天使かと思ったら魔王でした。怖すぎるので、婚約解消がんばります!

水無月あん

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おうじさま

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そこへ、手を洗いに行っていた子どもたちが入ってきた。
明るい声がひびき、空気が一気にあたたかくなる。

「おなかすいたー」
「おひる、なあに?」

が、こっちを見たとたん、ぴたりと動きがとまった。

どうしたの、子どもたち?! 大丈夫かしら?

…と、思ったら、
「うわあああ!」
と、小さな女の子たちが、いっせいに、こっちへ走ってきた。

え、なに、なに、なに?!

ちびこったちは、ユーリのもとへと集合した。

「おうじさまがいる」
「おにいちゃんのおはなしにでてきた、おうじさまだ」
「わー、かっこいい!」

きゃきゃきゃっと、はしゃいでいる。

いやいや、違うよ。魔王だよ。ダメだよ。見かけにだまされちゃ。

ふと、デュラン王子と目があった。あ…。

ほら、みんな、本物の王子様だよ。
そこにいるよ! 行ってあげて!

私の祈りもむなしく、子どもたちは、ユーリにくぎ付けだ。

デュラン王子が、私の顔を見て、心の内を察したように、微笑んだ。
甘さの中に、哀愁がただよってる…。
そう、デュラン王子の魅力は、大人専用なんだわ。

しかし、大人も子どもも魅了するとは、おそるべし、ユーリ!

ユーリは、ひときわ、きらきらした笑顔で、子どもたちに微笑んだ。
「かわいいおひめさまたち、こんにちは。今日は、お土産をいっぱいもってきたよ」

子どもたちから歓声があがった。

すると、ユーリの後ろから、知らない人がでてきて、リボンをかけた大きな箱をユーリに渡した。

ユーリは、その箱を持って、子どもたちの目線までしゃがむと、
「リボンをひっぱってみて」
と、優しい声で言った。

あなた、誰ですか?! さっきまでの声と違いすぎて、ほんと怖い…。

子どもたちが、大きなリボンをひっぱると、するっとほどけた。
みんなで、ふたを持ち上げたとたん、わーっと声があがった。

私も思わず、のぞきこむ。

うっ! なんて、かわいいの!!

動物をかたちどった、クッキーやケーキが沢山ならんでいた。

「かわいい!」
「わたし、くまさんがほしい!」
「わたしは、きりんさん!」

マルクが、いつの間にか、私の横にいて箱をのぞいている。
そして、つぶやいた。

「これ、どうやって、手にいれたんだろ?」

甘いもののお店の情報に詳しいマルク。

「手にいれにくいの?」

「ここのお店、動物たちのお菓子がかわいくて、美味しいから、人気なんだ。だけど、今、改装していて、お店は確か休業中なんだよね」

「えっ?!」

「なんで買えたんだろう、…っていうか、どんな手段を使って、作ってもらったんだろう…」

だんだん、マルクの顔色が悪くなってくる。
確かに、魔王だものね…。

「じゃあ、みんな、先にごはんを食べてから、デザートを食べようか?」
ユーリの声に、

「はーい!」
子どもたちの、いいお返事。中身魔王の王子様は、すでに子どもたちを掌握していた。

子どもたちは、さーっと席に着き、
「いただきます!」
と言って、食べ始める。

意外なことに、師匠が、かいがいしく面倒をみている。

ははーん!
ドーラさんに子どもたちのこと、頼まれたのね。

が、ダニエルは動かず、きらきらした目で、動物たちのお菓子を見ていた。

「ねえ、きみ。お菓子に興味があるの?」

ダニエルはうなずいた。
「ぼく、甘いものを作る人になりたいから」

すると、ユーリは、おどろくほど、優しい声色で、
「ぼくね、このお店のオーナーを、よーく知ってるんだ。修行したかったら、いつでも言ってくれたら力になるよ」

「えっ! ほんと?」

「もちろん。修行するには、いいと思うよ。腕は確かだから。…まあ、隙はあるけどねえ」

語尾が不穏なんだけど?
思わずマルクを見ると、悲しそうにうなずいた。

やはり、ユーリに何か弱みをにぎられてるのね…。
かわいすぎる動物たちのお菓子が、なんだか、余計に涙を誘うわ。

「でも、なんで、ぼくに、そんなことをしてくれるの?」
ダニエルが聞く。

「そうだねえ。ぼくの婚約者と仲良くしてくれたからかな。ぼくたち、あと二年したら結婚するんだけど、結婚式のケーキでも焼いてもらおうかな、なんてね」

ダニエルがなんともいえない顔をする。

と、そこで、
「大人気ないことするね。子ども相手に、なに、牽制してるの? 余裕のないことで」
口をはさんだのは、デュラン王子だ。

一気に極寒に逆戻りだ。
ほんと、やめて!
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