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どうやって?
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「なあ、パトリックとアンナって、つきあってるのか?」
と、声が聞こえた。
声がしたほうを見ると、二人の少年がいた。さっきパトリックに声をかけてきた、ブランディ伯爵家のヘンリーと、同じくらいの年に見える少年だ。
「どう見ても、あれはそうだろ? あいつら、学園で、よく一緒にいるしな。俺はずっと二人が恋人だと思ってたよ。
だから、パトリックに婚約者がいるなんて、思いもしなかったけどな。しかも、辺境伯の令嬢だろ? パトリック、未来の辺境伯を棒にふるなんて、ほんと馬鹿だよ。その地位、俺がもらおうかな。辺境伯の令嬢、すごいかわいかったし」
そう言って、笑ったのは、ブランディ伯爵家のヘンリーだ。
いやいや、友達面して陰口を言う人なんて、絶対にごめんだわ。
というか、あのオレンジ色の髪の女性がアンナさんね…。なるほど、つきあってたんだ。
パトリックも私に嫌味を言うより、さっさと婚約解消してくれれば、お互いハッピーだったのに。
そこで、一層、まわりのざわめきが大きくなった。
というのも、アンナさんがパトリックにぴったりと抱き着くように手をまわしたからだ。
「おいおい、こんな大勢の前で何してるんだ、あの二人は?」
「しかも、あの次男、婚約者がいるだろう?」
「どういうつもりなのかしら。はしたない」
「公爵も大変よね。いくら長男が優秀でも、次男があんなんじゃ」
「あの特徴的なオレンジの髪は、ボリス子爵家の一族だろ。品のない娘だな」
ひそひそと話す声が、ざーっと、まわりに広がっていく。
ふと、公爵夫妻を目で探すと、離れたところにいて、招待客と談笑している。私の両親も近くにいるのが見えた。
今は離れてるけど、パトリックたちの行動が耳に届くのはあっという間だろうな…。
人の良い公爵夫妻がどう思うだろうと想像したら、胸がズキンとなる。
でも、はたから見ると、二人は不自然なほど密着しているから目をひく。
まあ、私から見ると、黒い煙でぐるぐる巻きにされて、全く身動きのとれないパトリックを、アンナさんが、しっかりと捕獲しているように見えるんだけど。
そして、アンナさんは狂気をはらんだ笑みを浮かべ、うっとりとパトリックを見つめている。怖い…。
黒い煙が縄のようになって、きつく縛られているパトリックは苦しいみたいで、顔色がだんだん悪くなってきた。
早く、あの黒い煙をすい取らなきゃ! でも、どうやって…?
私が焦って考えをめぐらせていると、アンナさんがパトリックの腕をひっぱるようにして、歩きはじめた。
私には黒い煙の綱でつながれたパトリックが、アンナさんに連行されていくように見える。
身動きもとれず、全く逆らえないパトリック。
歩きはじめた二人を、まわりの人たちが好奇の目で見ている。そして、離れたところでその様子を見ている私に気がついた人は、私にも視線を送ってきはじめた。
同情、興味、憐れみ、好奇…色々な思いが混じった視線が痛い。
が、そんなことより、アンナさん、パトリックをどこへ連れて行くんだろ?
私は、少し離れた状態で、さりげなく、あとをつけはじめる。
すると、扉をあけて、二人が、このフロアから出て行くのが見えた。
あわてて、あとを追う。
私もフロアを出ると、そこは長い廊下になっていた。左右どちらにも行けるみたいだ。
が、左右を見ても、二人の姿は見えない。どっちへ行ったんだろ?
そのうえ、廊下をはさんだ向こう側には、沢山の部屋がある。が、公爵邸は初めてきたので、屋敷の中が、一体どういうつくりになっているのか、まるでわからない。
きょろきょろとあたりを見回しながら、廊下を歩いていると、黒い煙が見えた。
あわてて、黒い煙をおいかける。
そして、廊下をまがったところで、二人の姿が見えた!
