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王子妃に近づいた王女様。
第二王子が王子妃の腕をつかんでいるのを見て、妙に優し気な声をだした。
「ガイガー王子。手を離してあげて。そんなに強くつかんだら、アンヌさんが痛いでしょう? 今は興奮しているだけで、話せばわかるわ」
「あ、ああ。そうだな……」
第二王子があわてて手を離した。
なんだか、王女様の言いなりすぎて異様な感じ……。
王女様は第二王子と王子妃の間にわって入った。
背の高い王女様が、王子妃を見下ろすような形になる。
「な……、なによ!? なんか、文句でもあるの!?」
やけになったように、王女様に食ってかかる王子妃。
王女様に向かって不敬すぎる言葉だけれど、さっきから、散々言ってるしね……。
王子妃は、もう取り繕う気もないみたい。
が、王女様は気を悪くした様子もなく、逆に、微笑みを浮かべた。
「アンヌさん、かわいそうに……。あなたは何も悪くない。ただ、ガイガー王子を思いすぎて、不安になっただけなのよね。アンヌさん。あなたはよく頑張ったわ。王子の番だったばかりに、いきなり、平民から妃になったんだから無謀よね。環境が違いすぎるもの」
「王女なんて、貴族の頂点じゃない! そんな人に、私の苦しみがわかるわけない!」
怒りに満ちた目で王女様をにらみあげて、王子妃が叫んだ。
「そうね、わからないわ。生まれた時から王女だった私は想像するだけよ。でも、それくらい、環境が違うってこと。さっき、ララベルさんが、前の婚約者について、環境じゃなくて人格が優れていたからだと、暗に、アンヌさんの人格や努力不足を責めていたみたいだったけれど、私はそうは思わない。あなたに全く非がないことを私が認めるわ。全部、まわりが悪かったのよ」
なんだか私に悪意を感じる言い方だけれど、それはどうでもいい。
それより、王子妃に全く非がない? まわりが全部悪い?
いや、それは絶対に違うよね!?
しかも、私が認める? って、王女様は神様ですか?
王女様の言葉にもやもやしてしまう私。
王子妃のほうは、警戒するように王女様をにらんだまま。
すると、王女様はかがむようにして、王子妃に顔を近づけた。
「ねえ、アンヌさん。私は、あなたの味方よ」
ねっとりとまとわりつくような口調で王女様がそう言ったとたん、王子妃の顔がごろりと変わった。
完全に表情が抜け落ち、じっと王女様に見入っている。
その顔に、思わず、ぞわっとした。
人間らしさが消え、人形みたいに思えたから……。
「ねえ、アンヌさん。もう帰るだなんて言わないわよね? 私、今日のお茶会を楽しみにしていたのよ?」
王女様が問いかける。
「あ……は、……はい。います……」
ぼーっとしたように王女様を見つめながら、覇気のない声で答えた王子妃。
「まあ、ありがとう、アンヌさん。一緒に、お茶会を楽しみましょうね」
「はい……」
「じゃあ、立ってないで椅子にすわって」
「はい……」
王子妃は大人しく椅子にすわった。
「ラジュ王女、アンヌを説得してくれて感謝する」
ほっとしたように笑みを浮かべて、お礼を言った第二王子。
「さすがはラジュ王女様ですわ! ラジュ王女様のお優しいお気持が、アンヌ様に伝わったのですね! 追い詰められていたアンヌ様を更に責めるようなララベルさんとは大違いですわ!」
席から立ち上がって、王女様とアンヌさんに向かって拍手をするモリナさん。
どう考えても、優しさが伝わったとか、そんないいものじゃないと思う。
さっきまでの王子妃とは別人すぎて、不自然だし……。
一体、何がおきたんだろう……?
その時、ルーファスが「なるほどね……」と、小さな声でつぶやいたのが聞こえた。
あ、ルーファス、何かわかったんだ!
