれど、ここから、ふたりの表情は良く見える。
両手を胸の前でくみ、ルーファスを微笑みながら見あげるモリナさん。
ルーファスが真顔でなにやら話しかけている。
すぐに、モリナさんの顔から表情がぬけおちた。
が、はっとしたように、ルーファスに何か必死に訴えているモリナさん。
だけど、ルーファスがそれに何かを答えると、モリナさんは、胸の前でくんでいた手を下に落とし、腹立たしそうににぎりこんだ。
モリナさんは、くるりと向きをかえ、すごい勢いで、ルーファスから離れ、私たちのテーブルの近くまで駆け寄ってくると、私に鋭い視線を向けた。
「ララベルさん、どんな手を使ってルーファス様をたらしこんだの!? 竜の獣人でもない、ただの人のくせに! あなただけは絶対に許さないから! 覚えてなさい!」
そう叫ぶと、そのまま、カフェからでていった。
ええと、ルーファス……。
一体、モリナさんに何を言ったの!?
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