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なんてことを
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「ところで、二人とも、今日は、なにをしてたの?」
ユーリが、聞いてきた。
「アデルに本をもらったんだ」
マルクが答えると、
「二人とも本が好きだよね。どんな本? 見せてよ」
マルクが本を持ってきて、ユーリの前においた。
「ふーん、シンガロ国の本か」
そう言って、興味なさげに、ぱらぱらとめくっている。
すごい速読なのだ。
そして、悔しいことに、この男は、語学にもたけている。
本のために、私が必死で学んだ言葉を、この男は、涼しい顔で、あっという間に習得した。
外交関係にある国々の言葉は堪能だそう。
うらやましい。
しかし、その言葉の能力を本を読むために使わない。
もったいない。この天才め。許すまじ。
そんなことを思いながら、にらみつけていると、
「なるほどねえ…。主人公が、仲間に裏切られて、死にそうになるんだけど、この表紙のドラゴンが助けにくるんだね。で、その仲間、だれだっけ、あ、モニークか。その人は捕まるみたい。でも、主人公は助かったから良かったね」
思いもかけない言葉が、魔王から発せられた。
「…」
「…」
テーブルが異様な静寂につつまれる。
「あれ、どうしたの? 二人とも」
はっと意識を取り戻した私は、椅子をけって、立ちあがった。
「はああああ?! なに、言ってるのよ!!」
ユーリは眉間にしわをよせた。
「アデル、うるさいよ」
「うるさいじゃない! 今、なんて言ったのよっ?!」
「うーん…、だから、助かって良かったね、って?」
「良かったね、じゃないわよ! なんてこと言ってるの! 本の結末、言ったらだめでしょ!!」
「なんで?」
「なんでじゃない。マルクは、今から読むんだから、先に言ってしまったら、楽しみがうばわれるじゃない!」
「そうかな? 結末を知っても、別にどうでもよくない?」
ダメだ。物語本を読まないやつに何を言ってもつうじない。
それより、マルク!
となりを見ると、マルクの目は、すでにうるうるしていた。
「マルク…。マルク、大丈夫?」
放心状態になってる。
「マルク、大丈夫だからね。モニークは犯人じゃないかもしれない。いや、モニークなんて人、この本にでてこないかもしれない。結末はまだ、わからないよ」
「いや、間違いないよ。モニークが裏切ったんだ」
ユーリの言葉に、マルクが、ついに。声をあげて泣き始めた。
どうしよう。
マルクは、いったん、泣き始めたら、なかなかとまらない。
なんとかなぐさめようと、マルクのまわりを、私がうろうろしていると、魔王の笑い声が!
見ると、普段のつくろった笑顔ではなく、邪気もなく、心底楽しそうに笑ってる。
見た目は天使が笑っているようで、神々しい…なーんて、思ってる場合じゃないわ!
今、この状況で笑う要素、全くないでしょ!
私がにらみつけると、ユーリはさらに笑いながら言った。
「やっぱり、アデルがいると楽しいね。無理して帰ってきて良かったよ。最近の疲れがふきとんだ」
なんてこと言うんだ。
本好きの敵、ここにあらわる。
ユーリが、聞いてきた。
「アデルに本をもらったんだ」
マルクが答えると、
「二人とも本が好きだよね。どんな本? 見せてよ」
マルクが本を持ってきて、ユーリの前においた。
「ふーん、シンガロ国の本か」
そう言って、興味なさげに、ぱらぱらとめくっている。
すごい速読なのだ。
そして、悔しいことに、この男は、語学にもたけている。
本のために、私が必死で学んだ言葉を、この男は、涼しい顔で、あっという間に習得した。
外交関係にある国々の言葉は堪能だそう。
うらやましい。
しかし、その言葉の能力を本を読むために使わない。
もったいない。この天才め。許すまじ。
そんなことを思いながら、にらみつけていると、
「なるほどねえ…。主人公が、仲間に裏切られて、死にそうになるんだけど、この表紙のドラゴンが助けにくるんだね。で、その仲間、だれだっけ、あ、モニークか。その人は捕まるみたい。でも、主人公は助かったから良かったね」
思いもかけない言葉が、魔王から発せられた。
「…」
「…」
テーブルが異様な静寂につつまれる。
「あれ、どうしたの? 二人とも」
はっと意識を取り戻した私は、椅子をけって、立ちあがった。
「はああああ?! なに、言ってるのよ!!」
ユーリは眉間にしわをよせた。
「アデル、うるさいよ」
「うるさいじゃない! 今、なんて言ったのよっ?!」
「うーん…、だから、助かって良かったね、って?」
「良かったね、じゃないわよ! なんてこと言ってるの! 本の結末、言ったらだめでしょ!!」
「なんで?」
「なんでじゃない。マルクは、今から読むんだから、先に言ってしまったら、楽しみがうばわれるじゃない!」
「そうかな? 結末を知っても、別にどうでもよくない?」
ダメだ。物語本を読まないやつに何を言ってもつうじない。
それより、マルク!
となりを見ると、マルクの目は、すでにうるうるしていた。
「マルク…。マルク、大丈夫?」
放心状態になってる。
「マルク、大丈夫だからね。モニークは犯人じゃないかもしれない。いや、モニークなんて人、この本にでてこないかもしれない。結末はまだ、わからないよ」
「いや、間違いないよ。モニークが裏切ったんだ」
ユーリの言葉に、マルクが、ついに。声をあげて泣き始めた。
どうしよう。
マルクは、いったん、泣き始めたら、なかなかとまらない。
なんとかなぐさめようと、マルクのまわりを、私がうろうろしていると、魔王の笑い声が!
見ると、普段のつくろった笑顔ではなく、邪気もなく、心底楽しそうに笑ってる。
見た目は天使が笑っているようで、神々しい…なーんて、思ってる場合じゃないわ!
今、この状況で笑う要素、全くないでしょ!
私がにらみつけると、ユーリはさらに笑いながら言った。
「やっぱり、アデルがいると楽しいね。無理して帰ってきて良かったよ。最近の疲れがふきとんだ」
なんてこと言うんだ。
本好きの敵、ここにあらわる。
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