ルーファスを見ると、私に向かって微笑んだ。
「ララは桃のお菓子をもっと食べてて。ちょっと、悪い気が蔓延してるからね」
そう言うと、キリアンさんのほうを見たルーファス。
すぐにキリアンさんがルーファスのもとへと近づいてきた。
「キリアン、すぐに、ライザをマリーの配置と交換して。できるだけ、キリアンも王女には近づかないように。近づく必要がある時はマイヤーに頼んで。あと、母上には僕から説明しておく。まあ、母上も気づいたとは思うけどね。一応、父上にもこのことは伝えておいて」
と、小声で指示をだしたルーファス。
キリアンさんが驚いたように少しだけ目を見開いた。
でも、すぐに、小さくうなずき、「承知しました」と言って、さっと離れていった。
ルーファスはレーナおばさまのほうを向いて、小声で何かを話し始めた。
王女様は表情のない王子妃に何か話しかけているようで、王子妃は時折うなずいている。
第二王子はその様子を満足そうに見ている。
そして、モリナさんは、うっとりとした表情で王女様を見ている。
テーブルの向こう側が不気味で怖い……。
私は桃ジャムのマカロンを口に入れると、ルーファスがキリアンさんに言ったことの意味を考え始めた。
第二王子が王子妃の腕をつかんでいるのを見て、妙に優し気な声をだした。
「ガイガー王子。手を離してあげて。そんなに強くつかんだら、アンヌさんが痛いでしょう? 今は興奮しているだけで、話せばわかるわ」
「あ、ああ。そうだな……」
第二王子があわてて手を離した。
なんだか、王女様の言いなりすぎて異様な感じ……。
王女様は第二王子と王子妃の間にわって入った。
背の高い王女様が、王子妃を見下ろすような形になる。
「な……、なによ!? なんか、文句でもあるの!?」
やけになったように、王女様に食ってかかる王子妃。
王女様に向かって不敬すぎる言葉だけれど、さっきから、散々言ってるしね……。
王子妃は、もう取り繕う気もないみたい。
が、王女様は気を悪くした様子もなく、逆に、微笑みを浮かべた。
「アンヌさん、かわいそうに……。あなたは何も悪くない。ただ、ガイガー王子を思いすぎて、不安になっただけなのよね。アンヌさん。あなたはよく頑張ったわ。王子の番だったばかりに、いきなり、平民から妃になったんだから無謀よね。環境が違いすぎるもの」
「王女なんて、貴族の頂点じゃない! そんな人に、私の苦しみがわかるわけない!」
怒りに満ちた目で王女様をにらみあげて、王子妃が叫んだ。
「そうね、わからないわ。生まれた時から王女だった私は想像するだけよ。でも、それくらい、環境が違うってこと。さっき、ララベルさんが、前の婚約者について、環境じゃなくて人格が優れていたからだと、暗に、アンヌさんの人格や努力不足を責めていたみたいだったけれど、私はそうは思わない。あなたに全く非がないことを私が認めるわ。全部、まわりが悪かったのよ」
なんだか私に悪意を感じる言い方だけれど、それはどうでもいい。
それより、王子妃に全く非がない? まわりが全部悪い?
いや、それは絶対に違うよね!?
しかも、私が認める? って、王女様は神様ですか?
王女様の言葉にもやもやしてしまう私。
王子妃のほうは、警戒するように王女様をにらんだまま。
すると、王女様はかがむようにして、王子妃に顔を近づけた。
「ねえ、アンヌさん。私は、あなたの味方よ」
ねっとりとまとわりつくような口調で王女様がそう言ったとたん、王子妃の顔がごろりと変わった。
完全に表情が抜け落ち、じっと王女様に見入っている。
その顔に、思わず、ぞわっとした。
人間らしさが消え、人形みたいに思えたから……。
「ねえ、アンヌさん。もう帰るだなんて言わないわよね? 私、今日のお茶会を楽しみにしていたのよ?」
王女様が問いかける。
「あ……は、……はい。います……」
ぼーっとしたように王女様を見つめながら、覇気のない声で答えた王子妃。
「まあ、ありがとう、アンヌさん。一緒に、お茶会を楽しみましょうね」
「はい……」
「じゃあ、立ってないで椅子にすわって」
「はい……」
王子妃は大人しく椅子にすわった。
「ラジュ王女、アンヌを説得してくれて感謝する」
ほっとしたように笑みを浮かべて、お礼を言った第二王子。
「さすがはラジュ王女様ですわ! ラジュ王女様のお優しいお気持が、アンヌ様に伝わったのですね! 追い詰められていたアンヌ様を更に責めるようなララベルさんとは大違いですわ!」
席から立ち上がって、王女様とアンヌさんに向かって拍手をするモリナさん。
どう考えても、優しさが伝わったとか、そんないいものじゃないと思う。
さっきまでの王子妃とは別人すぎて、不自然だし……。
一体、何がおきたんだろう……?
その時、ルーファスが「なるほどね……」と、小さな声でつぶやいたのが聞こえた。
あ、ルーファス、何かわかったんだ!
ルーファスを見ると、私に向かって微笑んだ。
「ララは桃のお菓子をもっと食べてて。ちょっと、悪い気が蔓延してるからね」
そう言うと、キリアンさんのほうを見たルーファス。
すぐにキリアンさんがルーファスのもとへと近づいてきた。
「キリアン、すぐに、ライザをマリーの配置と交換して。できるだけ、キリアンも王女には近づかないように。近づく必要がある時はマイヤーに頼んで。あと、母上には僕から説明しておく。まあ、母上も気づいたとは思うけどね。一応、父上にもこのことは伝えておいて」
と、小声で指示をだしたルーファス。
キリアンさんが驚いたように少しだけ目を見開いた。
でも、すぐに、小さくうなずき、「承知しました」と言って、さっと離れていった。
ルーファスはレーナおばさまのほうを向いて、小声で何かを話し始めた。
王女様は表情のない王子妃に何か話しかけているようで、王子妃は時折うなずいている。
第二王子はその様子を満足そうに見ている。
そして、モリナさんは、うっとりとした表情で王女様を見ている。
テーブルの向こう側が不気味で怖い……。
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