(完結)私のことが嫌いなら、さっさと婚約解消してください。私は、花の種さえもらえれば満足です!

水無月あん

文字の大きさ
18 / 23

どうやって?

しおりを挟む
「なあ、パトリックとアンナって、つきあってるのか?」
と、声が聞こえた。

声がしたほうを見ると、二人の少年がいた。さっきパトリックに声をかけてきた、ブランディ伯爵家のヘンリーと、同じくらいの年に見える少年だ。

「どう見ても、あれはそうだろ? あいつら、学園で、よく一緒にいるしな。俺はずっと二人が恋人だと思ってたよ。
だから、パトリックに婚約者がいるなんて、思いもしなかったけどな。しかも、辺境伯の令嬢だろ? パトリック、未来の辺境伯を棒にふるなんて、ほんと馬鹿だよ。その地位、俺がもらおうかな。辺境伯の令嬢、すごいかわいかったし」
そう言って、笑ったのは、ブランディ伯爵家のヘンリーだ。

いやいや、友達面して陰口を言う人なんて、絶対にごめんだわ。

というか、あのオレンジ色の髪の女性がアンナさんね…。なるほど、つきあってたんだ。
パトリックも私に嫌味を言うより、さっさと婚約解消してくれれば、お互いハッピーだったのに。

そこで、一層、まわりのざわめきが大きくなった。
というのも、アンナさんがパトリックにぴったりと抱き着くように手をまわしたからだ。

「おいおい、こんな大勢の前で何してるんだ、あの二人は?」

「しかも、あの次男、婚約者がいるだろう?」

「どういうつもりなのかしら。はしたない」

「公爵も大変よね。いくら長男が優秀でも、次男があんなんじゃ」

「あの特徴的なオレンジの髪は、ボリス子爵家の一族だろ。品のない娘だな」

ひそひそと話す声が、ざーっと、まわりに広がっていく。

ふと、公爵夫妻を目で探すと、離れたところにいて、招待客と談笑している。私の両親も近くにいるのが見えた。

今は離れてるけど、パトリックたちの行動が耳に届くのはあっという間だろうな…。
人の良い公爵夫妻がどう思うだろうと想像したら、胸がズキンとなる。

でも、はたから見ると、二人は不自然なほど密着しているから目をひく。

まあ、私から見ると、黒い煙でぐるぐる巻きにされて、全く身動きのとれないパトリックを、アンナさんが、しっかりと捕獲しているように見えるんだけど。
そして、アンナさんは狂気をはらんだ笑みを浮かべ、うっとりとパトリックを見つめている。怖い…。

黒い煙が縄のようになって、きつく縛られているパトリックは苦しいみたいで、顔色がだんだん悪くなってきた。

早く、あの黒い煙をすい取らなきゃ! でも、どうやって…?

私が焦って考えをめぐらせていると、アンナさんがパトリックの腕をひっぱるようにして、歩きはじめた。
私には黒い煙の綱でつながれたパトリックが、アンナさんに連行されていくように見える。

身動きもとれず、全く逆らえないパトリック。

歩きはじめた二人を、まわりの人たちが好奇の目で見ている。そして、離れたところでその様子を見ている私に気がついた人は、私にも視線を送ってきはじめた。

同情、興味、憐れみ、好奇…色々な思いが混じった視線が痛い。

が、そんなことより、アンナさん、パトリックをどこへ連れて行くんだろ?

私は、少し離れた状態で、さりげなく、あとをつけはじめる。

すると、扉をあけて、二人が、このフロアから出て行くのが見えた。
あわてて、あとを追う。

私もフロアを出ると、そこは長い廊下になっていた。左右どちらにも行けるみたいだ。
が、左右を見ても、二人の姿は見えない。どっちへ行ったんだろ?

そのうえ、廊下をはさんだ向こう側には、沢山の部屋がある。が、公爵邸は初めてきたので、屋敷の中が、一体どういうつくりになっているのか、まるでわからない。

きょろきょろとあたりを見回しながら、廊下を歩いていると、黒い煙が見えた。
あわてて、黒い煙をおいかける。

そして、廊下をまがったところで、二人の姿が見えた!
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

2度目の結婚は貴方と

朧霧
恋愛
 前世では冷たい夫と結婚してしまい子供を幸せにしたい一心で結婚生活を耐えていた私。気がついたときには異世界で「リオナ」という女性に生まれ変わっていた。6歳で記憶が蘇り悲惨な結婚生活を思い出すと今世では結婚願望すらなくなってしまうが騎士団長のレオナードに出会うことで運命が変わっていく。過去のトラウマを乗り越えて無事にリオナは前世から数えて2度目の結婚をすることになるのか? 魔法、魔術、妖精など全くありません。基本的に日常感溢れるほのぼの系作品になります。 重複投稿作品です。(小説家になろう)

【完結】ロザリンダ嬢の憂鬱~手紙も来ない 婚約者 vs シスコン 熾烈な争い

buchi
恋愛
後ろ盾となる両親の死後、婚約者が冷たい……ロザリンダは婚約者の王太子殿下フィリップの変容に悩んでいた。手紙もプレゼントも来ない上、夜会に出れば、他の令嬢たちに取り囲まれている。弟からはもう、婚約など止めてはどうかと助言され…… 視点が話ごとに変わります。タイトルに誰の視点なのか入っています(入ってない場合もある)。話ごとの文字数が違うのは、場面が変わるから(言い訳)

さようなら、私の王子様

雨野六月(旧アカウント)
恋愛
「ビアンカ・アデライド、お前との婚約を破棄する!」 王太子リチャードの言葉に対し、侯爵令嬢ビアンカが抱いたのは怒りでも哀しみでもなく、「ついにこの時が来たか」という感慨だった。ビアンカにしてみれば、いずれこうなることは避けられない運命だったから。 これは二度の婚約破棄を経験した令嬢が、真実の愛を見つけるまでのお話。

愛する人のためにできること。

恋愛
彼があの娘を愛するというのなら、私は彼の幸せのために手を尽くしましょう。 それが、私の、生きる意味。

あなたが遺した花の名は

きまま
恋愛
——どうか、お幸せに。 ※拙い文章です。読みにくい箇所があるかもしれません。 ※作者都合の解釈や設定などがあります。ご容赦ください。

貴方の幸せの為ならば

缶詰め精霊王
恋愛
主人公たちは幸せだった……あんなことが起きるまでは。 いつも通りに待ち合わせ場所にしていた所に行かなければ……彼を迎えに行ってれば。 後悔しても遅い。だって、もう過ぎたこと……

運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。

ぽんぽこ狸
恋愛
 気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。  その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。  だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。  しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。  五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。

【本編,番外編完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る

金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。 ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの? お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。 ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。 少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。 どうしてくれるのよ。 ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ! 腹立つわ〜。 舞台は独自の世界です。 ご都合主義です。 緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。

処理中です...