天使かと思ったら魔王でした。怖すぎるので、婚約解消がんばります!

水無月あん

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この声は!

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驚いて固まっていた筆頭公爵家の令嬢が、はっとしたように私に視線をあわせた。
その目には、メラメラとした嫉妬の炎が燃えている。

うん、まあ、これも見慣れた感じよね……。
ユーリを慕う令嬢たちから向けられる視線と同じだもの。

と、のんきに考えていたら、令嬢が大きな声をだした。

「あなた! ユーリ様から離れなさい!」

いや、そう言われてもね。今、私のほうが、がっしり捕獲されてるもの。

すると、椅子で休んでいた取り巻きの令嬢が、残っていた力をふりしぼったかのように、立ち上がって叫んだ。

「ミラ様っ! その方はオパール国の王女様です!」

そして、力尽きたかのように、椅子に、ぐったりともたれかかった。

彼女、大丈夫かしら……。
と、思った時には、店員さんがお水をもっていき、てきぱきと介抱し始めた。

さすがイリスさんのカフェで働く店員さんね。
動きに無駄がないし、なにより、こんな騒ぎにも一切動じていない感じがすごいわ。

そう言えば、イリスさんが、働いているのは手練ればかりって言ってたものね。
あの店員さんも、ただものではないってことね……。

と、またもや、他のことを考えていたら、目の前の令嬢が、私の全身をじろじろ見て言った。

「あら、失礼しました。昨日とはまるで違う、質素な衣装だから、まさか、王女様とは思いもしませんでしたわ。そうやってると、おかわいらしい子どもみたいですわね」
そう言って、クスッと笑った筆頭公爵家の令嬢。

他国の王族であろうが、下に見ている物言いに、ああ、イーリンさんをいじめてきた人だなあ、と実感する。
ふつふつと怒りがこみあげてきた。

もちろん、イーリンさんにしてきたことに対する怒り。

まあ、私のことは、どうってことはないわ。だって、そのとおりだもの。

今日の動きやすいシンプルなドレスを着ている姿と、飾りたてられたパーティーの感じと違うのは、わかってるし。悲しいかな、ちびっこ童顔ってことも、よーくわかってる。

それに、子どもみたいとは、ユーリに熱をあげている令嬢たちに、聞こえよがしによく言われる悪口。
ありきたりすぎて、どうせなら、ひねりが欲しかったわよね。

と、心の中で言い返していると、私の背後から、凍りつくような声が響いた。

「君って、性格が悪いだけじゃなくて、ほんとに馬鹿なんだね? その頭、中身ないの?」

ちょっと、ユーリ!?   
そんな、ひどい悪口を、面とむかって言ったらダメでしょう!?

令嬢も、あっけにとられたように、ぽかんとしている。
自分に言われたこととして認識できていないみたい。

そんな中、イリスさんと店員さんが、淡々と、他のお客様や取り巻き令嬢にひざかけを配っているのが目に入った。
氷の魔王ユーリ対策ね。さすがは、イリスさんだわ!

「イリスのカフェだから我慢してたけど……。ねえ、筆頭公爵家令嬢」
そう言って、ユーリが、ぽかんとしている令嬢に、恐ろしく冷たい声で呼びかけた。

「あ、……は、はい! ユーリ様! なんでしょう?」

それなのに、令嬢は、何故だか頬を染めて、嬉しそうな声で返事をした。

なんてこと! 
今さっき、あんな悪口を言われたのに、なかったことになってるわ……。

まずいわね……。
二人の温度差が、天国と地獄以上に違いすぎて、恐ろしい未来しか見えない。

とにかく、早く二人を引き離さないと……。

「俺のアデルを侮辱するなんて、許せないよね。凍らせるなんて、生ぬるい。今、ここで消えてみる?」
と、魔王全開でしゃべるユーリ。

あまりの冷気に、さすがの令嬢もガタガタと震えだした。
捕獲されている私は、もっと寒いのよ!

でも、そんなことを言っている場合じゃない。

こんな素敵なカフェで、殺人事件をおこすわけにはいかないもの。
ユーリを何が何でも外へ連れ出さなきゃ! 

その時だ。

(かあさん、いた!)

私の脳内に、声が響いた。

この声は……。

「ヨーカン!」

私は思わず、大声をあげた。


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