私が一番嫌いな言葉。それは、番です!

水無月あん

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今のうちに

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桃ジャムのマカロンを頬張りながら、ルーファスの言ったことを思い出す。

確か、キリアンさんに、「ライザをマリーの配置と交換して」って言ってたよね……?

ライザさんというのは、私が子どもの頃から知っている公爵家でもベテランのメイドさん。
今日は、王女様の席の傍に控えていて、王女様担当として給仕をしている。

マリーさんはメイド長で、レーナおばさまの傍に控えて、お茶会の補佐をしている。

そのふたりの配置を交換するのは、どういう意味があるんだろう……?
うーん……、これだけでは、全くわからない。

ということで、他に、ルーファスが言っていたことを思い出してみる。

確か、キリアンさんに王女様に近づかないようにってことと、近づく必要がある時は、マイヤーさんに頼むように、だったよね……。
マイヤーさんは、キリアンさんの部下にあたる執事さん。

うーん……、これまた、意味がわからない。

とりあえず、ふたつのことをあわせて考えてみる。

わかることは、マリーさんとマイヤーさんは王女様に近づいても大丈夫だけれど、ライザさんとキリアンさんは王女様に近づかないほうがいいってことだけ。

理由は全然わからないけれど……。

と、ここまで考えた時にはもう、ライザさんとマリーさんの位置が入れ替わっていた。
更には、テーブル近くにいなかったマイヤーさんがやってきて、キリアンさんの隣に立った。

王女様はまだ、王子妃のそばにいて、にこやかな顔で何か話をしている。
小声なので内容は聞こえないけれど、うなずくだけの王子妃を見ると、人形に、なにかを覚えさせようとしているみたいに思えてしまう。
やっぱり、どう見ても異様だよね……。

それなのに、王女様たちを満足そうに見ている第二王子や憧れの目で見つめるモリナさん。
王子妃ほどではないにしても、ふたりの様子も異様な感じがする。

一体、王女様のまわりで何がおきているんだろう?

じっと観察していると、
「ララ。あっちをそんなに見ちゃダメだよ。ララのきれいな目が汚れるからね」
と、隣からささやいてきた。

あ、ルーファス、レーナおばさまとのお話が終わったんだ。

ルーファスには色々聞きたいことがある!
王女様も王子妃のそばにいるし、モリナさんは王女様の動向を熱心に見ているから、今が話を聞くチャンスだ。

「ねえ、ルーファス。もしかして、王女様って人を操ったりできる? さっき、王女様が話をした時、王子妃から突然、感情が消えて、まるで人形になったように見えたんだけど……」
と、できるだけ声を落として聞いてみた。

「うん、さすが、ララだ。よくわかったね。やっぱり、ララの目は澄んでいてきれいだから、真実を見ることができるんだね」

きらきらした目で、いつもどおり私をほめまくるルーファス。

いや、あんな状況を見たら、誰でもわかると思うけど……なんて言おうもんなら、もっと、ほめてくるのがルーファスだから、そこはさらりと受け流す。

「それはどうも。で、ルーファス。さっき、キリアンさんに言ってたことだけど、ライザさんとキリアンさんは、王女様には近づいたらいけなくて、マイヤーさんとマリーさんは近づいても大丈夫ってことだよね? つまり、そのふたりは王女様に近づいても操られないってこと? なんでなの?」

王女様たちがこっちを見ていない間に、ルーファスに気になることはできるだけ聞いておきたい。そう思ったら、ものすごい早口になった。

ルーファスがフッと笑った。
至近距離だとまぶしすぎる笑顔に、思わず目が細まってしまう。

「ララが一生懸命早口でしゃべってるのが本当かわいい。どす黒い竜の気が漂ってきて不快だったけど、一気に浄化された。ありがとう、ララ……。簡単にララの質問に答えると、今、王女は竜の力を使って、無理やり王子妃を従わせた」

「竜の力……?」

「純血の竜の獣人は、竜の力といわれる、特別な力を持っていることがあるんだ。それは使い方次第で、良くも悪くもなるし、普通は、使えば使うほど強くなってくる。あの王女は、悪い使い方を散々してきたんだろうね。力を使った瞬間、王女から、まがまがしい気が僕のところまで伝わってきた。力としては、強いほうだと思う。もちろん、悪い方にだ。あ、でも、ララは心配しないで。ララに、あの王女の持つ竜の力は効かないから、操られることはない。ララはマイヤーとマリーと同じだから」

「え? 私がふたりと同じ……? ……あっ! もしかして獣人じゃないってこと……!?」

私が勢いこんで答えると、ルーファスが微笑みながら、うなずいた。

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