と、声が聞こえた。
声がしたほうを見ると、二人の少年がいた。さっきパトリックに声をかけてきた、ブランディ伯爵家のヘンリーと、同じくらいの年に見える少年だ。
「どう見ても、あれはそうだろ? あいつら、学園で、よく一緒にいるしな。俺はずっと二人が恋人だと思ってたよ。
だから、パトリックに婚約者がいるなんて、思いもしなかったけどな。しかも、辺境伯の令嬢だろ? パトリック、未来の辺境伯を棒にふるなんて、ほんと馬鹿だよ。その地位、俺がもらおうかな。辺境伯の令嬢、すごいかわいかったし」
そう言って、笑ったのは、ブランディ伯爵家のヘンリーだ。
いやいや、友達面して陰口を言う人なんて、絶対にごめんだわ。
というか、あのオレンジ色の髪の女性がアンナさんね…。なるほど、つきあってたんだ。
パトリックも私に嫌味を言うより、さっさと婚約解消してくれれば、お互いハッピーだったのに。
そこで、一層、まわりのざわめきが大きくなった。
というのも、アンナさんがパトリックにぴったりと抱き着くように手をまわしたからだ。
「おいおい、こんな大勢の前で何してるんだ、あの二人は?」
「しかも、あの次男、婚約者がいるだろう?」
「どういうつもりなのかしら。はしたない」
「公爵も大変よね。いくら長男が優秀でも、次男があんなんじゃ」
「あの特徴的なオレンジの髪は、ボリス子爵家の一族だろ。品のない娘だな」
ひそひそと話す声が、ざーっと、まわりに広がっていく。
ふと、公爵夫妻を目で探すと、離れたところにいて、招待客と談笑している。私の両親も近くにいるのが見えた。
今は離れてるけど、パトリックたちの行動が耳に届くのはあっという間だろうな…。
人の良い公爵夫妻がどう思うだろうと想像したら、胸がズキンとなる。
でも、はたから見ると、二人は不自然なほど密着しているから目をひく。
まあ、私から見ると、黒い煙でぐるぐる巻きにされて、全く身動きのとれないパトリックを、アンナさんが、しっかりと捕獲しているように見えるんだけど。
そして、アンナさんは狂気をはらんだ笑みを浮かべ、うっとりとパトリックを見つめている。怖い…。
黒い煙が縄のようになって、きつく縛られているパトリックは苦しいみたいで、顔色がだんだん悪くなってきた。
早く、あの黒い煙をすい取らなきゃ! でも、どうやって…?
私が焦って考えをめぐらせていると、アンナさんがパトリックの腕をひっぱるようにして、歩きはじめた。
私には黒い煙の綱でつながれたパトリックが、アンナさんに連行されていくように見える。
身動きもとれず、全く逆らえないパトリック。
歩きはじめた二人を、まわりの人たちが好奇の目で見ている。そして、離れたところでその様子を見ている私に気がついた人は、私にも視線を送ってきはじめた。
同情、興味、憐れみ、好奇…色々な思いが混じった視線が痛い。
が、そんなことより、アンナさん、パトリックをどこへ連れて行くんだろ?
私は、少し離れた状態で、さりげなく、あとをつけはじめる。
すると、扉をあけて、二人が、このフロアから出て行くのが見えた。
あわてて、あとを追う。
私もフロアを出ると、そこは長い廊下になっていた。左右どちらにも行けるみたいだ。
が、左右を見ても、二人の姿は見えない。どっちへ行ったんだろ?
そのうえ、廊下をはさんだ向こう側には、沢山の部屋がある。が、公爵邸は初めてきたので、屋敷の中が、一体どういうつくりになっているのか、まるでわからない。
きょろきょろとあたりを見回しながら、廊下を歩いていると、黒い煙が見えた。
あわてて、黒い煙をおいかける。
そして、廊下をまがったところで、二人の姿が見えた!
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